星海のやべーやつがダンジョンに潜るのは色々と間違っている   作:レッドリア

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できる限りSOネタを入れていきたい

※1話のフェイト君のレベルを7➡5に調整しました


2話

 フェイトがヘスティア・ファミリアに所属して恩恵を刻んだ翌日、ソファに寝ていたフェイトは目を覚ますと自身の見覚えが無い部屋に一瞬「何処だ?」と呟いたが、自分がヘスティア・ファミリアに住む事になったのを思いだし、そのままソファから降りて立ち上がった。

 昨日、ホームである教会に帰ってきた後、フェイトは教会の奥にある住居スペースに住まう事になり、住居スペースと言っても余り広くは無くベッドが一つしか無かったため、寝るときにフェイトは「僕はソファでも大丈夫だよ」と言って渋るヘスティアを説得しそのままソファで寝ていたのだった。

 寝ぼけ目でフェイトはとゆっくり流し台に向かい、顔を洗い目を覚ました。

 

「……お腹空いたし、何か作るかな」

 

 フェイトが台所の冷蔵庫を開けると、冷蔵庫の中には食材が余り入っておらず、卵とベーコン、半分になったレタスしか無かった。

 

「ほとんど何も入って無いのか。……そういえば昨日の夕食もバイト先の賄いだってヘスティアが言ってたし、ヘスティアってもしかして食事にも困るほど貧乏だったのか?」

 

 表の教会もかなりボロボロだもんな……。

 ベッドで気持ち良さそうに寝ているヘスティアを一瞥すると、フェイトは冷蔵庫から食材を取り出した。

 

「さて、とりあえずあり物で料理を作るか」

 

 

 ~~フェイト君クリエイション(料理)中~~

 

 

「ま、こんなものかな」

 

 十分後、料理したベーコンエッグとレタスサラダを二人分の皿に盛ると、ちょうどゴソゴソと音を立ててヘスティアがベッドから起き上がってきた。

 

「んん~……良い匂いがする……」

 

「あ、お早うヘスティア」

 

「お早う……ってあれ?」

 

 ヘスティアが匂いがする方に視線を向けると、テーブルの上に二人分の料理ができている事に気が付いた。

 

「フェイト君。これ……君が作ったのかい?というか料理できたんだ?」

 

「まあね。これでもそれなりに料理はしてたからね。それよりヘスティア、起きたなら早く顔を洗って食べようよ」

 

「ああ、そうだね」

 

 そう言ってヘスティアは流しで顔を洗うと、フェイトと椅子に座り料理を食べ始める。

 ヘスティアが「美味い美味い!」と言って食べている様子を眺めながらフェイトも自分の料理を口にする。そして二十五分後、料理を食べ、洗い物を終えた二人が時計を見ると時刻は八時を差していた。

 

「そうだヘスティア。思ったんだけどさ、このファミリアってどれだけ貧乏なんだ?神がバイトしてて賄いを貰ってるぐらいだから相当だと思うけど……」

 

「う……フェイト君って結構ズバズバ来るよね。まぁ……正直に言って貧乏だね。何しろ眷族が居ないから収入源も無かったしね、この教会だって誰も居ないのを使わせて貰ってるようなものだよ。……もしかしてフェイト君は、お金持ってるのかい?」

 

 そう言われるとフェイトは直ぐ様ズボンのポケットから財布を取り出し「アイアムリッチマン!」と財布からお札を何枚か取り出しヘスティアに差し出した。

 

「流石に食料にも困るほどだと僕も困るからね。とりあえずこれで何か食材を買ってきなよ」

 

「ふ……フェイト君!君ってヤツはー!」

 

 瞳に涙を浮かべながらヘスティアはフェイトから受け取るとお札を大事そうに持ち、後ろを向いてペラペラとお札を捲っていく。

 すると、ヘスティアは「あれ?」と声を漏らし捲っていく手を止めた。

 

「なあフェイト君。このお金って……」

 

「あれ?五万フォルじゃ足りなかった?」

 

「フォル?フォル……ああ、そうか」

 

 ヘスティアは再びフェイトの方を向き、フェイトに受け取ったお札を見せるようにして言った。

 

「フェイト君。残念なお知らせだけど、この街で……惑星で使われているお金は『ヴァリス』っていうんだ」

 

「ヴァリス?……え?待ってくれ。フォルじゃない……?」

 

 財布とヘスティアに交互に視線を向けながらワナワナと震え出すフェイト。非常に嫌な予感しかしないが、ヘスティアは無情にもフェイトに事実を突き付ける。

 

「そう……。フェイト君の持っているお金はこの惑星では使えないんだ……」

 

「なっーー!?」

 

 ヘスティアから突き付けられた言葉にフェイトは膝から崩れ落ちる。落とした財布から小銭が何枚か散らばったが、拾うこと無くそのままフェイトは床に手を付いた。

 

