ゼロのモンスターメーカー   作:ローレンシウ

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第二十四話 カジノでの学びと出会い

 

「……そういうわけで。私はそのルイズという子に召喚されて、この世界に来たの。ここにいるのは、占い札に呼ばれて、それを引いたからよ」

 

 ユマはそう言って、これまでの経緯に関するかいつまんだ説明を締めくくった。

 

「ふうん、なるほどねえ。どうやらカード使いってのは、やっぱり変わった運命に巻き込まれるものらしいな」

 

 タムローンは、少しばかり呆れたような調子でそう言った。

 

「人のことは言えないでしょう。ここは、あなたの世界とも違うはずよ。なのに、どうして……」

「そりゃまあ、そうだが。俺はセテトの用意した筋書きなら、いつだって快く乗ることにしてるんでね。時には、女神からこんないたずらを受けることもあるのさ」

 

 ユマに言い返されて、タムローンはそう言って肩をすくめてみせたが。

 次いで、にやっとした笑みを浮かべた。

 

「でもな。それは、俺だけのことじゃないかもしれないぜ」

「? どういうこと?」

 

 首を傾げたユマに、タムローンは今度は、自分がここへ来た経緯の説明をしてやった。

 

「ほら、お前がこっちに来てた頃、アインガングに『カードの精霊』ってやつがいただろう?」

「マルスミルドさん?」

「ああ。実は、あいつに頼まれたのさ。どこかよその世界にこの世界のカードの一部が散らばったみたいだから、探し出して来てくれってな」

 

 タムローンはそれを受けて、ユマもアインガングで利用していたような占い師の館でカードを引き、その導きに従って、ここへ連れてこられたのだという。

 

 以前は、ユマの住む異世界である地球から、自分たちの世界に『闇』が入り込んで来ようとしていた。

 だから、カードの精霊であるマルスミルドは、同じ異世界から自分たちの世界にカード使いたちを召喚することで、それに対抗しようとしたのである。

 今回は逆に、自分たちの世界から異世界へカードが流出しているのだから、自分たちの世界の勇者たちを送り込もう、ということか。

 

「そうなんだ……」

「ああ。で、頼まれたのは俺だけじゃない。デートのお誘いならいざ知らず、精霊さんがそんな用件で俺だけを選んで声をかける理由なんて、別にないだろう?」

 

 彼の話を聞いたユマは、またしてもウルフレンドに問題が起こっているのかと、心を痛めたが……。

 同時に、おさえがたい期待で、胸がふくらんだ。

 

 だとすれば、この世界でもまた、みんなに会えるかもしれないわけだ。

 

「……でも、タムローンはなんだか、この場所に合わせた服を着ているみたいだわ」

 

 カードを引いていきなりここに飛ばされたのなら、そんな恰好をしているのは変だ。

 もしかしたら何か別の場所でクエストを受けてここに来たのか、という質問に、タムローンは頷いた。

 

「まあな。話すと長くなる、ってほどでもないが――」

 

 

 

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 占い師の館で三枚のカードを引いた直後に視界が暗転し、気が付いたときにはタムローンは、見覚えのない部屋の中で、見知らぬ男と向かい合って座っていた。

 腰の剣があることを確かめつつ、さりげなく周囲に視線を走らせて、状況を確認する。

 

(とりあえず、敵意はなさそうだ。さすがに異世界ってだけあって内装なんかは見慣れないが、雰囲気からすると、ここはちょいと品の良い料亭か何かの個室って感じだな)

 

 ブルガンディあたりになら、あってもおかしくなさそうな店だな、と考える。

 そうこうしているうちに、じろじろとタムローンのことを品定めしていた対面の男が、口を開いた。

 

「あんたが、先方から紹介のあった傭兵さんだね? なんでも、若いが経験豊富な手練れで、博奕の腕にも結構な覚えがあるという話だったが……」

 

 いつの間にかそんな設定になっているのかと感心半分、呆れ半分に思いながら、タムローンは頷く。

 

「……ああ。紹介があったかどうかは知らんが、まあその話は確かだな」

「それを聞いて安心したよ。そんなあんたを見込んで、私の主人がひとつ頼みたいことがあると言っているんだ。ちと面倒な仕事だが、当家は裕福だ。首尾よくいけば、十分な礼金が出ることは保証する」

