Fate/Heretical Comet   作:小糠雨

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※ご注意

★本作は『Fate/Grand Order-Epic of Remnant- 禁忌降臨庭園セイレム 異端なるセイレム』ならびに同作に登場するアビゲイル・ウィリアムズに関する多大なるネタバレを含みます。

★本作は『Fate/EXTRA』の多大なるネタバレをも含みます。

★本作は岸波白野の物語ではありません。

★本作に登場するアビゲイル・ウィリアムズは、実在のマサチューセッツ州セイレムに実在したアビゲイル・ウィリアムズとは半分くらいしか関係ありません。

★本作に登場するアビゲイル・ウィリアムズは、作者の独自解釈(よ く ぼ う)二次設定(よ く ぼ う)願望(よくぼう)性癖(よくぼう)を多分に含みます。

★いあ! いあ! んぐああ んんがい・がい! いあ! いあ! んがい ん・やあ ん・やあ しょごぐ ふたぐん! いあ! いあ! い・はあ い・にやあ い・にやあ んがあ んんがい わふる ふたぐん よぐ・そとおす! よぐ・そとおす! いあ! いあ! よぐ・そとおす! おさだごわあ!
 


一回戦【The Fool Arrives with a Galleon.】

 

 ――無理ゲーじゃねえか、と思った。

 

 だってそうだろう?

 こちらの戦力は自分と、人形(ドール)が一体。一方、相手の戦力はこの広間に折り重なるように倒れている〝生徒〟たちと同数の人形。

 最初に襲いかかってきた一体は倒した。直後、別の人形が立ち上がり襲いかかってきたので、これも倒した。さらにもう一体が起動したので、かろうじて勝った。

 だがそこまでだ。四体目が起き上がって戦闘になったとき、まさかこの場にある人形(すべ)てが、と考えた。その一瞬、少しだけ指示が遅れた。

 こちらの人形は大破。敵はそれだけでは止まらず、自分にも凶刃を向けたのだ。

 非力な人間たる自分が丸腰で、シンプルとはいえ戦闘用の人形に勝てる道理は無い。

 為す術もなく胸を切り裂かれ、壮麗な細工の施された床を舐めるハメになったのだった。

 

『……ふむ、君も駄目か。

 そろそろ刻限だ。君を最後の候補とし、その落選をもって、今回の予選を終了しよう。

 ではご機嫌よう――安らかに消滅したまえ』

 

 神経を逆撫でするような男性の声がする。

 

 ――ふざけんな、と思った。

 

 違和感に気付いたのは今日のことだ。

 同じ日が何度もループしている――なんて、普通なら馬鹿馬鹿しいと切って捨てるような感覚。

 だがそれを覚えた直後から、激しい頭痛に見舞われた。

 

 ――違う。これは、違う。

 自分は。俺は。

 こんなところで、こんな日常を生きてはいなかった。

 

 レオなんて転校生は居なかった。

 間桐慎二なんていう友達は居なかった。

 ダン・ブラックモアなどという用務員は居なかった。

 遠坂凛のような鮮烈な少女は居なかった。

 ラニという留学生は居なかった。

 葛木なんて教師は居なかった。

 

 俺は。

 何か目的があって、外からここに来たはずなのに。

 

 ――思い出せない(わ す れ ろ)思い出せない(わ す れ ろ)思い出せない(わ す れ ろ)

 

 酷い頭痛を堪えて、校舎を彷徨っていたときだ。

 赤い制服を見た。

 レオが――レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイが、一階の倉庫に入るのを見た。

 根拠があったわけではない。

 ただ、自分もあの扉を潜れば、この不快感は消えるのだと、そう思って。

 必死になって通り抜けた先で、このザマだ。

 

 ――ふざけんな、と思った。

 

 今はまだ思い出せない。

 けれど俺は。他の何を蹴落としてでも叶えたい願いを持ってここに来たはずだ。

 それを忘れたままここで死ぬなんて、受け入れられるはずがない。赦せるはずがない。

 

「いぐな……とぅふるとぅくんが……」

 

 口を衝いて出たのは、覚えの無い、けれど何か大切だった気がする呪文。

 そう、たしか――何か約束をしたはずだ。この呪文と一緒に、言葉を交わしたはずだった。

 

『ああ、ああ――覚えていてくださったのね』

 

 ――声が聞こえた。

 嬉しそうなような、悲しそうなようなそれは。

 俺が求めていたものなのだと、()()()()()()()()()()()と、記憶が無くとも確信させた。

 

『たった一夜の夢だったけれど――私は、(つい)ぞ戻ることは出来なかったけれど。

 あなたは信じて、待って、ここへ来てくださった』

 

 遠かったそれはだんだん近づいてきている。

 身体に熱が戻ってきている。末端まで力を込めることが出来る。

 だから、立ち上がらなくちゃ。

 せっかくの()()だ。()せったままでは格好がつかない。

 

『さあ、()んでくださいな。帚星(ほうきぼし)に願いを懸けるように――』

 

 嗚呼――姿を見せてくれ。

 俺は、キミにもう一度会うために、ここへ来たんだ――!

 

『――――』

 

 ガシャン、と。

 広間に(そび)えていたステンドグラスが割れた。

 その向こう側から、〝彼女〟が来るのがわかる。(もや)のかかった記憶の中の〝あの日〟に感じた魔力と同じだ、違えるはずがない。

 俺を殺した人形が、今度こそ殺しきるべく腕を振り上げる。

 それが振り下ろされることはない。

 何故なら。

 彗星のごとく飛来した〝彼女〟が、身長程もある鍵で人形を殴り飛ばしたからだ。それはバラバラに砕けて広間の彼方へと飛んでいく。

 トン、と、可愛らしい靴が床を叩く。

 くるりと回って身体ごと振り向いたのは、きっと俺が追い続けたそのままの姿で。

 

「大事なことだから、改めて挨拶します。

 こんにちは。私、アビゲイル――アビゲイル・ウィリアムズ。

 よければアビーって呼んでくださいな、()()()()()()()

 

 知っている。知らないはずがない。

 蜂蜜色の長い髪も、ツリ目がちな蒼玉の瞳も、白磁の如き華奢な身体も。リボンのたっぷりついた、ゆったりとしたワンピースも。

 ここへ来る以前には、忘れたことなど(しゅ)()も無いはずだ。だってこんなにも、身体が歓喜に震えているのだから。

 

「私がサーヴァントで、あなたがマスター。そうでしょう?」

 

「――うん、俺がマスターだ」

 

 驚くほどするりと出たその言葉にいらえるように、彼女はにこりと微笑んで。

 それと同時に、右手の甲に鋭い痛みが奔った。

 見ればそこには、流れ星のような三画の紋様が刻まれている。

 

「再会を喜びたいところだけれど、ちょっと待ってね。すぐに終わらせるから」

 

 周囲に、重なり合うように転がっていた人形たち。それらが一斉に身を起こした。

 

「今の私はサーヴァント。マスター、指示をくださいな。それに従うのが私の役目よ」

 

 指示を出す。従わせる。求めてやまなかった、目の前の少女に。

 それは酷く背徳的で、だからこそ甘美だった。

 

「……(せん)(めつ)、だ」

 

「ええ、やってみる!」

 

 手に持つ鍵を目の前に突き出し、解錠するように捻る。

 床に、空間に、無数の穴が開く。

 そこから這い出してきたのは――触手。(たこ)烏賊(いか)のそれのような巨大な触手が、人形を殴り/掴み/締め上げ/投げ飛ばす。

 悪夢のような光景だった。見る者が見れば気が狂ってしまうような。

 しかしそれは俺を魅了するだけだった。だってそれは彼女が引き起こしたモノなのだ。美しいと思いこそすれ、忌避する理由などありはしない。

 きっと俺は――既に狂っているのだから。

 

「見てくださった? マスター!」

 

 もちろん、見ていたとも――そう、言いたかったのだが。

 彼女に出会えた歓喜や、気合いや、そういった気持ちで()たせていた身体が、そろそろ限界だった。傷は深いぞ、がっかりしろ。

 加えて、右手に刻まれた紋様が発する痛みも徐々に強くなっている。

 これは不味い。意識が遠退く――。

 

『君の手に刻まれたそれは(れい)(じゅ)。サーヴァントの主人となった証だ。

 しかしそのサーヴァントは――(いや)、こうして現界している以上、問題は無いのだろうな』

 

 途絶えかけた意識のすき間に滑り込んできた声は、あの男性のものだった。

 

『話を戻そう。それは使い方によってはサーヴァントの力を強め、あるいは束縛し、なんとなれば自害をも強制できる、三つの絶対命令権。まあ使い捨ての強化装置とでも思えばいい。

 ただし、同時に聖杯戦争本戦への参加資格でもある。令呪を全て失えば、そのマスターは失格――即座に死ぬ。注意する事だ』

 

 こんな(もう)(ろう)とした状態でそんな重要な説明を聴かせるのか。声の主は随分と性格が悪いらしい。

 聖杯戦争――そう、そうだ。俺はそのためにここへ来た。ルールも大まかには事前に知っていたはずだ。今は思い出せないけれど。

 令呪は三画だが、使い切れば死ぬ。という事は、使えるのは実質二回のみ。

 

『まずはおめでとう、帚星へ辿り着いた者よ。とりあえずはゴール、という事になる。

 誇りたまえ。君の執念は、運命を打ち負かしたのだから』

 

 低い声から受ける印象は四十歳前後。落ち着いた口調から神父を思わせるが、同時にこんな奴が神父でいいのかという不快感をも覚えさせる。

 この声は覚えておこう。会うことがあれば一発殴ってやる――!

 

『物騒なことだな。私については気にせずとも良い。かつて地上に在った者を模しただけの、ただの定型文だ』

 

 そろそろ、本当に限界だ。

 視界が傾ぐ。アビーが駆け寄ってくるのが見える。その華奢な身体で、しかし軽々と俺を支えて――そこで、認識が途切れた。

 

 

 

 

 

 ――聞くが良い、数多(あまた)の魔術師よ。

 これにて役者は揃った。

 (おの)が欲望を絶対とし、他者のそれを(おう)(さつ)せんとする罪人たちが。

 なれば、ゲームを始めよう。

 いかなる時代、いかなる歳月が流れようと。

 闘いをもって頂点を決するは人の摂理。

 熾天の玉座はたった一人、勝ち残った者のみを迎え入れる。

 故に殺し合え。

 月に招かれた、電子の世界の魔術師達よ。

 汝、自らを以て最強を証明せよ――!

