逢魔の時に……   作:月白弥音

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10 友達

 柚乃と別れ、二人は自分達の教室に向かう。

 

 「それにしても相変わらず自由な人だな」

 

 哲夜がポツリと呟く。

 

 「柚乃ちゃん?」

 

 「ああ。それにあの人の情報網はある意味怖い」

 

 「確かにね……でも今回はそれのおかげでもっと新しいことがわかるかもだし!」

 

 「まあな」

 

 でもなんか悔しい、そう思っている望虹は今ある情報をもとに徹夜と意見交換をする。

 しかし、たいした答えは出ないまま13HRの教室についてしまった。

 

 「やっぱり俺たちの情報だけだともう限界だな」

 

 「うん……でもなんか負けた気がする―! ……わぁ!」

 

 望虹は教室の扉を開け驚いた。

 誰もいないと思っていた教室に人が残っていたのだ。

 望虹が扉を開けた状態で固まっていると声に気づいたその子が読んでいた本から顔を上げた。

 

 「あ、神端さん、それに……北原君も代表委員会お疲れさま」

 

 「あ、うん、ありがとう、歌梨ちゃん」

 

 「宮辺、俺はついでか」

 

 「あ、いや、そういうつもりで言ったわけじゃないけどね?」

 

 「もう、いちいち哲夜君は突っかからないの。それでそれで? 歌梨ちゃんは何してたの?」

 

 残っていたクラスメート--宮辺 歌梨--に望虹が何をしてたかを聞き返す。

 

 「別に特にやることなかったから学校で本でも読んでよって思っただけ」

 

 「そうだったんだ。それでそれで、今回はどんな内容の本?」

 

 いわゆる二次元の世界にどっぷりと浸かっている歌梨の読んでいる本は望虹の興味をそそる本が多く、彼女が新しい本を読み始めるたびに望虹はその内容を気にしていた。

 そして自分の興味を特にそそるものは歌梨に貸してもらっていた。

 特に推理系の小説や魔法、超能力が出てくるものを望虹は好んでよく借りている。

 今も望虹は歌梨から何冊か借りていた。

 逆に歌梨に望虹が貸すこともよくある。

 お互いに貸し借りをしつつ、毎月たくさんの本を読んでいた。

 

 「今日のはね、学校に閉じこめられたすごい才能を持つ十五人の高校生が外に出るために校内を調べたり殺し合いをしたりする話」

 

 「どんな話だよ」

 

 哲夜は全く理解できないというかのようにツッコミを入れるが……

 

 「それ面白そう! 読み終わったら貸して!!」

 

 「面白そうに思えるのかよ!」

 

 望虹の琴線には触れたようだった。

 

 「え? 探索とか推理とかがある小説って面白いよ?」

 

 「それがあればなんでもいいんだな……」

 

 「うーん、そういうわけじゃないけど……でもそういうのが入っている小説って結構好き」

 

 「なかなか面白いよ? 北原君もどう?」

 

 「いや、俺はいいかな……」

 

 「そう、残念……それじゃあ神端さん、早めに読むね」

 

 「うん! でもゆっくりでも大丈夫だよ。歌梨ちゃんから借りたやつ、まだ読み終わってないし……」

 

 「あれ、珍しいね。神端さんならもう読み終わっているかと思った」

 

 「いつもなら多分読み終わっているんだけど、最近ちょっと忙しくて……」

 

 「そっか。とりあえず私が読み終わったら貸すね。返すのはいつでもいいからゆっくり楽しんで」

 

 「ありがとう。私ばっかりごめんね?」

 

 「ううん、全然! 神端さんが貸してくれるやつ、いつも初めて見るような内容のやつだから面白くて楽しみにしているし。いつもどこで探してくるの?」

 

 「普通に本屋さんに行って探しているだけだけど……私の本ってそんなに変わっている?」

 

 「うーん、少なくとも私はみないような内容ばっかりだよ?」

 

 「そうなんだ……」

 

 自分がズレていると言われているようで少し傷つく。

 しかし、ズレていると思っていないのは望虹本人なのだが。

 

 「そ、そういえばこの小説ね、ゲームが原作なんだけど、今度新作が発売されるんだって! ああ~そのゲームやりて~!」

 

 「そうなんだ。あたしも面白かったらお母さんに頼んで買ってもらおうかな……?」

 

 「いいなぁ、そうやってすぐ買ってもらえるなんて」

 

 「ううん、そんなことないよ? うちの場合、誕生日とクリスマスの二回分をいつでももらえるってことになっているの」

 「なるほど。私も今回は同じかな。私も誕生日プレゼント前倒しでゲーム機本体と一緒にもらうの」

 

 「へぇ~あ、でも私も本体買わないといけないかも……」

 

 「ピーネオ、えっと……PUneoなんだけど……」

 

 「持ってない……お母さんに本体を頼んでソフトはおこづかいかなぁ……」

 

 「ソフト買えるほどって、神端さんはお小遣いいくらくらいもらっているの?」

 

