逢魔の時に……   作:月白弥音

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16 四神

 「おっはよー! 歌梨ちゃん、彩加ちゃん」

 「おはよう、神端さん」

 「おはようございます、神端さん」

 昇降口で会った歌梨と彩加に元気よく挨拶をした望虹。

「朝から元気ですね。何かゴールデンウィークの間にいいことあったんですか?」

 彩加は横を歩く望虹に元気のわけを質問する。

 「えへへ、ちょっとね」

 望虹は笑顔で答える。

 「ちょっとって?」

 歌梨が聞き返すが望虹は答えなかった。

 「いつかまた話すよ」

 そのかわりにと約束だけ交わした。

 「もしかしてお付き合いはじめた方がいる……とかですか?」

 「えっ! そうなの! み……神端さん!」

 「そ、そんなわけないでしょ! 大体まだ私、好きとかそういう気持ちもよくわかんないもん! 彩加ちゃん、飛躍し過ぎ!」

 「ご、ごめんなさい、神端さん。最近、私の周りでそういう話をよく聞くからついつい気になっちゃって……」

 「私も他人のコイバナを聞くのは楽しいし、好きだけど、自分がっていうのはまだ全然想像できないなぁ」

 「私もそうかな。少女漫画の恋愛はきれいに行きすぎだと思うけど、あんな恋愛にあこがれもする。運命とか、偶然の奇跡とか、やっぱりいいなって思うよ」

 「ちょっと、意外。歌梨ちゃんはあんまりそういうこと思ってないのかと思ってた」

 「私だって、ちょっとくらいは思いますよ。腐っても女の子だからね。その点、牧園さんはそういうシチュエーションやったり聞いたりするんでしょ?」

 「私はそこまででもないかな? 学校もあるからってドラマのお仕事とか映画のお仕事とかはマネージャーさんが断っているみたいだから」

 「そうなんだ。なんかせっかくそういうことやれるかもしれない世界にいるのに」

 「あはは、確かにそうだよね。実は私に演技の才能がないからお仕事貰えないだけなのかもしれないけどね」

 「えー、彩加ちゃん何でもできそうなのになぁ」

 「そんなことないんだよ? なんかみんなからそう思われているみたいで私にかかる期待が大きくて大変……」

 「それは大変だね……」

 教室に入り窓際にある自分の席についた望虹は近くの窓から空を見上げた。

 そこにはくも1つない綺麗な青空が広がっている。

 非日常の固まりだったあの帰らずの森での出来事。

 それがまるで全てうそだったように思えた。

 そして同時に自分が普段いる日常に無事に帰ってこれたことを自覚した。

 友達と楽しく会話をしたり、何気ないことで笑いあったりできる当たり前の日常。

 それはとても大切なものなのだと改めて知ることができた今回の調査。

 「はい、では朝のホームルーム始めますよ」

 望虹達の担任、音無明日美先生が前で指示を出している。

 望虹は確認するかのように制服の上からポケットに入れてある白虎の宝珠を握って、視線を音無の方に向けた。

 

 

 