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 ――泥濘(ぬかるみ)の日常は燃え尽きた。

 

 ――魔術師による生存競争。

 

 ――運命の車輪は回る。

 

 ――()()を探した者よ、門を(ひら)け。

 

 ――己を阻む(すべ)てを、領域外(そとがわ)へと招く(さらう)ために。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

「こんばんは! 私、アビゲイル――アビゲイル・ウィリアムズ。

 よければアビーって呼んでくださいな。すぐにお友達になれると思うわ!」

 

 ――欠けていたモノを、見ているようだ。

 

 一〇年前。まだ俺が一〇歳だった頃。

 流星群を見に近所の山に登った俺は、不思議な少女に出会った。

 目の前、空中に、突如開いた銀色の穴。そこからポンと飛び出した彼女は、俺の姿を見た途端焦ったような表情になったが、すぐに笑顔になって自己紹介を始めた。

 あまりに突然で、しかもあまりに自然体で、さらにあまりにかわいかったものだから、俺は暫し呆けていたと記憶している。

 

「あ……えっと、夜ノ森(よのもり)(けい)、です。よろしく」

 

「よろしく、ケイ! ところで、ここはどこかしら?」

 

 楽しい時間だったと思う。

 不可解な現れ方をした、見知らぬ少女。本来ならば警戒して然るべきだが、美しいその少女に魅入られた俺にそんなものは欠片も無かった。

 ただ一緒に星を見て、たわいない話を交わしただけだったが、それは俺の心に深く楔を打ち込んだ。

 彼女とはその夜の数時間、一緒に居ただけだ。夜明け前に、彼女は現れたときと同じ銀色の穴をくぐって去っていった。

 去り際に、彼女は何と言ったのだったか。

 

「もう二度と会えないと思うわ。けれど、約束しましょう。きっと、また出会う――って」

 

 そして、俺にあの呪文を教えてくれた。

 Ygnaiih thflthkh'ngha(父 よ 、 救 い た ま え)――。

 

「もしかしたら、神 様(おとうさま)が叶えてくれるかも知れないでしょう?」

 

 

 

 

 

 ――目を開く。

 今のは、そう。俺をこの場所へ連れてきた衝動の源泉。最も大切と言って良い記憶。

 身体を起こして、思考を巡らせる。予選のために差し出していた記憶は、どうやら問題なく返還されているようだ。少しの()()も無く思い出せる。

 

「あら――目を覚ましたのね、マスター!」

 

 傍らから聞こえた声に、内心を弾ませながら振り返る。

 そこには、アビーが居た。あの日、あの時の姿のままの、アビゲイル・ウィリアムズが。

 

「ケイ、とは呼んでくれないのかい?」

 

 あの夜のように。

 

「あ、ごめんなさい――でも、これは聖杯戦争で、私はサーヴァント、あなたはマスターだもの。誰の目も耳も無い場所ならともかく、普段はマスターがいいと思うわ。だから、最初にああ言っておいてなんだけれど、マスターも私のことはクラスで……フォーリナーって呼んでくださいな」

 

 なるほど、(もっと)もだ。それがどんなに些細な、取るに足らないものであれ、敵に情報を与えないに越したことはない。呼び方ひとつだって、俺たちの関係が良好か否か等、漏れてしまう情報はあるのだ。

 ましてやサーヴァントの(しん)(めい)は秘匿すべき最たる情報。どこそこ構わず気軽にアビーなどと呼んでしまっては不利になるだけだ。

 しかし、今、不可解な単語が聞こえたような。

 

「フォーリナー? そんなクラスあったっけ?」

 

 この聖杯戦争におけるサーヴァントとは、英霊を七つのクラスという枠に押し込めて召喚した電脳魔、だったはずだ。

 

 剣士(セイバー)

 弓兵(アーチャー)

 槍兵(ランサー)

 騎兵(ライダー)

 魔術師(キャスター)

 暗殺者(アサシン)

 狂戦士(バーサーカー)

 

 以上の七つ。フォーリナーなどというクラスは聞いていない。

 

「私はエクストラクラスっていって、その七つに当て嵌まらないクラスのサーヴァントなの。降臨者のサーヴァント、フォーリナーよ」

 

 降臨者(フォーリナー)。なんだそのカッコイイ響きは。

 まあたしかに、アビーのかわいさは七つのクラスに納まりきるようなものではない。エクストラクラスになるのも当然か。

 

「それと、……私はサーヴァントだから、その。厳密には、アビゲイル本人ではないわ」

 

 知っている。ここ、(りょう)()虚構世界SE.RA.PHにおいて召喚されるサーヴァントとは、言わば再現AIだ。

 月――超常の観測機械たるムーンセル・オートマトンが、地球の過去・現在・未来、果ては平行世界をも観測した/予測した/演算したことで貯め込まれた膨大なアーカイブ。

 それを基に、聖杯戦争のルールに則って魂レベルで再現された英霊のデータ、それがサーヴァント。目の前の彼女はそれだ。

 

 それが、どうしたというのだろう。

 

 だって、ムーンセルは数多枝分かれする未来や平行世界をも観測しているのだ。

 それは、つまり。

 

「キミは――俺と再会したのかい?」

 

「……いいえ。あなたと会ったのは事故のようなもので、どうやったらもう一度行けるのかわからなかったの。だから、私は生涯、あなたとは会えなかったわ」

 

 サーヴァントとしての彼女がこう言っている以上、少なくともムーンセルが観測した範囲において、俺がオリジナルの彼女と再会する未来は存在しないのだ。

 わかっていたとも。彼女自身が「二度と会えないと思う」と言ったのだから、それはきっとそうなのだ。わかっていたからこそ聖杯に縋ろうとした。

 もう二度と会えない彼女が目の前に居て、少なくとも記憶・人格の面では本人と同じに再現されている。

 それはもう、本人では? 本人だろう。本人だ。

 だから、聖杯を手にした暁には、願うはずだった。ムーンセルが記録しているはずのアビゲイルを再現するように。

 だがなんということだ、聖杯に懸けるはずの願いが予選通過段階で()()()()()()()()()。普通の女の子ではないのは知っていたが、まさか彼女がサーヴァントとなれる程の存在だったとは。

 まあ、だからといって負けるわけにはいかないのだが。

 再会だけで満足できるはずがあろうか。いや、ない。

 勝ち抜けば勝ち抜いただけ長く一緒に居られる。

 それに、最後まで勝ち抜けば――聖杯を手にすれば、彼女を地上に受肉させることも出来る。地上に帰らずにこのSE.RA.PHに留まって、霊子生命体として生きていく道だってある。

 これが本人であったなら、いつかまた別の世界へと、俺を置いて旅立つかも知れない。言っていたではないか、いつか再び親友や恩人に巡り会うために旅をしているのだと。

 しかし今の彼女はそうではない。不謹慎ながら、本人でないのはむしろ望むところと言えた。

 けれどそんな未来の展望も、この戦いで負けてしまっては意味が無い。

 必ず、勝たなければ。何よりも己が欲望のために。

 

「だったら、俺にとっては、キミが本人だ」

 

「……っ!」

 

 一瞬、悲しげな表情になった。次には、安堵したようだった。

 オリジナルを蔑ろにするかの如き発言の裏に、見たのだろう。「聖杯を手にしても、オリジナルとの再会を望まない」という意図を。その時がきても、〝このアビゲイル〟は〝不要〟とされないのだと。

 (いびつ)かもしれないが、俺たちはこれでいい。

 

 

 

 

 

 俺が寝ていたのは保健室だったらしい。

 健康管理AIを名乗る間桐(まとう)桜――藤色の長い髪が美しい少女だった――からバイタルに問題無しとのお墨付きを得て、ついでに携帯端末を支給されて、俺たちは保健室をあとにした。

 

『マスターったら、あんなに鼻の下をのばして!』

 

 霊体化して姿を消しているアビーがご立腹だ。

 

「のばしてないって。そういう意図は全く無い」

 

『ふん、どうかしら!』

 

 いや、本当に無い。

 だがそれでも、あれは目で追ってしまうだろう。あんな、ボディラインがわかりにくいはずの制服をも押し上げて存在を主張する胸部なんて。男女問わず、誰だって目が行くはずだ。

 そんなことより、さっさと二階の掲示板を見よう。桜の言によれば対戦相手が発表されているはずだ。

 

『むー……』

 

 いまだむくれている(であろう)アビーを伴って、二階の階段脇にある掲示板を確認しに行く。

 

 ――マスター:間桐慎二

 ――決戦場:一の月想海

 

 貼り出されていたのは知った名だった。

 間桐慎二。予選において、俺の親友、そしてあの健康管理AIの兄という役割(ロール)を与えられていた男。

 

「いやあ、参ったなあ。まさか君が一回戦の相手とはね。なあ夜ノ森?」

 

 非常に(かん)に障る声がした。

 振り向けばそこには群青色の天然パーマ。同色の瞳は明らかにこちらを見下している。胸元を大きく開いて着崩した制服が相変わらず気障ったらしい。

 (くだん)の対戦相手、間桐慎二だった。

 

「けどまあ、それも当然かな。この僕の友人に割り当てられるんだから、君も世界有数の魔術師(ウィザード)ってことだ」

 

「いや、何言ってんだお前」

 

 改めて話してみると非常にイライラする。予選の俺はよくこんなのと親友なんてやってたなと本気で感心した。

 

「そういえば君、予選をギリギリで通過したんだって?

 いいよねえ凡俗は。お情けで通してもらえるんだからさあ。でも本戦は実力勝負だから、勘違いしたままはよくないぜ?」

 

「いやお前ほんと何言ってんの?」

 

 聖杯戦争にお情けもクソもあるものか。相手は管理の怪物ムーンセルだ。合格点に一点でも足りなければ容赦なく失格だ。

 

「まぁいいや。正々堂々戦おうじゃないか。なんだかんだ結構いい勝負になると思うぜ? 君だって選ばれたマスターなんだからねえ?」

 

「…………」

 

 こちらの言葉に一切反応しないまま、言いたいことだけ言って去っていった。

 すげえなあいつ。大物だ、逆に感動した。実はNPCなんじゃないのか。

 

『マスター、知り合いなの?』

 

「予選でな。友人役だったんだ」

 

『……戦えるの?』

 

「もちろん」

 

 何を馬鹿なことを。友人だから何だというんだ。

 俺は願いを叶えるためにここに来た。戦えないなどと言ってしまえば、自分の願いが慎二のそれに劣ると宣言するも同じだ。

 そんなことは認められない。誰にとってくだらない願いだとしても、俺にとっては至上なのだ。

 

「君こそ戦えるのかい? 少なくとも決戦の場では、サーヴァントを殺さなきゃ勝ちにならないぜ?」

 

『それこそ当然よ。私をあの時の小娘と同じとは思わないでくださいな。今の見た目はこんなだけれど、それなりに長く生きたおばあちゃんなのよ、私』

 

「そりゃよかった、つまり合法ロリってことだな」

 

『もう、マスター!』

 

 真面目な空気は霧散した。

 これでいい。予選での役割(ロール)に引っ張られてシリアスやって、挙げ句負けて死んだりなどしてみろ。馬鹿らしいにも程がある。

 

「ひとまず、端末に書いてあったアリーナってやつに行ってみよう。今日は慣らし程度でさ」

 

『ええ、行きましょマスター』

 

 

 

 

 

 ――第一暗号鍵(プライマリトリガー)を生成。第一層にて取得されたし。

 

 端末に連絡があったのは一夜明けてからだった。

 昨日はアリーナのほんの入り口あたりで肩慣らしにいくつかの敵性プログラム(エ ネ ミ ー)と戦って、早々に切り上げた。アリーナで何をすべきか特に開示されていなかったからというのもある。

 今日からが本番だ。

 暗号鍵(ト リ ガ ー)というのは、アリーナへ向かう途中に居た言峰(ことみね)という神父――聖杯戦争を運営するNPCの統括であり、例の声の主――に聞いたところによると、決戦場への切符のようなものだという。ちなみに言峰に殴りかかったら八極拳で返り討ちにされた。

 六日間の猶予期間(モラトリアム)のうちに暗号鍵を二つ取得しなければ、決戦場の扉は開かれない。これを入手することさえできないのなら決戦に臨む資格は無いということだ。

 ならばと気合いを入れて、俺たちはアリーナに足を踏み入れた。

 隣には実体化したアビーが居る。

 アリーナ内ではサーヴァントは強制的に実体化されるのだ。気配遮断スキルや透明化する宝具等を用いない限り、姿を晒して活動することとなる。

 

「マスター、居るわ」

 

「慎二か?」

 

「ええ。正確にはサーヴァントの気配なのだけど、サーヴァントが居るならマスターも居るでしょう?」

 

 なるほど、道理だ。

 

「じゃあ、試しに一度会ってみようか。あいつのサーヴァントがどんなだか気になるしな」

 

「会うの? てっきり避けるのだと思っていたわ」

 

「情報を得るチャンスだからね。それに慎二のことだ、たぶんどこか避けようのないところで待ち構えてるよ」

 

