私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~ 作:かもにゃんこ
高森さんとユミコさんと僕の3人で続けることになった演劇。割りと話はトントン拍子に進んでいたのだけれど、高森さんが所属している部活の件はどうするのか、まだ決めてなかったみたいでそこでいったん話が止まってしまった。
「そっか・・・なんか当たり前みたいに聞いちゃってごめんね?」
「ううん!悪いのは私だし・・・」
「でもどうしようか~」
ユミコさんそう言った後、黙ってしまう。もちろん高森さんもだけど。
ここで話が止まってしまうのは正直言ってマズイと僕も思い、どうすればいいのか考える。
ここで今出来ることは・・・。
僕は2人の顔をチラリと伺った後、思い付いたことを思いきって2人へと告げた。
「あの、さ」
僕の言葉に2人は反応する。多少は予想外の発言だったからかも知れないけど。
「高森さんのことは・・・その、今すぐ結論が出るものじゃないしなかなか難しいだと思うけど・・・今のところで決まってる予定だけでも先にわかった方がいいかなって・・・」
言った後思った。正直説明が雑過ぎて何を言ってるかわからないなと。
証拠に2人は固まってしまっている。
「ええと・・・ごめん、なんかわかりにくくて・・・」
そう言うと高森さんがフォローを。
「ううん、気にしないで。意見言ってくれるだけでも嬉しいから。えっと、つまり未定をことは省いて、みんなが今埋まってる予定を言った上で少しでも今日進められることがあったらってことだよね?」
「うん、そんな感じかな」
それにすかさずユミコさんも意見。
「でもさ、どっちにしても美結ちゃんが部活をどうするかを決めなきゃダメだよね?」
「ううん、それは大丈夫というか・・・」
「そなの?」
高森さんは真面目な顔つきで続ける。
「うん。確かにさっき言われてオシブのこと思い出したのは事実なんだけど、ちゃんと演劇やるなら私は演劇に専念したい。いつからとかはわからないけど、そっちは辞めるつもり。それだけは間違いないから」
少しだけ最後は苦笑いで、そう覚悟を決めたように、逃げ道などもう作らないように、僕たちに話した高森さん。
僕とユミコさんは自然に顔を見合せた。多分お互い思ってることは同じだったからだと思う。それを彼女が代弁してくれる。
「はっきり言っちゃうとそう言ってくれてホッとしたのが一番なんだけどね~!美結ちゃんいないなら始まらないのも事実だし」
「あ、うん」
「でもなんかこう、そこまではっきり言われちゃうと、逆にプレッシャーかけちゃったかなって。ね、ハヤトくん」
「あ、う、うん。まだ結論出さなくても・・・」
僕らがそう心配するが、彼女には無用だった。
「2人ともありがとう。でも大丈夫・・・大丈夫って言い方可笑しいかもだけど、ずっとやりたかったことが今手が届きそうなところにあったら絶対私は掴みたいから。だから辞めるって言い方じゃなくて前に進むってことなんだ」
そう力強く、彼女は言った。僕とユミコさんは再度顔を見合せ、今度は笑顔で。
「うん!チャンス、掴もう!」
「うん、ありがとう裕美子ちゃん、板倉くんも」
「いや、どういたしまして。力になれれば嬉しい、かな」
ニコッと笑顔の高森さんになんとか言葉を返すことは出来た。だっていつもより素敵で・・・いや、なんでもない・・・。
「・・・ってまあとりあえずそうは言ったけど、いくつか決まってる活動はありまして。それは板倉くんの意見の通り先に言うね。あはは・・・」
とまあ、僕がさっき言ったことに戻った。あのときとは状況は全然違うけど。
2人の予定はこう。高森さんは夏休みに5、6件活動があり、その日、また前後だけは無理とのこと。後期授業以降はまだ決めてなかったとのこと。
高森さんが言った後、僕は2人に特に予定はないと先に伝えた。一方、ユミコさんは・・・。
「ごめん、私8月まではバイトしなきゃなんだ!養成所に通うお金稼がなきゃだから!9月からは養成所がある土日意外は大丈夫だからそこから頑張るよ!」
という感じ。とりあえずそんな感じでみんなの予定を確認した後、今度は何をやりたいかの確認をする。
「さっきも聞いたけどさ、2人としてはやっぱり舞台やりたい感じだよね?」
高森さんの言葉に僕もユミコさんも頷く。
「じゃあ決まりだね。1つの台本を使った舞台に向けての活動をしよう」
「うん!それでいこう~!」
「だね、頑張ろう」
とりあえず方向性は決まった。方向性が決まったことで次はと言うと、本番をいつにするかのこと。
「私的には11月3日にあるうちの文化祭がいいかなって。舞台やるならこの日がいいかなって一応考えてたのだけどね。せっかくやるなら、って感じ。もちろん今の段階で出来るかどうかはわからないけどね」
確かにせっかくやるならその日はいいかもと自分も思うので、彼女に賛同する。
「うん、僕もとりあえずはそれでいいと思う」
「板倉くんは了解だね。裕美子ちゃんはどう?」
そう言われたユミコさんは少しうーんと考えている様子で。
「うーん、確かに私も文化祭で出来たらベストだね!って思うけど」
「うん」
「9月からの練習期間で大丈夫かなって」
言われてみればそれはそうかも知れないなあと僕も思うけど、その不安は高森さんの言葉によって一掃される。
