星海のやべーやつがダンジョンに潜るのは色々と間違っている 作:レッドリア
※1月21日 フェイト君のレベルを修正しました『LV.7➡LV.5』
「おかしいな……つい今まで宿で休んでた筈なのに、ここは一体何処なんだ?」
ボロボロの建物の中で座った体勢で壁に寄りかかりながら一人呟く青髪の青年が居た。
年は十代後半だろうか、彼の顔付きからはまだ何処か幼さが抜けてない様に見えるが、その目付きはしっかりとしており、人が見れば好青年という印象を受ける。
格好はノースリーブの服に右腕に肘当て、ズボンの上に青いグリーブを着けている。青年が足を動かすとガチャガチャと腰にさげた鉄パイプとグリーブの当たる音が周囲に響き渡る。
青年は立ちあがり辺りを見回すと「うーん」と首を傾げた。
「僕は確か、ついさっきまで立ち寄った町の宿で椅子に座って本を読んでた筈なんだけどな……そもそもあの町にこんなボロボロな教会ってあったっけ?」
青年が立ち寄った町は余り探索してなかったが、少なくとも内装があちこちボロボロになった教会は見かけた記憶がない。
もしくはいつの間にか寝落ちして夢でも見ているのか。そう考えた青年は自分の頬を強くつねった。
「地味に痛い……って事は夢じゃないのか?」
けど、それならそれでいつの間に自分は此処に来たのか。
自身の記憶を引っ張り出そうと頭を回転させるが結局わからない。
「しかし教会か……あの星を思い出すな」
青年がかつて仲間と共に居た場所を思いだし感慨に浸っていると、不意に教会にの入り口から『ガチャリ』と扉の開く音が教会の中に響き渡った。
青年が扉の方を向くと、入り口には一人の少女が立っていた。
「おや?君はボクのホームで何をしているんだい?」
「……ホーム?」
ホーム……って事はこの教会は少女の家だったのか?そう思った青年は此方に近付いてくる、見た目にそぐわない大きな胸の少女に言った。
「もしかして、この教会って君の家だったのか?」
「そうだね。正確には此処は『ヘスティア・ファミリア』のホームで、ボクはこのホームの主神のヘスティアだ。これでも歴とした神なんだぜ」
「……ファミリア? 神?」
青年は怪訝な表情で少女、改めヘスティアを見る。
それもそうだろう。いきなり「自分は神様だ」と言い出す人が居たら、ましてや相手が子供であれば誰だってこんな表情になるだろう。
だがヘスティアはムスッとした顔で「あっ、信じてないな!」と青年に更に歩み寄ってくる。
「あー、いや、ちゃんと信じてるよ?」
「いーや、絶対に信じてないだろう! 子供は神に嘘はつけないんだからな!」
君の方が子供にしか見えないけどね、と内心で思いながら青年は「はいはい」とヘスティアを宥める。
「……まあいいや。所で、君は一体誰なんだい?」
ヘスティアに言われて青年は気が付いた。ああ、名前言ってなかったっけ。
青年はヘスティアを瞳を見据えて言った。
「僕はフェイト・ラインゴッド。僕も一つ聞きたいんだけど、此処って何処なのかな?」
――――――――――――――――――
「……という事なんだけど……」
「ええ……」
青年、改めフェイトがヘスティアに現在地や先程まで居た町から何処にあるか聞いた結果、自身が遥か遠い違う場所……否、違う惑星に居ると知ったフェイトは思わず困惑してしまった。
宿で寝て覚めたら違う惑星ってどういう事だよ。
そしてヘスティアが言うにはフェイトが今居る所は『迷宮都市オラリオ』という所で、この街にはたくさんの神様や冒険者などが集まっていると言う。
オラリオに住まう冒険者は神の眷族となり神から恩恵(ファルナ)を受けてダンジョンに潜り、魔物を倒して得た魔石によりお金を稼ぎステイタスを上げ、更にダンジョンに潜っていく。そしてその神を中心にした冒険者の集まりを『ファミリア』と言うらしい。
「冒険者にステイタス、それに神様か……(聞いてるとまるでゲームみたいだな)」
ゲームみたいだ、と言えば一人旅を始める前に戦った敵を思い出す。そう言えばアイツも世界の創造主だし、神みたいなものなんだろうか。
そこで、ヘスティアの言葉にふと(あれ?)と思ったフェイトは言った。
「そう言えばさっき君は此処をファミリアだって言ってたけど、君の所には冒険者は何人居るんだ?」
「あ~……それなんだけど……」
フェイトから視線を外すとヘスティアはフェイトを横目でチラチラと見る。
何度かフェイトに視線を向けると、ヘスティアは言いにくそうにしながらも切り出した。
「……ないんだ」
「えっ?」