 ――放課後

 部室に集まった地域文化部メンバーはそれぞれ四神が入っている宝石を取り出し、四神を呼び出そうとする。

 「ねえ、ちょっと待って」

 「なんだよ」

 奈津稀が呼び出しに待ったをかけた。

 「なんだかノリノリだね、哲夜……じゃなくて! あの大きさで出てきちゃったらどうするの! この部室壊れちゃうよ!」

 「あっ……」

 「失念していました……」

 「ねえ、白虎さん、どうする?」

 「構わん、そのまま出させてくれ」

 「じゃあ信じるよ」

 言われたままに4人は呪詛を唱える。

 『我と契約せし獣よ、今ここに顕現せよ』

 宝珠が強く光り、その眩しさに望虹たちは目を瞑る。

 そして、その光が収まり、4人が目を開けるとそこには……

 「あれ? いない……」

 「おい、よく見ろ。ここだ」

 白虎の声は聞こえる。

 しかし、その姿を見つけることができなかった。

 「声の位置からしてわたしたちのすぐしたくらいでしょうか……ってこれは」

 「ち、ちっちゃ~い!」

 呼び出された四神はデフォルメしたように小さく可愛くなり、全員が1つの机の上に乗れていた。

 「かわい~!!」

 いきなりミニ四神達を抱きしめた望虹。

 抱かれたミニ四神の方は苦しそうにもがく。

 「と、とりあえず放してくれないか」

 望虹に頼んでもまったく聞いていない。

 「いたっ! 何するの、哲夜君!」

 「そろそろ放してやったらどうだ? それに俺達は四神に聞きたいことがあって呼び出したんだろ」

 それでもまだ放そうとしない望虹に見かねた哲夜は頭を叩いた。

 「あ、そうだった!」

 望虹は名残惜しそうにミニ四神達を机に放した。

 「それで白虎さん、私達がみんなの主になるべくしてなったって」

 ようやく本題にはいる、そんな風に望虹は真剣に白虎に問いかけた。

 「ああ、そのことか……」

 白虎は思い出したかのように呟いた。

 そして一度、他の四神達の方を向き何かを話していたかと思うとすぐに望虹達に再び向いた。

 「では話そう。我らは四神と呼ばれるのと同時に5行思想の1つである5獣の要素でもあることは知っているか?」

 「はい、知っています。木の行、青竜、火の行の朱雀、金の行の白虎に水の行、玄武。それに加えて土の行に麒麟が入るのですよね?」

 白虎の質問に答えたのは螢華だった。

 こういう神話系統に精通している螢華は目を輝かせて説明を聞いている。

 逆に科学オタクの哲夜はさっぱりわからないと言うような顔でミニ四神を見ていた。

 しかし白虎はそんな哲夜を気に止めず説明を続ける。

 「その通りだ。それにさらに季節や、穀物、人の体や気持ちまでがその行と呼ばれるものに分類することができると考えられた。これを世間では5行説というらしい。そして我らがいる行の要素がとても多かった。それだけだ」

 「それって例えばどんなのなの? 教えてよ」

 その話に反応したのはやはり望虹。

 好奇心に満ちた目で白虎に詳しいことを聞き出そうとする。

 「折角だ、自分の主について語ってもらうとしよう」

 白虎はそう言って一度言葉を切る。

 「ではまず我からだ」

 「はい! お願いします!」

 「我が主の神端望虹という名は姓の神端が我ら四神を想像させられる。我らは神そのものではないからな。さらに神の読みの通りに字を当てると寒、我が行の五悪にもなる」

 「へぇ~そうなんだ」

 望虹はわかったのかわかってないのか定かではないが、とりあえず頷いていた。

 「では次は私だ」

と言ったのは朱雀。

 「私ですね、よろしくお願い申し上げます」

 「うむ。主である朱羽螢華の姓はそのまま私を指し示されているかのようだった。また、螢は私の五星である螢惑、現代で言うところの火星を意味している。さらに、私の五常である礼がしっかりなっていた」

 「そのようなことを仰るなんて、恐縮です」

 朱雀の誉め言葉にしっかり螢華はお辞儀をして感謝した。

 「では儂じゃな」

 少し年老いた声でそう言ったのは玄武。

 「よくわからないが、聞かせてくれ」

 「本当にこういうことに疎いのじゃな……まあよい。儂の主、北原哲夜の姓は儂の5方、北がはいっとる。名には五金の鉄が見つけられるな。その頭にある知識は五常の智にふさわしいものじゃ」

