私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~   作:かもにゃんこ

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「今この時にしか出来ないことを、ちゃんとやって欲しいから」

時は過ぎる。年末のイベントであるクリスマスから年始の初詣等、去年と特に代わり映えすることなく過ぎた。一応、年末年始は実家へと帰り、久しぶりに家事から離れだらだらとした生活を送った。うん、割りと幸福。

 

演劇部の方は相変わらず休部のまま。部室へは誰もこないし、メールが一件あっただけ。まあそれもイタズラだったけど。どうしようという気持ちもなくなりそうな気分になりつつ、今は長い長い春休み前の学年末考査の為、大学へと来ている。

授業、というか今は試験と試験の合間、って表現になるけども、時間潰しのための教室を探す。

 

私の性格上、静かな所がいいので話し声が聞こえる場所はNG。いくつか覗いた中で人が4、5人しかいなく、シーンとした教室があったのでそこへと入ると・・・。

 

(「あれ?あの後ろ姿は裕美子ちゃん?」)

 

うん、間違いない。学内で会うこともなかったし、姿を見たのもあの日以来だった。

 

近況とか聞きたかったので私は迷わず後ろから声をかけた。

 

「裕美子ちゃん、久しぶり」

 

「えっ?」

 

私の突然の声に振り向いた彼女の表情は、いつもの裕美子ちゃんではなく、「本当」の裕美子だとすぐにわかった。

 

「あ・・・」

 

正直、なんと言えばいいかわからず固まる私。そんな私に彼女は・・・。

 

「・・・ごめん」

 

そう一言だけ。

 

「いや、私こそなんかごめん」

 

しばし無言。話しかけたのが悪いと思い、立ち去ろうとしたが、また裕美子ちゃんが話す。

 

「ごめん、ちょっと今は『あっち』には気分的になれない。それでいいのなら。聞きたいことあるんでしょ?」

 

「え・・・?まあ、う、うん」

 

顔は一緒なのに、話し方が違うだけでこうも人は変わるのか。いやまあ演劇やってた私がいうようなことでもないけど・・・でもやっぱり戸惑う。

 

「・・・私もなんか人に言いたいんだよね。多分、聞きたいことと言いたいこと一緒だと思う」

 

「そうなの、かな?」

 

「まあ、あれでしょ?声優への道はあれからどうなった、って感じでしょ?」

 

「あ、うん」

 

どうやら本当にそうらしい。同じだとわかると裕美子ちゃんは話し始める。

 

「・・・今辛いね。トントントントンうまくいってたのに年末くらいから全然駄目で。クラスも落とされた」

 

「・・・そう、なんだ」

 

「他のところ通いだしたのが逆に自分にプレッシャーかけたみたいで。なんかぐちゃぐちゃになって。今は何やってもダメな感じでここでどうすればって考えてたところかな」

 

私は彼女の話を聞いて正直驚いた。まさかそんなことになってるなんて、という感じだったから。

 

「まあアレだよね。今は我慢の時期なんだなって思うしかないね」

 

「そっか・・・」

 

「・・・ああ~!なんか美結ちゃんに話したらすっきりしたよ!なんかごめんねー!」

 

突然彼女はいつもの、明るい裕美子ちゃんに戻った。あ、いや、こっちが作ってるらしいけども。

 

「ううん、裕美子ちゃんが元気になってくれて良かっよ」

 

「あはは、元気っていうかこっちじゃないとどんどん暗い気持ちになっちゃうしね!そう言えばさ、演劇部の方はどうなったの?」

 

「あ・・・」

 

いきなりだったので不意討ち気味だったけども、気持ちを整理し、私はこれまであったことを簡単に説明した。

 

「そっか、美結ちゃんたちもなんだね・・・」

 

「まあ、仕方ないって感じ。もともとさ、無理矢理始めたようなものだったしね。あれだけ出来ただけでも私は十分だよ」

 

私は自分で思っていたことをそのまま言った、のだが・・・。それを聞いた裕美子ちゃんは・・・。

 

「美結ちゃん、それウソ」

 

「・・・え?」

 

「顔がウソついてるんだもん。まだ諦めたくないって顔してるよ」

 

「いや、でも私は・・・」

 

私は、本当に仕方ないって思っている。無理にやろうとは思ってないし・・・。

 

「ってまあ、いきなり辞めた私が悪いっていうものあるもんね。そんなこと言える立場じゃないよね、あはは」

 

「あ、いや、ううん、それは本当に大丈夫というか・・・裕美子ちゃんの夢、応援してるのは本当にホントだからね?」

 

これは本当。彼女には夢を叶えて欲しいって私は本気で思っている。それに少しでも自分自身が力になれたら、どんなに幸せなことか。

 

「うん、ありがとう美結ちゃん!私頑張るから美結ちゃんも、ね!」

 

「頑張って。私も・・・まあ、うん、頑張る」

 

そんな言葉を交わし、私は美結ちゃんとお別れをした。彼女と別れた後も、さっきの言葉が胸に残る。そりゃあ確かに出来るだけの人数がいればとは思うけど、現実はそういうわけではない。その事実もしっかり捉えて「出来なくても仕方ない」って思っているし・・・。

 

そんなことを悶々と考えていたら。

 

「みゆちゃん」

 

「へ?」

 

「久しぶりだね」

 

声の方を振り向くと、学生課のあのお姉さんが立っていた。

 