 

 どうやら、言葉は普通に通じるらしい。

 そういえばユマみたいなカード使いの連中もまったく支障なく異世界で話していたし、きっとそういう魔法が働いてるんだろうなと、タムローンはひとりで納得した。

 

「報酬は、多いに越したことはないけどな。請けるかどうかは、仕事の内容次第だぜ」

 

 そう言いながら机にあったグラスを傾け、皿に盛られたお通しらしき料理を、いくらかつまんでみる。

 流石に酒は上物だったが、料理の方は見た目はいいものの実際に食べてみると無難な味のありきたりな乾き物ばかりで、あまり好みではなかった。

 

 従者はもっともなことだと頷いて、説明を始める。

 

「あんたも博奕打ちなら、ベルクート街に新しくできた賭博場の噂くらいは聞いたことがあるかな。もっとも、貴族か豪商か、とにかく金持ちでないと入れない会員制の店だから、行ったことまではないだろうがね」

 

 ここ最近、彼の仕える主人の不肖の息子がそこに入り浸るようになり、派手に大金を巻き上げられているらしい。

 主人はそれを知って怒り、ガリア王室に訴え、軍警を派遣させて店を取り潰させようとしたのだが……。

 

「なんでも、そうやっておおっぴらに取り締まったのでは恥をかくことになってしまう連中が大勢いる、とかでね。軍警は動かしてくれなかったらしいのさ」

 

 話によると、どうも大負けしているのはその息子ばかりではないらしい。

 他にも身分の高い貴族家の者が何人もカモにされていて、表立っての取り締まりは彼ら全員の顔を潰してしまうことになるために、王家の側も二の足を踏んでいるという次第だった。

 

「何とかしてくれるとは言ってたそうだが、まああてになりそうにないとうちの主人は思ってる。そこで、あんたの出番ってわけだよ」

「出番といわれても、要するに何をしてほしいってんだ。そのバカ息子だかが賭場に出入りしてる現場を捕まえて、首根っこをひっ捕まえて連れ帰れとでもいうのかい」

「いや、そうじゃない。うちの主人が考えてるのは、王室から聞いた話からして、あまりにも大負けしてる貴族の数が多すぎるようだってことなのさ」

「それは……、つまりその賭場には、イカサマかなにかの不正に儲けるからくりがあるんじゃないか、ってことか?」

「主人はそう踏んでいるんだ。その証拠を押さえれば、賭場を潰せるだろう?」

 

 タムローンはそれを聞くと、胡散臭そうに顔をしかめた。

 

「そいつはどうにも、疑わしい話だな。そんなのは単に、セテトが……、あ、いや」

 

 この世界でその名は通じないだろうと気付いて、言い直した。

 

「つまり、たまたまそいつらの運がなかった、ってだけのことじゃないのか」

 

 確率的に言ってどんな博奕も胴元の方が儲かるようにできているのだから、普通に考えれば、イカサマを仕組む必要などないだろう。

 リスクを冒してまで不正を試みねばならない理由がない。

 運なんてのは大抵の者が思っている以上に、偏る時には偏るものだ。

 たまたま最近は大負けする客の数が多かっただけだなんてのは、ごくごく普通にありそうな話でしかない。

 

 タムローンがそう言ってやると、従者は反論するでもなく、小さく二、三度頷いた。

 

「ああ。まあ、そうかもしれんね」

「かもしれんねって、もしそうだったらどうするんだ。何の問題もなかったら?」

 

 従者は、軽く肩をすくめた。

 

「なあ、あんた。公正かどうかなんてのは、最初から問題じゃない。どうであれ、私の主人の望みは、若旦那が入り浸ってるその小生意気な賭場が潰れることなんだ」

 

 そう言いながら、唇の端を皮肉っぽく軽く吊り上げて、タムローンの顔をじっと見つめる。

 

「ついでに、若旦那の負け分も取り返してくれたら、いうことはないだろうね。それに、もしもイカサマでない儲けるカラクリがあったなら、それを探り出して教えて差し上げれば、さぞや喜ばれることだろうよ」

