私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~ 作:かもにゃんこ
インパクトってなんでしょうかね?インパクトのある内容なんでしょうかね?(笑)
柴田さんと高森さん、2人の意見の言い合いを僕はただその場で静かに見ているしかなった。正直、一番は驚いた。知り合ってからそんなに経っているわけじゃないけども、基本的には2人とも仲のいい印象だったから。あんな風に厳しい口調や表情で言い合うとは思っていなかったから。
それでもそんな2人を見て僕は思う。ちゃんとお互い意見を出してお互い納得した上で決めていくことは大切なことなんだと思う。僕は自分の意見を言うなんて到底出来ないことだから、2人で決めてくれたら、って思っていたのだけど・・・。
「どうかな裕美子ちゃん、これが私の言い分だよ。これを踏まえた上で改めて何かあるかな?」
さっきの厳しい口調から、またいつもの高森さんに戻る。それに呼応するようにというわけじゃないかも知れないけど、柴田さんも柔らかな表情へと戻る。お互い自分の意見を言ってすっきりした感じなのだろうか。
「そうだね、うーん・・・少し考える時間が欲しいかなあ」
「っと、それと・・・」
そう言いながら僕の方へ視線を移動する。これはもしかして・・・。
「せっかくだしハヤトくんの意見も聞いてみたいな!今の私と美結ちゃんの意見を踏まえた上でどうかなって。ハヤトくんも一緒にやっていくわけだしねー」
いつのも明るい表情に戻りそう話す。ええ・・・いきなり振られてもなあ・・・。
「あ、それ私も聞きたいかも。私たちだけで話し合って決めるのじゃなんかね」
高森さんも。これは・・・。
「うんうん、そうそう!」
「だよね」
さっきまであんな厳しい表情で言い合ってたのに、もうなんかいつも通り仲良い感じに戻る2人。やっぱり女の子って何を考えてるのかよくわからないなあ。
「う、うん、わかった。えっと・・・」
僕は考える。うーん・・・。
「思ったことでもいいからさ。本当に何でもいいよ」
考えていると思いがけずそんなことを言われる。僕が思ったことは・・・。
「正直、素人だからよくわからない、っていうのが一番だけど・・・」
2人はうん、と頷き僕の次の言葉を待っている。
「素人だからこその意見、素人目線で、って感じになるけど・・・知らない物語よりかは、知っている物語の方が興味が沸く、かな」
自分の一言でもし決まってしまうんじゃないかと、言いながら少し思い、若干2人からは目を逸らす。
「ということは美結ちゃんの意見を推す、ってこと?」
「まあ、うん、そう、なんだけど・・・」
そこで歯切れが悪くなったのは理由があった。確かにパッと思ったことはさっき言った通りだったけれども、少し考えると、仮に素人目線でも何個も意見があるな、と思ったから。
「えっと、板倉くんの言い方的に、何かまだ言いたそうな感じだけど・・・」
高森さんは察してしまったようで、いや、僕にとってはそう言ってくれた方が意見を言い易くなったから良かったかも知れない。僕は続ける。
「興味がない人でも、知っている物語の方がいいというのも、ちょっと違うかなって。逆に『なんだろう?』って思わせる方が、その『なんだろう』っていう疑問がきっかけで興味を持ち始めるかも知れないし、っていう感じかな」
2人はなるほどと言う表情を浮かべる。そして高森さんが口を開く。
「えっと、つまりどっちもメリットがあって、どっちも正しいかなってこと?」
「えーと、うん、まあ、そういう感じ、かな・・・」
言った後思った。そんなこと言ったら余計にややこしくなっちゃうような気がするなあ、と。でもそんなことを思ったのは杞憂だったようで。
「あ、なるほど!」
突然、柴田さんはそう声を上げる。
「どうしたの裕美子ちゃん?」
「あ、いやね?今までのみんなの話をまとめるとまずインパクトが大事ってことなんじゃないかな!?」
「インパクト?」
「うん、ちょっとうまく説明出来ないかもだけど・・・台本選びよりも宣伝の仕方とか、演出の構成とか、とにかくどーん!!って感じでやれたらどんな人にもいい印象というか、楽しんでもらえるというか、うまくいくんじゃないかなって思って!」
かなり抽象的な表現だけどもなんとなく言いたいことはわかるような気がしないでもない。
「それでまあ、台本選びに関しては美結ちゃんの意見でいいかなって。なんていうか美結ちゃんが言ってた『6年間演劇部をやってた』っていう言葉を信じてみようかなって思う。私はわからないけど、きっと少ない部員をうまくやりくりしたり、部員集めにも試行錯誤してやってたのかなって思うとやっぱり信じたくなるかなー!」
そう言えばちょっと前に、3人くらいでの舞台を経験したって高森さんが言ってたの思い出す。きっと柴田さんもそれを思い出し、今の言葉を言ったのだろう。そんなことを考えた僕はつられて発言する。
「僕も全く同じ意見だよ。やっぱり経験値がある人は、違う、っていうか」
そんな言葉を聞いた高森さんは少しびっくりしたみたいで最初はポカーンとしてたけども、すぐにキリっとした表情に変わる。
「裕美子ちゃん、板倉くんも、ありがとう。私も2人の意見信じて頑張らなきゃね」
「頼んだよ美結ちゃん!」
「うん、ありがとう!・・・っていうか、こんなに早く裕美子ちゃんが自分の意見を折れるなんて思わなかったから驚いちゃったっていうかね、あはは」