「だから……誰も居ないんだ……」
ヘスティアはフェイトに自身の現状を話した。
ヘスティアは最近天界からこの世界(神たちは下界と呼んでいる)に降りてきたばかりである。友神の所で居候してたら追い出された。今は眷族を捜しながらバイトで生計をたてている。という事だった。
「だいたい、ヘファイストスも酷いんだよ。ほんの数年グータラしてただけで追い出すなんてさ!」
「……いや、それは完全に君が悪いよ」
「うっ!ま……まぁ確かにそうかも知れないけど……」
ヘスティアの話を聞いてると、前に居た惑星エリクールで会ったクリエイターのあの親子みたいだな。
そう思ったフェイトはヘスティアとあの親子……の父親の姿が重なるのを一瞬幻視した。
「(……しかし、これからどうしようかな?)」
気が付いたら違う惑星に居た……のは宛ての無い旅の最中だから別に問題は無い。
それなら、この惑星を旅してみるのも良いのではないか。
それに、ヘスティアが言うにはこの惑星……この街にはダンジョンという遥か昔からあり、奥の方は数百年経っても未だに前人未踏の地だと言う。
……うん。せっかくだし、ダンジョンに潜っていくのも悪くないかもな。
「うう……誰も眷族になってくれないし、バイト先でトラブって借金作るはめになるし……もう誰でも良いから眷族になってくれる子は居ないのかな……」
「(眷族か……まぁクリエイター契約みたいなものだろうし、特に何かあるって訳じゃ無さそうだよな……よし!)」
いつの間にか床に座り込んでいるヘスティアにフェイトは声を掛けた。
「ねえヘスティア、僕で良かったらその眷族になっても良いよ」
「やっぱりボクって神らしくーーえっ? 今……なんて?」
「うん。今は僕は一人旅をしてただけだし、特に行く宛ても無かったからね。僕で良いなら眷族になるよって……ヘスティア!?」
「グスッ……うぅ……ほんとに……本当にボクの眷族に……なってくれるのかい!?」
フェイトが言い終わる前にヘスティアが涙を流してフェイトの腕を掴み目の前に顔を近付ける。もう少し近付いたら鼻と鼻が当たりそうな程に近く、フェイトは少し仰け反ってしまう。
フェイトが「あ、ああ」と言うと、ヘスティアはフェイトの腕を放し、二、三歩離れると腕で涙を拭い「やったぁーー!」と声を大にした。
「ありがとうフェイト君、そしてようこそ『ヘスティア・ファミリア』へ!!」
「うん、よろしくヘスティア」
「やったー!僕に初めて眷族ができたー!」や「これでロキにもうバカにされないぞ!」と喜んでいるヘスティアをフェイトが易しい目で見ていると突然ヘスティアが「そうだ!」とフェイトに話しかけた。
「フェイト君が眷族になった事だし、早速君に恩恵を刻まないと」
「恩恵……確かさっきも言ってたね。それってどういうものなんだ?」
「恩恵って言うのはね……」
ヘスティアはフェイトに恩恵について説明した。
恩恵とは神から人に与える神の眷族である印であり、恩恵を受けた者は『ステイタス』と呼ばれる力を手にし冒険者となる。ステイタスにはレベルがあり、魔物を倒し経験値を得てレベルが上がると隔絶した力が身に付くと言う。
他にもレベルは1から7でレベル7は一人しか居ない事、レベルが1つ違うだけでも実力や力がかけ離れていて上位者には敵うことは有り得ない事、スキルや魔法の事など一通り聞くと、フェイトはヘスティアに連れられてとある本屋へと来た。
「ヘスティア、此処に来て一体何をするんだ?」
「ああ、実は最初の眷族に恩恵を刻むのは此処でって決めてたんだ。ボクは本が好きでね、物語の始まり……ファミリアの始まりは此処から始めるんだ、って」
ヘスティアが本屋の主人に挨拶すると「さぁ、此方だよ」とヘスティアはフェイトを本屋の二階へと案内する。
二階に着くと、倉庫になっているのか周囲は幾つもの本が棚に入っていて、本棚の近くには一台のベッドが置いてあった。
「さぁフェイト君。これから君に恩恵を刻むから上着を脱いでベッドにうつ伏せになってくれ」
「上着を?こうかい?」
フェイトはヘスティアに言われた通りに服を脱いでベッドに寝る。すると、ヘスティアがフェイトの背中に馬乗りになった。
「えっ?ちょっとヘスティア!?」
「大丈夫だ、痛くは無いからじっとしててくれよ」
いや、そっちじゃ無いんだけど。と思いながらもフェイトはヘスティアに背中を指で触られる感触を感じていた。
少しして、恩恵とやらを刻み終えたのか背中に若干の熱さを感じるとヘスティアが言った。
