第六学区、アミューズメント施設の集まるこの学区の公園で、目元に傷を持つ黒髪の青年が屋台を出していた。
不純物の少ない純粋な水を取り寄せ、能力で、瞬時に凍らせた通称『キーンとならない氷』を学園都市ではすっかり見なくなった手動の機械で削ってかき氷にして、露店販売を初めてみたが、想像以上に売上が出るもので、驚いている自分がいる。
今日もいつも通り、学園都市のとある公園に荷台が調理場と改造された車で向かい、お店を広げていた。
なんと今日、最近大人気のかき氷屋、俺こと木山春風の城、『あずま屋』は広告塔としての価値があると認められたのかは知らないが、ゲコ太というキャラクターとコラボしていた。
薬局の入口にたってそうな感じのカエルのマスコットであるゲコ太。限定の抹茶メロンかき氷を買うと限定ゲコ太のストラップが貰えるというものだ。
その影響力は絶大で売上はいつもの3倍程になりそうな勢いである。さらに、今日に限って、学園都市の見学ツアーのバスの休憩所がこの公園らしく、子供たちが集まる集まる。もしかしたらもっと売上が伸びるかもしれない。部下をチラシ配りになんて送らなければ良かったと後悔するまである。
(あと一つか)
着々とコラボ商品を売りさばいていたが、特典のゲコ太ストラップも最後の一つとなっていた。
そんなことを考えながら接客を再開する。
「いらっしゃいませー」
(次のお客様は、高校生か。確かあの制服は柵川のだったかな)
「ゲコ太ねぇ。抹茶メロンって……………あー頼んでみようかなぁ。すみません、抹茶メロンといちご小豆を一つずつ下さい」
「かしこまりましたー」
なれた手つきで氷を削り、紙の容器に盛り付ける。
香りだけで誤魔化す市販のシロップとは違い、ちゃんと絞って作った抹茶メロンのシロップを氷にかけ、ゲコ太の小さなフィギュアを氷の上に載せる。
同じようにいちごのシロップをかけて、甘く味付けした小豆を載せたものを用意する。
たしかに変わった味もしれないが自動販売機にあるヤシの実サイダーやいちごおでんよりかははるかにうまいという自負がある。
「はいおまちどー。あ、最後のゲコ太ストラップですー。おめでとうございます」
コラボ商品である、抹茶メロン味のかき氷を渡すと同時にゲコ太ストラップを手渡す。
「へ?」
何故だろう、女子高生のお客様が驚いた表情を浮かべていらっしゃる。
するとその後ろで、両手両足を地面につけ、項垂れる少女が一人。あれは、常盤台の制服ではないか。
(まてよ、あの茶髪……………どっかで見た気が……………思い出した、
常盤台の
意外と少女?趣味なんだなぁとそんなことを思いながらどうするか考える。こんなところで喚かれても営業妨害ものである。
しかし、柵川の少女がゲコ太ストラップを譲ることで解決したらしい。続いて、常盤台の少女もかき氷を二つ頼むと、スキップしながら、どこかへ行ってしまった。
時計を見る。約束の時間だ。他分もう列に並んでると思うんだが。
そんなことを考えながら次のお客様に注文を聞こうとした時
「あの!
「君がか」
やっと来た。
名前があっているか確認すると、一つの音楽プレーヤーを懐から取り出した。
自らの目的のため、姉のため。そこまでして
「占めて10万円だ」
「は、はい」
おずおず、という様子で差し出された封筒を受け取り中身を確認する。
他の一般人に見られないよう、カウンターの下で中身を確認する。その中にはしっかりと1万円札が10枚入っていた。
「はい確かに。これがあなたの欲しがってたものですよ、と。無くさないようにな」
そう言って音楽プレーヤーを少女の手に渡す。
「ありがとう、ございます」
そう言葉を残して走り去ってしまった。
迷いや期待、興奮と言った様々な感情の入り混じった目をしていた。
今日にも受け取った品を使用するだろう。そうすればまた一つ組み上がる予定のネットワークの容量が増える。
自然と笑みが浮かんだ。
春風は今日の一番大切な仕事が片付いたことを確認すると、帰りの支度をし始めた。
否、しようとしたその時
ドゴォオオン!!