 「……そうか」

 哲夜は特に驚きも喜びもせずそっけなく返した。

 「最後は私だ」

 残った青竜、最後の四神が主のことを話し始めた。

 「主、鈴谷奈津稀の姓は五金、錫が見受けられる。また、奈津稀の名を逆から読めば絆と読め、その性格も私の五常、仁に値する」

 「僕の名前にそんな意味が……」

 名前をコンプレックスに感じていた奈津稀にとって、この事実はとても嬉しいことだった。

 「だいたいこれくらいだな」

 「うん、わかった。ありがとう白虎さんたち」

 「逆に我らからも筆質問していいか」

 「もちろん、なに?」

 「なぜわれらの状態を知っていた。そしてなぜその宝珠を……」

 「あなた方の状態は晴佳さん、御門晴佳さんから伺いました」

 「なに、御門だと。まだあの血筋は残っていたのか。そうか、それで宝珠を持っていたわけか」

 「ううん、それは違うよ。あれは私たちが違う都市伝説を追っていたときに見つけたものなの。でも、今考えたらそれがすべての始まりだったんだよね」

 「そうだな。あのとき地面を掘ってみなかったら今こうして話していることはなかったのかもしれないな」

 「そうか、あやつは我らの未来をこんな小さき勇者に任せたというわけか」

 「え?」

 「いや、なんでもない。それよりお客さんみたいだ」

 「お客さん?」

 「やっほーみこっち! ってめちゃ可愛いじゃん、このマスコット! どうしたの、これ!」

 「いや、あのそれこの前の四神さんたちだから……」

 「ふーんそうなんだ……って、ええ!」

 「柚乃先輩、反応が楽しいですね」

 「確かにそうだね。あんなハイテンションでいつもいれる人そんなにいないよね」

 「ばか、柚乃姉はそういうやつじゃない。ばかをしているように見えて、すごく周りをよく見て、うまく人を丸め込む。真性の人たらしだよ」

 「へぇ、哲夜、信頼しているんだね」

 「不本意ながらな。悔しいけど、本当に頼りになる」

 「まさか、てっちゃんの口からそんなことが聞けるなんてね。うれしいな」

 「あっ……」

 哲夜の顔は本人がいたことに気づいた瞬間どんどん赤くなっていく。

 「あーくそ!」

 照れくさそうに頭をガシガシする哲夜を見て4人で大爆笑していた。

 「はー笑った笑った! こんなに笑ったの久しぶりだよ」

 「お前らあとで覚えていろよ……」

 「はいはい。あ、そんなことより望虹、まだここにいたの?」

 「え? 今日って何かあったっけ?」

 「この前の返事。晴佳さんにしに行く約束だったでしょ」

 「あ……うん……」

 「なんだ、どこかにいくのか」

 「うん、いかないといけない。1回戻ってもらえる?」

 「あいわかった」

 そう言って望虹たちは四神を宝石に戻した。

 「望虹……」

 「わかっているよ。ちゃんと私の答えを伝える。晴佳さんにすごく怒られちゃうかもだけどね」

 「とりあえずいこっか。柚乃ちゃんも一緒に来てくれる?」

 「もちろん。最後まで付き合うよ」

 「うん、ありがと」

 

 

 

 「ここは……」

 「晨明神社に行くための階段だよ。ここを上るの」

 「ここは御門の屋敷があった場所か」

 「そうなの?」

 「いや、私にそれを聞かれてもさすがにわからないかなって」

 「そうだよね。でもどうして?」

 「……懐かしい。我らが初めてここに来た時と空気が何も変わっていない。凛としていて心が休まるこの空気が我は好きだった」

 思わぬ昔話に望虹は気持ちがほっこりした。

 それでもこの先に待ち構える階段という現実は何も変わらないのだが。

 「覚悟は決まったか?」

 「うん、今日こそ普通に上りきってみせるんだから」

 「望虹、がんばってね」

 「よし、いくよ!」

 かくして彼女たちの階段チャレンジが始まった。

 

 

 

 「はぁはぁ……やっぱりきっついよ……」

 「途中で走るから悪いんだろ……」

 呆れたように言う哲夜。

 哲夜が文句を言いたくなる気持ちも分からなくはない。

 なぜなら、望虹が走り始めると哲夜も律儀に走ってついていくのだ。

 つまり、望虹が走るとそれだけ哲夜も疲れることになる。

 「だって、なんか走りたくなっちゃって」

 「自由すぎるだろ……」

 「本当にじっとしてられないよね、望虹って……」

 「それが望虹ちゃんのいいところなんですけどね」

 「そして、それをうまく制御しつつ振り回されるのがてっちゃん。なんだかんだ文句言ってもてっちゃんはみこっちに絶対についていくからね」

 「しかたないだろ、俺しかついていける人がいない時に頼ってくるんだから」

 じゃあ今は、という野暮な質問は誰もしなかった。

 「いつもありがと、哲夜君」

 満面の笑顔でお礼を言う望虹。

 そんな顔を見せられてしまえば何も言えない。

 「……ほんと、ずるいよな」

 「ん? 何か言った?」

 「なんでもない。さっさと行くぞ」

 「あ、待ってよ!」

 首を傾げながらも追いかける望虹。

 その2人を柚乃は微笑ましそうに見ていた。

 

