私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~   作:かもにゃんこ

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どうもかもにゃんこです!

さて、6話に渡ってお届けした、演劇回が今回で一旦終了です('ω')ノ

前半少し恋愛系の話、中盤から後半はさっそく稽古のお話という内容です。


「オーディション、じゃなくて良かったね」

「美結ちゃん、おはよ!」

 

電車から出てホームを少し歩いたら、後ろから名前を呼ばれた。呼ばれた声に振り向くとそこには裕美子ちゃんがいた。

 

「あ、おはよう裕美子ちゃん」

 

私が少し不思議そうな表情を浮かべていると、察したのか私の心を見え透いたのか、私の考えていたことを言われた。

 

「なんで同じ電車なの?って思ってるでしょ?」

 

「あー、うんまあそうだけど」

 

「なんか美結ちゃんもハヤトくんも先に着いてて私だけいつも遅れてたからさー、それなら思いきって同じ電車の時間にしてみたんだ~!」

 

補足になるけど、裕美子ちゃんが昨日まで遅刻してたわけじゃない。要は私と板倉くんが同じ電車で自分より早く来ててどうせなら同じ時間に到着しちゃおうと言うわけだろう。

 

「そうなんだ。別にそんなことしなくても大丈夫だけど・・・」

 

「あはは、たかが10分くらいだしねー!もうこの時間が集合時間ってことでいいんじゃないー?」

 

なるほど、まあそういうことにしよう。

 

「そう言えばハヤトくんはどこかなー?」

 

「あ、たぶんいつも通りなら前にいると思うよ。ここ(ホーム)だと人多くてわからないことが多いからいつも改札出たあたりで後ろ姿が見える感じかな」

 

「へえ~!」

 

私の話を聞いた彼女はそう答えただけであったが、顔はニヤついていた。

 

「えっと、何かな?」

 

気になった私はついそう聞いてしまう。

 

「いやねー、2人って仲いいよねっ!なんか相性も良さそうな感じかな!実は私に隠してるけど、付き合ってたりするのかなー?」

 

「へっ・・・?」

 

突然、そんなことを言われたものだから驚く。

 

「・・・っと、そんな表情ってことは付き合ってるわけじゃあないんだねー?なんかゴメンゴメン!変なこと聞いたりして」

 

「あ、うん。別に私は大丈夫だけど」

 

声色は落ち着いていたけど、内心ドキドキしていた。いざ改めてそんなことを言われると、突然意識をし始めてしまう。初めて会った日のこと、初めて一緒に練習をした日のこと、2人で映画を見に行った日のこと・・・あ、ヤバい、隣に裕美子ちゃんがいるのに私の乙女心がどんどん溢れていく。

 

「美結ちゃんもしかして・・・」

 

私のただならぬ雰囲気で察したのか、そんなことを言う裕美子ちゃん。その言葉に続くのはどう考えても・・・。

 

「えっと・・・」

 

・・・いや!抑えろ私!これ以上このことで話を膨らませてしまったら、余計に感情が爆発してしまう。そんな状態で当の本人に会ってしまったら練習どころじゃなくなっちゃうから。

 

いつも通り、ふーっと一息吐き、心を落ち着かせる。

 

「もしかして、何かな?」

 

「え?アレ?違うの?え?ええ?」

 

私が急に元通りの感じに戻ったものだから、裕美子ちゃんは戸惑う。

 

「うーん、まあ、ご想像にお任せしようかなー」

 

私はそう言いながらニコっと笑い少し歩くスピードを速めた。

 

「ええ~!?ちょっと!美結ちゃ~ん!」

 

 

今日から立ち稽古を始めると言ってもとりあえずいつも通りの基礎練は行う。地力を付けるというのももちろんだけど、やっぱり体を動かして声を出してから稽古をする方がうまくいくからね。

 

ちなみに稽古のやり方は授業の時とは違い、一場面一場面をじっくりやる方法に。時間はそれなりに余裕があるため、同じ場所を繰り返し練習する方が1回の稽古で覚える量も減るし、効率がいいという判断。もちろん後半に進むにつれ、場面場面を繋げ、最後には通し稽古もするけど。

 

発声を一通り終え、小休憩を挟みさっそく準備を始める。

 

