私たちの「舞台」は始まったばかり。~in University~ 作:かもにゃんこ
今回はイマイチタイトルらしい言葉がなかったのでなんか微妙な感じになってしまいました(;'∀')まあどういう意味の言葉なのかは、本文を読めばわかりますよー。
授業が終わった後、私は教室に残った。少しやっておきたいことがあったから。
台本を書く人や演出は決まったが、決まったのはそれだけ。誰に言われたとかそういうわけではないが、来週の授業までに一応経験者である私が出来ることはないかと思い、とりあえず台本を読んでみようと。
家に帰ってから読んだら?と言う人もいると思うけど誘惑が多くて出来ないのと、せっかくだし早く読んでみたかったから。
最初は一人でやろうと思ったけど、なんとなくいた板倉くんに話しかけて、彼も一緒になってやることに。
正直誘うときは全然緊張とかはしなかった。会って最初のうちはやっぱり特別な気持ちになってしまっていた部分があったけど、話していくうちにだんだん慣れてきたのが大きいかも。
彼のおかげもあり、まず一つのことが決まった。私には思いつかなかったその案。そんな私はなんとなく、さっきユミコちゃんに言われたことをネタに使ってみた。
「そう?私にはそんな柔軟な発想ないよ。ほら、私って硬いし」
そう私が冗談っぽく笑いながら言ったら・・・。
「ふっ・・・!あ・・・」
「あ、笑った。今までなんかそういう顔見せなかったからなんか良かった」
笑ってくれたこともあり、ちょっと嬉しくなった美結はそんなことを言った。
・・・あれ、なんか笑顔を見て良かったとか私言っちゃった・・・。
今まではそういう気持ちになってなかったのに、彼自身のことについて言ったからだと思う、何か勝手に意識してしまい、彼の方を見れなくなり不意に顔を逸らしてしまう。
「・・・あの、やっぱり失礼だったかな・・・?」
そんな私を心配してくれたのかどうかはわからないけど、そんな言葉を彼は発する。私は自分がとってしまった態度にしまったと思い、すぐに「違うよ」と否定。
そして気持ちを再度整え、彼の方に向き直る。もう本当のこと言っちゃえと吹っ切れた。
「・・・いやね、自分で良かったとか言ったのがなんか恥ずかしくなって」
あはは、と笑いながら冗談っぽく私は言った。
「そ、そうだったんだ・・・」
恥ずかしさのせいもあってちょっと顔は赤くなっていたこともあってか、そんな私を見た板倉くんも顔を逸らしてしまう。
「う、うん・・・」
私たち以外誰もいない教室の中に気まずい空気が流れる。どうしよう、別に好きだとか何かしたいとかそういうことは全然考えてないし、意識するつもりもなかったのに、こんな空気になってしまうとは。
とりあえずこのままっていうわけにもいかないし、私はふーっと一息吐き気持ちを落ち着かせ、話題をもとに戻すことに。
「じゃあ登場人物の確認でもしよっか」
「あ、う、うん」
板倉くんも普通な感じに戻ってとりあえず一件落着。さっそく台本を読み進めて行く。
「えーっと、古文の方も合わせてとりあえずセリフが少ないのも合わせて9人かな」
「うん、そんな感じだね」
「1人足りない、か・・・やっぱり台本を書くのにどちらか専念してもらった方がいいのかな?」
さっき全員出た方がいいって言ったの自分じゃ、とか思った。まあ、言わないけど。
「うーん、いや、全員出れるように調整するかな。せっかく板倉くんがいい提案してくれたからね」
「調節ってどうやって?」
「登場人物1人増やすのが手っ取り早いかな」
「そんな簡単に出来るんだ」
彼はそう感心してるが、もちろん簡単には出来ないけど。話の筋が変わらないようにしなきゃいけないし。
「とりあえずもう少し私は考えてみるようにするけど。次の授業までに決めればいいしね」
「そっか」
「板倉くん」
「え?」
「考えてみる?」
せっかくだし一緒に話したし彼にもそんな提案をしてみた。
「え!?いや、僕なんて無理だから・・・」
「さっきいい案出してくれたしそんなことないと思うよ。無理にとは言わないから」
私はそうは言ったが、なんとなく彼の性格上、嫌でも1つくらいは案を考えてくれそうな気がした。ちょっと卑怯な感じになっちゃったけど。
「えーと・・・出来る限りは・・・」
「ありがとう」
話もひと段落したところで外を見たら、いつの間にか暗くなっていることに気が付いた。時計を見るとすでに18時を回っていた。