「大丈夫だよ。むしろ2か月もあれば十分だと思うよ。もちろん凄く長い台本やりたいなら厳しいかもだけど、それはちゃんと選べば問題ないしね」
「あー、そっか!確かにそうかも!なんか心配してた自分がバカみたいだね」
「あはは」
と、2人がそんな話としていた中、とある疑問が浮かんだ。
「あの」
「うん?どうしたの?」
「あ、えっと、その・・・3人揃ってからスタートって感じだと、練習は9月からになるのかな?」
「うん、舞台の練習はそんな感じかな」
高森さんはそう話した後に少し間を開け続ける。
「板倉くんが良ければ、だけどね」
「え?う、うん」
前置きをされると、何か凄く緊張する・・・。彼女はフーッと少し息を吐く。
「いやね、せっかくだから私と2人だけになるけど、基礎練とかしてくれたらなあ、って思って・・・」
そう言った後、少し笑った高森さんを見て何か恥ずかしい気持ちになり、目を逸らしたくな・・・いや、そうじゃなくて、これはむしろ・・・。
「えっと・・・むしろそういうのって僕からお願いしなきゃダメだった、ような・・・」
そう、よくよく考えたら高森さんはベテランだし、ユミコさんだって声優の養成所で色々演技の勉強とかはしてるだろうし、せっかく9月まで時間あるなら、2人に迷惑をかけないように技術を身につけなくてはいけない立場だから。
「そう言ってくれてありがとう。でも私もね、期間が空いちゃってブランクが出来るの嫌だから。じゃあ板倉くんもやる気あると思っていいってことで、やろうね」
「う、うん。よろしくお願いします」
と言うわけで9月までの約1,5月の間は高森さんと基礎練をすることが決まった。どうでもいい話だけど、このやり取りを見ていたユミコさんはずっとニヤニヤしていたらしい。
そこまで決まった後は、特に今のうちに決めることもないとのことで最後にユミコさん、改め柴田さんと連絡を交換し解散となった。今は帰りの電車の中。柴田さんは駅から反対方向だったため、今は高森さんと2人で雑談。
「さっきはありがとう」
「・・・え?」
いきなり、唐突に彼女がそんなことを言うものだから、驚く。
「あ、いやね、私のせいで沈黙になったときにさ、声を最初に出してくれてってことで。あはは」
苦笑いでそう話す高森さん。そんなことを言ってくれると、あの時勇気を出した甲斐があったのかな。
「いや・・・そんなことないっていうか・・・」
ただまあ、恥ずかしいというか、そんなこともありそう答えるのが精一杯ではある。
「あはは。後ね、正直あの時には言えなかったけど」
「え、う、うん」
「ああいう感じではっきりと演劇に専念します、だから部活辞めますって言ったけどね、正直結構気持ちが揺らいでたかなって言った後は少し思った」
高森さんは僕の方ではなく、電車の窓の方を見てそうつぶやくように話すのを静かに聞く。
「だってさ、1年以上一緒にやった仲間ともお別れになるし、それにいきなり辞めるって言ったらさ、その人たとにどう思われるんだろうって。これからものイベントとかの仕事も、私がいる前提で話が進んでいるかもだし」
その言葉を聞き、はっきり言って何も言うことは出来なかった。いや、出来なかったというか、何を言っても無駄になってしまうと思ったから。そして高森さんでもそんなことを思ってしまうんだとも思った。
でもそんな僕の不安をよそに、彼女は続ける。
「でもね、今はもう大丈夫。ちゃんとそういうことも整理して、演劇やるんだから。本当にやりたいことをそんな気持ちで逃したくないからね」
今度はこちらを見てはっきりとそう言う。彼女の言動から察するに、ウソ偽りなどない本当の気持ちなんだろう。
「あー、なんか臭いこと言っちゃった。変な人だと思わないでね?あはは」
「ううん!全然思ってない、から、ね!?」
そんなことをいきなり言われ、ちょっと慌てて答えてしまった・・・・。
「あはは、ありがとう。あ、そうそう、練習なんだけどさ、いつからにしようかな?」
「えっと、僕は・・・明日からでもいいけど・・・」
「そう?じゃあ明日にしよう。じゃあ時間は・・・」
そんなこんなで実質活動1日目は終了となった。これからまだまだ決めなくてはいけないことも沢山あるけども、僕はやりたいと思っていた演劇の活動が出来ることが凄く嬉しかった。ようやく見つけたであろう熱中出来るものになれたらと。それに・・・高森さんともまだまだ一緒にいられることも、かな。いや、もちろん好きとかそういうのじゃなくて、普通にこれからもっと仲良くなりたいと思っていたから。
久しぶりの勇人目線でしたので少し手探り感というか、違和感があったなあと書きながら思いました(;'∀')
さて、少し補足となります。勇人は最後に「好きとかそういうのじゃなくて・・・仲良く」と言っていましたが、これは本当に勇人はそう思っています。恥ずかしがっていたり、緊張したりしているのは、今まであまり女の子と話す機会がなかったから、女の子と話すだけでそうなっている感じです。ただ、最初の方から続いているように「興味がある、気になる女の子」と言う気持ちもあるのも事実です。
以上、補足になりました(^^♪まあ、本当は本編でこういう感情をうまく表現できたら一番いいのでしょうけどね(笑)