「舞台のサイズ的にこれくらいから机下げればいいかなー?」

 

「もう1つくらい後ろからのがいいんじゃない?」

 

「おっけー!」

 

まず適当に机を下げ、練習場所を確保。続いて場見る。実際にやる談話室のサイズを基準に、上手と下手のはけ口を考慮したサイズ、と言う感じ。

 

私はビニールテープを取り出し四隅と真ん中に印を作っていく。

 

「こんな感じでどうかな。曲がってない?」

 

「うん!大丈夫だね!」

 

「大丈夫だと思う」

 

2人の了解を得たのでこれでOKだね。

 

「あ、そういえばさ!」

 

「うん?何?」

 

「本番の時はせっかくだからって舞台作ってやりたいって美結ちゃん言ってたでしょ?アレって結局どうするの?」

 

「うん、一応そのつもりではいるけど」

 

一応、いわゆる舞台の高さを作るものは元演劇部の倉庫にはあったのは、「あの時」と模造刀を身に行ったときに確認している。ただまあ、木材を組み合わせて作ったものだったし、そもそも何年前に作ったのかわからず劣化してて使えない可能性もあるから。使えないとなると、どうするか、という感じになってくる。

 

そんなことを簡単に伝える私。

 

「そんな感じ。また時間あるときにでも確認してみようかなって」

 

「そかそか!うん、わかった!」

 

そしてさらにせっかくなら舞台の背景も設置出来たら、とも思っている。ただの壁よりも雰囲気出るしね。まあ、これはまだ計画段階だけど。

 

準備も出来たところで早速最初の場面からスタート。

 

「じゃあ裕美子ちゃんの導入の語りから、私の1人芝居の途中の、キリがいいところまで、をまずやろうか」

 

「はーい!」

 

「まず裕美子ちゃんがそこ(下手少し真ん中)で語って、で終わったら一度暗転、私が舞台中央に移動して明転後1人芝居の途中まで、って感じで。じゃあ裕美子ちゃんよろしく」

 

私の言葉にまず裕美子ちゃんが舞台へと上がる。

 

「語りだし、そんな難しく考えなくて・・・って裕美子ちゃんに言うセリフじゃないか」

 

正直こういうセリフだけの演技に関しては彼女のが得意だろうしね。

 

「なんか美結ちゃんにそう言われると普通に嬉しいかも!よし、頑張ろう!」

 

「じゃあ、1,2,3、で手を叩いたら始めね。1、2、3・・・」

 

パン!!っと叩きスタート!

 

「・・・むかしむかし、ある深い森のはずれに貧乏な木こりとその奥さん、そして2人の子供たちで暮らしていました」

 

さすがは裕美子ちゃん。まるで本当の声優さんがやっているかのような演技力。夏休みを挟んでさらに力をつけている感じだと思った。

 

そんな感じで感心しながら聞いていたらあっという間に終盤に、私も移動して準備する。

 

裕美子ちゃんの語りが終わると暗転からの明転。練習では口で言う。

 

「暗転!1、2、3、4,5・・・明転!」

 

明転(という体)後、私の一人芝居。まあ、私がいくら経験者と言えど、さすがに最初は手探り。こんな感じかなと自分で思った通りにやりつつ、2人の意見も聞いて仕上げていく感じが良さそう。

 

「はい、じゃあそこまで!」

 

私が出ていることもあり、最後の合図は裕美子ちゃんの方でやってくれた。

 

一通りやった後は、ダメ出し・アドバイス等で確認。そして意見が出そろい、役者が準備出来た段階でもう一度その場面を稽古。いつもは演出が納得するまでこの繰り返しではあるけど、今回に関しては人数も少なく特に演出も設けているわけではないので、全員で納得出来た段階で一旦終了、次の場面へ・・・その繰り返し。

 

「じゃあ次の場面行ってみよっか。次は一人芝居の続きから、ヘンゼルとグレーテル登場からのその場面終了までね」

 

まず途中から出てくる2人の立ち位置や動きの確認。

 

「上手と下手どっちがいいかなー?」

 

「下手の方がいいかな。上手の方が感覚的に目立ちそうだし」

 

「あ、言われてみればそうかも!」

 

