星海のやべーやつがダンジョンに潜るのは色々と間違っている 作:レッドリア
PA 1『僕は鉄パイプ派なんだ』
「なあなあフェイト君、前から思ってた事があるんだけどさ」
「ん?どうしたのヘスティア?」
ここ数日、毎日ダンジョンに潜って稼ぎを得ていたフェイト。流石に毎日は少し疲れたし今日はゆっくり休もうとフェイトが部屋で鉄パイプを布で磨いていると、ベッドで横になりながら本を読んでいたヘスティアが「そうだ」と思い出したようにフェイトに話し掛けた。
話し掛けられたフェイトは鉄パイプを磨く手を止めるとヘスティアの方を向いた。
「フェイト君ってダンジョンに行く時に何時もその鉄パイプを持って行ってるけど、フェイト君って剣とか使わないのかい? 結構稼いでるんだから鉄パイプより何か武器を買ったほうが良いと思うんだけど?」
普通に考えたら鉄パイプより剣を使った方が攻撃力はあるし、何より頑丈さも鉄パイプに比べて大きく違うだろう。
そう思ってフェイトに問いたヘスティアに、フェイトは「はあ……」と溜め息を吐いて言った。
「わかって無いな、ヘスティアは」
「む……わかって無いってどういう事だい?これでも僕は色んな武具を見てきてたんだ、それなりにはわかってるつもりだよ?」
以前に鍛冶の神の所に居候していたヘスティアはその居候先の神友である神『ヘファイストス』の所で様々な武具を造っている所を見てきており、専門職程では無いにしろ其処らの冒険者よりは詳しいとヘスティアは自負している。
その自分に「わかってない」と返されて少しムッとしたヘスティアは逆にフェイトに「そう言う君はどうなんだい?」と言った。
「いくらフェイト君だって、武器を造ってきた訳じゃ無いだ「あるよ?」ろう……え?」
割り込むようにして言ったフェイトの言葉に反応したヘスティア。
え?今、フェイト君は何て言った?
「……フェイト君、君……武器、造った事あるの?」
自身の言った事に対する返答が本当なら、フェイトは今武器を造った事があるという事になる。
本当に?と意味を込めてヘスティアが聞くと、フェイトは頷いてヘスティアに言った。
「うん。これでも僕は色んな武器を造った事があるよ」
「実際は武器だけじゃないけどね」と磨き終えた鉄パイプを二、三度軽く振ってフェイトは近くの壁に鉄パイプを立て掛ける。
「それなら余計に、どうしてフェイト君は剣とかの武器を使わないんだい?正直な話、鉄パイプより普通に武器を使った方がダンジョンでの戦いも楽になると思うんだけど……」
武器を造った事があるならそれこそ鉄パイプより剣とか使うはずだよね、とフェイトに言うヘスティア。
「その言葉、実は前に仲間にも同じ様な事を言われた事があるんだ。確かにヘスティアが言う通り、剣を使った方が攻撃力が高いのはわかってる。僕だって普通に剣で戦ってた事もあるからね」
「でも」と続けて言うフェイト。
「僕は……どんな剣よりも鉄パイプが良いんだ」
「それは……どうして?」
「だって……だって僕は……」
声を震わせながら俯くフェイト。その様子を見てヘスティアは武器を使わない事に何か大きな理由があるのかも知れないと察した。
例えば、そう。剣を使っていた時に、剣によって大事なモノを失ってしまったとか、それだけの大きな理由がーー
「鉄パイプ派だからっっ!!」
「……は?」
ーーは?
