私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~ 作:かもにゃんこ
タイトルですが、何かちょっと不思議というか、アレ?って感じのタイトルに。うん、まあ、本文読んで下さいな♬
柴田さんが言葉を発した後、しばらく無言の時間が続く。おそらく、舞台の背景をパネルにすることが難しいなってしまった今、彼女と高森さんは他の方法を考えているから。
自分は、どうなのだろうか・・・?
確かに限られた時間の中でパネルを作るのは難しいと、2人の話を聞いていてそれは僕にもわかった。でも、もし特にそれに変わる新しい案が出て来なかった場合、どうなってしまうのだろうか?背景なしで舞台をやることになるとなると、かなり見栄えは落ちてしまうのは初心者の僕でもわかる。
そして「演劇部」として活動をし、次へ次へと繋げなければいけない最初の一歩で、いきなり妥協して、躓くのは・・・。
じゃあ、答えは1つしかないじゃないか。僕だって、ちゃんと力にならないと・・・。
「・・・あの」
手を少し上げ、それだけ言うと2人ともこちらを振り向く。
「板倉くん?どうしたの?何かいい案でも浮かんだ?」
「あ、いや、そういうわけじゃないけど・・・」
心の中ではしっかり決めたものの、いざ言うとするのはやっぱり難しい。言ってしまったら、言った自分が何か責任を負わなければいけなくなってしまい、どうしても踏み出せないからだろうか・・・?
・・・いや、違うよ、力になりたいってさっき決めたじゃん。それって責任もちゃんと負わないとってことだよね。よし・・・!!
「パネル、ちゃんと作ろう」
はっきりと、そう2人へと告げた。
「え!?でもさっきの通り時間足らないし、私も手伝えないんだよ?」
「いや、待って裕美子ちゃん。彼なりに何か考えがあるかもだし」
柴田さんは否定をするが、高森さんはそれを止め、僕に意見を求める。
僕はさっき自分の中で考えたことを彼女らへと告げた。
「それ、私も実は思ってた。やって出来ないから仕方ないかもしれないけど、試してもいないのにやらないじゃなんか個人的にも悔しいというか・・・板倉くんにやる気あるなら私も頑張らないと」
高森さんは同意してくれた。
「私もその、本当はちゃんと出来るならちゃんとやりたい、けど・・・やっぱり自分が言える立場じゃないしね、あはは・・・」
柴田さんは苦笑いでそう答えただけだったけども、僕と高森さんにとってはその言葉で十分だった。
「ちゃんとやりたい、って今言ったよね」
「そうだね」
「え」
「じゃあ決まりだね。頑張ろうね」
「ええーー!!いや!いいの!?」
「いいも何もやりたいって言ったの裕美子ちゃんだからね。ほらほら、衣装だって考えてくれるんだし、それくらい私たち2人に任せっきりになったって全然大丈夫だからね」
確かにそうだ。むしろ彼女はパネル作りに関しては特に関わらなくてもいいくらいだと、僕も思う。
「そっかそっか・・・うん、じゃあお任せしちゃおうかな!」
そんなこんなでパネルも立てることが決定した。
「じゃあ後はそのパネルの色なんだけど・・・あっ!」
「どうしたの美結ちゃん?」
「あ、いやね、学生課に行くのすっかり忘れてた。ちょっと行ってくるね。たぶん10分とか15分くらいで戻ってこれると思うから。続きはまた後でで」
そう言いながら少し焦った様子で高森さんは部室を出て行った。
突然のリーダー不在に取り残させる僕たち2人。いやまあ、そんな長い時間じゃないけども。話を進めるわけにもいかないし、とりあえずどうしようと思っていると・・・。
「あのさ、ハヤトくん!」
「え、何?」
ちょっと改めて、っていうわけじゃないけど、なんかそんな感じで話しかけられ少し戸惑う。高森さんがいなくなって、彼女がいないタイミングで話したいことでもあるのだろうか・・・?