 主に俺を見下すために。遅かったじゃないか、僕はもう暗号鍵を手に入れたぜ――とか言うためだけに。

 わざわざそんなことに時間を割かなくてもと思うが、彼にとっては重要なんだろう。

 敵性プログラムの相手はアビーに任せつつ、一本道の通路を進む。

 ほどなく、慎二の姿が見えた。予想通り、広間の入り口に陣取っている。これは避けられない。

 

「遅かったじゃないか夜ノ森。僕を(おそ)れて逃げ出すかとも思ったけど、いや待ってた甲斐があったよ!」

 

 大袈裟な動きでそう言った彼は、制服の胸ポケットからカード状のデータを取り出し、見せ付けるように掲げた。

 

「お前がモタモタしてるから、僕はもう暗号鍵をゲットしちゃったぜ!」

 

「そうか。じゃあそれ、くれ」

 

 俺の後ろからアビーが飛び出した。蔦を模した(せい)()なスワールの装飾が施された、巨大な黒い鍵を、慎二の腕目掛けて振り抜く。

 

「――は?」

 

 彼は反応できていない。

 しかし、鍵が腕を捉える直前、彼女はそれを引き戻した。直後、それに何かがぶち当たる甲高い音。あのまま殴ろうとしていれば、それは彼女の心臓を貫いただろう。

 大きくバックステップして俺のすぐ目の前まで退がり、身構えるアビー。

 慎二の隣には、いつの間にか赤い長髪の女性が立っている。

 顔の大きな傷跡と、胸元が大きく開いた赤いコートが特徴的だ。十中八九彼女が慎二のサーヴァント。クラシックな拳銃を携えているから、先の攻撃はこれだろう。

 

「な、何するんだよ!」

 

「何って、お前がそんな得意げに見せびらかすからさ。自分で探すよりそれを奪った方が余程手っ取り早い」

 

 明らかに狼狽(うろた)えている慎二にそう返すと、赤いサーヴァントは大声で笑いだした。

 

「おい、何がおかしいんだよ!」

 

「ククク……いやなに、あっちのマスターはよくわかってると思ってねえ。

 敵に財宝を見せびらかすなんざ、奪ってくれって言ってるようなもんさ。嫌なら大事に仕舞っとくんだね。それかパァッと使い切りな。アタシは使う方が好みだね」

 

 全くその通りである。

 特にこのSE.RA.PHでは、所持アイテムはゲームと同じように個人のストレージに格納される。実体化させない限り他者が奪うことはできない。使わないときは実体化させずに仕舞っておくのが定石だ。

 彼は有名なゲーマーだと聞いたが、そんなことも調べていないのか、はたまた考えが及んでいないのか。

 

「アンタ、予選じゃこいつの親友だったんだろう? 場合によっちゃ平和的に話し合いでいけるかとも思ったんだがねえ――今のを見る限り無理そうだね」

 

「もちろん。俺は負けるわけにはいかないからね。まあ、だから、なんだ。なあ慎二」

 

 ――悪いが、俺のために死んでくれよ。

 

「なっ……!」

 

「ハッハ、こいつぁいい! 願いのために(ちゅう)(ちょ)無く友を殺すかね! 悪役はアタシらだと思ってたが、どっちが悪だかわかったもんじゃないね!

 ほらシンジ、負けちゃいられないよ!」

 

「くそっ、ふざけんなよ! お前なんかが僕に勝てるわけないだろ!

 いけ! 手加減なんかするなよ、絶対倒せよ!」

 

「はいはい、全く子供だねえ。報酬はたっぷり用意しときなよ!」

 

 相手はやる気十分なようだ。

 そういえば、言峰が戦闘について何か言っていたな。

 たしか、猶予期間中の私闘は禁止。校内で攻撃を仕掛けた場合はペナルティが課せられ、アリーナで戦闘を行った場合は数手以内にムーンセルが干渉し強制終了する。

 しかし逆に言えば。アリーナでの戦闘は時間内に仕留められるなら決戦前に勝敗を決せられるし、時間いっぱい生き延びられるならば相手の情報を得る好機となるということだ。

 

「やれるか?」

 

「ええ。()()()()()()()()()()()()()?」

 

「構わない。まずは、やられないのが最優先だ」

 

「それじゃあマスター、魔力を。溢れるくらい、注ぎ込んで……!」

 

 アビゲイルの姿が変わる。魔女を思わせる帽子を被り、ワンピースは解けて露出が増え、身体が宙に浮く。瞳は真紅に色を変え、そして額には()(らん)の鍵穴が。

 同時、持って行かれる魔力量が跳ね上がる。今の俺では長く保っても一時間。一度戦闘するに支障は無くとも、現界を維持するには問題しか無い。故に、普段は魔力消費を抑えるため、ある程度スペックを落としている。

 

「いあ……いあ……ふふふふ……」

 

 さて、初の対サーヴァント戦だ。

 人格はともかく、魔術師としての腕に関しては慎二は侮れない。ましてやサーヴァントは英霊の再現、油断などできるはずがない。

 (ゆる)まずにいこう。

 

 アリーナに警報音が鳴り響く。どうやら、本格的な戦闘行為に入りそうなことをSE.RA.PHが感知したらしい。しばらくすれば強制的に止められるだろう、どうやるのかは知らないが。

 

「そぉら!」

 

 敵サーヴァントは両手の拳銃をアビーに向け、容赦なく乱射し始めた。

 明らかに単発式の拳銃から弾丸が景気良く吐き出される。サーヴァントの武器である以上まともではないとは思っていたが、リロードの必要が無いらしい。

 ぶちまけられた弾丸を、アビーは器用に鍵で弾いている。少女に見えてもやはりサーヴァント、人間の基準など軽く超越している。

 

「ほらほらァ! 弾くだけじゃ勝てないよ!」

 

「……ああ、(うっ)(とう)しいわ。とてもとても、煩わしい」

 

 普段のアビーからは考えられない程の冷めた声音。

 これが彼女の本性であることを俺は知っている。

 外なる神の(より)(しろ)となった彼女は徐々にその力に引っ張られ、人格を変質させた。そして人間としての良心や理性、純真さを残したまま、邪悪で酷薄で淫蕩な魔女になった。

 ――と、そんなようなことを昨夜マイルームで、ばつの悪そうな顔を真っ赤にして打ち明けられて、正直めちゃくちゃ興奮した。かわいいが過ぎる。

 ああ、ロリコンの(そし)りは甘んじて受けよう。

 彼女は身長一五二センチと、背丈だけなら小柄な成人女性と言っても通る大きさだが、それでも肉体は一二歳のときのそれで現界している。言い逃れはできない。

 だが俺は止まらねえからよ。マイルームは自分たちの他に何者も入れない不可侵領域。誰も俺たちを止められない。

 そう――例え俺がアビーの魅力にやられて理性を吹っ飛ばしたとしても、彼女が拒絶しない限りそれは何の問題も無いのだ! 最高かよ! というか最高だったよ!

 

 ……ああ、いや。今はそんな場合じゃなかった。

 

「これでどう?」

 

 空間に数多の穴が開く。

 俺やアビーの目の前と。そして――敵サーヴァントの背後に。

 

「ほら、返すわ」

 

 眼前の穴に入った弾丸が。

 一拍置いて、敵サーヴァントの背後の穴から飛び出した。

 

「ちィッ!」

 

 敵サーヴァントは驚異的な反射で床を転がり射線を離脱。弾丸は数発が彼女を掠ったようだったが、ほとんどがそのまま直進して再び俺たちの前の穴に飛び込んでいく。

 それとほぼ時を同じくして、アリーナの警報が一際強く一度鳴り。

 敵サーヴァントの拳銃、アビーの鍵、開いていた穴も。その全てが消え去った。なるほど、これがSE.RA.PHの強制終了か。

 

「何やってんだよ! 倒せって言っただろ!」

 

「アンタこそ何言ってんだいシンジ。今の見てなかったのかい。

 こいつらとは相性が悪いよ。宝具も無しで、こんな短時間で倒せる相手なもんか」

 

「チッ……もういい! どうせもう戦闘は無理だしね!

 おい夜ノ森! お前、見たとこ結構レアなサーヴァントを引いたみたいだけど、ハッカーとしての腕は僕の方が上なんだ! 今回ちょっと善戦できたからって調子に乗るなよな!」

 

 喚くだけ喚き散らして、シンジはその場から一瞬で消失した。何かのコードキャストでアリーナ内のどこかへ転移したか、あるいはリターンクリスタルというアイテムで校舎に帰還したか。暗号鍵は取得しているから後者だろう。

 

「お疲れ、フォーリナー」

 

 元の低燃費形態に戻ったアビーに声をかける。

 

「ええ、マスターも。怪我はない?」

 

「おかげさまでな。そっちは?」

 

「私も全然へっちゃらよ」

 

 えへん、と胸を張るアビーにほっこりしつつ、意識を今後のことへ切り替える。

 ひとまず、アリーナのこの階層を制覇しよう。余すところなくマッピングして、暗号鍵のみならず拾えるものは何でも拾っていかなければ。

 今回の戦闘でわかったことは、俺自身のスペックの低さだ。

 なんとも情けない話だが、アビーが本気を出したら俺は魔術を使う余裕は無さそうだ。使えば使うほど彼女に回せる魔力が減り、継戦能力は激減する。

 かといって、アバターをより良くカスタマイズするには、俺の手腕ではリソースが足りない。

 いや、外見は別にいい。顔も体格も現実の俺のそれだ、問題無い。服装は予選で生徒になっていた月海原学園の制服だが、これに頓着する余裕は無い。

 問題は、このアバターは魔力の総量が少ないことにある。

 魔術回路が生み出した魔力を、十全に通すことができない。結果ロスが生じ、実際に精製した魔力と使える魔力に差ができてしまう。

 これを解決するには、リソースを掻き集めてアバターを造り替えるしかない。

 つまり、敵性プログラムを倒し、経験値を得て、レベルアップする必要があるということだ。

 

 ――と、いうわけで。

 

「よし、行くぞ! 狩りの時間だ!」

 

「おー!」

 

 RPGの経験値マラソンみたいなものだ。

 この階層の敵性プログラムを狩り尽くす勢いでいくぞ!

