私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~ 作:かもにゃんこ
なぜ2人は戻ってきたのかを、勇人くん目線でのお話からスタートします!
高森さんを1人残し、僕は柴田さんと一緒に家路に着く途中。あまり2人だけで話したことはなかったけど、明るい彼女の性格もあり特に気まずくなるようなこともなく、駅まで着く。
とそんな中、少しの間が空いたときふと柴田さんが呟く。誰に言うわけでもなく。
「美結ちゃん頑張ってるかなー」
そんな彼女の言葉に僕も高森さんのことが頭に浮かぶ。
大丈夫と言われた手前、2人ともそのまま帰ってしまったけども、彼女だけにやって貰うのも悪いなとも思った。まあ、もちろん、特に僕は何か出来ることがあるかって言われたら、って感じではあるけども・・・。
「美結ちゃんってさ、少し大変なことでも結構1人でやろうとしちゃうこともあるかなってちょっと思ってねー!」
黙っている僕に続ける柴田さん。
言われて見ればまあそうかも知れない。演劇の授業のときも自分が経験者だからと言ってある程度のことは自分で抱え込んでやろうとしていた。
もちろん、高森さんだけになんでもやって貰うことは悪いとはみんな思っていたため、全部抱え込んでやっていたわけじゃないけど。
「そう言われるとそうかも・・・」
「だよね、ハヤトくんもやっぱり思ってたんだ」
じゃあ今回はどうなのだろうかと。僕は考える。抱え込んでいるかどうかははっきり言ってわからない。わからないなら・・・?
「あの、僕、大学戻るよ」
わからないならいい方に転ぶ方を選ばないと・・・それに、ただ単に自分も台本の改稿を手伝いたいとも思ったから。
「だよね、私も同じこと思ってたよー。戻ろ戻ろ!」
柴田さんは僕の言葉に特に驚いたりすることもなくそう答えた。
「なんかああ言った手前言い出しにくくてね~!ずっと私もどうしようどうしようって思ってたからハヤトくんから言ってくれて良かった~!」
「そうだったんだ、早く言ってくれたら・・・」
「お互い様じゃん!」
痛いところを突かれた・・・。
「あはは!まあ本当は本当に美結ちゃんだけで難なく出来ちゃってるかもだけどさ、やっぱりなんか悪いもんね!それにせっかくなら、自分も役者で出るんだからやってみたいって思ったからね!」
笑顔でそう話す柴田さん。まさか自分と同じことを考えていたとは・・・。
「僕も実は、似たようなこと思っていたり・・・あはは」
「ホント!?じゃあ迷うことないね!どこかでテキトーにお昼買って早く戻ろう!」
× × ×
「え!?裕美子ちゃん!?それに板倉くんも!?え?え?どうしたの!?」
突然戻ってきた2人の姿を確認した私は普通に驚いた。
「ちょっとそんなに驚く~?ねえ、ハヤトくん!」
「うん、まあ、あはは」
2人はそう言うけども、普通に驚くでしょ!まあそれはそうと、どうして戻ってきたのだろう?気になる私は普通に聞いた。
「・・・えっと、なんでまた?」
「あー、うん!かくかくしかじか・・・」
ざっくり言うと私のことを心配してくれたということ、2人もせっかくなら改稿を手伝いたいということだった。
それを聞いた私は、普通に嬉しかったのと、追い返してしまったわけではないけども、理由も聞かずに大丈夫と言ってしまったことに後悔した。
裕美子ちゃんが手伝いたいって言ってくれた時にはきっと今言ってくれたようなことをその時すでに思っていただろうし、きっと板倉くんも。なのに私は彼女らの気持ちも聞かないで意地を張ってしまった。しかも結果的に私1人でうまくいってなかったことを考えると・・・。
「あー・・・うん、なんかごめん」
「ううん!別に大丈夫だよ!私も板倉くんも全然イヤイヤ戻ってきたわけじゃないもの」
「そっか・・・というかね、さっき私、2人が戻って来てくれたらって実は思っていて、あはは・・・」
苦笑いで私はそう話す。なんか意地張った割にそんなこと思うなんて恥ずかしいよね。
「え、それはどういう・・・?」
「あ、うん。実はさっき2人が出してくれた意見をね、メモしてなかったりして、それで・・・」
「そうなんだ。美結ちゃんそういうのしっかりメモってそうだと思ったから意外かも」
