逢魔の時に……   作:月白弥音

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15 気持

 

 「これは……!」

 後少しで白虎に飲まれようとしていた望虹を包み込んだ光。

 それを見た白虎は驚き、慌てたように後退した。

 「これは一体なんなの?」

 徐々に輝きが弱まっていく光に包まれながら望虹は頭が真っ白になっていた。

 その間にも光はどんどん弱くなり、望虹の上着のポケットから少し光が漏れるくらいになったところで弱まりが止まった。

 「これって……」

 望虹が上着のポケットから取り出したもの、それはあの箱から出てきた小さい石を入れた箱だった。

 望虹はその箱を開け、1つ手に持ってみる。

 それは心臓の鼓動のように明滅していて、そして。

 「暖かい……」

 さらにほかの宝珠も螢華、奈津稀、哲夜のところに飛んでいった。

 「え? 私にはないの?」

 1人だけ仲間外れにされた柚乃はそんな抗議の声をあげるが誰も答えなかった。

 いや、石が独りでに飛んでくるという普通では考えられない状況に誰も柚乃に反応する余裕がなかった。

 「それをどこで見つけた。貴様らの目的は何だ」

 さっきまで望虹に聞こえていた声、今度は全員に聞こえていた。

 「聞こえた!」

 「私にも聞こえました」

 柚乃と螢華は喜んで声をあげるが、奈津稀と哲夜は警戒を緩めなかった。

 1歩前に出て、望虹は白虎からの質問に答え始めた。

 「私達の目的は都市伝説になっていたこの森に住み着く人喰い魔物が本当にいるのかっていうことを調べにきたんだよ。この宝石みたいなやつはほかの都市伝説を調べてたら見つかったの」

 「そうか、なら我の内にて永遠の眠りにつけ」

 「いつかは眠るよ、でも今じゃない。あたし達のもう1つの目的をまだ果たせていないから」

 「いったいなんのことだ」

 「――白虎さん達を助けること」

 「我らを助ける?」

 「うんそうだよ、白虎さん達みんな辛そうにしてる。まるで自分に嘘ついてるみたいに。実際にそうなんでしょ?」

 「…………」

 望虹にそう指摘された白虎は何かを考えるように黙り込んだ。

 「我らはそういう運命にあるのだ。それは永遠に変わらない。我らがまだ我らであるうちにこの場を去れ。さもなければ命の保証はしない」

 そして白虎はそう言ってまた辛そうに顔を歪めた。

 「白虎さん、それは違うよ……」

 望虹は目を潤ませながら反論する。

 「永遠なんて……ないんだよ。いつかはみんな変わっていく、変わっていかなきゃだめなんだ、あたしも、あなた達も!」

 それは白虎に言っているのではなく、自分自身に言い聞かせてるような気がした。

 「そうだ、永遠に変わらないものなんてこの世に存在しない。どんなに剛体だって力を加えれば変形する。永久不変なものなどない」

 「みんな1つは逃れたい運命や過去の記憶がある」

 「それでも人は生きています。こんなはずではないという気持ちを心に抱き毎日の生活を送っています」

 「あなた達だけじゃなくて、この世界に生きているみんながそう思ってるはずなんだよ」

 それぞれが言葉を紡ぎ、その思いを伝えていく。

 「こんなはずじゃないこと、それを1人で乗り越えるのは大変。でもね、仲間が、友達がいれば乗り越えられる。あたしもそうだった、みんながいなかったらって思うといつも背筋が寒くなる。だからこそ、私は白虎さん達と友達になりたい」

 望虹が自分の思いをぶつける。

 「友達だと。何をふざけている」

 「ふざけてなんてないよ。やっとわかったの。『自らの心と覚悟を解き放て』。これはきっと助けてあげてほしいというメッセージだったんだよ」

 「なぜ我らにそこまでしようとする。我らを支配下に置き、戦力としたいからか?」

 「ちがうよ、白虎さんたちがどんな風に生きてきたのかわからないけどあたしは対等な友達でいたい」

 望虹が白虎と対話している間に他のメンバーも他の四神に呼びかけている。

 しかし、どこもそんなに上手くいっているわけではないようだった。

 だが望虹もいっぺんに何人もは話せない。

 とにかく白虎との話を終わらせなければなにもできなかった。

 「我らは危険だとここに縛られた、そんな我らを外に出すのか?」

 「うん、私は出す。白虎さん、さっきからあたしの心配してくれてるもん。それに自分から好んで人を襲ってたわけじゃないみたいだし」

 望虹は確信を持ったようにそう言った。

 「貴様は全てをわかっているのか?」

 白虎がそう聞くが望虹はゆっくり首を横に振る。

 「ううん、全然分かってないよ。ちょっとは知っている部分もあるけどね」

 そして笑顔を見せた。

 そのままさらに言葉を続ける。

 「でもあたしにも分かることがある。だから今は、白虎さん達と一緒にいたい。ずっとそばにいる!」

 そう望虹が言ったとき、今までほのかに明滅していただけだった小さい宝石が突然輝きを増した。

 「それが貴様らの覚悟か……」

 「どういうこと?」

 望虹はよく分からないと言うように白虎に聞くが白虎は答えなかった。

 その代わりに首をおろし、望虹と同じ高さに持ってきた。

 「貴様、名は何という?」

 「え? 望虹、神端望虹だよ」

 素直に答えた望虹だったが、白虎は少し驚いたような表情をしていた。

 「神端望虹か。おまえは我とつながる運命にあったのかもな……」

 「え……?」

 「細かいことは後だ。その宝石を手に乗せ前に突き出せ」

 「えっとこうかな?」

 望虹は言われたように手を前に出す。

 「そうだ。我、主を守る獣なり。契約せしは我が主、神端望虹。我それを受け入れん」

 そう言い終わった白虎の体は白い光に包まれ、望虹が持っていた小さい宝石に吸い込まれていった。

 「白虎さん!」

 「心配するな」

 慌てて呼びかける望虹。

 すると白虎の声が手に持った宝石から聞こえてきた。

 「我は普段ここにいるが必要なときに声をかければ外にでることもできる。これを普段から身に着けておいてくれ」

 「う、うん、わかった」

 今まで出会ったことのないような不思議現象の連続に、望虹は驚きすぎて疲れていた。

 「……心地いいな。こんなに頭がすっきりしたのはいつぶりだろう」

 「ずっと自分の意志でどうにもできない状態だったの?」

 「ああ、わかりやすくいえばそうだな。しかし、なぜそれを?」

 「あ、えっとね……」

 「いや、待て。その話はあとにしよう。皆、終わったようだ」

 そう言われ望虹はあたりを見回す。

 そこにはすでに四神の姿はなく、それぞれの手に乗っている宝石を見ている望虹の友達だけがいた。

 よかった、みんな友達になれたんだ、そう望虹は安心する。

 「彼らも主になるべくしてなったようだな」

 彼らの様子を見ながら白虎はそう漏らす。

 「私の時も言ってたけど、それってどういうことなの?」

 望虹は不思議そうにと聞く。

 「その話は後だ。とにかく今は森から出る方が先だろう」

 しかし、白虎はそう言って話そうとしなかった。

 「そうだね」

 白虎の意見に望虹も賛成し友達に向かって

 「さあ、帰ろ!」

 そう笑顔で言った。

 

 

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