 

 

 

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「――ってことでな。そいつの仕事を引き受けたんで、事前に必要なことを聞いたり、服装や軍資金なんかを用意してもらったりしてからここへ来た、ってわけだぜ」

 

 タムローンはそう言って、話を終えた。

 

「その。依頼した人の言ってた、公正かどうかなんて関係ない、っていうのは……」

 

 つまり、どういうことなのか? ……と、今ひとつ呑み込めない様子で不審そうな顔をするユマに。

 タムローンは、もう少しわかりやすく説明をしてやった。

 

「まあ、はっきりしたことは言われなかったがな。そりゃあ、つまりだ。本当に不正があればそれでよし、なくてもそういう証拠をでっちあげるとかして、とにかくこの賭場を取り潰せるように計らえってことだろうさ」

「そんなの。それこそインチキだわ、ひどいじゃないの」

 

 子供らしい潔癖さで憤慨するユマに、タムローンは軽く肩をすくめながら頷きを返した。

 

「ああ、まったくだ。けどな、そんなのは実際、よくある話さ」

「あなたは、本当にそんなことをする気なの?」

 

 ユマが眉をひそめて、そう抗議する。

 タムローンは苦笑しながら、首を横に振った。

 

「まさか、俺は自分からサマを仕掛けたことはないぜ。普段なら気に入らない仕事だが、俺がここに寄越された以上は乗ってやらないといけないんだろうと思ったから受けたまでさ。何もなかったらその時は、すっぱりと降りるさ。……とはいえ、実際にここに来てみた感じだと、何もないってことはなさそうだがな」

 

 ユマは、不思議そうな顔をして首を傾げた。

 

「え? どうしてわかるの?」

「簡単なことだぜ。ここは、真っ当に稼いでるだけにしちゃあ羽振りが良すぎるんだ」

 

 常に五分と五分で戦ってこその博奕、ダイスやコイン投げのようにごく単純な運否天賦のものほどいいというのが持論のタムローンだが、決して頭が悪いわけではない。

 複雑なカードゲームやプラッカチェスのような思考を要するゲームでも、優秀なプレイヤーだった。

 彼はこのカジノに入ると、まずは内部の様子を把握するとともに、用意されているすべてのゲームをチェックして、そこで張られている掛け金と勝率、客の回転から考えて、どの程度儲かるものかを計算してみたのだ。

 

 もちろん、複雑な内部事情はわからないからざっとした概算だけだし、この異世界の物価などについてもなんら正確なことを知っているわけではない。

 それでも、どう考えても明らかに採算が合わない、というのがタムローンの結論だった。

 

「客層は貴族と金持ちだけで、そいつらに合わせた上等な飲食物は、酒も含めてぜんぶ無料。カモフラージュのために地上に立てた店は、一級品ばかりの宝石店。内装も手が込んでて、一流ホテル並みの休憩室や仮眠室まで用意されてる。従業員も大勢だ。そのくせ参加料は安いし、それぞれの博奕の勝率設定も、特に悪いってわけでもない。これで真っ当に運営してた日にゃあ、胴元は大赤字だぜ」

 

 つまり、何か真っ当じゃない、客に明かされていない追加収入を得る方法があるに違いないんだ……と言って、タムローンは話を締めくくった。

 ユマはそれを聞いて、感心したように頷く。

 

「そうか。タムローンは頭がいいのね」

「博奕打ちにしてはな」

 

 謙遜気味にそう言うと、タムローンは賭場の方に顔を向けた。

 

「さて、ちょっと長くなったな。俺は飲み物でももらって喉を潤してから、そろそろ仕事にかかることにするよ」

「だけど、その仕事の内容は、あなたが頼まれた本来のクエストとは違うわ。マルスミルドさんに探すように言われたカードがどこにあるのかは、探す心当たりはあるの?」

「特にないな。しかしまあ、占い札を引いてここまで来たんだから、この仕事にもそれと何かの関係があるんだろうさ。当面は依頼の件をこなしながら、向こうから話が飛び込んでくるのを待つことにするよ」

 