公園の向かいにある銀行、真昼間なのに閉められたシャッターからは火の手が上がり、人二人分くらいの穴が開けられていた。
するとそこから全身黒色の服装をし、マスクをした男、いかにも銀行強盗して来ましたと言わんばかりの三人が穴の開けられたシャッターから出てきた。
すると、公園内でかき氷を食べていた先ほどの少女たちの友達だろうか、ピンクの髪のツインテールと頭に花を乗っけたのが、
ピンクの髪のツインテールがその場からかき消えた。向かいの車道に目をやると、ピンクの髪の(以下略がこちらから搔き消えると同時に現れては、男たちを次々と無力化して行った。
まぁ、あれを見る感じピンクのやつはレベル4だと思うし、ここは一般人らしく伏せて傍観するとしよう。
うちで売ってた限定ゲコ太を
まぁ、なんやかんやで解決した訳で。
当然ながら、アンチスキルも来る訳で。
あまり大きな声で言えないことというか。裏の世界に全身どっぷり浸かっているこの身としては、まぁアンチスキルと会うのは好ましくないなぁという訳で。
「かーえろ」
「ただいま戻りました、先輩」
売店を荷台に乗せた改造トラックの運転席に乗り込み、エンジンをかけると同時に助手席のドアが開けられて一人の少女が乗り込んで来た。
茶髪をツインテールにして、霧ヶ丘女学園の制服を着ていた。
「お、今日はサラシじゃないんだな」
「おって、先輩がチラシ配りに行くように指示した時、服ちゃんと着ろって言ったじゃない」
そう、彼女こと結標淡希は、堅っ苦しいのを嫌う。なので、基本はサラシを巻いただけ、その上にブレザーを肩にかけるというファッションなのだ。
なぜ、結標淡希と一緒に行動しているのか。
彼女の能力は
彼女と出会ったのはちょうど半年前。
当時、結標淡希はシステムスキャンをするという事で第十八学区の隅にある研究施設に来ていた。
しかし、システムスキャンを実施するというのは建前で、研究職員らはその場でデータを取れるだけ取ったのち、結標を拉致し、今ではすっかり寂れてしまった第十九学区に作った非公式の研究所で犯し尽くした後にモルモットにするつもりだったのだ。
脳波スキャンや、体力テストなど、ある程度のデータを取った後、本命の能力の実験を行った。しかし、そこで事故が起きた。テレポートの能力で自身を飛ばした結果、転移座標の計算を誤り、片方の足が壁にめり込んでしまったのだ。
これをみた研究員は、在ろう事か無理やり結標の足を無理やり引き抜いたのだ。結果、密着していた足の皮膚が削り取られ、肉も幾分か持ってかれるという大怪我を負った。
そのとき、木山春風は上層部からの依頼を受け、ちょうどこの研究所を潰しに来ていた。なんでも、物体転移に関する実験レポートを盗まれたとか。
木山春風は暗部の人間としてはだいぶ変わり者だった。別段、人を殺すことに忌避感や恐怖がある訳ではない。しかし、それなのに人を
つまりたまたま、偶然が重なっただけなのだ。
とりあえず白衣を着ているもの、偉そうなやつ、メガネをかけていたやつ、目につくものを全て自分の持つ能力で凍らせ、出来上がった氷を同じく能力を用いて粉々にしていった。
広い部屋に出た。なにやら騒がしいが、指示書に乗っていた所長と思わしきやつ以外は全員凍らされた。
「お、お前は……」
なにが起きたのかとこちらの方を向き驚愕の表情を浮かべる男。
「
レベル5、この学園都市において知らないものはいない、研究者ならなおさらだ。第5位、物体操作系能力者のトップ、物体の分子運動を司り、
「心当たりあるんじゃないか?」
「やつらの実験レポートか!」
「やっぱそうだったんね」