 

 

 「……今日で1週間じゃ。答えは決まったかい?」

 「はい、決まりました」

 「そうかい、じゃあ聞かせてくれ」

 「ですが、その前に1つ言わなければならないことがあります」

 「言わなければいけないこと? なんじゃそれは」

 「私達は先日、帰らずの森に行ってきました」

 「なんじゃと! あの話をしてなお行ったと言うのか!」

 「はい、その通りです」

 「好奇心もそこまでなってはただの向こう見ずじゃの……」

 「確かに私達は好奇心もありました。しかし、晴佳さんのお話を伺ってもう1つ目的が生まれました。暴走してしまって自我を失っている四神の皆さんをお助けしたい。それがもう1つの目的として追加されました」

 「そんなこと、素人でしかも子供であるお主らにできるわけがないじゃろう。もう中学生なのだから夢と現実を区別せねばダメじゃ。あれのテリトリーであるあの森に入って命があるものなどおらん。お主らも中には入らず入口だけで帰ってきたんじゃろ?」

 「いいえ、俺たちはしっかり中を探検し、四神たちと出会いました。そして、その結果がこれです」

 哲夜だけでなく、全員が自分の持っている宝珠を見せる。

 「……ばかな、宝珠に輝きが」

 「あいも変わらず御門の人間は力という曖昧で無意味なものにこだわっているのだな。みこの教育が足らなかった証拠だ」

 小さく呟いた白虎は呆れているようだった。

 「え、私?」

 突然名前を出されて驚く望虹。

 「違う、私たちを呼んだ御門の初代当主のことを我らは巫女と呼んでいたのだ」

 さっきは言ってくれなかったのに、大切な思い出なのかな。

 言葉には出さず、宝珠に優しく微笑みかける。

 「どうした」

 「ううん、なんでもないよ」

 「ならばよい。さあ主よ、我を外へ」

 「うん!」

 呪詛を用いて宝珠の封印から解き放つ。

 今度はデフォルメフォームではなく本来の姿で白虎。

 「久しいな、森の外は」

 「びゃ、白虎様……なぜ森の外に……け、結界はまだ破られていないはず」

 「ああ、結界はな。時に現代の御門よ、貴様らは相変わらず力などという曖昧で無意味なものに囚われているのだな」

 「わ、我々はこの地を守るために!」

 「その結果が我らを森に閉じ込めることだったのだな」

 「そ、それは……しかし、しかるべき時が来れば解放しようと……」

 「主たち、この小さな勇者は特別な力など何も持っておらん。ただ、我らを純粋に心配する気持ち、そして我らの姿を見ても逃げない覚悟。我らを救ってたのはお主らが言う力ではない。嘘偽りのない純粋な心が我らを救ったのだ」

 また小さいって言われた、望虹のつぶやきに4人は笑いを必死に堪える。

 さすがに今の状況で笑うわけにはいかない。

 そうはわかっていても切実な望虹のつぶやきに笑うなという方が無理であった。

 「我の話は終わりだ。主よ、現代の御門に伝えることがあるのだろう」

 「あ、うん! 晴佳さん、身勝手なことだということはわかっています。それに本来であれば晴佳さんが持っているべきだということも、わかっています。でも、この宝珠は渡せません」

 「なぜだ! お主らにはなんの価値もないものじゃろ!」

 「いいえ、私と白虎さんは友達です」

 「友達じゃと……?」

 「はい。ですからこれは私たちがいただきます」

 「待て、それはわしらの……」

 「ごめんね、晴佳さん。今の話聞いててこの子達のこと、任せようって思えないや」

 「柚乃、お主まで……」

 「いい人だと思っていたんだけどね。時にはみこっちみたいに動いてみないとダメなんだよ」

 「もう御門に用はない。主よ、帰るぞ」

 それだけ言うと再び白虎は宝珠に戻った。

 「わしが悪かったんじゃな……先代がやってきたように力を手に入れなければと思うあまり目的を見失ってしまっていた」

 「晴佳さん……」

 「わしはそのためにこんな老いぼれになってしまった。もう長くない」

 「大丈夫ですよ。まだ今からでも変われます。その気持ちがあれば!」

 「……そうじゃな。宝珠はお主らに託そう。わしが持っている方が価値がないものになってしまう」

 「……っ! はい! ありがとうございます」

 「じゃが、また来ておくれ。お主らの成長がわしも見たい」

 「はい、また来ます。晴佳さんも長生きしてくださいね」

 