「それ僕も思った」
2人ともちょっと驚いた表情で頷く。
「あはは、しっかりしてそうで意外とざっくりしてるんだよね。自分で言うのもなんだけど、他人からも結構言われるし」
「そっか~!じゃあ私とハヤトくんでフォロー出来るところはちゃんとしないとね!」
裕美子ちゃんはそう言いながら板倉くんに視線を送る。それに反応する板倉くん。
「あ、うん、あんまり力になれるかどうかはわからないけど・・・出来るだけ頑張ります」
その2人の言葉は正直、私には嬉しかった。何かと一人でやりがちになってしまう私だけど、彼女らにはこれからはちゃんと頼っていこうと改めて思ったから。
そんなわけで合流してくれた2人に感謝しつつ、台本改稿へと戻る。メインは私がやりつつ、詰まってしまったり意見がある場合は、フォローしてくれるみたいな感じで進めていく。
「私はこれでいいかなって思うんだけど2人はどう?」
「んー、私はこっちのがいいと思うよー」
「そうだね・・・それにこれを足したらどうかな・・・?」
「あ、それいいかも」
「私の意見は採用されないんだね!ううう!」
「さっきのところは裕美子ちゃんの意見でまとめたよ」
「あ、ほんとだ!良かった~!」
× × ×
「終わった・・・」
「終わったねー・・・」
「だね・・・」
夏とは言え、窓の外はすっかり暗くなっていた。時計を見ると19時、なんとまあ6時間近くこの作業をやっていたことになる。途中途中少し息抜きをしたりはしたけども、割とぶっ続けでやっていたかなあと。それでもそんなに大変だと思わず出来たのは、きっと一緒にやってくれた2人のおかげだと思う。
「2人とも本当ありがとう。たぶん・・・いや、絶対私だけじゃ今日中に終わらなかったし、こんなにいい感じで出来なかったと思うよ」
改めて2人へ感謝。気の知った仲でもやっぱりこうやって感謝を口にすることは大事だと思う。
「3人でやるんだから当たり前のことをしたまでだよ~!むしろ私こそ楽しかったし、ありがとうだよ!」
「僕も同じく、かな。普通に楽しかった、から」
「良かった。無理にやってもらうんじゃなくて、そういう感じでやってくれたなら私も嬉しいよ。じゃあとりあえず今日は終わりにしよう。お疲れ様」
簡単に挨拶をした後、私はまだ運動着から着替えてなかったため、トイレへ着替えに行った。着替え終わりトイレを出ると出口のところで裕美子ちゃんがいた。
「あれ?どうしたの?」
「あのね美結ちゃん!」
改まってはいるが笑顔の裕美子ちゃん。板倉くんは近くにいない、察するに私だけに何か伝えたいことでもあるのだろうか?
「今日ね、美結ちゃんのところに戻ろうって最初に言ったのハヤトくんなんだよ~!ちょっとびっくりしたでしょ!」
「ええ、そうなの!?てっきり裕美子ちゃんからだと思った」
彼女の言う通り、私は驚いた。
「うん!手伝いたいって思ってたのはずっと思ってたんだけどね、大丈夫って言われて帰っちゃった手前、なんとなく戻ろうって言い出せなくて。本当に戻って美結ちゃんに本当に迷惑だったらどうしようって思って」
「そっか。私もなんかごめんだね」
「ううん!それで私が迷ってたらハヤトくんの方から言ってくれて。なんて言うか美結ちゃんの口ぶり的に、私のおかげでみたいな感じになってたからなんか悪いなーって思ってね。そんな感じ!とりあえずハヤトくんも待ってると思うから行こ!」
そう言いながら彼女は小走りで歩き、私もそれに着いて行った。
彼が自分から言ってくれたのはきっと私を演劇を一緒にする「仲間」として見ていて、私のことを心配してくれたからだろう。それでも私は、もし少しでも別の感情で私のことを心配してくれてることがあったらと思うと、勝手に私の心は満たされていった。
途中いきなり視点が変わったこともあって「おや?」って思った方もいるかも知れません('Д')個人的にはこういうのは割と好きなので、これからもちょいちょい取り入れていくと思います(^^)/
美結ちゃんも最後の方に思ってましたが、果たして勇人くんはどっちの感情で突き動かされたのかが気になるところですね!果たして・・・?
では、また次回お会いしましょう!