「こんなとこーーー!?」
言葉を返そうとしたその瞬間、男の体が首から上を除いて氷に包まれた。身体中に冷たい感覚が走り、少しも動けなくなってしまった。
「データの回収っと」
そんなことも御構い無しに、春風はコンソールにUSBを接続する。
「ま、待ってくれ!あとすこしなんだ、そこの
接続されたUSBから放たれたコンピューターウイルスが防御システムを次々とコピーし回収すると、データを破壊し尽くした。
トドメとばかりに、能力で生み出した氷の槍でコンソールを四方八方から貫き、完全に破壊した。
「さてと」
氷漬けにされた男を見やる。
「たのむぅ、殺さないでくれぇ」
氷のオブジェに近づく。
「そんなに死にたくないか」
「は、はい!」
「なら、いくつか質問に答えてもらおう。一つ、そこのコンソールからアクセスできるものでここのデータは全てか?」
「はい!」
「次に、このデータを見たものはこの研究施設以外にいるか?」
「第十九学区にある第二研究所に私たちと共同実験をしているのがいます」
「最後に、隠し事はないか?」
「はい!コンソールに全て保存していましたし、メモは全てデータ入力してました」
「そうか」
研究者はこれで解放されると、息を吐いた。
この呼吸を最後に、氷像は二度と息を吸うことはなかった。
「あいにく今回の依頼は抹殺と言われたもんでな」
終わったことを確認するために辺りを見渡した時、実験室の壁際に倒れる少女を発見した。肌が見当たらない足、それに伴い出血もしており辺りには小さな水たまりができていた。
「おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫に、見える?」
「これからどうするつもりだ?」
そう、もしこの少女がただの一般人ならば殺したくはない。
「ひとまず、痛くってなにもできなさそうだから、腕のいい医者を紹介してくれないかしら?」
「なるほど、生意気な口が利けるほどの元気はあるらしい」
そう言って俺は知りうる限り最強の医者へと電話をかけた。
「そんなことからもう半年か」
「先輩は変わらないわね」
「そう言うお前はだいぶ変わったんじゃないか?」
カエル顔の医者の治療をうけ、足に包帯を巻き、病院から出てきた結標に俺は声をかけた。
なんでも、もう霧ヶ丘女学園には行くつもりはもうないらしい。彼女なりに何かあったのだろう。これから予定はあるのかと尋ねたところ、特には考えていないと。そこで、俺は結標にある提案をした。
俺の下につく気はないか?
学園都市でも数少ない空間移動系能力者だ。彼女が組織につけば、色々と便利になる。戦闘・運搬・移動その他諸々。使い方は無限だ。
「いくつか、約束を守ってくれれば、金も出すしそこそこな権限も与えてやる」
それを聞いた結標は
「借りは返すわ」
「まぁ、実質今まで俺一人だったしな、複数人になった今やっとそれらしくなったか?」
「それじゃあ、あなたと私でツートップってことね」
「そう言うことになるな」
「ようこそ、『マーケット』へ」
そうして今に至る。
「レベルアッパーの拡散状況は?」
「そうね、目標の大体60パーってところかしら」
「了解。春生姉さんは?」
「今日も自室にこもってデータの精査をしてたらしいわよ。私たちがお膳立てしたとしても、実行するのは先輩のお姉さんですもの」
トラックを運転しながら春風は淡希の報告に「そうか」と返事をする。
学園都市の誇るレベル5とレベル4を乗せたトラックがビルとビルの隙間に消えて行った。
タグにもあると思いますが、主人公の見た目はは血界戦線の番頭を高校生くらいにした感じです。