 ひょっとして、彼が探すように言われたカードとは、もしかしたら自分の持っているもののどれか、あるいはぜんぶのことだろうか。

 だとしたら、残念ではあるけれど、彼に引き渡したほうがいいのかも……。

 

 ユマはそう考えて、その旨を伝えてみたが、タムローンはあっさりと首を横に振った。

 

「あいつは、この世界に散らばったままでいるのを探して来いといったんだ。カード使いのお前さんが集めて管理してるものなら、とりあえずそのまま持っててもらえばいいさ。むしろその方が、他のカードを取り戻す助けにもなるはずだぜ?」

 

 手伝ってくれるんだろう? ……と尋ねるタムローンに。

 ユマはもちろんだと、大きく頷いた。

 

「よし、それなら着いて来てくれ。本当なら子供に来させるようなところでもないんだろうが、何事も勉強だ」

 

 そう言って、タムローンは賭場の方に戻っていた。

 ユマも、その後に続く。

 

「とりあえず、大勝ちを目指す。なにかイカサマがあるとしても毎回そいつを使ってるってことはないだろうが、カジノが大損害を受けそうになりゃあ、きっと持ち出してくるだろうからな」

「勝つ自信はあるの?」

 

 タムローンは、自分からはイカサマは仕掛けないと言っていた。

 しかし、賭け事というのはそういったズルをするのでもなければ、基本的には運の勝負ではないのだろうか。

 そんなもので、狙い通りに大勝ちするなんてことが、はたしてできるのか……。

 

「そいつは、セテトの思し召し次第さ。目が出ないようなら、今日は俺の勝つ日じゃないってことだ」

 

 タムローンはあっさりとそう言うと、賭け事が行われているテーブルのひとつに向かっていった。

 その途中でユマの方を振り向くと、にやっと笑いかけてみせる。

 

「でもな、今日は間違いなく勝てるさ。なんたって、お前に再会できた日なんだからな。ツイてないはずがないだろう?」

 

 

 それから、しばらくの時間が経って。

 

 彼自身が宣言したとおり、今夜のタムローンにはツキがあるようで、今のところ順調に勝っていた。

 しかし、何分純粋に運の勝負のことゆえ、時には負けることもあったし、まだそこまで極端に大きく勝っているというわけでもない。

 勝負自体も彼の好むごく単純なゲームだったので、見ているうちにユマは緊張感に欠けていていけないとは思うものの、どうしても少し退屈になって、眠気を感じてきた。

 

 タムローンもそんな様子を察して、彼女に声をかける。

 

「別に、ずっとここで見てなくてもいいぜ。勝負はまだかかりそうだし、少し他のテーブルでも見物してきたらどうだ。そのほうが勉強になるだろう」

 

 ユマは少し迷ったものの、確かにずっとここにいても、自分にできることがあるわけでもなし。

 事態が動き出すまではどうしようもなさそうだからと考えて、席を立つことにする。

 

「わかった。じゃあ、勉強してくるわ。タムローンもがんばってね」

 

 それから、近くにいた従業員に声をかけて冷たい飲み物をもらうと、他のテーブルを回って、そこで行われている賭け事の様子を順番に見ていった。

 

 最初に見たテーブルでは、『蛇(くちなわ)のまなこ』という、サイコロを使ったゲームが行われていた。

 見た感じでは、基本的には二人の客同士が勝負するもので、それぞれが二つのサイコロを振って出た目が大きかった方が掛け金を取るらしい。

 ただし、蛇のまなこ……つまりは1のゾロ目が出た場合だけは勝者なしで、掛け金は胴元が没収することになっていた。

 参加している客たちは大体、あと蛇のまなこが1回出るまでとか、2回出るまでとかをあらかじめ決めて、勝負をしているようだ。

 

(このゲームだと、お客さんがいくら勝ってもカジノ側が損をすることはないわね。あんまり儲かりもしなさそうだけど)

 

 タムローンはサイコロ賭博が好きらしいが、このゲームを選ばなかったのはそのためなのだろう。

 いくら勝ってもカジノ側は出てこないかもしれないし、ゲームそのものにもイカサマなどは仕掛けそうにもないから。

 

 カジノには他にも、ディーラーが振った三つのサイコロの目を客が当てるという勝負もあるようだったが、それもタムローンは選ばなかった。

 それについては、自分でサイコロを振れないのでは味気ないから、ということらしい。

 

(ええと、他には?)

