私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~   作:かもにゃんこ

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今回は美結ちゃんと由依ちゃんのお話。美結ちゃんの「何かあったら由依ちゃん!」がこの物語の鉄則みたいになりつつありますが、まあ、彼女はそういう役回りという感じで捉えていただければ・・・(笑)




「1つのことに全力を注げばいいかなって」

「美結ー!」

 

「あ」

 

「お待たせー!ごめんごめん!」

 

「大丈夫。私も今来たところだから」

 

「何そのお決まりのセリフ!」

 

「いや、ホントだから」

 

とまあ会ってすぐに下らない話をしつつ、久々の由依ちゃんとの再開に喜ぶ。

 

大学内にはずっといるはずなのに、共通のことがないとホントに会わないもの。とにかく前と変わらぬ彼女が私は嬉しい。

 

「わざわざごめんね。お昼休みでも私は良かったのに」

 

「いーのいーの!むしろ私だって美結と話せて嬉しいから」

 

「そうなんだ。じゃあ由依ちゃんの話も何か聞かなきゃね」

 

「あはは!世間話ならいくらでもあるけど悩みとかは特にないかなー」

 

とまあ誰がどうしたとか、何がどうしたとかそんな話で盛り上がりながら一緒にお昼を食べるところを探す。

 

お店に入り、注文もしたところで本日の本題へと入る。

 

聞きたかったことは文化祭当日の本番、私たちの舞台の裏方を手伝ってくれかということ。もちろん、彼女はオシブに所属しているため、そっちがあれば別を当たろうかなとは思っている。

 

「確か11時開演で1時間弱くらいだっけ?それなら大丈夫だよ!午前中は何も仕事振られてないし、午後も13時半からだから余裕あるよー!」

 

「本当?ありがとう」

 

「いえいえ!困ってたら助けようって私も思ってたしね!で、私は何をするの?」

 

「あ、それなんだけど・・・」

 

目を輝かせて聞かれたけど、ぶっちゃけたいしたことない。誰でも大丈夫なくらいの仕事量に押さえたので。

 

具体的には蛍光灯を暗転明転させることと、序盤と終盤のBGMの操作2回だけ。なんか由依ちゃんに任せてしまってちょっと申し訳ないかなあとも思った。

 

「うんうん!なるほどね!なかなかの大役ですなあ」

 

私はそう思ってたけど、彼女は何か満足そう。

 

「そ、そうかな?簡単過ぎてアレかなあって

 

「美結よ、オシブを離れて裏方の重要性を忘れちゃったかな~?確かに簡単かも知れないけど失敗したら大迷惑でしょ?」

 

「あー・・・うん」

 

言われた通りだ。いくら私たちが完璧な演技をしたとしても、裏方で失敗してしまったら印象も悪くなる。今まで当たり前にやってたことだけど、いざ反対側になると軽視してしまった自分がいる。

 

「そう、だよね。なんか軽い気持ちでごめん。お願いします」

 

「おっけい!頑張るよー!じゃあ具体的にお願い!」

 

「うん」

 

私は台本を見せながら、やるところを説明。

 

「前日にリハやるんだよね?」

 

「うん。一応。そこで1回合わせれば多分大丈夫だと思うけど」

 

「そうだね、これくらいなら1回くらいでも大丈夫かな?で、問題ある箇所だけでもリハの後調整すれば大丈夫な感じ」

 

「さすが由依ちゃん。頼りになるね。じゃあそんな感じでよろしく」

 

「りょーかい!」

 

とまあそんな感じで割りとあっさりとこの話は決まった。もちろん、今日彼女と会ったのはこれも大事だったけど・・・。

 

実は、うん、本当のメインは・・・。

 

「そんな優しい由依ちゃんにもう1個聞いて欲しいことがありまして」

 

「え?何々?誉めても何も出ないヨ?あはは」

 

若干恥ずかしいとかそう言う気持ちはあるけども、言わなきゃ何も進まない。

 

「えっとね・・・」

 

 

私はパネル塗りのときに、彼と、板倉くんとあったことを分かりやすく由依ちゃんへと話した。

 

当然最初のうちは真顔だったけども、だんだんと恥ずかしさとかそういう感情で見た目でも表情に変化が現れていくのが話しててわかる。

 

「・・・それで、『女の子を助けるのは、その、男の仕事って』みたいな感じに言われて・・・」

 

「へぇ、カッコいいこと言うんだー!なんか前聞いた話だとそんなこという感じには見えなかったからねー!」

 

「ああー・・・まあ、はい、あはは」

 

思い出すと今でもドキドキというかキュンキュンというか、まあそんな感じ。あ、これヤバい。

 

「・・・あれ?っていうか今さらだけど、演劇一緒にやってるの!?」

 

「う、うん」

 

「ええー!なんで今まで言ってくれなかったのさ~!」

 

「聞かれなかったし・・・」

 

そうは言うものの、言わなかったのは前言った通り。アドバイスをしてはくれると思うけど、成功することが第一な手前、下手に意識をしたくなかったから。

 