「そんな……嘘だろ?今まで旅してきた場所はみんなフォルが使えてたのに……」

 

 フェイトは散らばった小銭を財布に入れ、代わりに財布から札束を取り出した。

 

「と言う事は……と言う事は、僕の一千万フォルが使えないって事なのか……!?」

 

「いっ……!?」

 

 フェイトは札束を床に置き、続けて札束を幾つも財布から取り出し床に次々と置いていく。

 その財布の何処にそんなに入ってるんだ。とヘスティアは言いそうになったが、それ以上にフェイトが置いていく札束に視線が奪われていた。

 

「これが……このお金が使えないなんて……!せっかく頑張って稼いでたのに……!」

 

「フェイト君……」

 

 目の前に置かれた札束の山。ヘスティアにはこれ程のお金は持ったことは無いが、フェイトの様子を見るとフェイトはかなり頑張って稼いだのだろう。

 しかし、それだけ頑張って稼いだお金が使えない。もし自分がバイトで稼いだお金が使えないと言われたらきっと自分もこうなるかも知れない。

 ヘスティアはしゃがむとフェイトの肩に手を置いて言った。

 

「フェイト君。フェイト君がこのお金を頑張って稼いだのはわかるよ。だけど……申し訳無いけどこれは神である僕にもどうにもできないんだ」

 

「いや、ヘスティアが悪いわけじゃないよ。宇宙は広いんだ、使われている通貨が違う場所がある可能性は充分にあったんだ。誰が悪いって訳じゃ無いよ」

 

「フェイト君……ありがとう。けど、強いて言うならボクはこのお金が使えない現実が、この世界が……いや、この世界を作ったヤツが悪いと思うんだ」

 

「……そうだね。確かにこの世界を作ったヤツが宇宙全体でお金を統一してくれてたらこうはならなかったんだ。くそっ、ルシファーのヤツ!」

 

 この世界を作った相手に文句を言いまくるフェイトとヘスティア。

 しかし、その相手は既に倒している今はもう何を言っても変わることは無い。

 五分程した所でフェイトは札束を財布に戻すとゆっくりと立ち上がった。

 

「さて……この惑星で僕のお金が使えないのはわかった。そうなると、ダンジョンで稼いでくるしか無いみたいだね」

 

「そうだね……っと、そろそろ時間も時間だしギルドに行ってきたらどうだい?ギルドに登録もしないといけないし、余り遅くなると帰るのも遅くなっちゃうよ」

 

「わかった。じゃ、僕はそろそろ行ってくるよ。ヘスティアもバイト頑張れよ」

 

「ああ。気を付けてね」

 

 教会から出ていくフェイトを見送ると、ヘスティアは住居スペースに戻り少しヘスティアも後になってバイト先へと向かって行った。 

 

 

 

 

「えーと、確かヘスティアは此方にギルドがあるって言ってたけど……」

 

 教会を出てヘスティアに聞いた道を歩いてギルドに向かって行くフェイト。

 昨日は本屋までの道しか見る事が無かった為、初めて見る街並みにフェイトの視線は右へ左へ忙しそうに動いていた。

 途中で武器や鎧を装備した人と何人もすれ違ったが、あの人たちがおそらくダンジョンに潜っている冒険者なのだろう。中には子供の様に小さい人や耳の長い人、猫耳を生やした人が居る事から、この惑星にも様々な種族が居るのだとフェイトは理解した。

 そして昨日から見えていた、街の何処からでも見える程に異様に高い一本の塔。あれが、昨日ヘスティアが言っていたバベルと呼ばれる施設なのだろう。彼処がダンジョンの入り口になっているとの事で、ダンジョンの場所については迷う事は無さそうだ。

 暫く歩いていると、道の先に神殿の様な建物が姿を現した。

 

「此処か……ヘスティアが言っていたギルドは」

 

 思えば、自分が知るギルドって言うとエリクールの職人ギルドのイメージがあるけど、この惑星のギルドはまた建物からして違うんだな。……流石に指し棒を持った女性は居ないよな?

 そんな事を思いながらフェイトはギルドへ足を踏み入れた。

 中に入るとギルド内は様々な人で賑わっており、笑い声や怒号が入り交じっている。

 その中を通り抜け、人とすれ違いながらフェイトは受付の人に話しかけた。

 「はい」と返事をしたのはエイナ・チュールと名乗ったセミロングに切り揃えたブラウンの髪に眼鏡を掛けた耳の長い女性。胸の名札にも『エイナ・チュール』と書かれている。

 

「あの、冒険者登録をしたいんですけど」

 

「登録ですね。では、此方の用紙に記入してください」

 

 そう言ってエイナはフェイトに一枚の用紙を渡すと、フェイトは用紙に記入していく。少しして記入し終えるとフェイトは「はい」とエイナに用紙を手渡した。

 

