私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~ 作:かもにゃんこ
今回も練習回、外郎売りをメインにやりつつ、最初と最後にニヤニヤシーンもあります(*^▽^*)
ちなみに今回は勇人くん目線になります。
高森さんと2人で初めて基礎練習を行った次の日も、2人とも予定は特にないとのことで同じ時間にまた始めることに。久しぶりに結構ガッツリ体を動かしたため、多少の筋肉痛はあるものの、思ったよりは大丈夫そう。それにせっかくやるならやっぱり続けてやった方がいいに決まってるしね。それに高森さんと会えるのは個人的に嬉しい。
その高森さんとなんだけども、最近は慣れてきたこともあり普通に話せるようになった気はする。最初のうちは何かと意識してしまって色々考えてしまうことも多かったけど、特にアニメや漫画の話をお互いにするようになってからはうまく話せるようになったかなと。
もちろん、その・・・うまくは言えないけども、高森さんは性格も含め凄くいい人で可愛いなあと思うこともあるし・・・ただ、今感じてるこの感情は恋愛の意味で言う好きなのかどうかはやっぱりよくわからないというのが本音かな。もちろんどの異性よりも気になっているのは間違いないのだけど、他に仲のいい子がいないだけだからなのかも知れないとも思うから。
今はそんな感じ。もちろん彼女が女の子と言うことだけで、色々意識する部分はあるけど、それはたぶんまた別の話だと思う。
「おはよう」
「あ、おはよう」
前日と同じように駅から大学へ向かう道中、後ろから高森さんに声をかけられた。
「昨日と同じだね。私いつも階段から通り後ろの方にも乗ってるから」
「あ、そうなんだ。僕は乗り換え駅の都合もあって6号車に乗ってるかな」
聞かれてもないのにそんなことを言う。ちょっと前までだったら相槌を打つくらいだったなあと。
「へえ、うん、そうなんだ。じゃあ明日から6号車あたりに乗ってみようかな」
「え?」
別にそういうことを期待してどこに乗ってるか言ったわけじゃないんだけど、何か誘導尋問をしたみたいな気分。
「まあ、アレだけど。朝は混んでるからそんな都合よくはいかないかもだけどね。あはは」
「あ、う、うん、そうだね」
笑ってそんなことを言われるとちょっとからかわれたのかなとも思う。それでもそんなことを言われたら、明日からはたぶん、電車に乗ったら彼女を探す自分がいるだろうなあと思った。
そう言えば昨日もそうだったんだけど、今日も高森さんはスカートなんだよね。初めて、あの倉庫で会ったときはそんな恰好だったなあという感じだけど、演劇の授業で会ってからは、ズボン、それに出かけた時を除けばジーパン。
そう一度思ってしまったらなんでなのかやっぱり気になってしまうもの。とはいえ、そんなことは聞くに聞けない。僕的には、その、もちろんスカート姿の高森さんのが・・うん、はい。
「何かあった?」
そんなことを考えながら横目で彼女を見ていたら、やっぱり不思議に思われた。
「あ、いや、別に・・・」
「そう?私になんか付いてた?」
クルっと回りながら一度背中の方を見た後、今度スカートの裾をつまんで見ている。あ、そう、そのスカート自体が高森さんに付いてる、もとい着てることが・・・なんてことは言えず。
「いや、大丈夫だよ」
「??」
その話は結局それっきりでお互いに気になったまま終わった。
× × ×
大学に着いて僕たちはまずは昨日と同じメニュー、ジョギングに始まり柔軟筋トレからの五十音発声・・・一通り終わった後、新しいメニューをやることに。
「五十音もとりあえず一回の復習でいいかな」
「あ、うん」
「じゃあ次はお待ちかねの外郎売りだよ」
練習2日目にしてもう外郎売りをやるんだ・・・。もう少し経ってからかと思ったんだけど・・・。
「・・・大丈夫?」
そんな考えごとをしていたら逆に心配される。「あ、うん、ごめん」
「もしかしてうまく出来るかどうか不安?」
おもいっきり見透かされていました・・・。
「大丈夫大丈夫、私しか見てないしゆっくりやっていこう」
「よろしく、お願いします
高森さんはカバンから外郎売りが全文書かれている用紙を取り出し、僕に渡す。
「はい。ふりがなは振ってないから必要なら随時お願いします。じゃあまずは私がゆっくりやるからそれに付いて・・・えーと、どうしようか?どれくらいの区切りがいい?」