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 暗号鍵を手に入れ、アリーナを隅から隅まで歩き尽くし、Mob(エネミー)を狩りまくって、俺たちはマイルームへと帰還した。

 マイルームは、聖杯戦争に参加するマスター一人につきひとつ与えられた拠点だ。支給されている端末に認証コードが登録されており、それを特定の教室の扉に転写することで転送される。その性質上、他者は絶対に入って来られない。

 内装は普通に教室だったので、出来る範囲で模様替えしている。

 机を四つくっつけてテーブル替わりに。机を二〇個程くっつけて、アビーと一緒に眠れる大きめのベッドに。布団は、今日アリーナで集めたリソースをいくらか使って購買で買ってきた。何故購買に布団があるのかは甚だ疑問だが。昨日はカタい机で寝るハメになったが、今日からは快適だろう。

 そして黒板は作戦会議に使う。

 余った机や椅子は部屋の隅に積み上げてある。

 

「ところでケイ。あの、シンジ……だったかしら? っていう人のサーヴァントのことなのだけど」

 

「ん? なんだい?」

 

「飛び道具を使っていたから、クラスはアーチャーなんじゃないかなって思って」

 

「なるほど」

 

 ベッドに腰掛けて脚をプラプラさせているアビーに癒やされつつ、思考を回す。

 アーチャー。確かに、飛び道具を使うクラスとなれば妥当なところだ。余程特殊な事情でも無い限りには、少なくともセイバーやランサーではないだろう。

 だが、彼女が得物としていた拳銃。見たところ最初期の、それこそ拳銃が世に生まれた直後くらいの時期のものだ。その頃の拳銃は連射が出来ないうえ精度も低く、生前に主力とするには頼り無い。剣や槍がメインだが銃も持って現界した、という可能性も無いとは言えず、ミスリードを狙ってのことだったかも知れない。

 今出せる結論としては――

 

「可能性は高いけど、今は情報が少なすぎて何とも言えないな」

 

「そう……そうよね」

 

 自信があったのだろう。否定とまではいかないものの肯定もされず、少しシュンとしてしまった。

 

「ああもうアビーはかわいいなあ!」

 

「きゃあっ!?」

 

 急に抱きしめたからだろう、素っ頓狂な声をあげたアビーは、しかし拒絶することなく、されるがままだ。

 

「もう……ケイは悪い人だわ。

 昨日もそうだったけれど、あなたってあれだわ、ちょっと私のことが好きすぎるんじゃないかしら」

 

「そりゃあもう。だって俺の初恋で――ずっと忘れられなくて、二度と会えないなんて認めたくなくて、こうして月まで来ちまったんだぜ」

 

「そう……そうよね。

 ねえ、ケイ。あなたってとっても背が伸びたのね。こうして私がすっぽり収まってしまうくらいに」

 

 確かに、俺はあの夜と比べてずいぶんデカくなった。アビーよりも低かった身長が、今では一八〇センチだ。

 

「アビーは変わらないな」

 

「だって私はサーヴァントだもの。全盛期の姿で召喚されるわ。それがこれっていうのは少し不満なのだけど。きっとケイに影響されたのね」

 

 それから、彼女はしばらく無言でいた。俺も、彼女を抱きしめたままではあったが、何も言わなかった。

 

「……ねえ。私は、アビゲイルなのよね? あなたにとって、私は、アビゲイルでいいのよね?」

 

 声が震えている。

 

「もちろん。君はアビゲイル・ウィリアムズ。俺の、世界で一番大切な人だ」

 

 頭を撫でて、背中を軽く叩いて、そのままベッドに横になる。

 

「痛いほど手を握って。それだけでいいの」

 

「アビーが望むのなら、いくらでも」

 

 寝付くまでの間、アビーはずっと震えていた。

 

 

 

 

 

 翌日。俺たちは図書室へ向かっていた。

 慎二のサーヴァントについて調べるためだ。あまり手掛かりは無いが、拳銃(れい)(めい)期――だいたい一六世紀あたりの英霊を調べてみれば何かわかる可能性はある。

 そう思ってマイルームを出、同じ二階にある図書室へと歩を進めていたのだが。

 見知った後ろ姿を見つけた。慎二だ。図書室の真ん前に陣取って、誰かと話している。

 これは好機。幸い、あいつはこちらに背を向けている。図書室は階段のすぐ近くだし、階段に身を隠せば会話が聞こえるだろう。

 

『ふふ、なんだかいけないことをしているみたいだわ』

 

 アビーはなんだか楽しげにしている。霊体化しているので見えないが、きっと悪戯っぽく笑っていることだろう。くっそ、見たかった!

 これほど多大な犠牲を払ったんだ、相当重要な情報をくれなきゃ承知しねえぞ慎二ィ!

 

「いや洒落てるよ。海ってのはなかなかいいテーマだ。あんまり期待してなかったけど、このゲーム、わりと凝った作りをしてる」

 

「へえ、ご機嫌ね? その分じゃ結構いいサーヴァントを引いたみたいじゃない。アジア圏有数のクラッカー、マトウシンジ君?」

 

「当然さ。キミには何度か煮え湯を飲まされたけど、今回は僕の勝ちだよ、トオサカリン!」

 

 トオサカリン……遠坂凛? 予選で学園のマドンナやってた遠坂凛か?

 そっと顔を出してみる。慎二は相変わらず背中しか見えないが、奥の人物はここからならよく見える。

 黒髪をツーサイドアップにした、赤い服に黒いミニスカートの女性。間違いない、あの遠坂凛だ。

 何度か煮え湯を飲まされた、ということは、あの二人は地上で何か因縁でもあるんだろうか。

 そういえば、遠坂凛という名には覚えがある。西欧財閥に敵対する、国際指名手配中の霊子ハッカーがそんな名前だったはずだ。天才的な腕を持つ魔術師(ウィザード)だとかなんとか。

 

「僕はもちろん、彼女の()()だってまさに無敵。いくらキミだって、逆立ちしても勝てやしないさ!」

 

 ……おいおい。マジか慎二。

 

「ふぅん? サーヴァントの情報をペラペラ喋っちゃうなんて、マトウ君ったら余裕なのね?」

 

 遠坂の視線が一瞬こちらを刺した。

 そりゃそうだ、慎二と違って彼女はこっちを向いているのだから、気付かれて当然だ。

 

「うっ……そ、そうさ! あんまり余裕だとクソゲーになっちゃうからね、ハンデってやつだよ!

 あ、で、でも、あんまり信じすぎるのもどうだろうね? ほら、ブラフってこともあるし?」

 

 下手くそか――!

 いくら何でも誤魔化すのが下手すぎるだろ。あの狼狽えっぷりが演技だったらアカデミー賞ものだ。

 

「そうね。さっきの迂闊な発言からじゃ、真名はあくまで推測の域を出ない。それでも艦隊を操るならクラスはわかったようなものだし……どうせ攻撃も(ふね)なんでしょ? 艦砲射撃だとか、艦で体当たりとか?

 まあ今の私に出来ることって言ったら、物理障壁をしこたま用意しておくくらいかしらね」

 

「なっ……いや……」

 

「あ、一つ忠告しておくけど。私の推測が正しいなら、〝無敵艦隊〟はどうなのかしらね。それはむしろ敵側の渾名だし? せっかくのサーヴァントが気を悪くしても知らないわよ」

 

 なんと。遠坂はどうやら、本当にとても優秀らしい。今のやり取りで真名に行き着いたようだ。

 無敵艦隊。これは重要なワードだろう。図書室に行ったら早速調べるべきだ。

 

「ふ、ふん! まあ、だからって今のキミにはどうしようもないさ、僕とキミが当たるとも限らないんだしね!」

 

 ……それは「あなたの推測は全て正解です」と言っているようなものではなかろうか。

 内心呆れていると、彼は捨て台詞を吐いて振り返った。

 まあ、俺は頭を引っ込めていなかったので、当然目が合う。

 

「お、おま、夜ノ森!? お前まさか、ずっとそこで聞いてたのか!?」

 

「当たり前だろ。俺だけじゃない、ほら」

 

 ちょっと悪戯心がわいたので、俺は廊下に出て軽く周囲を見回してやった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――――っ!」

 

 慎二は顔を青くして絶句した。

 

「なんだよ、面白い顔して。当然だろ? 俺たちは何回戦で誰と戦うかわからないんだ。敵になるかも知れない奴が大声で情報吐いてるんだから、そりゃ聞き逃さないさ」

 

「あ……う……」

 

 口をパクパクさせて数歩後退った慎二は、次の瞬間には顔を真っ赤にして喚きだした。

 

「う、うるさい! お前、ちょっとレアなサーヴァントを引き当てたからって偉そうに!

 こっちだってお前たちの情報は集めてるんだ! 例えばそう、お前のサーヴァントのクラス! 妙な魔術を使いやがって、どうせキャスターだろ! ええ!? どうなんだよ!」

 

 おや。どうやら彼はアビーのクラスを勘違いしているようだ。

 いやまあ、フォーリナーなんてクラスはたぶん意図的に調べないと出ないだろうから、あの戦闘を見て推測するならキャスターは妥当だろうが。

 

「えーまじでーやっばーいなんでわかったのー?」

 

「お前ふざけてんのか!? くそっ、くそっ! 馬鹿にしやがってぇ!!」

 

 馬鹿にはしていない。ただ、大声でキャスターと叫んだところで違うのだ。周知されて問題は無く、むしろ都合が良い。

 

「言っとくけど! 最弱のクラスであるキャスターで僕に勝とうなんて思わないことだね! お情けで予選通過したクズがさあ!」

 

「――嗚呼、ダメよ。それは聞き捨てならないわ」

 

 気付けばアビーが実体化し、例の鍵をピッタリと慎二の首に当てている。腕を引けばそれだけで、先端のブレードが後頭部を殴打するだろう。

 姿こそ低燃費モードのままだが、彼女の声は酷く冷たい。

 彼女は俺と慎二の間に立っている。こちらに背を向けているので表情はわからない。

 

「酷いことを言う悪い人。あなたの予想は大外れ。滑稽ね、あれだけ大声で喚き立てておいて……ふふふ、ふふふふふ……!」

 

 えっ、それ言っちゃうんすかアビーさん。

 

「このっ……笑うな! 笑うなァ! なんだお前! 何なんだこのクソガキィ!」

 

 ――あ? クソガキだ?

 

「フォーリナー、そこまでだ」

 

「はぁい、ごめんなさいマスター」

 

 一転して明るい声になって、素直に霊体化して消えた。

 それにしても、ごめんなさい、とはね。どうやら単に激してのことではなく、何か意図があってバラしたらしい。まあ、だいたい予想はつくけど。

 

「フォー、リナー……?」

 

 アビーのクラスを聞いた慎二は呆けたような顔になって、彼女が消えた辺りをじっと見ている。

 

「フォーリナー……今のサーヴァントのクラスかしら。七つのクラスのどれでもない、エクストラクラスってやつね。実際に引き当てる奴がいるとは思わなかったけど」

 

「その通り。どうだ慎二、羨ましいだろう? お前の〝ライダー〟なんて目じゃない、ちょっとレアどころか激レアサーヴァントだ」

 

 遠坂のセリフを肯定しつつ、これまでのお返しとばかりに煽ってやる。しばらく事態を飲み込めなかった様子だが、すぐに真っ赤になってギャーギャー言いだした。

 

「は、はぁっ!? なん、な、なんでお前なんかがそんなの引いてんだよ! 有り得ないだろ! 凡俗は凡俗らしくキャスターでも引いてろよ! だいたい――」

 

「うるっせえな……」

 

 キャスターキャスターキャスター、お前それしか言うことねえのか。だいたいキャスターだって強いのは居るだろ、たぶん。

 ああ、だが俺が言いたいのはそんなことじゃあない。

 騒ぐ慎二の胸倉を掴みあげてやると、ピタッと黙った。なんだよ、喚けよほら。

 

「お前は殺す。必ず殺す。せいぜい決戦までに洒落た遺言でも考えとけ」

 

 突き飛ばす勢いで手を放す。

 

「……っ! くそっ!」

 

 悪態ひとつを置き去りにして、慎二は一階へ走って行った。

 

「……何キレてんの、アンタたち」

 

 一部始終を見ていた遠坂は心底呆れたといった様子だ。

 

「いやあ、あの野郎が地雷を踏み抜いたもんだからつい」

 

「……まあいいけど。

 それにしても、良かったの? キャスターだと思わせといた方が有利でしょうに」

 

「おや、信じるのかい? 口から出任せのブラフかも知れないぜ?」

 

「マトウ君と違って堂々とそれを口にするのね。でもそれ、態度の問題じゃなくて、本人が言うと意味ないってわかってる?」

 

「まあな。バレないに越したことはないけど、バレたっていいんだよ。

 だいたいさ、ほら、フォーリナーって言われても該当しそうな英霊にもクラス特性にも心当たり無いだろ?」

 

「それはまあ、確かにそうだけど。

 フォーリナー……異邦者、来訪者、ってとこかしら。だとしたらジョン・タイターやサン・ジェルマン伯爵なんかは該当しそうだけど……マトウ君のサーヴァントの例があるとはいえ、いくらなんでもあんな少女じゃあないでしょうしね。

 ムーンセルのデータベースにアクセスすればわかるかも知れないけど、私たちが閲覧できるのはこの図書室にある分だけだし」

 

 ああ、そういえば。エクストラクラスについての資料なんかは図書室に置いてあるんだろうか。さっきはそんなことに思い至りすらしなかったが、あるとしたらさすがに困る。

 

