どうしても、説明パートになってしまいますね。
も少ししたら戦ったり動いたりするはずですので(たぶん!
木山春風の朝は早い。
夜明け前には起床し、顔を洗って裏の組織としての正装とも言える紺色のシャツに黒色のスーツというビジネスマンが着ていそうなセットを身にまとう。
電源のスイッチとも言えるコーヒーを飲むために準備をする。
学園都市の外から取り寄せたコーヒー豆をガリガリと手回しのコーヒーミルで粉々にしていく。効率よくするために、コーヒーミルを使う前にお湯を沸かすのも忘れない。
「おはよう、先輩」
そうして、砕いたコーヒー豆をサーバーにドリッパーに濾紙をセットし、お湯でいったん洗う。ドリッパーに落ちてきたお湯を捨て、挽いたコーヒー豆をドリッパーに入れ、いざコーヒーを淹れるぞというタイミングで部下である淡希がテレポートで現れる。
「おう、おはよう淡希」
余談だが、彼女はつい先日、自分自身を
なぜか、それは春風が自分の実力を隠すように指示したからだ。
計画を確実にするためにも、戦力を増やしたい今、レベル5だなんて知られた日にはさらに深いところから狙われるに決まっている。そして、裏の組織であるマーケットにレベル5が二人いるなんてことがわかれば、スクールやアイテムと言った
まだ、姉のためにも。
春風がコーヒーを淹れている間、淡希はといえば、彼女は見るからに高そうなソファーに腰掛けていた。このソファー、淡希が正式にマーケットに入ってからの初の任務で消した、議員の家から拝借して着たものだ。研究資金の横領にはじまり、違法な取引。そこまではべつに暗部に目をつけられるようなことではない。ようは、その違反行為の中に一線を超えてしまったものがあったのだ。
任務をおえて、帰ろうとした時、淡希がこのソファーを見つけた。どうせ証拠隠滅するのだし、いくつかパクっても問題ないと結論を出した二人はソファーをはじめとしていくつか家具や日用品を淡希の
「はい」
「ありがとう」
淹れ終わったコーヒーをマグカップ二つに等分に入れる。一方を淡希に渡すと、春風は自分のものに口をつけながら淡希の向かいのソファーに座った。
「そういえば先輩」
「うん?」
「私たちの組織の目的ってなんなのか聞いてないんですけど」
「あれ、言ってなかったっけ?」
淡希の言葉美、確かに「表でできない任務をする裏稼業」程度にしか言ってなかったなと思い出す春風。
「AIM拡散力場制御実験って聞いたことあるか?」
「知らないわ」
「まぁ、そうだよな。この実験、て言うのもAIM拡散力場制御実験はな、換えのきく
「そんな実験が…………あ、お姉さんっていつも言ってたりするけど?」
「それについても説明する。その実験の被験者、子供達は小児用能力教材開発所に勤めていた俺の姉さん、木山春生の教え子だったんだ」
一旦口を閉じる。少し冷めてしまったコーヒーを飲む。
「もちろん姉さんは、実験の主導者に実験を止めるよう説得をした。しかし、止められることもなく子供達はさっき言ったとおり。どうして止められなかったのか。簡単な話だ、統括理事会だよ。奴らとグルだったのさ、統括理事会は!」
ダンッ、と机を拳で叩きつける。
「まぁ、それに気づいたのも暗部に入ってからだけどな。そこから姉さんは変わった。髪はボサボサのまま、満足に睡眠もとらず、隈も酷くなっていった。俺は、そんな姉さんを見てられなくなった。教え子を助けるために
『
「なんでも、高レベルの能力者のクローンを様々なシチュエーションで殺すことで能力の方向性を操作するのだとか。俺が目をつけたのはそのクローンだ。電子制御系能力者のクローンを使うらしくてな。能力を利用して脳波リンクを使った電磁的情報網を作ることが可能になる予定なんだと。
そこで俺は考えた。ようは大規模な計算にも耐久できる超大容量のスーパーコンピュータを用意すればいいってな。そうして俺は
長々と話していることを感じながら、淡希に問う。
「レベルを上げることのできる音声データだってことくらい」
「そう、レベルが上がるのは
完全に冷え切ったコーヒーを飲み干すと春風は立ち上がった。
「以上のこと踏まえてだ。我がマーケットの目的は二つ。人体実験の犠牲者を救うこと。そして、これは個人的なことになるんだが………………AIM拡散力場制御実験の主導者、木原幻生を殺す」
「復讐かしら?」
「たしかにな。だが、もう決めたことだ。今更曲げるつもりはない。下手をすれば木原をいや学園都市を敵に回すかもな」
「それでも私は抜けないわよ」
唐突に言葉を突きつけられた春風は少し目を見開いて驚きの表情を浮かべた。
「だって言ったでしょ、借りは返すって。あなたを満足させる結果を持ってくるのがそれよ」
「ふっ、それは心強いな」
「目標が達成されたら次だ。金の集まるこの町の市場を支配する。そうすれば情報も集まりやすくなるし、人体実験も未然に防ぐこともできる。金があれば
「なるほど、それでマーケットってわけね」
目的、そして組織名など諸々を理解したからなのかうんうんと頷きながら言葉を返した。
それをみると春風は向かいにおいてある飲み終わっていた淡希のマグカップも回収し、自動洗浄機に放る。
みれば、淡希も出動準備万端だった。
「行くか」
「えぇ」
「この処理可能データ容量から察するに、
木山春生は脳波の研究オフィスを備えたビルに設置された自室のデスクに腰掛け、ディスプレイ上に表示されているデータを眺めていた。
あの子達を、教え子であり、あんな実験だと知らずに巻き込んでしまった
しかし、計算をするために
ふざけるな!
そういうことだったのか。実験があったあの日アンチスキルに連絡した時も、配属先がかなり遠い別の場所になったのも。アンチスキルが動くわけがない、何故なら統括理事会が裏で糸を引いていたのだから。全てが繋がり、はらわたがマグマのように煮え繰り返った。しかしそんな状況で何もすることができない自分が嫌で、当時は荒れに荒れたものだ。春風には迷惑をかけた。
それから、ただでさえ無理をしていた体にさらに鞭を打って研究を続けたが一向に活路は見出せなかった。
しかしある日、春風が持ってきたソフトウェア、今、学園都市で拡散している
弟の考案した
ただ、一つ疑問があった。使用者が増え、ネットワークが大きくなることに越したことはないが、想像以上に広がりが早いのだ。
なぜなのだろうかと、原因を考えてみる。
(十中八九、春風のしわざかな)
春生の年の離れた弟。絶望の淵に立った私を心配し、知識のない脳科学だと言うのに研究を手伝ってくれた優しい弟だ。
それが関係しているのだろうか、この以上も何故だか春風が関わっているとどうしても思ってしまう。
(そういえば、春風の雰囲気や話し方がガラっと変わったのも私に統括理事会と木原幻生の実験の関係を教えてきたあたりだったかな)
ギィ、と音を鳴らす椅子から立ち上がり、窓ガラスに近づくと、学園都市を俯瞰する。
売店でアイスクリームを買う学生、校庭で能力の練習をさせられている生徒、何も知らずに教鞭を取る教師、楽しそうに笑う学生。誰もこの町の危険性に気づいていない。それもこれも、統括理事会が人体実験があることなども含めて隠蔽しているからだ。あの子達のことも。
「もうすぐだ、もうすぐで全てが終わる」
そう呟くと、白衣を翻して部屋から出ていった。