私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~ 作:かもにゃんこ
「高森さん」
「えっ?どうしたの?改めて」
とりあえず成り行きで某大人気ゲームのグッズショップへ向かうことになった私と板倉くん。そのゲームについての雑談をしている中、一段落ついたところで改めて名前を呼ばれた。
「さっきさ」
「うん」
「一緒にいて楽しいって言われたとき、あのときは高森さんすぐ歩き出しちゃったから言えなかったけど・・・やっぱり、その、普通に嬉しかったかな」
「うん、ありがとう。私も嬉しいよ」
「こういうこと言うと自虐っぽいって思われるかもだけど・・・今までの友達とかも、全部含めてなんだけど・・・一緒に遊んでて一番楽しいかなって思うよ、あはは」
最後に苦笑いでそう話す板倉くん。えーと、私はその言葉になんて言えば正解なのだろうか(笑)
「そう、なんだ、へぇ、うん、ありがとう」
若干ひきつった笑顔でそう言った。心の中では「今までどんだけ話が合う友達いなかったの!」って1人突っ込んだけど。
「・・・まあそもそもね、友達自体が・・・」
私はそこまで彼が話したところで言葉を挟んだ。
「それ以上はいいから!言わなくてもわかるから!」
右手を彼の肩に置いて突っ込み風で止める私。まあ、うん、悲しくなるだけだし。
「ほら、過去は過去、今は今だよ。今楽しければいいじゃん」
わざとらしく決め顔な私。なんか前よりも演技入ることが更に多くなったなあと思う。
そんな私に気がついたのか、板倉くんの返しにも演技が入ってくる。
「高森さん・・・そうだよね、今楽しければ大丈夫だね!」
「そうそう!さあ行こう、みんな(グッズ)が待ってるよ!」
「うん行こう!」
・・・とまあ、電車の中でコントをした私たち。後でチラチラ見られてたことに気がついて恥ずかしかったのはまあ、うん、はい。
× × ×
目的地についた私たち。新規開店からまだ日が経ってないこと、夏休みなこともあり順番待ちをしようやく中に入れた。
「さすが国民的大人気ゲーム、ってところだね」
「だね、こんなに混んでるとは・・・」
とまあ入る前はグチグチ2人で言いつつも、入ってしまえば天国。そんなことは忘れて2人で楽しむ。
「これ可愛い!」
「だね」
「あ、これ面白いね」
「そうだね」
「こっちのぬいぐるみふかふかだよ」
「ほんとだ」
私がリアクションをしてそれに相づちを打つ板倉くんみたいな構図。あれ、なんか私だけ子供みたいに興奮しちゃってるのかな?
そう思ったけどやっぱり楽しいときは楽しい。それに板倉くんだって笑顔で色々触ったりしてるし心の中ではめちゃくちゃ楽しんでそうだね。
そんな感じで店内を廻っていたら帽子が売っているコーナーがあった。
「あ、これって主人公のデザインのやつだよね。しかも一番初期の」
「本当だ。こういうのもあるんだ」
うきうき気分の私はその帽子を手に取り自分で被る、までは良かったんだけど、ついつい興奮してしまった私は・・・。
「こうだよね!『君に決めた!いけ!〇〇〇!』」
帽子を反対向きにしてそう言いながら手に某ボールを持った感じで、少し大きめな声とモーションで某主人公のマネをしてしまった。
「あ・・・」
やった後、恥ずかしさに気が付いた私はそのモーションのまま固まる。小さい子供なら可愛いで済むかも知れないけども、大学2年生がやるのは恥ずかしい以外なんでもなかった。
・・・まあ、人もかなり多いしこんな場所ではあったので周囲からは何も思われなかったみたいだけど、ついうっかりとはいえ板倉くんの前でこんなことをしてしまうとは・・・。
「今のは見なかったことに・・・」
彼は別に変な反応とかはしてなかったけども、私は帽子を前にかぶり直し、少し深くかぶりひさしで自分の顔を隠しながらそう言った。穴があったら入りたいとはまさにこういう状況の時に使う言葉なんだろう。この状況をどう切り抜ければと思ったら。
「えっと・・・ごめん」
「・・・え?」
思わず顔を上げる。え、なんでごめん、なの・・・?
「あ、いや、ね・・・心に中では『子供の頃はいっぱい僕もマネしたなあ!』って思ったんだけど・・・その、高森さんにすぐ反応出来なくて、すぐ反応というか、ツッコミというか、そういうのが出来ていれば、って意味のごめんで・・・」
その言葉を聞き、私は思わず目を丸くする。
「ちゃんとすぐにノれるように頑張るから」
あー・・・なるほど・・・。
「あ、いや、別にそういうの大丈夫って言うか、無理してそんなのやる必要ないからね。私的にはさ、自然な方がいいというか、あはは」
「でも、やっぱり一緒にいるなら楽しい方が良かったりする、でしょ?」
うん、そりゃそうだけど・・・でもそういうのはなんか違う気がする私。無理してまで偽りの自分を演じては欲しくないっていうか、ね?