「え? いえ、無いんじゃない? そういう基本ルールみたいなものは端末で見られる範囲だけのはずよ」

 

「へえ、そうなのか。

 あ、俺は夜ノ森彗っていうんだ。よろしく遠坂」

 

「敵とよろしくしてどうするのよ。まあでも、覚えといてあげるわ。あの調子じゃマトウ君は負けそうだしね」

 

 そして遠坂もまた去っていった。

 さて、端末……端末ねぇ。一応見てみるか。

 

 

 

 

 

 結論から言えば、端末で確認できるのは基本の七クラスの情報だけだった。

 これから先、例えば慎二がアビーについて情報を集めてマトリクスを解放していったならば彼だけは詳細が見られるだろう。それは、俺がアビーのマトリクスを参照したらかなり詳細に表示されたことからの推測だ。

 しかし、今日アビーがフォーリナーであると知っただけのマスターたちはそうではない。彼らの端末で彼女のマトリクスを表示したところで「フォーリナー」と書かれているだけだろう。

 

 さて、不安がある程度解消されたところで、当初の予定通り図書室で調べ物だ。先の盗み聞きで得た情報も活用すべきだろう。

 

『ごめんなさい、マスター』

 

「いいって。ちょっと面白かったしな、慎二のリアクション」

 

 アビーがあんなことをしたのは、俺をクズ呼ばわりされた仕返しだ。

 プライドの高いあいつのことだ、見下している俺のサーヴァントに馬鹿にされたうえ、そのサーヴァントがレアなエクストラクラスだと知れば発狂するだろうことは想像に難くなかった。事実、そうなったし。

 

「俺の方だって、君を激レアサーヴァントなんて、物みたいな言い方しちゃって悪かったな」

 

『それは別にいいの。あの人すごい顔になってて、とってもおかしかったもの』

 

「うん。だからお(あい)()ってことでこの話はおしまいにしよう。

 さあ、調べるぞー!」

 

 本は結構な数あるが、それでも所詮は〝図書室〟だ。ジャンルで絞り込んで探せば、確認する本の数も自ずと絞られる。

 調べ始めてだいたい三〇分程だろうか。それらしいものを見つけた。

 

 ――無敵艦隊。

 大航海時代におけるスペイン海軍の異名。一〇〇〇トン級以上の大型艦一〇〇余隻を主軸とする、合計六五〇〇〇人からなる英国征服艦隊。

 スペインが「太陽の沈まぬ王国」と謳われた所以(ゆえん)たる無敵の艦隊である。

 

 大航海時代とは、大雑把に一五世紀から一七世紀頃、植民地主義に基づく海外進出が盛んだった時代の事だ。拳銃黎明期はここに含まれる。

 遠坂は無敵艦隊を「敵側の渾名」だと言っていた。

 となると、スペインと戦った側――英国の英雄か。

 慎二の口ぶりからすれば、あのサーヴァントの宝具は艦隊だ。そして艦隊を宝具として持って来られる以上、彼女はいち船員などではなく、艦隊を率いた人物。クラスはライダーで確定だろう。

 この時代の英国で艦隊を率いる英雄。そんな女性が居ただろうか?

 ……いや、待て。さっき遠坂は何と言ったのだったか?

 

 ――だとしたらジョン・タイターやサン・ジェルマン伯爵なんかは該当しそうだけど……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、いくらなんでもあんな少女じゃあないでしょうしね。

 

 それは、つまり。

 あのライダーは、遠坂の推測が正しければ、()()()()()()()()()()()()――ということか。

 ならば。確実な証拠はまだ無いが、有力な候補が一人居る。「太陽の沈まぬ王国」の無敵艦隊を打ち破った――「太陽を墜とした男」が。

 そうとなれば彼についての資料を探そう。彼が彼女であるならば、それは非常に重要な意味を持つ。

 ――しかし。

 

「……無いな」

 

『こっちもよマスター』

 

 彼についての資料は一切見つからなかった。

 ただし。それがありそうな棚には本が抜かれた形跡があった。

 ()()()()()()()()

 

「決まり、だな」

 

『ええ。それにしてもあの人、やっぱりお馬鹿さんなのかしら』

 

 まったくだ。馬鹿だ馬鹿だと思ってはいたが、ここまでとは。

 資料を隠しておくならば他の情報も徹底して隠さなければ、逆に正解を教えているようなものだというに。

 ともあれ、知りたいことは知れた。アリーナに行こう。まだ次の暗号鍵が生成されてないから、今日はひたすらMob狩りだ。

 そうして一階に降りた俺たちは、玄関ホールで〝彼〟に出会うことになった。

 金髪碧眼、男としては少しだけ小柄で華奢な体格は、非常に整った(がん)(ぼう)と相俟って少女のようでもある。

 赤い制服を身に纏う彼の名は、レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。西欧財閥次期当主と目され、聖杯戦争の優勝候補筆頭とも言われる少年。

 そして、傍らに立つ騎士。重厚でありながら動きを一切妨げないであろう、(いち)()の無駄も無い白銀の鎧を身に着けている。

 主と同じ金の髪。涼やかな表情で、その実、青い眼だけは鋭く周囲を見ている。主を害する者があれば速やかに排除するだろう。

 王と騎士。そんな形容がこの世の誰より似合うであろう主従が、そこに居た。

 

「おや、あなたは……やはり、あなたも本戦に来たんですね」

 

 レオの言葉は、俺が予選を越えると最初から知っていたかのようだ。

 

「やはり、とは?」

 

「予選に参加した魔術師のうち幾人かは、目が違っていました。その中の一人が、あなたです」

 

 レオは俺の目を真っ直ぐに見つめている。

 俺はといえば、不思議とそこから目を逸らせないでいた。

 

「あなたは、予選のために押し付けられた役割(ロール)に自我を封じられてなお、その目に確かな光を宿していた。自身の願いを至上とし、何としてでも聖杯を獲る――そんな決意の光です。

 そういう方は強い。魔術師(ウィザード)としての腕に関係なく、必ず予選を突破する」

 

「……それはそれは。ずいぶん高く買ってくれてるみたいだ」

 

「ええ。そしてそういう方は、西欧財閥が管理する世界にとっては()()()()()。ミス遠坂のようにね」

 

「考えすぎだよ。俺の目的は西欧財閥には何の関係も無い。わざわざ敵対する意志も無い。

 けどそうは言っても――俺が聖杯を獲るということは、レオがどこかで敗退するということでもある。そうなったら西欧財閥は大打撃だろうな」

 

「ふふ、そうですね」

 

 俺とレオはしばらく笑顔で見つめ合っていた。

 それから、本当に今まで完全に忘れていたという風に、レオが傍らの騎士を(いち)(べつ)する。

 

「――っと、失念していました。ガウェイン、挨拶を」

 

 王の命に従い、騎士は一歩前に出る。

 

「従者のガウェインと申します。以後、お見知りおきを。どうか、あなたが我が主の好敵手であらん事を」

 

 ガウェインと名乗る騎士は、涼やかな笑顔と共に頭を下げた。

 清廉なる騎士の姿は、レオという王に相応しい。

 ――ガウェイン卿。

 アーサー王伝説において円卓に名を連ねる騎士。

 アーサー王のエクスカリバーの姉妹剣だと言われる聖剣を手にし、その手腕は王をも凌ぐとされる。

 彼ほど剣士のクラスを冠するに相応しいサーヴァントもそうは居るまい。それこそアーサー王くらいなものだ。

 彼の事を調べるのは苦労しないだろう。彼ほど高名な英雄ならば、図書室の本でもかなり詳細な情報が得られるはずだ。そうとなれば弱点を探すことだって容易い。

 それをレオが分かっていないわけがない。 

 これは、自信の表れ。

 霊体化さえさせずに連れているのがその証拠だ。つまり、常に姿を晒すことで「ガウェインという名乗り」が嘘ではないのだと示している。こちらには隠すべきことなど無く、騙す必要もまた無いのだと。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それが、レオが生まれた時から繰り返した日常であり、義務なのだ。

 

「それでは、失礼しますね。再会を祈っています。どうか、悔いのない戦いを」

 

 すべき事は終わった。そう言わんばかりに、レオは去っていく。

 

 ――ああ、あれは強敵だ。

 なにせ生まれながらの王と、最優の騎士。この聖杯戦争において彼らが優勝候補筆頭と言われるのは、それに足る実力と風格を備えているからだ。俺のような凡百の魔術師(ウィザード)とは桁が違う。ガウェインのスペックは、およそサーヴァントとしての彼に許される最高のそれを発揮しているはずだ。

 

 ――ああ、けれど。

 俺には俺の願いがある。

 停滞を維持するために聖杯を欲する王になど。絶対に、負けてやるものか――!

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 ――時は飛んで、七日目。

 あれから今日まで、特に大きな出来事は無かった。

 アリーナに本を隠したと慎二がドヤ顔していたのをスルーして暗号鍵取得に精を出したり。アリーナ探索のついでにMobを狩ったり。一日余ったので慎二が隠した本を探してみれば、そもそもが持ち出し禁止のプロテクトがかかっていたのを無理矢理持ち出したせいで破損が酷く、船の名前しか読み取れなかったり。

 だいたいそんなところだ。あとはマイルームでアビーといちゃいちゃしていたくらいか。

 ああ、あと、これまでのMob狩りで貯まったリソースでアバターを改造した結果、魔力の効率が上がった。これなら一度くらいは宝具を開帳できるだろう。

 さて、猶予期間は終わった。では――戦争の時間だ。

 

「ようこそ決戦の地へ。まだ身支度を整える程度の猶予は遺されているが――必要かね?」

 

 玄関ホールに、今までは無かった扉が出現している。これが決戦場の入口。

 そして扉の前では言峰に出迎えられた。最悪の気分だ。

 

「必要無い。全て済ませてある」

 

「それは結構。

 では覚悟は? 扉はひとつ、再び生きてここへ戻るのは一組。死合う覚悟はできているかね?」

 

「もちろん完了している」

 

「ならば闘技場への扉を開くがいい。異端なる闘士よ、存分に殺し合いたまえ」

 

 言峰にはアビーの正体がわかっているらしい。

 まあ当然か。彼は運営サイドのNPC、その統括だ。参加サーヴァントの情報は総て把握している必要があるのだろう。だからといって彼から情報を聞き出すことはできないし、NPCである以上、慎二のように口を滑らせることもないが。

 ふたつの暗号鍵を扉にセットする。

 ゆっくりと扉が開き――その向こうは暗闇だった。アリーナのように、この校舎とは別の空間に繋がっているのだ。

 

「行こうか」

 

『ええ』

 

 ただそれだけ言葉を交わして、俺たちは扉をくぐった。

 開いたときと同じように、ゆっくりと扉が閉まっていく。完全に閉じた後、浮遊感――どうやらエレベーターのように降りているらしい。

 数秒後、暗闇だったそこが、パッと明るくなった。急だったので少し目が眩む。

 目が慣れてしっかり見えるようになったとき、目の前の人物にようやく気付いた。慎二とそのサーヴァントだ。隣を見れば、いつの間にかアビーも実体化している。

 この場で攻撃できないようにだろう、俺たちと彼らの間には半透明の壁があった。

 

「結局逃げずにちゃんと来たんだ。馬鹿だねえキミも。本当に勝てると思っちゃってるわけ?」

 

 彼はいつものようにこちらを見下してくる。

 

「誰が逃げるか。言ったろ。お前は絶対に殺す、ってな」

 

「……予選のときから思ってたけど、ほんと空気読めないよね。

 もう一度言うけど、キミじゃ僕には勝てないよ。凡俗が天才に勝てるなんて、そんなこと有り得ないだろう? どうせ負けるんだから、さっさと棄権すればいいのに」

 

「何言ってんだお前。聖杯戦争のルールに棄権なんて無いぞ」

 

