私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~ 作:かもにゃんこ
前半は演劇、後半は勇人×由依の会話となります。
だんだんの寒さが増していく11月にと、いよいよ突入。まあ今さら言うこともないが、来る11月3日、文化の日は私たちの大学の学祭があり、そして私たち演劇部の公演本番である。
今日はもう前日、リハーサルを行うためもう稽古は出来ないけども、出来なくても大丈夫なくらい正直やり尽くしたと思う。
私はまあ、いつも通り、裕美子ちゃんもさすがと言っていいかわからないけど、私の予想以上のクオリティになっていると思う。まあもともと心配なんてしてなかったけど。
一番の心配だった板倉くんも、先日行った袈裟稽古からだんだんとコツを掴み、本人はまだ不満はあるみたいだけど、十分な出来になったと思う。
「こちらオシブ、えーと、音照創造部の若杉由依ちゃん!ってまあアレか、板倉くんは同じ学科だから知ってる?」
リハーサルを行うにあたって、まずお手伝いをしてくれる由依ちゃんを2人に紹介した。
「初対面、かな」
「私も初対面だな~!たぶん人数多いから必修授業も別なんだねー。若杉です。よろしく板倉くん!」
そんなありきたりな挨拶を彼女は交わしたが、私の勘違いじゃなければ少し二ヤついてた気が。まあ、アレか。そりゃあの話、一応私の好きな人というわけに彼女の頭の中ではなってるだろうし。
「私は柴田裕美子ですっ!裕美子でいいよ~!」
「じゃあ私も由依でいいよ~!よろしく~!裕美子は演劇の授業で美結と?」
「あっ!そうだよー。私も美結ちゃんと同じで別学科から来ててね~!仲間がいてなんかホッとしたって感じ」
何やら2人は今が初対面とは思えないくら仲良く話している。
「そなの?へぇ、なんか面白いなあ!」
「由依ちゃんが美結ちゃんに授業紹介したりしたの?」
「うん。そんな感じだねー!美結は私のおかげで裕美子と会えたってこんなんだねー!」
「あっ!そうかも!じゃあ演劇部でこうやって出来てるのも由依ちゃんのおかげだねっ!ありがとう!」
「だねだねー」
なんかよくわからないけど、何かと由依ちゃんの手柄になっていた。まあきっかけはそうかも知れないけど、私だって・・・いや、由依ちゃんの後押しがなければあるいは・・・。
「由依ちゃん、私からもありがとう」
そんなことを思っていたら唐突にそんなことを口にした。いやまあ本心ではあるけど。
「何いきなり!?」
驚く由依ちゃん。まあそりゃそうか。
「うん、まあ、そのままの言葉通りだけどね。由依ちゃんいなかったら色々駄目だったと思うし」
「あはは!そりゃありがとう!頼りにされて嬉しいよ」
そんな感じで雑談をしつつ、一段落したところで私は本題へと入った。
「じゃあ時間もそんなにあるわけじゃないからさっそくだけど始めようかな」
「うん!」
「はい」
「おっけー!」
役者は練習通りの各最初の待機位置へ、由依ちゃんには蛍光灯のスイッチのあたりに移動し準備オッケー。
あ、ちなみに舞台やパネルの設置、暗幕等、舞台設備に関しては前日に全て完了。今日は本当にリハーサルだけという感じになっている。
「(設定として)開演1分前です。暗転します」
仕事モードに切り替わる由依ちゃん。服装も仕事モード、全身黒をまとった裏方仕様。さすがに1年半もオシブをやってるだけある。
「1分経過します。明転しますので始めて下さい」
リハーサルということもあり数秒後、由依ちゃんは言葉を発し、明転させる。本番ではちゃんと時間を計り、無言で明転させるけどね。
本番さながらの緊張感でいよいよリハーサルが始まった。
× × ×
「カーテンコール。1、2、3、4、5、明転」
「本日は演劇部、文化祭・・・以下略、本日はありがとうございました」
「「ありがとうございました」」
「1、2、3、暗転。はい、終わります」
パンと軽く由依ちゃんが手を叩き、リハーサルは終了した。
由依ちゃんがパチパチと蛍光灯のスイッチを入れ、そのままみんな適当に集まる。まず、第一声は・・・。
「由依ちゃん凄い・・・!なんか凄くカッコよかった!」
という裕美子ちゃんでした。
彼女がそう言うのもわかる。まるでテレビとかの進行役みたいな感じで裏方以上の仕事をしてくれたから。
「いやいや!そんなことないよ!私も本番で失敗したくないし、確認のためにやっただけだから!本番は無言だからねー」
「あはは!確かにそうだね~!」
「でも本当にやりやすかったというか、僕は始めてこんな感じにリハーサルやったけど、うまく出来たのは若杉さんのおかげだと思う」
「なんかそんなに言われてる照れますな~!ありがとう!で、全体的にはどうだったかな美結?」
「だいたい大丈夫かな。一応気になったのは・・・」
言葉での打ち合わせでうまく伝わらなかったことや、実際やってみて不具合があったことを簡単に伝えた。