「うーん、まあそりゃそうかも知れないけど、今でも私は十分楽しいと思うし、無理にそうしようと思わなくて自然のままでいいと思うよ。あ、もちろん演劇のときはしっかり演じてもらわなきゃ困るけどね、あはは」
最後になぜか演劇の話を突っ込むのは私らしいというべきか(笑)
「そうなんだ」
「うん、大丈夫だよ」
「いや、なんていうか・・・前に、高校の頃に『ノリが悪いなあ』とか『面白くないなあ』って言われたの思い出して・・・」
「あー、それなんか私の言われたことある気が・・・過去の傷が・・・」
今でもそこまでノリがいい方ではないけど、前は本当に絵に描いたような真面目ちゃんだったなあ。ノリで突っ込むところで真顔で否定したり、あの頃は・・・う、思い出すとなんか恥ずかしくなる・・・。
「高森さんも・・・?」
「うん、そうそう。前ほどでもないけど、私もどっちかっていうと陰キャだから『ウェーイ!』みたいなリア充陽キャみたいな感じのノリは必要ないよ。板倉くんもそうでしょ?」
「確かにそうだね」
× × ×
「結構色々買ってしまった・・・」
最初行くときは見るだけと思っていたけども、やっぱり実際お店で色々見てみると買いたくなってしまうもの。
「まあ、えっと、自分へのご褒美と思えば・・・」
「ご褒美・・・でも私別に何もしてないし・・・」
「あー・・・あ、ほら、僕に色々基礎から教えてくれたし」
「あー、なるほどね。ってそれなら板倉くんがおごってくれてもいいんじゃないの?」
「え、あ、そう、なの?」
あ、これ本気にしちゃうパターンだ。
「さすがに冗談だよ」
「だよね、良かった」
本当にホッとしているところを見ると少し信じてしまっていたのだろう。彼には少し気をつけなきゃと思いつつ、冗談でからかうのも面白いと思うからなあ。
「あはは、さすがにね・・・って、雨・・・?」
グッズショップが入っている複合施設から出ようと出口から外を見たら、どう見ても雨が降っていた。
「え、ウソ、朝はあんなに晴れてたのに」
「一応夕方から雨降るって天気予報では言ってたよ」
私が戸惑うその横で、冷静にそう言う板倉くん。
「あー、朝晴れてるから大丈夫だと思ったんだけどなあ。そう言えば実家にいるときは親が『今日雨降るよ』とか出かける前に言ってくれてたりして・・・今思えば助かってたんだなあ」
実家を離れてからは当たり前だと思ってたことが、そうじゃなかったことだと実感することは多い気がする。
「確かにそういうのあるかも、ね。親が天気予報とか見てて自分もなんとなく見ることもあるし」
「あー、それもあるかも・・・」
・・・それはさておきどうしたものか。板倉くんは雨が降ることを知ってわけだから傘は持っている・・・一緒に入るなんて考えが頭を一瞬よぎったがそれはさすがに。
とりあえずいつ止むのがわかれば・・・とスマホで天気予報を調べるが、無情にも夜遅くまで雨予報に。仕方ない、そんなに強くはないし、駅までそんなに距離があるわけじゃないし濡れるか・・・。そう思っていると板倉くんが口を開く。
「高森さん傘持ってないんだよね?」
「う、うん」
持ってないとは言ってなかったけど、あの話でだいたい推測は出来るだろう。
「僕の傘使っていいよ?これくらいなら濡れてもいいし」
「え!いいよ大丈夫大丈夫。これくらいなら濡れてもいいのなら私も一緒だから」
「いや、その、女の子、なんだから・・・はい、使って」
少し恥ずかしそうに彼はそう言いながら私に傘を渡し、そのまま外へと出ていく。
「あ!待ってよ!」
彼のその言葉に私は色々思うことがあったけど、私はすぐに彼を追いかけそして隣に並び無言で傘を差した。
「え・・・いいよ、大丈夫だって」
「私も大丈夫で板倉くんも大丈夫ならさ、じゃあ差さなくてもいいじゃんってことだけど、でもせっかくあるんだから。だから2人で入れば問題ないでしょ」
恥ずかしさを押し切るためにそう私は言い訳をする。言った後何を言ってるんだと思ったけど。
「いや、まあ・・・」
「ほら、離れちゃうと濡れるよ?」
「え、でも・・・」
「じゃあ私から近づいちゃうよー!」
そう言いながら私はほとんど隙間がないくらい、肩を近づけた。
正直恥ずかしくはあったけども、彼の優しさに心が満たされていた私は、もっと満たされたい、もっと近くにいて欲しいという気持ちがその恥ずかしさを上回りそんなことを言えたり、そんな行動が出来たのだろう。
その時は考えてなかったけど、まあ結局、最寄り駅から家まで帰る間は濡れたんだけどね。もちろんその時も貸してあげようかと言われたけどさすがにそれは断りました。
という感じで3話に渡ってお届けしたおでかけ回はこれにて終了です('ω')ノ
一応補足になりますが、美結は最後の最後まで気持ち的に高ぶっていた、結構テンションは高かった、だから勇人くんと別れるまで相合傘をしたけども気まずい感じではなかった、という感じ。まあ、家について現実に戻されてからは・・・はい、察してください(笑)
次回は少し飛んで、いよいよ9月になり、裕美子ちゃんが合流します(*'▽')