 最後に残った一人を除いて、一切の敗者は死亡する。不戦敗が棄権といえば棄権にあたるかも知れないが、不戦〝敗〟である以上、待つのは死。

 俺たち全員、月に来た時点でもう死んでいるようなものだ。戦わなければ生を証明できない。

 

「だったら決戦場に来なければいいじゃないか。まったく、腕だけじゃなく頭も悪いとはね」

 

 不必要に大きな動作でやれやれと頭を振ってみせる慎二。

 

「勝敗がわかっているのに戦うなんて、クソゲーここに極まるね。そういう不公平は嫌いなんだけど――まあ関係ないか。

 僕が優勝するに決まってるんだから、誰と戦おうが不公平に変わりはないんだ。なにせ僕とエル――ライダーは無敵なんだから」

 

 こいつの自信はどこからくるんだ、いやマジで。

 それにしても、こいつは今も自分のサーヴァントの正体が割れていないと思っているらしい。

 丁度良い。精神攻撃は基本だ。揺さぶってやるとしよう。

 

「慎二はこう言ってるが――()()はどう思います? やはり自分たちは最強だとお思いで?」

 

 慎二の顔が面白い。ぽかんとしている。

 一方、ライダーはと言えば、実に楽しそうに俺を見ていた。

 

「ああ、やっぱりわかっちまったかい?」

 

「そりゃもう。慎二の情報管理はガバガバでしたからね。せめて〝艦隊〟は隠すべきキーワードだったろうに」

 

「それに関しちゃ同意見だよ。実際、それが無けりゃ確信はしなかっただろ?」

 

「ええ。まずあなたの拳銃は一六世紀頃の代物だ。まずはそこで年代がわかります。そして艦隊、これで少なくとも一六世紀頃に艦隊を率いた人物だとわかる。

 あとはまあ、図書室前で遠坂が言っていた『無敵艦隊は敵側』という台詞。これを慎二は否定しなかった。よってあなたは一六世紀の英国で艦隊を率いた人物と推察できる。

 それで真名にアタリをつけて、その資料を探せば――なんとピンポイントにそれだけが無いときた。それも最初から無いのではなく、本が抜かれた形跡がある。

 だから確信しましたよ。あなたの真名は、太陽を墜とした嵐の悪魔(テ メ ロ ッ ソ ・ エ ル ・ ド ラ ゴ)――フランシス・ドレイク」

 

 肩を震わせて聞いていた彼女は、その瞬間、豪快に笑いだした。

 

「な、何笑ってんだよ! 真名がバレたんだぞ!? こっちはあのサーヴァントのことほとんどわからなかったってのに!」

 

 あ、やっぱりわからなかったのか。良いこと聞いた。

 まあ、当然だろうな。彼女は、史実通りなら英霊になどなれない。何ら特別な力を持たず、ただ狂気の(ひき)(がね)を引いただけの少女としての記録しか無い。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ハハハ! それそれ、そういうとこだよシンジ! なんでわざわざわからなかったってバラすんだい、アッハハハハ!」

 

「ぐっ……笑うなって言ってるだろ!」

 

「まあいいじゃないか。いくら情報がバレたって、倒して奪い返しちまえばそれでチャラってもんだ!」

 

 ライダー――ドレイクは真名がバレたことを気にしてはいないようだ。

 しかし慎二はそうではない。このまま黙るのはプライドが許さないようだ。

 

「くそっ……でも僕だって、全く情報が手に入らなかったわけじゃない! あの図書室には、参加する全サーヴァントに関連するデータが集められているわけだからね!」

 

 ほう。それは初耳だが、まあ考えてみればそりゃそうか。無敵艦隊の資料はあるのにセイレム魔女裁判の資料は無い、では情報面で格差が生まれる。

 ムーンセルから提供されるモノは常に公平だ。それは情報であっても例外ではない。

 

「あら、じゃあ私についてどんなことがわかったの?」

 

 決戦を目前にして(たか)ぶっているのか、少し攻撃的な笑顔で、アビーが問う。

 

「お前が持ってるその鍵! それでイカの足みたいなの出してただろ。つまりお前は喚起魔術(エヴォケイション)に関連のある英霊だ。

 あの足が悪魔のだとすれば、その鍵は《ソロモンの小さな鍵(ゲ ー テ ィ ア)》と関連付けられた魔術礼装――だと思ったのに、そういう英霊の情報は全然出てこない! だいたいフォーリナーって何だよ! ホント何なんだお前!」

 

 待て待て待て待ていろいろ待て。図書室にそんな資料があったってことは、何、ソロモンでも居んのかこの聖杯戦争。

 ……ああ、いや。よく考えたら、参加サーヴァント以外の英霊に関する情報も無いとおかしいか。でないと真名看破の難易度が下がりすぎる。ダミーはあって然るべきだ。

 あとお前の予想全然ハズレだよ、悲しいね、慎二。

 

「うふふ、相変わらず全然的外れだわ。あなた、劇団で道化師(クラウン)でもやったらどうかしら。とっても似合うと思うわ」

 

「お前馬鹿にしてんのか!?」

 

「まあ、それ以外に何があると思うの? おかしなことを言うのね、やっぱり才能があると思うわ!」

 

 大袈裟に驚いて煽るアビーさん。さすがセイレムの魔女、表情がとても邪悪だ。写真撮って端末の壁紙にしたい。支給された端末にそんな機能無いけどなチクショウ。

 慎二を煽るのはなかなか楽しいが、いつまでもそうして話してはいられない。エレベーターは待ってはくれない。

 乗っていた時間はどれくらいだっただろう、やがて、エレベーターが停止した。お互いの背後の扉が開き、決戦場への道ができる。

 

「……ふん。素直に降参すれば、恥もかかずに済んだものを。

 いいさ、お前らがその気なら、遠慮なく叩き潰すまでさ。僕のエル・ドラゴは最強なんだから! 素寒貧にされて泣き喚くんだね!」

 

 肩をいからせて、慎二は歩いていく。

 こちらも行こう。

 

「いよいよだ」

 

「頑張りましょうね、マスター」

 

 

 

 

 

 決戦場は海底だった。

 そこかしこに沈んだ船の残骸が見える。それでいて、俺たちが今立っているここはほぼ円形の広場になっていた。広さも戦うに申し分ない。

 

「まったく腹の立つ……凡人が調子に乗りやがって……!」

 

 慎二は相変わらず悪態を吐いている。

 

「ただ勝つだけじゃダメだぞライダー! 生きているのが耐えられないような赤っ恥をかかせてやれ!」

 

「おや、勝つだけじゃなく、恥までかかせると?

 強欲だねぇシンジ。いいよ、ロープの準備をしておこう。マストに吊り下げるなり、好きにするといい」

 

 ライダーは拳銃を二丁召喚し、身構える。

 一方、アビーもまた、低燃費状態から変身し宙に浮いた。

 

「我は門を知れり。汝、見ること(あた)わず。

 マストに吊すだなんて()()い人。首吊りは嫌よ――吊らせるのは得意だけれど」

 

 それは自虐ネタかいアビーさんや。お兄さんそういうのよくないと思います。

 

「間違っても手を抜くなよエル・ドラゴ。この僕に歯向かったんだ、情け容赦なく叩き潰せ」

 

「はっ、情けなんざ持ち合わせてないっての。アタシにあるのは(たの)しみだけさね。出し惜しむのは幸運だけ。命も弾も、ありったけ使うから愉しいのさ!

 ましてやこいつは大詰め、正念場って奴だ。さあ破産する覚悟はいいかい? 一切合財、派手に散らそうじゃないか!」

 

 ――Sword, or Death(死にたくなければ剣を執れ).

 

 銃声が開戦を告げる。

 一切合財との台詞に偽り無し。アリーナで出会(でくわ)したときよりもさらに激しく、ライダーは拳銃を乱射してくる。

 アビーは、手にした鍵を豪奢なそれからシンプルな二本に切り替えた。二刀流の要領で弾幕を捌き、あるいは避けている。反撃はしていないあたり様子見といったところか。

 しかし彼女は敏捷がそれほど高いわけではない。ライダーを下回っている。今より弾幕を厚くするようであれば捌ききれないだろう。

 

loss_lck(32)(幸 運 低 下)!」

 

 慎二が術式を組み上げ、魔力を通す。それはアビーへと過たず飛んでいき、その身体に潜り込んだ。

 

「これは……きゃっ!?」

 

 アビーが弾いた弾丸が妙な跳ね方をして、脚を掠めた。白い肌に赤い線が刻まれる。

 なるほど幸運低下。時間が経てば戻るだろうが、何らかの対策をしなければ、致命的な不運に見舞われないとも限らない。

 まして相手は太陽を墜とし、世界で初めて生きたまま世界一周を成した女傑。幸運値は相当なものだ。

 

shock(32)(衝 撃 弾)

 

「おっと!」

 

 こちらもコードキャストを使用し、魔力弾をライダーに撃ち込んだが、回避された。それはまあ、アビーは攻撃してはいないわけだから、こちらを気にする余裕もあっただろうし仕方ない。

 しかし回避するために攻撃が止まった。この隙は逃せない。

 

add_regen(8)(自 動 回 復)

 

 持続的な回復効果をもたらすコードキャスト。

 本当なら幸運を上昇させるか、バッドステータスを打ち消すかするコードキャストを使いたいところだが、持ち合わせていない。今取れる手段としてはこれが限界だ。

 

「フォーリナー!」

 

「ええ、いいわ」

 

 あまり撃たせていると危険かも知れない。様子見は終わりだ。

 

「苦しめ」

 

 手にした鍵を前へ突き出し、捻る。

 ライダーの足元から、蛸足のような触手が飛び出した。

 それがライダーを打ち据えんとするが、彼女は大きくステップしてそれを躱す。しかし跳んだ先の空間に穴が開き、再び触手が現れ、今度こそライダーを殴り飛ばす。

 

「っ……ちぃっ! なんなんだいこのイカみたいなのは! こんなの使う英霊なんて聞いたことないよ!」

 

 だが相手も()るもの、ただでは転ばない。体勢を崩しながらもライダーはアビーへと何度か発砲する。

 射線上に穴が現れ、弾丸はその中へ消えていった。

 しかし敵の幸運の高さとこちらが受けた幸運低下(デ バ フ)の影響だろう。いくつかの弾丸は絶妙に穴を逸れ、そしてアビーの手脚に当たる。

 不幸中の幸いと言うべきか。深刻な傷には至らず、それらは自動回復(バ フ)の効果で消えていった。

 

「あぁ、痛かった。

 それじゃあ私も――苦痛をあげる」

 

 アビーが鍵を振る。その軌跡から無数の黒い蝶が現れ、ライダーへと殺到する。

 

「ええい、本当に、相性が悪いったらないね!」

 

 蝶を一頭ずつ、時には複数巻き込みながら撃ち落としていくが、拳銃二丁では連射力が足りていない。追い付かなかった分がライダーに殺到し、傷つけていく。

 ライダー自身が言うとおり、今回は相性が悪かった。

 慎二のサーヴァントがセイバーやランサーなど、近接戦闘主体の英霊であれば、アビーは苦戦しただろう。

 サーヴァントとして筋力や反応速度が跳ね上がっているとはいえ、彼女は本来戦闘とは無縁の少女。戦場を駆けた英雄に生身の戦闘技量で及ぶことは決して無い。あの触手や蝶を突破されてしまえば厳しい戦いとなる。

 ライダーが艦隊戦をメインとする英雄であったこと。そして主に銃で攻撃すること。それはアビーにとって幸運であったと言える。

 

「何やってんだよライダー!」

 

 慎二の叫びに応えるように、ライダーは頭上に艦砲を召喚し、自身の足元に向けて撃った。

 地面が激しく舞い上がる。確かに蝶は殲滅できよう、だがあれでは自分もタダでは済まないはず――

 

「魔力をまわしなシンジィ! 一気に決めなきゃ不利だよ!」

 

 土煙の中からライダーの声。

 いったいどうして、と思ったが、すぐに思い至る。開示されたマトリクスによって得た情報に。

 あらゆる難行を〝不可能なまま〟〝実現可能とする〟スキル、《星の開拓者EX》。そして彼女自身の、評価規格外(E X ラ ン ク)の幸運ステータス。

 彼女は引き当てたのだ。先の砲撃で〝蝶だけがダメージを受ける〟という、本来ならばゼロであろう確率を。

 

「わかったよ、くそっ! でもお前わかってんだろうな! 絶対仕留めろよ!」

 

「当たり前さね、アタシを誰だと思ってんだい!」

 

 土煙の向こうで魔力が高まっていくのを感じる。

 

「マスター。こっちも」

 

「ああ、あれを放置はさすがに不味い」

 

 こちらもできる限りアビーに魔力を注ぐ。

 

 ――アビーの姿がまた変わった。

 

 蜂蜜色だった髪は白銀に。ただでさえ白かった肌はさらに青白く。服はさらに解けて、もはや身体を隠す布は下着くらいしかない。しかも尋常じゃないローライズ。たまらん。

 そして――そして、額の鍵穴から――何かの眼が、こちらを覗く。

 なんて美しい姿だろうか。いあ……いあ……!