フェイトの心からの叫びに内心と言葉が重なって声に出たヘスティア。
だが、それも仕方ないだろう。まさか剣を使わない理由が「僕は鉄パイプ派だから」という、ヘスティアや普通の冒険者からしたら「なんだそれ?」と言いたくなるような至極つまらない理由なのだから。
しかし、フェイトは真剣な表情で「鉄パイプ以上の武器は無い!」と言いたげに壁に立て掛けていた鉄パイプを両手で握り締めている。
「僕は以前にクリエイターのみんなと色んな武器、それこそ名剣や名刀と呼ばれる武器を造って、それを使ってきていた。他にも遺跡とかで見つけた剣も使ってたんだけど、鉄パイプに比べるとどうしても馴染まない部分があるんだ。最初は元々鉄パイプを使って戦ってたからなんだろうけど、色んな剣を使ってるうちに鉄パイプが僕の手に一番馴染むってわかったんだ」
「そ……そうなんだ。鉄パイプを使ってるのにも理由があったって事だね」
「そう言う事」
言っている事の半分は良くわからなかったが、自分に馴染む武器を使うのが一番だという事はヘスティアにも理解できた。確かに馴染まない武器を使った所でうまく戦えないだろうし、そう言う理由なら何も言う事はない。
……と言うより、これ以上は言わないほうが良いかも知れないね。とヘスティアは内心で思ったが、フェイトはそれを知るよしも無い。
「それじゃあ、フェイト君が鉄パイプが一番だって言うのはわかったけど、その前に言ってた『武器を造っていた』ってのはどういう事だい?」
この街だと武器を造るのはヘファイストスの所か『ゴブニュ・ファミリア』の二つが鍛冶系のファミリアであり、冒険者たちが使用する武器を造っている所である。
それ以外で武器を、しかも自前で造っている所がヘスティアはイマイチ想像できないでいた。
「うーん……どういう事かって言っても、やってた事自体は普通に鍛冶のそれだからなぁ。僕はこの街の鍛冶屋の事を良く知らないから何とも言えないけど、鉄を打って、竈の火で溶かして、水で冷やして、ってやってるならそれと同じだよ」
「ふむ、確かにヘファイストス……ああ、この街にある鍛冶をやってるファミリアね……の所もそうやって武器を造っていたのは見たことがあるよ。それで、フェイト君はどういった剣を造ってたのかな?」
ヘスティアはヘファイストスの所で見ていた武器造りの様子を思い出して言う。どうやらこの街でも武器造りの方法はフェイトが言っている事と同じ様である。
本格的に武器を造ってたんだね、と思ったヘスティアはフェイトに今度はどんな武器を造っていたのか聞くと、フェイトは「そうだね……」と言って何処からともなく数本の剣を取り出した。
「何処に持ってたんだよ……」
「細かいことは気にしない。で、これが僕と鍛冶クリエイターで造った武器だよ」
「良かったら持ってみる?」とフェイトに言われて試しにと一本フェイトから剣を受け取ったヘスティア。
受け取った剣を見て思ったのは先ず、想像以上に出来が良く、ヘファイストスの所に居る鍛冶師が造った剣に負けず劣らずだという印象を受けた。次にゆっくりと鞘から剣を抜くと、刀身が赤く、その赤さが妙にこの剣に似合っている。
「おお……」
フェイトが言うにはこの剣の銘は『イグニートソード』と言うらしい。
触ってみると仄かに暖かさを感じる。切れ味はわからないが、これだけの出来の剣はヘファイストスの所で買うとしたらかなりの値段になるだろう。ともすれば、この剣を造るのにもそれだけのコストがかかったと見て良いだろう。
値段の事を気にし始めたヘスティアは傷付けないように慎重に剣を鞘にしまい、フェイトに返そうとする。
その時、ヘスティアはうっかり手を滑らせて剣を鞘にしまう途中で床に剣を落としてしまった。
「あっ」
あわてて床に落ちる前に剣を拾おうとするヘスティアだが、間に合わず剣は床に落ちてしまい、剣が鞘から零れ落ちる。
すると、剣が淡く赤色に輝いたと思うと次の瞬間、剣から紅い炎の弾が『ゴウッ!』と音を立てて壁に向かって飛んでいった。
「なあっ?!」
炎の弾が壁に当たると、壁に少し焼け焦げた後が付いただけで炎は跡形も無く消え去った。
その様子を見てフェイトは「火事にならなくて良かった」と安心して息を吐いたが、ヘスティアは驚愕の表情で剣と炎の弾が当たった壁を交互に見てワナワナと震えている。
持っていた剣をしまったフェイトは何時までもその状態のヘスティアに声を掛けると、ヘスティアはハッとして意識を戻すとフェイトに詰め寄った。
「ふふふ、フェイト君! 君の……この……これって魔剣だったのかい!?」
「魔剣?それはレヴァンテインじゃないよ?」
「いや、そのレヴァン何とかじゃなくて……これ!この剣!」
ヘスティアは鞘にしまったイグニートソードをフェイトに思いきり近付ける。
目の前に近付けられたイグニートソードを見てフェイトは「ああ」と言うとヘスティアからイグニートソードを受け取って言った。
「ヘスティア。この剣は別に魔剣なんてものじゃないよ」
「いやいや、嘘だろう!ボクは見たからな、炎の弾が壁に当たったのを!魔法の出る剣が魔剣じゃないなんて、だったら何て言うんだ!?」
「うーん、そう言われてもな……この剣はクリエイションで造った普通の剣だし、これは魔剣レヴァンテインみたいに壊れたり、敵の強さを上げたり自分の動きを半分にするようなほぼ自分にデメリットしかないような武器じゃないよ」
「それは魔剣とは違う気がするよ!?」
「ああ、確かに本当の魔剣はクリムゾン・ヘイトみたいなのを言うんだろうな。けどアレ特に大した効果の無い普通の刀だって言ってアルベルが色々と合成して改造してたな」
「魔剣が大した事が無いってどういう事!?というか魔剣って改造できるの!?」
ギャーギャーとフェイトの持つ剣を指差して声を荒らげるヘスティア。次第に頭を抱えだしたヘスティアは此処でふと何処か違和感を感じ取った。
……おかしい、ヘファイストスが前に言っていたのは、魔剣と言えば普通の製造法では造ることができず、魔剣に込められた魔法には使用回数に制限がある。で、制限を迎えると魔剣は壊れてしまう。
けど、フェイト君が言っている事を聞いていると、色々と……何もかもが違っている。さっきも炎の弾が……おそらく魔法だろうけど、それが出たのに魔剣ではなく普通の剣だと言っている。魔剣で通じたかと思うと全然別の話になってしまう。なんだよ、敵の強さが上がったり精神力が削られるって!?そんな武器聞いたことも無いよ、ってか存在しないよ!!おまけに魔剣を改造?そもそも魔剣って改造できるの!?
