私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~ 作:かもにゃんこ
今話は練習回から少し外れ、美結ちゃんと由依ちゃんのお話です。
「お疲れ様~!」
「お疲れ~!」
今日は板倉くんとの基礎練ではなくオシブのお仕事。大学の近くで行なったお祭りのメインステージの音響と照明のお手伝い。
今はお祭りも終了、その後の片付けも終わり解散になったところ。
お手伝いをしたメンバーがパラパラと解散する中、私は由依ちゃんを捕まえた。
「由依ちゃん!」
「ん~?どしたの?」
「えっと、ちょっと由依ちゃんと話したい」
特に意識したつもりはなかったけど、少し改まった雰囲気は彼女にも伝わり、歩みを止める。それに他のメンバーも気がつく。
「あれ?由依と美結どうしたの?」
「あ!センパイすいません、ちょっとツモル話があるんで~!」
「そう?じゃあ私たちはお先に」
「はい、お疲れ様でしたー!」
「あ、お疲れ様でした」
遅れて挨拶をする私。
彼らの姿を見えなくなった後、改めて由依ちゃんに断りを入れる。
「なんかごめんね」
「いいよいいよー!」
時間も時間だし手短に済ませよう。
「あのね」
「うん」
「えっと」
「うん」
「・・・その」
「うん」
「・・・」
あれ・・・言葉が出てこない。さっきまではちゃんと頭にあったのに・・・でも決めたんだ、今日ちゃんと由依ちゃんに言わないとって!
でも・・・。
「・・・」
ダメだ、やっぱり言葉が出てこない。言わなきゃ言わなきゃと思うほど何か思い扉があるみたいでそれ以上先に進まない。
・・・言えない?いや、言いたくないから?言ったらダメだから?
何も言えない美結はその場でうつむく。そんな姿を見かねたのか、由依は彼女の肩をポンと叩き話す。
「大丈夫だよ。私はちゃんと待つから。それに今日言えないならそれでいいからね」
ニコリといつもの笑みで話す。
「あ・・・」
そんな優しい彼女に、美結はそれしか言えずにいると。
「よし!今日はやめよう!帰ろう帰ろう!」
「・・・え?」
「ちゃんと美結がさ、私に言いたいこと整理出来てからでいいよ~!それにこんな終わった後じゃなくてさ、ちゃんと時間作った方がいいでしょ!」
そう言い終わった由依ちゃんは足早に歩き始める。そんな彼女に私は一瞬ポカンとし、そして戸惑いつつもその後を追う。
「・・・ちょっと由依ちゃん!あ、もうー、待ってよー」
そう言ったときにはもう私にはいつもの笑顔が戻った。たぶん、今日はもう話さなくていいと、ホッとしたからだろう。
× × ×
正直、もし今日話せたとして、うまく話せただろうか?答えは否だ。話したいことは決まっていたものの、それをどのように彼女へ伝えればちゃんと伝わるのか、はっきり言って決まってなかったと思う。
だから私の方から話があると言ったのに、すぐに話さなくてもいいと私に時間をくれた彼女には本当に感謝しなきゃと思った。
ちゃんと整理して、ちゃんと言おう!
× × ×
それから数日経った日、ちゃんと話したいことを整理出来た私は、オシブの活動の後ではなくわざわざ彼女に時間を作ってもらい、プライベートで会って話すことに。
「やっほー美結~!」
先に待ち合わせ場所に来ていた由依ちゃんは手を振って私を呼ぶ。
「わざわざありがとう」
「いやいや!気にしないでくれたまえ!・・・ってアレ?」
「うん?どうしたの?」
何か気になることでもあったのだろうか?