「あ、お久しぶりです。ってこんなところでどうしたのですか?」

 

「こんなところって。私だってずっと学生課にいるわけじゃないのよ」

 

「ああ、まあそうですよね、あはは」

 

あそこで受け付けをしているだけではなくて、他に色々仕事はしているのだろう。

 

「そういえばさ」

 

「あ、はい」

 

「部活の方はどうなのかしら?部員自体は3人から増えていないみたいだけど、元気にやってるのかな?」

 

「あー・・・」

 

正直、本当のことは言いにくい。裕美子ちゃんがいなくなって2人になったことも、もうどうせ形の上では休部になっているから学生課には申請してなかったし、あれだけ演劇部復活に協力してくれたのに、現状を話すなんて・・・。

 

ただ、逆にウソはつけないとも思った。黙っていてもいつかはきっとバレるだろうし、結局新しい人が来ないままでは本当に休部になる日も近いし・・・。

 

だから私はさっき裕美子ちゃんに言ったように、彼女にも簡単に現状を報告した。

 

「そっか・・・まあ、うん、そんなうまくはいかないよね」

 

「はい、私もそううまくはいかないとは思ってましたけど・・・1人いなくなるのは想定外で、それからなんかどうでもよくなってきちゃいまして・・・」

 

「そうよね、さすがに2人じゃ厳しいわよね。それで」

 

「え?は、はい?」

 

苦笑いで私の話を聞いてくれたお姉さんであったけど、急に顔付きが真面目になり、私は不意を突かれる。

 

「まさか諦めちゃうの?」

 

「え、いや・・・今のままじゃどうしようもないですし、今はもしかしたらの連絡待ちですし・・・」

 

「じゃあもしその連絡が来なかったらどうするのかしら?」

 

「えっと、それは・・・」

 

それはも何も、諦めるしかない。そう言おうと思ったとき、お姉さんは少し強めの口調で私に。

 

「諦めちゃうの?せっかくやりたいことが出来るようになったのに?これで終わりにしちゃうの?そんなの絶対後悔するわよ。それによ、もし今度の4月に入学してくる1年生の中に、みゆちゃんみたいな子がいたらどうする?演劇やりたくても演劇部がない、そういう気持ちはみゆちゃんが一番わかってるでしょ?」

 

「あ・・・はい・・・」

 

その通りだ。自分が経験してるからこそ、そういう気持ちはよくわかる。けれど・・・。

 

「言っていることは凄くわかります・・・けれど、こんな状況でどうすればいいんですか・・・?」

 

そう私が言うと、お姉さんが何故か笑顔になった。

 

「やる気、出た?」

 

「え・・・?あ・・・」

 

「仕方ないってさっき言ってたけどさ、やりたいでしょ?演劇を。きっとね、心の中では諦めてるって思っててもね、きっと、きっとその心のどこかでまだ諦めたくないみゆちゃんがいた気がしてね。ふふふ」

 

「あー・・・」

 

そう言えばさっきも裕美子ちゃんに同じことを言われた。自分では諦めている、そう思っていたのは、もしかしたら諦めていない自分がいることから、ただただ逃げたかっただけなのかも知れない。

 

「いい顔になったね。ちゃんと自分と向き合えて、ちゃんと本当の自分の気持ちわかったみたいだね」

 

「・・・そう、ですね。仕方ないじゃなくて、仕方なく心のどこかに仕舞いたかった気持ちだったもしれません」

 

私は何か心にあったモヤモヤ・・・モヤモヤなんてなかったと思っていたけども、清々しい気持ちに久しぶりになれた気がし、モヤモヤが晴れた気がした。

 

「ありがとうございます」

 

「ふふふ、良かった。本当にそのまま諦めちゃったら絶対後悔するもの」

 

そう言われ私は疑問が浮かぶ。なぜ彼女がそこまで私を奮い立たせるようなことを言ったのか、それが気になり聞いてみた。

 

「そうね、私が後悔してるからかしら?」

 

「え・・・?」

 

話を聞くとお姉さんは学生時代、やりたかったことがあったらしいけど、結局行動に起こせなかった。当時は何も思うことはなかったらしいけども、大人になって、働くようになって、あの時ああしておけば良かったと、後悔することが多くなったらしい。

 

「今この時にしか出来ないことをね、ちゃんとその時やって欲しいから」

 

「そう、ですよね。私、後悔しないようにやります」

 

これから、働くようになってどう思うかはわからないけども、今しかやれないこと、しっかりやろうと思う。

 

「あら?もうこんな時間なのね。いい感じで話も終わったし、私も仕事に戻らなくちゃだし。じゃあねみゆちゃん、頑張ってね」

 

そう言いながら手を軽く振り、彼女は立ち去った。

 

「ありがとうございました」

 

聞こえているかどうかはわからないけども、私は再度、そうお礼をした。

 

これからどうすれば、とか、どうしたらいい、とか、そういうことは全然決まっていない。けれど、またこれから演劇をやるんだ、その気持ちだけは確かなものとなっていた。

 




このままじゃ終わらんよ!そういう思いで書いた回でした!

どんな感じで美結の気持ちをやる気にさせようかな?と考えた時、まずはこの2人と話させることかなって思い、今回のお話が出来ました('◇')ゞ

もちろん、こういう悩みの締めは・・・はい、と言うわけで次回へ続きますぜ!!
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