 

「我は禁断の()(やく)――導く者也」

 

 先程までよりも、いっそう邪悪に嗤って、アビーは魔力を高めていく。

 手にしていた鍵は銀の粒子となって消えた。

 

「ヤロウども、時間だよ! 嵐の王、亡霊の群れ、嵐 の 夜(ワイルドハント)の始まりだ!」

 

 土煙を割って、ガレオン船――旗艦《黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)》が飛び出した。

 それだけではない。黄金の鹿の後ろから、続々と(ふね)が現れる。それは宙を駆け、上空で隊列を組む。

 

「Ygnaiih...ygnaiih thflthkh'ngha...

 我が手に(しろがね)の鍵()り。虚無より(あらわ)れ、その指先で触れ(たも)う」

 

 アビーの背後に銀の門が開く。こことは違う、領域外と繋がる巨大な門が。

 

「砲撃用ォ意――」

 

 全艦の砲が一斉に動き、アビーを狙う。

 

「我が父なる神よ、我、その神髄を宿す現身とならん。薔薇の眠りを越え、いざ窮極の門へと至らん――」

 

 門を越え、悼ましき触手の群れが顕現する。それは()()()彼女が父と呼び崇めたはずの神とは別の、冒涜的なるモノの化身。先に呼び出したものと比較するのも馬鹿らしい程に巨大な触手の波濤。

 慎二がそれを見て顔を青くしている。無理もない、アビーのスキル《正気喪失B》も相俟って、これはそれだけ正気を揺さぶる。

 

黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)――!」

 

光殻湛えし虚樹(クリフォー・ライゾォム)――!」

 

 全砲門、発射。

 これを受けるのが移乗攻撃(ボ ー デ ィ ン グ)を主体とした艦隊であったなら、その火力と射程に絶望しただろう。遠くから、自軍の艦を沈められる攻撃が飛んでくるのだから。

 (しか)して。今、これを見舞われているのは艦ではない。

 ()なる神の一端をその身に宿し、生ける銀の鍵としての力を存分に(ふる)う、副王の巫女――セイレムの魔女である。

 触手の群れが砲弾を叩き落とす/受け止める/絡め取る/壁となり遮る。

 いくつかがダメージに耐えきれず千切れたり潰れたりしたところで関係ない。銀の門からは代わりが次々這い出してくる。

 やがて全ての砲弾が無力化されると、触手たちは次に艦へと襲いかかった。

 伝説に謳われるクラーケンのごとき触手が艦を絡め取り、門の向こうへと消えていく。ああ、あの向こうは領域外、あの艦たちは二度と戻るまい。

 そんな触手の猛攻を交い潜ってアビーに迫る一隻があった。フランシス・ドレイク自らが駆る黄金の鹿号だ。やはり幸運EXは伊達ではないか。

 

「まだァ! まだアタシにはこいつがある!」

 

「いいえ、終わりよ船長さん」

 

 ライダーの周囲をほぼ半球状に囲んで、小さな門が数多(あまた)開く。

 その総てから、〝ライダー自身の〟銃弾が吐き出され。

 彼女の総身を蹂躙した。

 

 

 

 

 

 ここに勝敗は決した。

 艦も触手も既に無く。

 アビーは低燃費状態に戻り。

 全身を穴だらけにしたライダーは地に臥して。

 そして、俺たちと彼らの間には、半透明の赤い障壁が(そび)えている。

 

「……最後のは、何だい」

 

「あなたが二日目に乱射した弾丸よ」

 

 アビーの力は門を開く力。

 それは平行世界や、外宇宙のような領域外、そして――過去や未来にさえ繋がる。その力で、二日目、SE.RA.PHが介入して戦闘が止まる直前にあの穴に飛び込んでいた弾丸を呼び出した。

 もちろん相応の魔力は使うが。おかげで俺はもう空っけつだ。アリーナで拾った、魔力をブーストするアイテムも使い切った。

 

「そりゃあ……まったく無茶苦茶だねえ……」

 

 星の開拓者に言われたかない。

 まあ、その《星の開拓者》があったからこそ、この手は宝具《光殻湛えし虚樹》を開帳してからしか使えなかったのだが。

 この宝具は、ただ単にでかい触手の群れを喚ぶだけのものではない。

 邪悪の樹(クリフォト)より生い添う地下茎の力の具現。人類とは相容れない異質な世界に通じる〝門〟を開くそれは、そこに在るだけで対象の身体と精神に深刻な(ひず)みを生じさせる。

 サーヴァントとしての身体と精神、それを歪めるということは則ち霊基をも歪め、スキルの効果もまた十全たり得ない。そこを狙ってでないと、当たったとしても致命傷は避けられてしまう可能性があった。現に黄金の鹿号は触手を避けまくっていたし。

 

「な、なんでだよ……? なんで……僕のサーヴァントが負けるんだよ!?」

 

 アビーの宝具の影響で蒼白になっていた慎二が、我を取り戻したのか、悲痛に叫んだ。

 何かコードキャストを使おうとしているが、発動しない。この赤い壁が出現した今、勝敗は既に決している。いまさら何をしても覆りはしない。

 慎二は――ここで死ぬ。

 

「どう考えたって僕の方が優れている! 天才のこの僕が! それなのに――こんな最初の試合で負けるだって! 赦されるかよそんなこと!」

 

 どうあっても発動しないことを理解したのか、頭を掻きむしり取り乱し始める。

 

「おいエル・ドラゴ! 立てよ! 立って、こんな壁ぶっ壊してあいつらを倒せ!」

 

「あー……そりゃ無理だ。この壁はどんなことをしたって壊せない。それにアタシ、心臓……霊核撃ち抜かれてるし? あと少ししたら消えるっぽいよ?」

 

 ライダーは立ち上がることさえできない。どうにか仰向けにはなったが、それだけだ。

 

「なんだよそれ! 一人で勝手に消えるってのか!? お前のせいで負けたってのに!」

 

「……うん、まあ、アタシのせいかもねぇ。実力、天運、はたまた執念、こっちの油断。負けた原因はいくらでも口にできるけど……ま、なんでもいいさね。

 人生の勝ち負けに、真の意味での偶然なんてありゃしない。敗者は敗れるべくして敗れる。今回は相手が勝つのが必然だった。いくらこっちが強かろうが、優れていようが、何かが劣っていたのさ。これはそれだけのことさね」

 

「なに他人事みたいに言ってんだよ! 僕は完璧なんだ、誰にも――ましてや、こんな奴になんて劣っていない!」

 

 慎二は俺を指差し、なおも喚く。

 その間にも、ライダーの身体は末端から消滅していった。

 

「くそっ! この僕が負けるなんて! こんなゲームつまらない、つまらない!

 なあおい夜ノ森! お前、僕に勝ちを譲れよ!」

 

「はあ?」

 

 この期に及んで何を言っているんだこいつは。

 

「だってほら、考えてもみろよ! お前は偶然勝ちを拾っただけだろう? 二回戦じゃ絶対に負ける。だけど僕なら勝つことができる!

 ほら、僕たち友達じゃないか! 二回戦で二人とも終わるより、どちらかが勝ち残った方が賢いだろ? それで賞金は山分けだ、それでどうだい!?」

 

「…………」

 

 こいつ、まさか。今までの言動は冗談でも何でもなく。

 本当に、聖杯戦争をただのゲームだと思って参加したのか。

 

「勝ちは譲れない。俺には叶える願いがある」

 

「ちっ……そうかよ。お前、本気で願いが叶うなんて信じてるんだ? 馬鹿だねえ!

 こんなゲームで勝ったからって調子に乗るなよな! リアルなら僕の方が何倍も優れてるんだ、地上に戻ってお前がどこの誰かハッキリしたら――」

 

 慎二の声が止まった。

 ゆっくりと視線を下げて、自身の身体を見る。

 

「なっ……なんっ、なんだよ、これっ!? 僕の、僕の身体が、消えていく!? 知らないぞこんな退場(アウト)の仕方!?」

 

 彼の身体が黒いノイズに浸食され。そして末端から消えていく。丁度傍らのライダーのように。

 

「敗れた、あるいは失格となった者は死ぬ。……シンジ、アンタもマスターとして、それだけは聞いてた筈だよな?」

 

「は!? 死ぬって、そんなの良くある脅しじゃないのか!? 電脳死なんて、そんなの本当なわけ……」

 

「そりゃ死ぬだろ、普通。戦争なんだから。ナメんじゃないよ、戦争で負けるってのはそういうコトだ」

 

 取り乱す慎二にライダーは滔々(とうとう)と語る。

 

「大体、ここに入った時点でお前ら全員死んでるようなもんだ。生きて帰れるのはホントに一人だけなのさ」

 

 穴だらけの、半分以上消滅している身体を、ライダーは全く苦にしていないかのように。

 

「な……やだよ、今更そんな事言ってんなよ……ゲームだろ? これゲームなんだろ!? なぁ!?

 くそ、くそっ! 何とかしてくれよ、サーヴァントはマスターを助けてくれるんだろ!?」

 

「無理。アタシは消えかけだって、見りゃわかるだろ。SE.RA.PHで現界した以上、ルールには逆らえないしね。

 けどまあ、別段文句言うような事じゃないだろ? 善人も悪党も最後にはみんなあの世行きなんだからさ」

 

「何言ってるんだお前! 悔しくないのかよ!?」

 

「そりゃ反吐が出るほど悔しいさ。だけど契約した時言っただろ?

 覚悟しとけよ、勝とうが負けようが、悪党の最期ってのは笑っちまうほど惨めなもんだ――ってね」

 

 そしてライダーは俺たちにも視線を向けた。もうほとんど身体が動かないので目だけを動かして、出来る範囲で、だが。

 

「まあでも、前にも言った気がするけど。あんたらの方がよっぽど悪役っぽかったね。自分の願いのためなら何でもする、友を殺すのも躊躇(ためら)わない――まさに物語の悪役だ」

 

 けれど。彼女は俺たちを、悪党とは呼ばなかった。

 

「さて、そろそろ限界かね。

 楽しかったよお嬢ちゃん。アタシは世界を一周したが、クラーケンには終ぞ会わなかった。一度戦ってみたいと思ってたんだ。倒せなかったのはちと残念だけどね」

 

「……ええ、船長さん。私もとっても楽しかったわ。あんなにたくさんの船と戦うなんて、まるでセイレムで夢見た冒険譚のよう。

 さようなら。もしまた会えたら、あなたの航海のお話を聞かせてくださいな」

 

「そのとき敵じゃなかったらね。いくらでも聞かせてやるよ」

 

 そしてライダーは目を閉じる。

 

「月の開拓ってのも興味あったんだけどねえ……ま、仕方ないか」

 

 未到の地に思いを馳せて、星の開拓者は完全に消滅した。

 

「お、おい! 何勝手に消えてんだよ! 助けろよ、助けろって! そんなのってないだろ!?」

 

 彼女が消えて、万事が休したと悟ったか。慎二の声に必死さが増した。

 だが、俺にも――アビーにも、どうすることもできない。この壁の向こうは、アビーの力を以てしても届かない。彼女が、SE.RA.PHで現界したサーヴァントである限り。

 

「あ、あ、消える――消えていく! なんで、おかしいぞこれ! なんでリアルの僕まで死ぬって分かるんだ!? 無くなっていく、僕が無くなっていく!