「前々から聞こうかなー、って思っててなんかタイミングなくてさ、せっかくだから今聞いちゃおうかなって思って!」
「えっと、う、うん」
「なんか2人ってさ、演劇の授業で初めて会った感じじゃなかったりするのかなー?って思って!いやね、学科も違うけどさ、なんか2人って最初から知り合いっぽい感じの雰囲気だったなあって。2回目の授業始まる前のやり取り実は見ててねー!あははっ!」
そう話しながら笑う柴田さん。あのやり取り、見られてたんだ・・・。
言われて思い出し、なんとなく恥ずかしくなる。まあ、確かに見られていても全くおかしくはないのだけども・・・。
「えっと・・・」
「あの時さー、『あの時はありがとうございました』って美結ちゃん言ってたじゃん?何がかなってずっと気になっててねー!」
僕が戸惑っていると、彼女は次から次への僕に質問をぶつけてくる。まず何から答えればいいのやら・・・。
「気になるなー私っ!2人はいつどこで会ったのか!『ありがとうございました』とは何なのか!こういう話、凄く好きなんだよねー!・・・ってまあ、勢いで話しちゃったけど言える範囲で大丈夫だからね~!」
「えー・・・うーん・・・」
言える範囲で、とは言ってるものの、完璧なうきうきの笑顔で僕の方を見ている。これは「全部話してね」ってことではないかと自分で中で思う・・・。
「えっと、まあ、うん、普通の出会いではないのは確かで・・・」
「うんうん!」
僕は事実を簡単に彼女に説明した。高森さんが倉庫に閉じ込められていたこと、それに気が付いた自分が彼女を助けたこと、約1年ぶりにあの授業で再会したことを。
「・・・へえ!そんな出会いだったんだ」
単純に驚く柴田さん。そりゃあまあそうだよね。
「なんか漫画みたいな展開!そっかー、なるほど、そういうことね~!」
何か自分の中で勝手に納得している。何がなるほどなのかよくわからないけど。
「漫画だったらさ、絶対!恋愛とかに発展するような展開だよね~!」
それは自分も思った。正直、再会してからすぐは「あの時助けた女の子」と思うことが多く、何かと意識してしまいがちだった。だけど、彼女と仲良くなっていくうちに、徐々に、どちらかと言うと、「仲間」とか「友人」とかそういう感覚が強くなっていっていた。僕はそのことを彼女へと伝える。
「いやね、僕も正直その、なんか凄い展開になったなあ、って思ったよ。だけどなんだろうね、やっぱり今は部活の仲間って感じで落ち着いたかな。あの時助けたのは今こうして一緒に演劇が出来ている為の出会いだったのかなって」
「へえ、そっか、そういうものなんだねー、うん、そっかー」
それを聞いた彼女はそう笑顔で答えた。ただ、何か心の中では別のことを考えているのではないかとも読み取れた。
「ただいま、ごめんごめん」
「あ、おかえり美結ちゃん!」
そんなことを話していたら、高森さんが戻ってきた。これ以上あの関係の話を突っ込まれるのもなんとなくアレだだったので、正直、いいタイミングだったのかも知れない。
その日は結局、パネルの色や部材や小道具を買う日程等、裏方関係の仕事はほとんど決め部活は終了となった。
「うわ、夜は寒いね」
「だねー!もう9月も終わりだもんね~!」
秋の足音も徐々に深まりつつ、だんだんと気温も寒くなって行くその季節。不思議な出会いから始まり、僕を演劇へと導いてくれた高森さんの為にも、これまで以上に自分の出来ることはしっかりこなしていかないと、と改めて思った。
ここでまさかの美結と勇人の出会いを裕美子ちゃんが知ることに!これは何か恋愛面の話が少しづつ動きそうな予感・・・?
とまあ、そうは言いつつも、勇人くんの美結に対する気持ちは、って感じですが・・・いったいどうなる2人の関係、ってところでまた次の話でお会いしましょう(*'ω'*)