あ、それ僕も思った。しばらくバチバチとした感じになるのかなって思いました。
「あー、いや、うん。私もね、ちょっと自分勝手な意見言い過ぎたかなって思って。普通に考えたら美結ちゃんベテランだしねー!」
「ううん、そんなことない。私の意見が絶対って言うのはないし、裕美子ちゃんの意見も正しいって思うから。これからも何かあればどんどん言ってくれたら嬉しいよ。あ、もちろん板倉くんもね」
「え」
「だね~!女子だけだと偏っちゃうこともあるから男の子の意見も大事だよね」
「そうだね」
「あ、う、うん・・・」
2人とも笑顔で言うものだから余計にどうすればいいの、って感じになる。後笑顔で言われるとって無理強いされてるみたいでちょっと怖・・・いや、なんでもないです。
「じゃあそんな感じで決まりだね。で、その台本なんだけど・・・」
高森さんはカバンから何やら冊子を取り出す。
「事前に調べて来ててね、何個か候補はあるからその中から選んでくれればいいかなって」
「おお~!準備がいいね、さすが美結ちゃん」
自分も同じことを思ったと同時に、ちょっと違うことも思い、それをついつい口に出してしまった。
「でもそれって、持って来たってことは、どんな意見でも振り切って自分の意見を通そうと思った、ってこと、だよね?・・・って、あ・・・」
ぼそぼそって独り言のように言った後、あっと思い口を紡ぐがもう時すでに遅し。
「あ、いや、これは・・・」
「なんだ板倉くんもちゃんと自分の意見言えるじゃんね」
「だねー」
「いや、これはそういうのじゃないと思いますが・・・」
「あはは、ごめんごめん、ついついからかいたくなっちゃって。いや、ね、正直2人とも反論はないかなって思っててね、別にそれ以外に深い意味はないよ」
あー、なるほど。確かにそれは高森さんなら思いそう。
「そかそか!なんかゴメンね美結ちゃん!」
「ううん、いいのいいの。まあとりあえず持ってきたの見てみて。良さそうなのあるかな?」
そう言われ2人で拝見。日本の昔話から、グリム童話など、およそ10点くらい持ってきている。
「へえ、こういう物語系の台本ってどういうところにあるの?まさか美結ちゃんが全部?」
「いやいや、さすがにそれはないよ、あはは。こういうのだけってわけじゃないけどね、普通の人が書いて投稿された台本があるサイトがあってね、そこから。ほら、一番下に」
と言われ僕と柴田さんはそこを見る。
「あ、そういう感じなんだね」
「ホントだ。使用するときはそのサイトの管理人さんにお金払うんだねー」
「うん。後は思いっきり改稿とかする時はサイトと、作者の許可が必要だったり。まあこれについてはこっそりやれば・・・」
「ちょっと美結ちゃん!思っててもそういうこと言っちゃだめ!」
とまあ、高森さんらしくない(?)そんなコントみたいなことを挟みつつ、3人で台本を選ぶ。
「人数的に4人とかのもあるけど大丈夫なの?」
「うん。改稿すれば問題ないよ。さすがに改稿しても出来そうにないのは今日も持ってきてないし」
「じゃあ私はこれやってみたいなー!」
そう言いながら柴田さんが選んだのは「ヘンゼルとグレーテル」だった。
「なんていうか、話の芯さえちゃんと守れば肉付けはいくらでもアレンジしても大丈夫そうかなって!色々やりがいがあって楽しそうかなって感じー」
「あ、それは私も思ってたよ。持ってきた中でもヘンゼルとグレーテルは結構おすすめだったしね」
「じゃあこれでいいかな!・・・って置いて行っちゃいそうになっちゃった!ハヤトくんはどう?」
「えーと・・・」
正直僕はどれでもいいかなっていう感じだった。まあ、女の子ばっかりの物語になって女役とかやらせれるのはちょっと、って思ったけどこれなら問題はなさそうかな。
「・・・うん。いいと思う。知ってる話だしとっつきやすいかなって。それに2人が言うなら文句ないよ」
最後は本音がちょっと出ちゃったけど。
「そっか。じゃあこれで決まりでいいかな」
「うん、おっけー!」
と言うわけで、11月の文化祭に僕たちがやる演劇は「ヘンゼルとグレーテル」に決まった。
そこからは今度の予定や3人の都合等の確認し、スケジュールの調整を行いいつも通りの時間になったので今日は解散となった。
「いつもこの時間で終わりにしてるから今日はここまでで。まだ焦る時期でもないし解散でいいかな」
「大丈夫だと思うよ!時間はまだあるもんね」
「じゃあ今日は終わりにしようっか。明日はまずこのままの台本の読み合わせから始めよう。それと簡単に基礎練、運動とか発声もやろうと思うけどいいかな?」
たぶん柴田さんにそう言ってるのだと思うけど、一応僕も無言で頷く。
「うん、いいよ!基礎練も大事だもんねー!着替えとか持ってくるね!」
そんなこんなで3人揃った活動の初日は終了した。今までは基礎練習だけだったけれど、舞台に向けた練習が始まり、2人に付いて行けるように一層頑張らなきゃいけないと思った。
勇人くん目線でお届けした後半戦、いかがでしたでしょうか?少し静かな男の子と、女の子2人の会話と言うか意見交換の場はこんな感じになるよなあ、勇人くんちょっと可愛そうだなあ、と思いながら書いてました(笑)
後書いてて思ったのはまだちょっと裕美子ちゃんのキャラがつかめてない作者です( ;∀;)