でも今は違う。他人の言葉など関係なく、私は彼を意識し、好きだと自覚してしまったから。だからってわけじゃないけども、全てを知ってくれた上で『アドバイス』をしてほしかったから。

 

「まあ確かに言わなかったけどなあ~!それで続きはまだあるの?」

 

「まあ・・・結局その日はそりゃもちろん意識しないで過ごすっていうのは無理な話だけど、意識しているのは自覚しながら普通を装って終わった感じかなあ」

 

そんな私に対し、板倉くんがいつもと違っていたとかそういうことを考えている余裕まではなかったけど。

 

「なるほどねー!うん、今の状況はなんとなくはわかったかなー」

 

「うん、聞いてくれてありがとう」

 

「それで、美結はどうしたいの?」

 

由依ちゃんは今までの笑顔と違い、真剣な表情で私に問う。

 

 

私か・・・私は・・・。

 

「・・・うまく言えるかどうかはわからないけれど」

 

「うん」

 

「最初に会ってから、1年たった後から今まで一緒にいて、もっと彼のことを知った上で今回のことがあって、こんな気持ちになったし、やっぱりあの時の気持ちは間違ってなかったとも思ったし、どうしたいかって言ったらそりゃあ・・・」

 

私のことを彼にも色々知ってもらった上で好きになって欲しい、と欲望むき出しな私はそう思う。

 

「でもやっぱり今は演劇を、文化祭での講演を成功させたい思いのが強いんだと思う」

 

「そっか」

 

「うん。そっちに力を入れちゃって演劇の方がおろそかになるのはやっぱり嫌なんだ。まあおろそかになるかどうかなんて、やってみなきゃわからないって言われたらそうかもだけど・・・」

 

「後回しにしても大丈夫って言っちゃったら怒られるかもだけど、今しか出来ないことはどっちなんだって考えたとき、選択肢はないのかなって思った」

 

言いたいこと、私の思っていることはとりあえず全て言えたと思う。後は・・・。

 

「これを言いたかったって言うのもあるけども、今のを、今までの話を踏まえた上で由依ちゃんの意見を聞きたい、って感じかな・・・」

 

少し苦笑いで私はそう言う。

 

由依ちゃんは少しうーんと考える。しばらくして口を開く。

 

「私ならどっちもとるな!」

 

力強く、彼女はそう話す。

 

「どっちもとった上でどっちも成功させるように考えると思う。私、欲張りだからね!」

 

「あっ・・・」

 

そう言えば前に・・・。

 

 

× × ×

 

 

『うーん、どっちにしようかなあ~!』

 

『どうしたの?』

 

『いやー、うん、まあ、ね!あ、美結は何食べるか決まった?』

 

『あ、うん。私はこの・・・』

 

『え?それ頼むの?』

 

『え?なんかダメなの?』

 

『いやー、ダメってわけじゃないけどそれならこっちのが美味しそうじゃないかなー!』

 

『うーん、そう言われたらそんな気も・・・じゃあこっちにしようかな』

 

『うんうん!それがいいよ!あ、注文しまーす!これと、あとこれ!1つずつ、お願いします!』

 

『そう言えばさっきなんか悩んでなかった?』

 

『え?ああ!うんうん!今私が頼んだのと、美結が頼んだのでねー!と言うわけで美結、少しずつ交換ね~!あーこれでどっちも食べられる~!』

 

『ええー!そういうことだったの!?なんか乗せられた・・・』

 

『ふっふっふ!私の作戦勝ちだね!考えた甲斐があったね~!欲張りでごめ~ん!』

 

 

× × ×

 

 

「ふふふ、そうだったねぇ」

 

あのときのことを思い出し、私は笑顔になった。

 

「どしたの美結!?なんか面白いところ今あったの~?」

 

「ううん、大丈夫大丈夫。いやね、由依ちゃんはそうだったなあって思って」

 

「そうさ!私は欲張りよー!」

 

そこ誇らしげに言うところでもないと思うけど。

 

「せっかく聞いたのに悪いけどさ」

 

「あ、うんうん!私も自分の意見言っちゃってからだけどねー」

 

私と由依ちゃんは一度顔を見合せ頷き。

 

「「私は私」「美結は美結」、1つのことに全力を注げばいいかなって」ねー!」

 

「だよね~!」

 

「うん」

 

ハモるのはわかってたけど、ホントにそうなると面白いもの。

 

「頑張れ、美結!美結の思ったままに進んで、全力で行って、全力で1つの目標に向けて突っ走って、ダメだったなら仕方ないって感じで進め!」

 

「うん、ありがとう!」

 

結局、由依ちゃんに話しても、話さなくても、私の考えは変わらなかった。でも、それは変わらなくても、その考えを突き通す信念みたいなものはより一層、強固なものになった。




美結の勇人を思う気持ちが前回で変わり、さあ、どうする!というところで結局今は気持ちを抑えるとなっちゃいましたね(^_^;)

もちろん、考えとしては本編に書いた通りですが、美結が勇人を「好きになった」という気持ちに嘘はありません。

これからはその、彼女の気持ちを踏まえた上で書いていけたらと思ってます(*^_^*)

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