 「ううん、そんなに多くないよ。月三千円。みんなと出かけるのが多いとちょっと大変なくらいで……歌梨ちゃんは?」

 

 「私はおこづかい制じゃなくて、その年にもらったお年玉を全額もらって、それで一年分。一応必要な時はお金あげるとは言われているけど、あんまり頼りたくなくて」

 

 「確かに、そういうシステムならあるお金でやりくりしたくなるかも」

 

 「でしょ?」

 

 望虹と歌梨がガールズトークに花を咲かせ、入る余地がなくなった哲夜は。

 

 「先行ってるからな」

 

 諦めて一人教室を後にした。

 その言葉すら、彼女たちには届いていなかったのだが。

 

 

 

 

 「この前の小学生の魔法使いのやつも良かったよね」

 

 「うん、最後の周りの魔力を集めて撃つやつは星の光が集まるような感じだったよね。リアルで見てみたいなぁ……」

 

 「きっと集めるところは綺麗だけど……あの威力をどこに撃つの……?」

 

 「戦闘用の場所とはいえ、あそこまとめて吹き飛んでたしね……」

 

 「本当にあの受けた方の子、よく死ななかったよね」

 

 「まあ物語だから」

 

 「そうなんだけどさ。そう言っちゃったら面白くないじゃん!」

 

 「夢も魔法もないんだよ……」

 

 「歌梨ちゃん、それ違う魔法少女だから……しかも色々違うし……」

 

 「そうやって色々な方面でネタにされているからいいのよ」

 

 「確かにそうなんだけどね……」

 

 「そうそう。さて、私はそろそろ帰ろっかな。神端さんは部活?」

 

 時計を見た歌梨は帰り支度を始める。

 楽しい時間はあっという間で、完全下校時間まであと一時間もなかった。

 

 「うん、今面白そうなこと追っててね! ……でもあんまり今日は時間ないかなぁ」

 

 「そうなんだ。じゃあごめんね、引き止めちゃって」

 

 「ううん、中学に入ってから歌梨ちゃんとゆっくり話せなかったからすごく嬉しいし楽しかった!」

 

 「それならよかった。全部終わったらまた話、聞かせてね」

 

 「うん、もちろん! じゃあまた明日ね、歌梨ちゃん!」

 

 「うん、また明日」

 

 教室を出て行く歌梨を見送った望虹は生き生きとした顔をしていた。

 

 そしてふと、望虹は哲夜が居ないことを思い出す。

 

 「そういえば哲夜君、どこ行ったんだろ? 部室かな?」

 

 

 

 部室にも来てないらしいが、下駄箱に靴は残っていた。

 つまり学校内にいるはず。

 それだけを手掛かりに学校内を探し回っていた。

 

 「あ、神端さん」

 

 歩き回っていると後ろから声をかけられる。

 

 「あ、彩加ちゃん! 今日は学校来てたんだ」

 

 「うん、今日はお仕事なかったから……」

 

 望虹が立ち止まって振り返るとそこには望虹のクラスメートである牧園彩加(まきその あやか)がバトミントンのラケットをもっていた。

 螢華と同じモデル体型で、ある歌手グループのセンターマイクを勤めている正真正銘のアイドル。

 それ故にあまり学校に来られず、彩加は寂しさを感じていた。

 仕事の空きがある日は少しでも登校し、友達と楽しい時間を過ごすことが何よりも楽しみだった。

 ちなみに、螢華と彩加を合わせて13HRの二大美女と呼ばれていたりもする。

 

 「彩加ちゃんは今日は部活?」

 

 「うん、せっかく自分がやりたいことを見つけられたから、しっかりやりたいんだけど時間がなくて……」

 

 「でも、彩加ちゃんならきっと大丈夫だよ! お仕事も部活も頑張ってね」

 

 「うん、ありがと」

 

 少し俯き照れ臭そうにお礼を言う彩加を見て望虹は思わず可愛いと思っていた。

 

 「じゃあ、またね」

 

 「うん、じゃあ」

 

 「あ、そうだ、哲夜君知らない?」

 

 「哲夜君……あ、北原君? さっき玄関ですれ違ったけど……」

 

 「そっか! ありがとう!」

 

 お礼もそこそこに走り出した望虹を彩加は不思議そうな顔で送り出した。

 

 「哲夜君!」

 

 「おう、望虹。久しぶりにガールズトーク出来たか?」

 

 「できたかじゃないよ、急にいなくなって……心配したんだから」

 

 「それはごめんな。部室に行こうと思っていたんだけど、途中で先生に呼ばれて今まで職員室にいたんだ」

 

 「そうだったんだ。でも良かった、ちゃんと哲夜君がいてくれて」

 

 「望虹……」

 

 「ん? なあに?」

 

 「なんでもねえよ」

 

 「なんかありそうだけど、いっか。さて、今日は二人で帰ろ!」

 

 あどけない、満面の笑顔で望虹は哲夜の手を引いた。

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