「・・・そんな感じかな。2人からは何かある?」
「大丈夫かな~!」
「僕も」
「了解。じゃあ休憩挟んでもう1回だけ通しやろっか」
× × ×
休憩に入り、僕はさっきのリハーサルの自己分析をしなくてはと台本を開こうとする、と。
「お疲れ!私の名前覚えてくれてるー?」
若杉さんに話しかけられた。いきなりだし、慣れてないしで、戸惑う。
「あ、う、うん。若杉、さん」
「良かったー!本番もよろしく!」
「あ、はい、よろしく、お願いします」
「なんで敬語!」
「あ、いや」
「別にいいけどね」
なんで僕なんかに話しかけて来たんだろうと思ったけど、そう言えば高森さんと柴田さんは何か2人で買い物をしに行ったみたい。
若杉さんも誘われてたみたいだったけど、断っていた。
・・・まさか自分と何か話すために残った、とか。考えすぎかなとは思ったけども、嫌な予感は割りと当たるから困る。
「ねね、板倉くん!」
「え?」
考えごとをしてたこともあって少し驚く。
「なんで板倉くんは美結と一緒に演劇やろうって決めたの?あ、一応先に言っておくけどね、美結から相談とか受けてて結構その類いの話は知ってるから!」
「そうなの?」
「だねー!だから知りたいのはキミがなんで一緒にやろうと決めたことかなー」
なんで知りたいのだろう、とは少し思ったけど、まあ別に言っても問題はない話なんで簡単に僕は説明。
もともと興味があったこと、実際に授業でやって楽しかったこと、楽しかったのは高森さんと一緒に出来たからということ、だから誘われた時、嬉しかったことを。
「へぇ~!なるほどなるほど!うんうん!」
彼女は一通り聞いた後、ニヤっと少し怪しい笑みを浮かべ僕に質問をする。
「それじゃあ板倉くんは美結のことが好きみたいなんね!あ、もちろん私が言う好きは恋愛としての好きってことだからね」
由依は勇人を真っ直ぐ見て、真面目な表情でそう話す。それはまるで、あたかも勇人に解答の選択肢を与えないような、そんな質問の仕方にも見えた。当然、いきなりそんなこと聞かれ戸惑わないはずがない勇人。
「え!?いや、えーと・・・」
「ふんふん!その反応を見るに図星ってところかなー?」
「あ、いや、その・・・」
「そっかそっかー!うんうん!」
僕の反応に彼女は質問を肯定したかのような反応をしている。正直これはマズイと思う。だってこのままだと彼女に嘘を言ってしまっているのだから。
「あ、あの・・・」
恥ずかしさを押しきり、なんとか本当のことを言わないと・・・。
「えっと、なんていうか・・・」
「え?どしたの?」
「いや、あのね、高森さんのことは凄いとは思うし、いい人だとは思うけど・・・好きかどうかって言われたら・・・それは今は違うかなって」
「え!そなの!?」
「あ、う、うん・・・知り合った頃は正直気になってて、『好きかな?』って思うことはあったけど・・・」
「ふむ」
一応、若杉さんは僕の話に耳を傾けてはくれている。ちょっとなんか嫌そうではあるけども。
「その、なんて言うか・・・知り合いで女の子がいないから、とりあえず仲良くしてくれる女の子を気になる、みたいなだと思ったし、それから一緒に色々やってくうちに、好き、という思いよりもどちらかと言えば友達っぽい感覚が強くなったかなって思って・・・」
「うんうん」
普通に、途中で口を挟むことなく彼女は話を聞き続ける。
「・・・そんな感じかな。趣味も合うし、話してて楽だし、本当に友達って感じだね」
僕の話を一通り聞いた若杉さんは内容を一度整理するかのように、少し間を開けた後、今度は笑顔になる。
「そかそかー!オッケオッケ!うんうん!」
なんか納得したらしい。これにはホッと、しようと思ったら・・・。
「でもさ、あくまで『今は』でしょ!?これから、何がどうなるかなんてわからないぜ!」
ウインクをしながらぐっと親指を立て、そう話す。
これから、なんて正直今まで意識したことはなかった。これから、か・・・。
「ただいま~!」
そんなことを考えていたら、2人が帰ってきた。
「板倉くんと何話してたの?」
「いや、たいしたことないよ~。世間話とかそんなの!」
「アレ」が世間話とは全く思わない自分だけど、正直そう言ってくれて助かった自分がいる。
それからもう一度だけリハーサルを行い、簡単にダメ出しや意見交換を行いその日は終了。いよいよ明日、本番を残すのみとなった。
本番に向けて、色々な思いが自分の中を駆け巡ると同時に、若杉さんに言われたからか、高森さんのこと・・・今、そしてこれから、そんなことも頭の片隅に浮かぶ中、僕は本番を迎える。
いよいよ、勇人くんの心の中にも由依ちゃんが入り込んできましたね。え?いよいよ次回本番、じゃないかって?まあそれもそうですけどね(笑)
勇人くんから話を聞いた後の態度から察すると、美結ちゃんに対しての気持ちの変化の可能性は・・・おっと、あんまり言い過ぎるのもダメなんでここまでで!
次回はいよいよ本番当日です(^o^)/