「え、えーと、お任せしますけど」
正直そう言われてもよくわからないのが本音。
「じゃあ始めるね」
高森さんはすーっと息を吸い、外郎売りを始める。
「拙者親方と申すはお立ち会いのうちにご存じの御方もござりましょうがお江戸をたって二十里上方」
え、思ったより長い・・・。
「拙者親方と申すはお立ち、会いの・・・うちにご、ご存じの・・・御方も・・・ござりましょうがお江戸をたって二十里・・・えーと・・・」
「かみがた」
「あ、上方・・・」
「ふりがなふった?」
「え?あ、今から・・・」
つい焦って手に持っていた紙とペンを落としてしまう。
「あっ!」
拾おうとしたら、僕が拾う前に高森さんが拾ってくれた。
「ほら、はい!マイペースに見えて意外とそそっかしいところもあるんだね」
「ありがとう・・・それは初めて言われたかなあ」
「あはは、じゃあふりがなふって、準備出来たら続きやるから声かけてね」
「う、うん」
なんとなく、今までの高森さんとは違いちょっとお姉さんみたいな雰囲気だなあ、と思う。自分に姉はいないのであくまで2次元の話になるけども。
・・・とまあ、最初から前途多難で始まりつつも。
「薬師如来も照覧あれどほほ敬って外郎はいらっしゃりませぬか」
「や、薬師如来・・・も、しょ、しょうらん?」
「しょうらん」
「えーと、照覧あれどほほ敬って・・・ふぅ・・・外郎は、いらっしゃりませぬか・・・」
とりあえず一周、なんとか終わりました・・・。
「はい、お疲れ様だね」
「はあ・・・ホントに疲れた・・・」
「あはは、まあこれも慣れだよ。繰り返しやれば出来るようになるから」
だといいんだけど、こんなに苦戦すると個人的には本当に大丈夫かとも思えてしまう。
「まずはスラスラと言えるようになること、次は見ないで言えるようになること、その次はちゃんと外郎売りの気持ちになって言えることかなー」
それを言われて気がつく。もちろん僕にはまだまだのことだけども、これはただの文ではない、外郎売りという人物がちゃんといて、外郎を売りに来ているというある意味一つの物語になっているんだよね。
ただただちゃんと覚えて言えるようになって、それでゴールなんだと思っていた。ちゃんとした方向に頑張らないと。
「うまく出来るかどうかはわからないけど・・・頑張ります」
「その心意気だね。ふふふ」
練習2日目の最後は結局外郎売り尽くしで終わった。僕がやりつつ教えてもらったり、一緒にゆっくりにやってもらったり・・・最後の最後で我慢出来なくなっていたのかどうかはわからないけど、「一回だけ私だけでやっていい?」という感じで、一度だけ彼女の本気の外郎売りを聞かせてもらった。
前に演劇の授業、最初の方で一度だけ聞く機会があったが、あのときは自分自身がよくわかっておらず、ただただこういうものなんだとしかわからなかった。
けれど今回に関しては違った。別に聞いて欲しいとも言われたわけじゃないけども、僕は彼女に見いった。
彼女が発する単語を一つ一つ、どんな感じで発しているのかとか、どんな感情を込めてるのか、もちろんまだまだ素人だから自分がわかる範囲でだけど、とにかくそんなことを考えながら無我夢中で聞いた。
全て終わったあと、僕は彼女を真剣に見ていたこともあり、目が合う。
「えっと、何かな?」
不思議そうにそう話す。
「いや、ちゃんと聞かなきゃ、見なきゃって思って・・・」
言った後に恥ずかしいことを言ってしまったと思ったけど、まあ言ってしまったものは仕方ない。
「え?」
「ええと、なんていうか・・・うまい人のを見て勉強しなきゃってことだけど・・・」
「・・・あー、そういうことね、そうだね、あはは」
何か少し戸惑ったような言い方、自分が思っていたのと僕の発言が違ったような・・・でもそれが違うからじゃあ何を期待していたのかとか、実際はよくわからないのでそれは深く考えないようにした。
はい、本編は終了!ちょっと変な終わり方になっちゃいましたけどね(^◇^;)
結局最後まで語られなかった美結がスカートの理由ですが、ただ単に荷物を増やしたくないので下に運動着が履けるように、という理由で作者は考えてました(笑)なのでそこまでミニスカートではありませんよ!
演劇回(練習回?)が続きましたが、次回は少し変わります(^_^)v