龍に育てられし息子と麦わらを被った男の出会い 作:レイリーン
運命の日の裏側で
プロローグ①
どれだけの時が過ぎただろう…。
多くの仲間達は人間との共存の道を選び、人間を食料としか思わない同族の者達と戦うことを選んだ。
しかし人間はどちらの竜も滅ぼし、人間だけの世界を創り上げた…。
私と同じ炎竜の王はそれでも人間を信じ、人間の子供の親となり滅竜魔道士としての教育までも行なっていた。
運命の7月7日の2日前の7月5日、灼熱が支配する火山の噴火口、その中にある私の住処にあの炎竜王が訪ねて来ていた…。
イグニール「久しいな、我が好敵手(とも)爆炎竜テオ・テスカトル」
テオ「…何の用だ、人間に裏切られ、人間に滅ぼされた竜の生き残りよ…」
イグニール「…いきなり手厳しいな…」
テオ「人間のために同族の者達と戦う、これは否定せん。お前達に譲ることのできない信念があるならば戦う以外にない。しかし、竜の戦いに人間を参加させたことは全く理解できん。」
イグニール「……」
テオ「結果、竜の力を手にした人間に我ら竜は滅ぼされ、ごく僅かに生き延びた者も、辺境の地で息を潜めて生きる他ない。嘗ては栄華を誇った竜も、惨めなものとなった。さらには竜王の称号までも、今では人間が名乗っている。」
イグニール「……」
テオ「このような事態を引き起こした者達が私に何の用だ。」
イグニール「…2日後の7月7日、我々は時を越える。」
テオ「…ほう。」
イグニール「今の我らはアクノロギアに敗れ魂を奪われている。我らは子供達の体の中で竜化を防ぎながら、アクノロギアを倒す機会を伺うことにした。」
テオ「…それで、私に何を言いたいのだ。」
イグニール「…我らが時を越えるまでアクノロギアを止めてもらいたい。」
テオ「……」
イグニール「お前が戦うことを好まないことは重々承知している。しかし、今この世界でアクノロギアを止めることができる可能性がある者はお前しかいないのだ。」
テオ「……」
イグニール「…頼む…。」
テオ「……。」
イグニール「……。」
テオ「…好敵手(とも)よ、私は初めに言っていたはずだ、人間と竜の諍いには関与しない、私は世界の行く末を眺める、と。」
イグニール「……。」
テオ「…嘗て我が伴侶を助けてもらったことは感謝する。しかし、人間との争いに関与するつもりはない。」
イグニール「……わかった…。」
…ナナよ、私はどうするべきなのだろう。このまま座していてもいずれ私も滅ぼされるだろう。私のこの残り少ない命、どのように使うべきなのだろう…。