「はい。では此方で……んん?」

 

 フェイトが記入した用紙に目を通すエイナ。視線が動く度にエイナの顔が怪訝な表情になっていくのを見てフェイトは声を掛けた。

 

「あの、エイナさ「フェイト君?」あ、ハイ」

 

 エイナから言い様の無い圧力を感じたフェイトは思わず一歩後ずさってしまう。

 だが、エイナの発言は終わらない、始まったばかりである。

 

「この用紙に書いてある内容なんだけどこれ、幾らなんでも有り得ないわよ。冒険者になったばかりの人がLV.5だなんて……それだけじゃない、この魔法やスキルだって最初からこの数は聞いたことも無いし、そもそも……」

 

「(うわ、これ絶対に面倒なやつだ)」

 

「……なんだけど……って、聞いてるのフェイト君!」

 

「あ、うん。聞いてるよ」

 

 それからエイナの言葉は続いていく。やれ正しく用紙に記入しなさいとか、見栄を張ってはいけないとか。

 フェイトは知らないが、エイナが疑って掛かるのは当然の事である。本来、ダンジョン以外の場所でレベルアップをする事は極めてまれであり、そのオラリオの冒険者でさえ大半はLv.1である。それなのに、初めてダンジョンに潜るために登録しに来た青年がLV.5と記入し、あまつさえ魔法やスキルの欄には有り得ない数の魔法とスキルを記入している。

 スキルはまだともかくだが、魔法は最初から使う事ができるのは魔法が得意な種族であるエルフしかおらず、それでも魔法はロキ・ファミリアのリヴェリアと言う最上級の魔法使いでもフェイトが書き込んだ数の魔法は使えないのである。

 たまに見栄を張って嘘を書き込む人が居るが、エイナにはフェイトの事が見栄を張っている人にしか見えていなかった。

 そのフェイトとしても自分は全く嘘をついてないし、ヘスティアが書いたステイタスの紙を見ながら記入していただけなのだが、常識や認識の違いによる事にはどうしようも無かった。最も、この部分はエイナが仕事に真面目すぎるが為に考えが固くなっていて、自身の常識外の事に対応できないのもあるが。

 だが、フェイトも言われてばかりでは無い。エイナに「これではダンジョンに行かせる訳にはいかない」と言われるとフェイトは自身が嘘をついてない事を証明しようと口を開いた。

 

「けど、そう言われても僕だって嘘はついてないし、ヘスティアに受け取ったステイタスの紙をそのまま書いただけだよ」

 

 何だったら見るかい?とフェイトはエイナに紙を差し出すと、今度はエイナが困惑してしまった。

 それを見て首を傾げるフェイト。これも彼はヘスティアから聞いてないために知らない事だが、冒険者はステイタスを他人に見せることは無い。それはギルドの職員も例外ではなく、登録の際に記入する意外では基本的に冒険者のステイタスは見る事は無く、冒険者同士の間でもよっぽどの事態でなければ相手に見せる事は無い。何かで相手に見せる事があっても、ステイタスはその人の全てが書かれている様なモノである為に見せる事に躊躇う人がほとんどである。

 それなのに、フェイトは何の躊躇いも無くステイタスを見せようとする事に逆にエイナは自分がフェイトのステイタスを見る事に少し躊躇ってしまうも、フェイトが「ほら」と紙を近付けてくるので、エイナはおそるおそる紙に手を伸ばす。

 エイナは自身に「これはフェイト君の為。正しい事をする為に確認するだけ」と言い聞かせながら紙を受け取り中身に目を通した。

 そして次の瞬間、フェイトの瞳の先で、エイナは信じられなさそうな表情を隠せずに紙を見たままの状態で硬直した。

 

 

 

「ーー私としては色々と言いたい事は有りますけど、ファミリアの主神が書いたこの紙とウラノス様が嘘では無いと判断した以上は登録を認めます」

 

 エイナの硬直が解けた後、エイナに「念のために確認を!」と言われてギルドの主神であるウラノスの元にエイナに連れられたフェイトは、ウラノスにステイタスの書かれた背中を見せステイタスの事を発言をすると、ウラノスに嘘では無いと判断され、ようやく冒険者として登録が完了した。

 ……随分時間が掛かっちゃったな。僕が言えた事じゃ無いけど、エイナさんは頭が固すぎるんだよな。

 もしこの場にフェイトの仲間の一人『クリフ・フィッター』が居たなら確実に「頭の固い姉ちゃんだな」と言っているだろう。

 ともかく、これで冒険者登録は完了した。フェイトは早速ダンジョンに乗り込もうとギルドの外へ足を

 

「それとフェイト君。レベルが高くてもダンジョンは初心者なんです。これから講習があるので此方に来てくださいね」

 

「……えっ?」

 

 ーーどうやらダンジョンに乗り込むのはまだ先になりそうだ。

 


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