「今日はいつもの格好じゃないんだねー!」
「いつもの?ああ!これね」
そう、私今日は無地のカットソーにジーパンではなく、(私的には可愛いと思う)チュニックに、キュロットスカート。何故かというと。
「前に由依ちゃんに言われたこと思い出してね。あはは」
「あ~!言ったねーそんなこと!別に全然気にしないのに~!」
口ではそんなこと言ってるけど、いつものだったら絶対なんか言うだろうなあ。
「立ち話もアレだし涼しいところに移動しよ」
「おっけー」
私たちは適当な喫茶店みたいなところに入る。
入って席についてしばらくは、適当な雑談をし時間が過ぎる。話が一段落し少しの静寂が訪れたとき、よし、と少し力を入れて私は話す。
「・・・この前に話せなかったこと、だけど」
「うんうん」
私は真剣になったけども、彼女はいつもの笑顔のまま。
「私ね、前に話した2人と演劇をやることにね、なったんだ」
「へぇ、良かったじゃん!やったね美結!」
由依ちゃんにしてはそこまで驚かないところを見るに、ある程度はそうなると予想していたのかも。
「それでね、やっぱりやるからにはさ、遊び半分じゃなくてちゃんとしたものをやりたいってことになって。まだ決定じゃないけど、11月の文化祭で発表したいって思ってて」
「うんうん、なるほど」
「うん。でもね、後から気がついたんだけど・・・このままじゃ、オシブを兼任じゃどっちつかずになってどっちにも迷惑かかると思うから・・・」
そこまで言って一度止める。まあもう2人には言ってるんだからどうせ逃げられないんだけど、やっぱりいざ彼女へ告げるのは・・・一度息を吐き、覚悟を決める。
「・・・だから、辞め、ます」
言えた。声は小さかったけども、はっきりと。
「・・・演劇をやるって決めた日にはね、辞めるって決めてたんだけどね、やっぱりなんだかんだ言ってもう1年以上やってるし、オシブの活動も楽しいし、それに・・・」
言いにくかったことを言えた私は、重い扉が開いたかのように、思ってることを彼女へと伝える。
「・・・何よりね、由依ちゃんともこれからも友達でいたい、から・・・由依ちゃんがどう思っているかわからないけど、私にとっては本当に何でも話せる一番の友達、だから・・・」
「だから・・・だから、ね、もしね、今まで一緒に頑張ってきたのに急に辞めるなんて言ったらさ、友達でいてくれなくなっちゃうかも知れないと思うと・・・だから部長よりもね、私は由依ちゃんにこの事を伝えたの・・・」
今はもうこれ以上伝えることがないくらい、私は彼女へと想いを告げた。
私の言葉を聞いた由依ちゃんは少しの静寂の後、私の名前を呼ぶ。表示は笑顔で、少しの口調を強めて話す。
「ねぇ、美結!」
「え、う、うん」
「逆の立場だったらどう!?」
「えっ!?」
「うん。私が辞める方でってこと!それも突然いなくなっちゃったりねー。そしたら私のこと嫌いになって友達辞めちゃう?」
由依ちゃんが辞める方?私に言わずにいなくなったら・・・?
「それは・・・」
「うんうん!」
「とりあえず連絡するかな・・・なんで辞めたのか気になるし・・・」
「それで?」
「えーと・・・あ!多分私ならむしろ私からこれからも友達でいて欲しいってお願いするかなあ」
環境が変わったら人脈も変わるし。ほら、進学したら友達じゃなくなったりよくするのと一緒な感じ。
「うんうん!そういうことだよ!じゃあ話し戻して~」
「・・・いやでもさ、それは由依ちゃんだから、由依ちゃんみたいな人とならずっと友達でいたいって思うじゃん・・・」
「嬉しいけど、めっちゃ嬉しいけどさ~、ふふっ、ははは!」
「ええ!?」
何故か笑い出した由依ちゃんに私は戸惑っていると、彼女は私の手を握り、こう告げた。
「み~ゆ!何でそんなこと言うの!私が美結に聞いたんだから私だってそう思ってるに決まってるじゃん!」
「え、ええ?」
「だからねー、私ももし美結からこんな感じに何も言われなかったらさー、絶対これからも友達でいてくれる?って言ったと思うからねー!」
「由依・・・ちゃん・・・」
「私にとってもね、美結は凄い大切な仲間であって友達だから。だから美結がオシブ辞めて別の道に進むってなってもさ、友達辞めるわけ、ないじゃん!」
最後は最高の笑顔で、ニッと歯を見せて笑い話す由依ちゃん。
「あり、がとう、本当に、嬉しい・・・」
どれくらい、本当にどれくらいかはわからないけど、友達ではいてくれないのではないかと思う私がいた。いや、彼女の言葉を聞くまでは心の中はそんな感情で満たされていたのかも知れない。だから本当にその言葉を聞いたとき、言い表せない嬉しさが込み上げ目には涙が浮かぶ。
「なんだよ美結~!美結が泣くんじゃあさ、私、だって、そうなっちゃう、じゃん」
私につられたのかはわからないけども、由依ちゃんも笑顔のまま涙を見せる。
「あはは、なんだ由依ちゃんだって泣くことあるんだ!」
「何よー!私だって女の子なんだからいいじゃんよ~!」
「そうだね!あははっ!」
「笑うとこちゃうやろ~!」
そんな話をしながら、私たちはいつもの私たちに戻っていった。もちろん関係も今まで通り、いや、今まで以上に仲良くなれたかな。
そして改めて、演劇を頑張ろうと心に誓った日でもあった。
由依ちゃん、いい子やなあ(;O;)ただただ友達でいたいと伝えただけでなく、ああいう表現で伝えるって素敵だなあって思います!
・・・って書いた作者自身がナニを言ってるんだって感じではありますが(笑)個人的にはなかなか良くできたお話なんで、楽しんで頂けたなら幸いです(*^_^*)