ちなみに補足だけど、歌舞伎や落語などで、身分の高い人が上手に座り、低い方が下手に。あと家のセットとかでも下手(舞台左)に玄関が、上手(舞台右)に座敷がって感じで家主や身分の高い人が位置することになるらしい。そういう意味でも子供たちが下手から、っていうものある。

 

続いて動きの確認。そこまで動きをつける場面ではないこともあり、簡単に。

 

そこまで決まったところで私は板倉くんにアドバイス。

 

「変にうまくやろうとか、しっかりやろうとか思わなくて大丈夫だからね」

 

「え?あ、う、うん」

 

「ほら、緊張もほぐして。失敗したって全然大丈夫だから。楽しくやろう」

 

最後に笑顔で、前の日に裕美子ちゃんが言ってくれたことを私は言った。彼もその言葉を聞いて少し楽になったのか、ニコっと笑ってくれた。そのいい流れでさっそく、稽古をスタート。

 

 

「はい、終了、だね」

 

「あぁ~~~!!」

 

1度目終了と同時に裕美子ちゃんが何かいきなり悔しそうに叫ぶ。隣にいた、板倉くんも驚くくらいな感じで。

 

「どうしたの?」

 

さすがにそんな態度に気になった私は尋ねる。

 

「あー、ごめんごめん!昨日のキャラ設定で決まったことを含めて、なんか自分でいっぱいイメージしたはずなのに全然うまくいかなかったなあって。美結ちゃんから見てはどうだったかな?あんな感じじゃ違うよねー」

 

「えっと・・・確かにちょっとキャラクター設定で決めた『グレーテル』とは違ってた感じかな、とは思うけど」

 

「あ~、そうだよねえ!ああ、失敗しちゃったかー・・・」

 

「えっと裕美子ちゃん」

 

1回目でうまくいかなくたって大丈夫だよ、と私は言おうと思ったが、躊躇した。だって今更裕美子ちゃんに言ったって、そんなことわかっている。あの悔しがり方、彼女は何かとんでもない目的に持って1回目に臨んだのだろう、と。

 

そこで私は気が付いた。彼女の夢は声優だ。私も詳しくはわからないけども、きっとクラスを上がっていくためのテストや、それ以上に行くためのオーディションであったりは一発勝負なんだ。彼女はそれを想定して今日に臨んだんだ。

 

こういう、たかが趣味でやっているような練習にも、彼女は常に全力で、本気で取り組んでいるんだ。それだけ気持ちが強いんだと、私は再度認識をした瞬間でもあった。

 

「オーディション、じゃなくて良かったね、これが」

 

だから私がかけた言葉はこうだった。

 

「あー、うんうん、そうだよね、絶っっっ対!落ちてよね、うん!・・・って美結ちゃん!?」

 

あ、私の考えてたことは正解だったみたいだね。

 

「私の心読んだの~!?うわあ、なんか恥ずかしいっ!」

 

「じゃあ、また頑張ってねー!なんて、ね」

 

「はい、ありがとうございましたー・・・っておいおい!」

 

「あはは!なんて、ね。じゃあオーディションじゃないのでダメ出し行きますね」

 

「うん、よろしく!」

 

「板倉く・・・改めヘンゼルもボーっとしてないで」

 

「あ、はい・・・!」

 

私たちのやり取りを見てて油断してたのかわからないけども、ちょっと驚いたのが可愛かったかな。

 

「じゃあまずは・・・」

 

私がやりたかったことをようやく実現出来、やっぱり演劇っていいなあと思った稽古一日目になったと同時に、彼女の、裕美子ちゃんの夢を、この練習の中でも協力出来たら、と思った一日目にもなりました。




ちょっと長めになりましたがこれにて終了!なぜ長くなったかと言いますと、もともと最後の裕美子ちゃんの話は書いてたら思いついたことだったからです。まあ、何もなしの平坦な話よりも良くなったかなって思うので思いついて良かったかなって(*^▽^*)

演劇の舞台やその稽古の説明が多くなってちょっと見にくい読者様もいたかなあと(;'∀')毎回毎回思いますが、文章での説明って難しいよなあ・・・。

それと、一応用語の補足です。

上手=観客席から見て舞台右側、下手=左側。前にも書いたかも?(笑)

では、また次回お会いしましょう('◇')ゞ

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