 

 

 

 「やっと終わり、なのかな」

 「そうだね、今までやった中で一番大きな不思議だった気がするね! なんて言ったって白と会えたんだもん!」

 「びゃく?」

 「うん! 白虎さん! 可愛いでしょ?」

 「そんな、伝説の神獣になんてことを……」

 「……は、はは、ははは」

 「白? って呼ばない方がいい?」

 「いや、特別に呼ぶことを許そう。しかし、白か。はは、まさかその名でもう一度呼ばれようとはな。長く生きてみるものだ」

 「もしかして……巫女さん?」

 「その通りだ。そういえばお主も望虹だったな。やはり名前にも重要な点があったということか」

 見たことがなかった白虎の笑い声に望虹たちだけではなく、他の四神たちも困惑していた。

 「じゃあどうせなら他の子達もあだ名決めちゃう?」

 「あ、それいいね! 私がつけたい!」

 「いえ、あの流石にそれは……」

 「そうだよ、神様なんだし……」

 「えぇ〜だめ?」

 螢華と奈津稀に却下されても望虹は諦めない。

 宝珠にいる四神たちにも質問する。

 「儂は構わんぞ」

 「私も特に異論はないな」

 「私も同じだ」

 「うそだろ……」

 「やった!」

 望虹の諦めない気持ちの勝利だった。

 四神たちが望虹の熱意に負けただけな気もするが。

 「じゃあね、まず朱雀さんはスー! スーちゃんでもいいよ!」

 「私がスー……そう呼ばれたことがないからか、妙な感じがするな」

 「青竜さんはリューくん! セイちゃんでもいいけど……」

 「私はどちらでも構わん。好きな方で呼んでくれ」

 「ありがとね! 最後の玄武さんは……ぶっち! どうかな?」

 「儂らしくない可愛らしい名じゃが気に入った。蛇も喜んでおる」

 「そっか、よかったー! よろしくね、白、スーちゃん、リューくん、ぶっち!」

 「なんだ、このペットみたいな呼び方」

 「まあまあ……みこっちもみんなも楽しそうだしいいんじゃない?」

 「まあな」

 楽しそうに宝珠と会話をする望虹を2人は優しく見守っていた。 

 

 

 

 「じゃ、僕たちも帰ろっか」

 「その方がいいと思われます。明日からは中学初のテストがありますし」

 螢華がそう言った瞬間、場の空気の温度が下がった。

 「ね、ねぇ螢華ちゃん。今なんて?」

 「明日からテストが行われると」

 「「忘れてた~!!」」

 奈津稀と望虹が叫んだ。

 「何で教えてくれなかったの!?」

 「配布されたプリントに明記されていましたので……」

 「あたしそういうの読まないって知ってるよね!」

 「ええ、はい……」

 「ならどうしていってくれなかったのー……」

 「それは私のせいなのでしょうか……」

 「望虹、頑張れ」

 「ちょっと、みんな〜! っていうか奈津稀君も同じじゃないの!」

 「僕は普段から少しやっているからそこまでひどくないはずだし!」

 「むー! 私だって授業は割とちゃんと受けているから平気なはずだもん!」

 哲夜はきっとこれは2人とも勉強していないのだろうと想像する。

 もう少しテストまでに時間があれば何か手伝えたのだが、テスト前日、しかももう夕方となればやれることなど何もなかった。

 中学になっての初めてのテストだからさすがの望虹でも忘れないだろうと高をくくっていたのがよくなかったか、とどこまでも甘い哲夜。

 「あ、ちなみに晨明中は部活動が盛んとはいえ、勉強をおろそかにしてはいけないということで、赤点が多くなると部活動が1時的に禁止になるらしいので気を付けてくださいね」

 螢華は嘘が言えないその性格故に大きな爆弾を落としていった。

 「そ、そんなぁ!」

 「ま、そうならないようにせいぜい頑張れ」

 「この薄情者ー!」

 こうして、地域文化部が新体制になって初の外部活動を閉じた。

 彼女たちのテストの点数はここに書くまでもないだろう。

                          

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