「あ、こんな時間になっちゃってたんだ。全然気が付かなかった」
「僕も。いつの間にかだね」
「なんか付き合わせちゃって。終わりにしよう」
私は台本やらをバックにしまい、帰る準備をして立ち上がり教室を出ようとする。と、なぜか板倉くんはその場にいる。どうしたのかと思った私は声をかける。
「どうしたの?」
「あ、いや、うん、帰ろう」
何か彼の言動に不思議に思ったけど、別に気にしても仕方ないかな。
帰りながら無言っていうのはなんだし、せっかく彼のことを知るいい機会だし色々聞いてみようと美結は思い、何気ない世間話から入る。
「家まで遠い?」
「1時間くらいかな」
「実家?」
「そう」
「いいなあ実家。私一人暮らしなんだ」
「そうなんだ。実家遠いの?」
「うん、ここからだと2時間くらいかかるかな。それと、遠いっていうのもあるんだけどね、家の方針で大学生になったら自立しろって」
「へえ・・・」
「あとさ・・・」
そんな感じで徐々に打ち解ける。最初は少し緊張が見えていた板倉くんもだんだんと柔らかい表情になって行くのがわかった。そんなこともあり、彼からも質問をされる。
「あの」
「うん?」
「高森さんはどうして中学生の時に演劇部に入ろうと思ったの?」
「あー、うん、大した理由じゃないけど」
中学の頃、高校の頃はそれなりに聞かれた。でも大学生に入って聞かれるのは初めてでなんとなく新鮮だった。
「最初はね、せっかく部活動するなら文化部じゃなくて運動部に絶対入るんだ、って思ってたんだけどね」
「あ、それなんとなくわかるかも」
「そもそも演劇なんて中学1年の私にはどういう存在か最初はわからなかったしね」
「でも部活動紹介?みたいなのでね、演劇部見てもうそれで決まりだった」
「そんなに凄かったんだ」
「凄いっていう表現が正しいかわからないけど、ああいうことしてみたいってただただ漠然とした気持ちになって。そんな感じかな」
私はあの頃を懐かしく思いながらそう話す。もうあれから8年も経つのかって。
「その時はそんなものだったけど、後から思えばもうその頃からアニメとか好きだったから、演じるとか表現するってことに興味があったのかも知れないね」
「そうなんだね」
あ、私どさくさに紛れてオタクですって遠回しに言っちゃった。
「あー・・・なんかついつい言っちゃったけど私今でも、というか今が全盛期のオタクなんだ。引くならどうぞ。あはは・・・」
認知はされてるけども、やっぱり嫌な人は嫌な趣味だもんね。
ちょっと恐る恐るそう私は告げたけど・・・。
「あ、うん、知ってた、かな」
「え?」
「いや・・・ほら、えっと、さっきユミコさん?だっけ?と話してるの普通に聞こえてたし・・・」
「あ・・・」
そう言えば嬉しくて結構大きな声で盛り上がってた気がする。別に彼に隠そうとかそういうことは一切思ってなかったけど、なんかね。
「あはは・・・そうだった・・・」
苦笑いするしかないけど、でも知ってて私と一緒にいてくれたってことはセーフってことなのかな。そう思っていると板倉くんも・・・。
「あ、僕もそっちの人で・・・」
「え、そうなんだ!」
ちょっと落ち込みかけてた私に元気が戻る。
「友達とかにも引かれたりすると嫌だから、あんまり言ってないけど・・・同じなら言ってもいいかなって」
「あ、だよね。カバンとかにグッズとかつけててカミングアウト前回の人とか逆に凄いと思わない?」
「あ、思う、思う」
結局その日は途中で別れるまで、アニメやらゲームやらの話で盛り上がった。今までうまく話せなかったことがウソのように。ユミコちゃんと話した時も思ったけど、共通の話題があるだけでこんなに変わるんだなあと。あ、そんなこんなで前に聞きそびれてあわよくば聞こうと思った、演劇の授業をやろうと思ったきっかけは聞けなかったんだけど。
「あ、私ここで乗り換えだ」
「うん」
名残惜しいけど、会えなくなるわけじゃないし、また会って話せばいいもんね。
「今日はありがとう」
「こちらこそ」
私は電車を降りた後、閉まったドアの向こうにいる彼に向けて自然に、笑顔で手を振った。それに彼も少しだけど応えてくれる。乗り換えの長い階段も、その日は全然長く感じなかった。
お互いオタクということで、楽しく話せて美結ちゃんは良かったですね(*'▽')
次回は演劇メインの予定です!