 

 少し離れたテーブルには、カードを使った博奕もあった。

 たとえば、『サンク』という名前の、トランプのような札を使ったゲーム。

 ルールはあまり詳しくはわからなかったが、見た感じではどうも、ポーカーに似たゲームのようだ。

 

 他にも同じ札を使った、『金鉱掘り』というゲームもあった。

 最初にディーラーが山札の一番上のカードをめくり、プレイヤーはその数字と同じ枚数だけ、追加でめくっていく。

 その中に最初に引いたものと同じ数字のカードが1枚以上含まれていればプレイヤーの勝ちで、掛け金を出た枚数に応じて2倍、3倍にして受け取ることができる。

 同じ数字のカードが1枚もなければプレイヤーの負けで、掛け金は胴元に没収される。

 

(うーん……。もし引いたカードの数字が1だったら、引ける確率は51分の3だから、6%未満で。2だったら……、51分の6じゃないし、ええと?)

 

 ユマもタムローンにならって確率の計算をしようと、しばらくがんばってはみたものの。

 どうにも、自分がこれまで学校で学んだ数学の知識だけでは、うまく導き出すことができないようだった。

 がっかりすると同時に、あらためて彼の頭の良さに感心もした。

 ウルフレンドは地球に比べたら学問はあまり発展していなさそうなのに、こんな計算がパッとできるのだから、彼は見かけによらず相当に学のある方なのではないだろうか、と思った。

 

 まあ、詳しい計算はできなかったものの、可能な範囲で考えて受けた印象としては……。

 確かにタムローンも言っていた通り、カジノ側の方が勝率的に有利なのは確かであるにもせよ、それだけで大儲けできるほどに客側の方が著しく不利というわけでもなさそうだ。

 

(カードの数字が10とかだったら、引ける確率の方が高いでしょうし。時には、2枚以上引けることだってあるわけだものね)

 

 その他のテーブルも、ユマは一通り回ってみた。

 

 ルーレットゲームでは、回転盤に白と黒に塗り分けられた4と1つの属性、地・水・火・風・虚無のポケットと、エルフのポケットがあった。

 客はそれぞれのポケットに1点賭けするか、色で賭けることができ、エルフのポケットに入った場合は胴元の総取りだ。

 

 あとは、カードを使った絵合わせのようなゲーム、すごろくのようにボードの盤面を回るゲーム、袋の中から色付きの小さな石を掴み出すゲームなど。

 

 どれもこれも目新しく、ルールを聞いて勝率を考えたりするのはそれなりに楽しかったが、いずれのゲームにもこれといって不正行為のようなものがありそうには思えなかった。

 まあ、プロであるカジノが自分のような素人の子供に見つけられるような不正をするはずもないし、当たり前のことか。

 ここはやはり、タムローンがうまく成果をあげてくれるのを待つしかないだろう。

 

(そろそろ、戻ってみようかな……)

 

 そう考えながら、首を巡らせた時。

 

「……?」

 

 ふと、カジノの客の中に見知った顔がいたような気がした。

 まさかと思いながらも、念のため確かめてみようと、そちらへ近づいてみる。

 

 ディーラーが振ったダイスの目を当てるサイコロ賭博のテーブルについて、順調に勝ちを積み上げているらしい、一人の客……。

 

「あ……」

 

 見間違いではなかった。

 

 青い乗馬服に、膝丈まであるブーツ、そして大きなシルクハット。

 子供のような体つきでそんな装いをしているために、遠目にはまるで美しい少年のようにも見えたのだが。

 近くに寄ってみれば、その端正な面立ちと鮮やかな青い髪とで、はっきりとわかった。

 

 ユマは邪魔にならないよう、今行われている勝負が終わるのを待って、そっと彼女の肩に手を置いた。

 振り返ったその少女の目が、はっとしたように、わずかに見開かれる。

 

「……ユマ?」

「タバサ、どうしてこんなところに?」

 

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