此処まで考えてヘスティアが思った事は、おそらくだがフェイトと自分とでは魔剣に対する認識が全くと言っていい程に違っているのだろう。
叫びに叫んだヘスティアは「ハア……ハア……」と肺に酸素を入れようと呼吸を整えると、フェイトの魔剣(仮)を再び指差して言った。
「なあ……フェイト君。君は魔剣についてどれぐらい知ってるんだ?」
「魔剣について?」
ヘスティアに魔剣の事を聞かれたフェイトは自分が知っている魔剣『レヴァンテイン』と『クリムゾン・ヘイト』について説明すると、ヘスティアは首を横に振ってこの世界の魔剣について今度はフェイトに説明した。
「……という事だけど、これがボクがフェイト君の剣を魔剣だと言った理由だよ」
「成る程ね。僕の居た所の魔剣とは全然違うんだな。少し驚いたよ」
「ボクとしてはこの世界の魔剣クラスの武器が簡単に造れる事が凄く驚きだけどね」
ヘスティアの説明中にフェイトが「それなら幾つも造ってきたよ」と言ってきた事にツッコミをいれそうになっていたヘスティア。きっと先程何本か取り出した剣がそれなのだろう。もしもこの話をヘファイストスが聞いていたらどんな表情になっていただろうか。
「で、だ。フェイト君、ボクが言ったようにこの世界では魔剣……君にとっては普通の剣だろうけど、それはとても高価な武器なんだ。それでいて魔法の使用回数に制限が無くて壊れない武器だなんて知られたら、下手したら命を狙われてもおかしく無いと思う。フェイト君、その剣を使う時は周りに注意してくれよ」
何時に無く真剣な表情で言うヘスティアにフェイトは「この惑星ではそれだけの物なのか」と自身の持つ剣をそう認識すると「わかったよ」と言って頷いた。
「けど大丈夫。ヘスティアが心配するような事にはならないよ。そもそもこの剣は使わないし、だって僕は……鉄パイプ派だからね」
「……ああ、そういえばそうだったね」
フェイトの言葉に(心配したのは杞憂だったかなー)と内心で思ったヘスティアはベッドに横になると途中まで読んでいた本に手を伸ばし、再び読み始めた。
「所で、フェイト君はその魔剣以外に普通の剣は持ってるのかい?」
「一応ね。このインフェリアソードなんかは炎とか出る合成はしてない普通の剣だよ」
そう言ってフェイトは此方を顔を向けているヘスティアに一本の剣を見せるように何処からともなく取り出した。
フェイトが鞘から剣を抜くと、シンプルなロングソードと言える刀身が姿を現した。
「なんだ、フェイト君は普通の剣も持ってたんだね」
「まあね。最もこの剣は大して強くないからちょっと合成して強化してるけどね」
「へ……へぇー……ちなみにどんな強化を?」
そうだな……とフェイトは剣を鞘にしまって言った。
「先ず、装備者の攻撃力と防御力を強化する『バトルブーツ』って言うのがあるんだけど……」
「その時点でトンデモな気がするけど……それで?」
「そのバトルブーツを強化して、装備者の攻撃力と防御力が30%上昇するように強化するんだ」
「……うん、で?」
「それをこのインフェリアソードに合成してあるんだ。そうすると、この剣の使用者は攻撃力と防御力が30%上昇するんだ。ステイタス的に言うと力が500あればそれに30%プラスされるから……650になるのかな?」
「……うん。色々とツッコミをいれたいけど……続きがあるんだろ?」
「けど、それだけじゃ強化には心もと無いから、バトルブーツを八個ほど合成してあるんだ」
「……それ、全然普通じゃないし、ちょっとじゃないよ?むしろそれ、下手な魔剣よりもヤバイんじゃないかな?」
「けど、僕は鉄パイプ派だから結局使ってないんだよね、この剣」
「……ああ、結局それなんだね」
早くダンまちのストーリー進めろって?
横道にそれてそれまくるのがSOクオリティ
……近いうちに本編も少し進めます