 うそだ、うそだ、こんなはずじゃ……! くそっ、助けろよ、助けてよお! 僕はまだ八歳なんだぞ!?

 嫌だ、嫌だ! まだ何も残してないのに! こんなところで、まだ死にたくな――」

 

 言い切る前に、彼は消えた。

 

「八歳って、マジか……」

 

 そりゃアバターが現実と同じ姿とは限らないけれど、そんなに幼かったとは。それならあの迂闊な言動も腑に落ちる。

 その歳であの腕。こんなところに来なければ、将来は大成しただろうに。

 だからといって同情はしない。後悔も無い。そして、彼が死んだ以上、彼への怒りももはや無い。

 だって俺は、心底から彼を殺すつもりでこの決戦に臨んだのだから。それらは全て、彼への侮辱だ。

 ただ、その。お前、アビーのことクソガキ呼ばわりした割に自分は八歳だったんだな――と、妙な脱力感にも似た感情は()ぎったが。

 

「帰ろうか、フォーリナー」

 

「はい、マスター。戻ったらうんと甘えたいわ」

 

 こうして。俺たちは、一回戦を突破した。

 

 

 

 

 

 決戦場から出ると、そこには遠坂が立っていた。どうやら彼女は先に一回戦を終えていたらしい。

 

「あら。あなたが出てきたってことは、マトウ君は負けたのね。

 まあ当然か。あれだけボロボロと情報をこぼしてたんじゃ、誰だって対策くらい取れるもの。アジア屈指のゲームチャンプも形無しっていうか……まあ所詮はゲームチャンプ、命のやり取りは初めてだったろうし。

 で、どうだった? 彼の死に様、みっともなかった?」

 

「遠坂。あまり死者を馬鹿にするもんじゃないと思うよ」

 

「あら意外。あなたあれだけ怒ってたのに、いったいどういうご心境かしら?」

 

「俺は殺意を以て慎二を手に掛けた。だから慎二に関する全てはそこで終わり。死者にまで怒りをぶつけるのは停滞だよ」

 

「へえ……ドライなのね。だからこそ、ある意味めちゃくちゃ残酷だけれど」

 

 その通りだ。俺の言説はつまるところ、「死後にまでそいつに感情のリソースを割くほど、そいつを重要視していない」ということなのだから。

 

「そうそう、これは単純な興味なんだけど」

 

「なんだ?」

 

「あなたが聖杯に懸ける願いは、何?

 マトウ君を、私を、レオを、数多のマスターを殺してまで叶えたい願いは何かしら?」

 

「――ああ、言ってなかったっけ?」

 

 まあ遠坂と会話したのなんて数回程度だしな。言ってないなら言ってないんだろう。

 俺は彼女の横をすり抜け、階段へと歩きながら、言った。

 

(いく)(ひさ)しく、我がサーヴァント、フォーリナーと共に在ること。

 それが俺の願いさ」

 

 

 

 

 

 マイルームに戻ってきた。

 窓から見える電子の空は既に夜だ。ムーンセルによって、()()()()()()()()()()()()()

 机を繋げたテーブルに向かい合って座り、俺とアビーは祝勝会と洒落込んでいた。楽しいこと、目出度(めでた)いことは何度あっても良い。これからも勝ち上がる度にやっていこう。

 

「そういえばケイ、お酒って飲んだことあるかしら?」

 

「酒? ああ、うん、あるよ。つってもまあ、安酒だけど」

 

「そう……身体に悪いから、きっと美味しいのね。いいなあ……いいなあ……」

 

 そうは言っても、今の時代、西欧財閥の支配地域以外――世界の七割はほぼ無法地帯、あるいは戦場だ。俺もガキの頃は西欧財閥のお膝元、欧州で安全に暮らしていたが、ここ数年は訳あって両親の祖国・日本で生活している。

 二〇世紀末の大災害で国家が破綻した日本は、今では当時からある企業のいくつかが独自に治めてはいて、それぞれの支配地域があの狭い島国に点在している。その地域内ではまあ文化的な生活ができるが、外は例によって無法地帯。ヒャッハァー。

 西欧財閥は列島に旨味は無いと判断しているので、口を出してこないかわりに直接的な支援も無い。

 で、そんな日本に上等な酒が数多くあるはずもなく。俺みたいなのがありつけるのはアルコールが強く味は最悪という地獄のような酒だけだ。悪酔いしたので一度しか飲んでいないのだが。

 まあ、お酒というものに夢を見ているアビーにわざわざ言う必要もあるまい。

 

「ところで、アビーはパンケーキが好きなのかい? 購買に無くて落ちこんでたけど」

 

 祝勝会で食べるものを調達しに行ったとき、それはそれは凹んでいた。なんで無いんだよパンケーキ。むしろ購買にありそうなもん筆頭だろパンケーキ。

 今はかわりにボロネーゼを食べている。ちなみに俺はフライドチキン、飲み物は二人ともコーラだ。この絵に描いたような「ぼくのかんがえたごちそう」感がたまらない。

 

「うん、よくぞ聞いてくださいました! パンケーキは大好きよ! ふわっふわのパンケーキにとろっとろのバター! カリッカリに焼いたベーコンを載せていただくとたまらないわ!」

 

 尋常ならざる情熱(パッション)……!

 どうやら本当にパンケーキが好きらしい。どうにか食べさせてやりたいが、購買に無いからには、作るしかあるまいか。作り方はともかく、材料がなあ……。

 

「あ、それと熱々のグレイビーソースをかけたマッシュポテト! これも断然外せないわ、ええ!」

 

 なん……だと……!?

 マッシュポテトはまあいいとして、グレイビーソースって何だ……!? どこの世界の食べ物だ……!?

 くそっ、だが俺も男だ。好きな女の子に好物のひとつや二つや三つや四つ、食べさせてあげられないで何とする! グレイビーソース何するものぞ! 鍋を摂れ、銀の鍵(ス イ ッ チ オ ン ・ ア ビ ー ト ラ ム)

 

「じゃあ、二回戦からはそこら辺の材料も探してみようか」

 

「まあ、いいのマスター!? もしかして作ってくださるの!?」

 

「まっ……まっかせろーい!」

 

 ……と、図書室にレシピ本とか、ねえかな? あるいは、知り合いのマスター――まあ遠坂しか居ないけど――のサーヴァントが都合良く執事(バトラー)料理人(リョーリナー)のクラスだったりしねえだろうか。しねえよな! 知ってた!

 

「ありがとう、ケイ!」

 

 アビーが立ち上がり、満面の笑みでこちらへトコトコと歩み寄り。

 俺の頬に、かわいらしい唇が落とされた。

 

「……っ! アビー!」

 

「きゃあっ! もー……」

 

 アビーを抱え上げて膝に座らせる。身長差のおかげですっぽりとおさまり、身長のわりに軽い体重が膝に心地良い。

 

「二回戦、頑張ろうな、フォーリナー」

 

「ええ、マスター。私があなたの鍵となるわ。次も、その次も、その次も――敵には苦痛(Pain)を、苦痛(Pain)を、苦痛(Pain)を! ふふふふ……!」

 

 テンションが上がっていらっしゃる。服装こそ変わらないが、瞳は赤くなっているだろう。

 

「だからケイ、ずっと一緒に居てね。そのためなら私、何だって――」

 

「ああ、俺だってそうさ。だからもう俺の前から居なくならないでくれよ」

 

 七日目の夜は更けゆく。

 待ってろ、まだ見ぬ対戦相手たち。

 

 お前を攫いに、門が開く――。

 

 




 
【夜ノ森彗】
 二〇歳。男性。黒髪黒眼。
 身長:一八〇センチ
 体重:七〇キロ
 誕生日:七月一二日
 特技:声・足音等での個人の判別(アビーか否かに限る)
 好きなもの:アビー、海鮮料理、星空
 苦手なもの:管理社会、ピーマン
 天敵:岸波白野、言峰綺礼
 魔術属性:水(魔術師(メイガス)であれば、の話)
 イメージカラー:夜空のような黒
 備考:TRPG的な表現をするとSAN値0

 名前の由来は、なんか夜っぽい苗字+彗星。
 一〇歳のときに出会ったアビゲイルに惚れ、忘れられないまま成長し、ただアビゲイルと再会するためだけに聖杯戦争に参加したロリコン――もといアビコン。
 やたら自信満々に見えるが、魔術師(ウィザード)としての腕は全マスターのド平均。その態度の所以は「アビゲイルと一緒に居るためなら何だってやるし、やれる」という、ある種の狂信である。
 ムーンセルの記録する範囲において、オリジナルのアビゲイルとは再会しない。そして聖杯としてのムーンセルの機能は「ムーンセルが記録している可能性から望みものを選び取り、そこへ確実に至るように過去・現在・未来を改竄する」であるため、月の聖杯を以てしてもオリジナルのアビゲイルとは再会できない。
 その代わり、どの平行世界で生まれどんな聖杯戦争に参加しても必ずアビゲイルを召喚する運命にある。これは月の聖杯戦争を勝ち残った場合の彼が聖杯に懸けた願いの影響である(その大元となる本作の彼が召喚できたのはアビゲイルへの強い執着に彼女の意向、そして生前の彼女と出会っているという縁が重なったからである)。
 オリジナルアビゲイルに会ったのは本作の彼だけであるため、他の平行世界では召喚時が初対面だが、どのみちそこで一目惚れする。チョロい男である。
 ちなみに夜ノ森家の魔術の設定も一応ある――が、この世界では魔術師(ウィザード)であるため今のところあまり関係ない。


 本作のアビゲイルの性格は全ての再臨段階が混ざっています。そのうえ一度生涯を終えているので、現界した年齢の頃の性格を基本としながらも、晩年までの記憶に少しだけ引っ張られています。
 主人公のアビゲイル愛が召喚の触媒になっているため、主人公と会った記憶が強調されており、最初から好感度が高め。本人ではないことに負い目を抱きながらも、自身をアビゲイルとして扱い執着する主人公に依存気味です。主人公が彼女をそうして扱う限り、アビゲイルの再現でしかない彼女はアビゲイルでいられるからです。
 主人公がサーヴァントのアビゲイルを拒絶することは無いので、お互い永遠にハッピーですね! ね!


 仮にこの後続くとしたら、二回戦で岸波白野(♀)と知り合います。対戦相手は、二回戦はダン、三回戦ではランルーくん。凛VSラニの凛が白野に変わり、ラニの自爆から白野を拾い上げ、四回戦で凛、五回戦でユリウス、六回戦がラニ、決勝がレオです。難易度高い。三回戦はガトーでもいいかなと思いましたが、地球の触角と外なる神をぶつけるとロクなことにならないのは確定的に明らかなのでよくない。
 欠片男は……立川の聖人に勝てる未来が見えないので居なかったことになるかな……。いやまあ凛ラニ無しで李書文先生やガウェインを殺ろうってのもだいぶしんどいですけど。
 あとCCCに突入するとしたら意外と桜ルートに行きそう。たぶん最後のファイアウォールはアビーなら抜けられると思うので主人公、アビー、桜の三人で地上行きます。
 
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