「よし、これで恩恵を刻めたよ。今から共通語に訳したのを紙に……ふぉああああ!?」
瞬間、ヘスティアが絶叫をあげてフェイトの背中から転げてベッドの下に落ちる音がした。
床に落ちたヘスティアにフェイトが「大丈夫か!?」と声を掛けるも、ヘスティアはフェイトの背中から視線を外さない。
ヘスティアは立ち上がり恩恵を紙に書きながら言った。
「あ、ああ……大丈夫。それよりフェイト君、これが君のステイタスだよ」
ヘスティアから渡された紙に目を通すフェイト。
その横でヘスティアはフェイトに恐る恐るといった感じで尋ねた。
「フェイト君。君のステイタスは……まぁレアスキルとしてならわからなくは無い……けど、流石にこれは異常過ぎるよ。……なぁフェイト君、君は一体何者なんだい?」
ヘスティアから渡された紙、フェイトのステイタスにはこう書かれていた。
フェイト・ラインゴッド
LV.5
力・・・A 831
耐久・・・S 911
器用・・・A 832
敏捷・・・A 816
魔力・・・I 0
【我流剣士】【対異常】【詠唱短縮】【ファーストエイド】【レトロヒール】【ガードレス】【コモンアタックスペル】【コモンサポートスペル】【カウンターオーラ】
『魔法』
ブレイズ・ソード
詠唱『焦熱の炎よ、我に力を』
アイシクル・エッジ
詠唱『鋭利なる氷刃よ、此処へ』
ライトニング・バインド
詠唱『 赫灼たる鳴光、我が剣に宿りて破邪の力と化せ』
ディバイン・ウェポン
詠唱『我が手にあるは天帝の剣戟……裁きをもたらす神器なり』
ライトニング・ブラスト
ディープフリーズ
ロックレイン
エクスプロージョン
ファイアボルト
アイスニードル
アースグレイブ
ヒーリング
アンチドート
サイレンス
『スキル』
ブレード・リアクター
リフレクト・ストライフ
ショットガン・ボルト
ヴァーティカル・エアレイド
ストレイヤー・ヴォイド
イセリアル・ブラスト
クリティカル
『時々攻撃の威力が増加する』
ゲットアイテム
『戦闘時に相手から時々アイテムを落とさせる事ができる』
スタミナアップ
『戦闘時に疲れにくくなる』
スタン
『時々相手を怯ませる』
ダブルアップ
『攻撃の威力が大幅に増加する』
ディストラクション
『遺伝子に刻まれた、神に対抗する力。物理法則を適用し、対象を破壊する』
「特に、このディストラクションっていうスキル。神に対抗する力の事……教えてくれないかい?」
「……そうだね。少し長くなるけど良いかな?」
「ああ。それともう一度言うけど、神に嘘はつけないんだ。正直に話してくれよ」
「わかったよ。少し突拍子も無くて信じられないかも知れないけど……」
そう言ってフェイトは自身の能力や今までの旅の事、全てをぼかさずにヘスティアに話した。
話の途中でヘスティアが「それで、それで?」と子供の様に話の続きをねだったり「そんなの……あんまりだよ!」と涙を流したりと表情をコロコロと変えていた。
そして今、敵によって自身の住んでいた星が壊滅状態になり、次元を越えて敵と戦った自分が騒動に巻き込まれるのが嫌で居場所を隠す目的ついでに一人旅をしていた所でこの街に居た。
全てを聞いたヘスティアはおもむろにフェイトの肩を掴んで言った。
「フェイト君、確かに突拍子も無いとは思うけど、君が嘘をついてないのは良くわかったよ。それでなんだけど、居場所を隠す事についてだが、それなら安心してくれ」
「え?」
「君は色んな星を旅してきたんだろう? だけど、この世界の人は君が宇宙の色んな星を旅していて宇宙を救うために戦ったって事は誰も知らないと思う。だって、君が言っていたそのエクスキューショナーなんて神のボクだって聞いた事が無いし、それどころか空の星に人が暮らしてるなんて言ったって夢だってバカにされるだけで誰も信じないだろうからね」
その言葉を聞いてフェイトは「そうなんだ……」と言った。
ヘスティアがいう通りなら、自分は此処でならのんびりと暮らしていけるかも知れないと。
フェイトの視線にヘスティアの手が映り込む。視線を向けるとヘスティアがフェイトに手を伸ばしていた。
「さて、改めてこれからよろしく、フェイト君!」
「……ああ、よろしくヘスティア」
フェイトとヘスティアは握手すると、ヘスティアは上機嫌に鼻唄を歌いながら本屋の外へ出ていった。
続けてフェイトも本屋から出ると、横から陽射しが目に入ってくる。
ホームである教会に向かって歩いていくヘスティアの後ろを歩きながらフェイトは呟いた。
「ーーま、なるようになるだろ。のんびりいくか」