龍に育てられし息子と麦わらを被った男の出会い 作:レイリーン
メタリカーナ「ナナ・テスカトリ?聞かん名だな?」
バイスロギア「わしも聞いたことがない。スキアドラム、お前は知っているか?」
スキアドラム「知らんな。第一私はテオのことも殆ど知らなかったのだ。そんな私がテオと関わりのある竜など知るはずがないだろう。」
グランディーネ「ちなみに私も知りません。というより、そのナナ・テスカトリという竜がテオによく似ているのであれば、テオを知る者達の間で噂になったりするものでは?」
メタリカーナ「確かにそうだ。では何故ここまでナナ・テスカトリの存在が知られていないのだ?」
イグニール「ナナ・テスカトリ。姿形はテオと瓜二つ、体色が赤ではなく天色であり角が無いことが特徴だ。」
バイスロギア「テオと姿形が瓜二つとはな。であれば尚更噂にもなっていないことが不思議で仕方ない。何故なのだ?」
イグニール「…幽閉されていたのだ、竜を忌み嫌う人間達の手によってな。」
グランディーネ「なんですって!!」
イグニール「ナナはまだ若い竜だった。おそらく生まれて間も無くテオと同じ姿をしていたため、テオの力を恐れていた者達の手で閉じ込めてしまったのだろう。」
メタリカーナ「考えられるな。テオには追放という形をとったがそのせいで恐ろしい力を持った竜を野に放ってしまった。ならば今回は最初から閉じ込めて目の届くところで管理してしまおうとしたのだろうな。」
スキアドラム「しかしテオはどのようにしてナナと出会ったのだ?幽閉されていたのであればテオと出くわすことなどないだろう?」
スキアドラム「…テオが襲った砦、そこにナナは幽閉されていたのではないか?」
イグニール「その通りだ。テオにとってみれば意図していなかった出会いだったそうだ。自分と同じ姿をした若い竜、ましてや幽閉されてたのだ、流石に放置しておくこともできず自身の住処に連れ帰ったらしい。」
グランディーネ「…イグニール、先程から気になっていたのですが何故あなたがそこまでナナについて詳しいのです。いったい誰からナナのことを聞いたのですか?」
イグニール「…テオからだ。」
グランディーネ「…やはり。極限状態が収まったテオとあなたは接触していたのですね。そこで話した内容こそ、皆に話したくなかった本題があるのではないのですか?」
イグニール「……。」
メタリカーナ「ここまで話して隠すことはなかろう。わしもあの暴れん坊がパッタリと暴れなくなった理由は気になっていたしな。」
イグニール「………。」
バイスロギア「イグニールよ…。」
イグニール「…分かっている。そう、テオが10日間暴走し続け、正気に戻りナナの元に駆けつけた際、私もテオの後を追ったのだ…。」
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イグニール『テオ……。』
テオ『…ナナは初めて私にできた家族だった…。』
イグニール『……。』
テオ『初めてだった…。私を見ても恐れず、敵意を向けてくることもない。それどころか私を気遣い、傍に居ようとする存在など私は出会ったことがなかった…。』
イグニール『……。』
テオ『…これは罰なのだろうな…。今まで身勝手な理由で多くの竜や人間を傷つけてきたことへの…。』
イグニール『……テオよ…。』
ナナ『……テオ……。』
テオ『!!!』
イグニール『!!』
ナナ『…テオ…、無事ですか…。…怪我などしていませんか…?』
テオ『あぁ、私は大丈夫だ。どこもやられてはいない。』
ナナ『…よかった…。』
テオ『…すまない…、私が傍を離れたりしなければ、こんな傷を背負わせることはなかった…。本当にすまない…。』
ナナ『…あの竜達は…』
テオ『大丈夫だ、すでに私が追い払った。安心してくれ。』
ナナ『…テオ…、あの竜達を許してあげてください…。』
テオ『なっ……!!』
イグニール『……!!』
ナナ『…あの方々は本当のあなたを知らないだけなのです…。…ただ強大な力を持っているということだけしか知らない…。…知らないから恐怖し、恐れ、排除しようとするのです…。』
テオ『…!!』
イグニール『………。』
ナナ『…あなたが水が苦手なことも、動物と戯れるのが好きなことも、とても寂しがり屋なことも…。…力を持っていても、あなたは他の竜と何も変わらないということも…。』
テオ『…だが!!』
ナナ『…だから私が話します…。…あなたのことを、他の竜と変わらないことを…。…あなたのことを知ってもらうまで、私が話します…。』
テオ『!!!』
イグニール『…!!」
ナナ『…諦めないで伝え続ければ、いつか必ず耳を傾けてくれる者が現れます…。…だから、私が…。』
テオ『…もういい、少し休め。心配しなくても、あの者達をこれ以上痛めつけるつもりはない。』
ナナ『…はい…。…少し、ねむってもいいですか…?』
テオ『…ああ。私たちの住処には、私が連れて行く。安心して眠ってくれ。』
ナナ『…ありがとう、テオ…。』
テオ『………。』
イグニール『………。』
テオ『…これが私の罪だったのだな…。』
イグニール『……?』
テオ『知ってもらうために、分かってもらうために、この世界に声を出して訴えかけることを私はしなかった…。早々に諦め、力で世界に訴えかけ、多くのものを傷つけた…。私は、私の罪で、私の大切なものを傷つけてしまった…。』
イグニール『…テオよ…。』
テオ『…炎竜王イグニールよ、約束しよう。私はこれより一切人間と竜の世界に手を出さん。この大陸からでることもない。』
イグニール『待て、それは…!!』
テオ『今まで多くのものを傷つけておきながら、今更話をしようなどと虫が良すぎるだろう。私にはもう世界に訴えかける資格などないのだ…。』
イグニール『しかし…!!』
イグニール『…ナナを助けてくれたこと、本当に感謝する。ありがとう、炎竜王イグニール。』
イグニール『待ってくれ、テオ・テスカトル!!』
テオ『…帰ろう、ナナ…。私たちの家に。』
ナナ『…………はい…。』
イグニール『…………。」
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グランディーネ「……。」
メタリカーナ「……。」
バイスロギア「……。」
スキアドラム「……。」
イグニール「…これが、あの戦いで起きた全てだ…。」
バイスロギア「…成る程な。お前が頑なに話そうとしないわけだ、このような話だったとはな。」
グランディーネ「…すみません、イグニール。私でもこのようなことは話したくないでしょう…。無理をさせました…。」
イグニール「…いや、私こそすまない。本来ならもっと早く皆に伝えなければならなかった。」
メタリカーナ「全くだ、そうすればテオを寂しがり屋の暴れん坊主とからかってやることができたものを。」
スキアドラム「……は?」
バイスロギア「そうじゃな。なんなら水竜も連れて行って苦手な水でびしょ濡れにしてやることもいいかもしれんぞ?」
イグニール「…いや、そうではなくてだな…。」
グランディーネ「…まぁそうですね、ひとりの時間が長すぎて周りとの交流の仕方を忘れた引きこもりにはそれくらいが丁度いいでしょうね。」
バイスロギア「はっはっは、引きこもりか、言い得て妙だな!」
スキアドラム「まったく、構って欲しいから暴れ出すとは、図体の大きい子供だな。ここはひとつ、殴ってやらねばならんな。」
メタリカーナ「やるならお前だけでやれ。わしはやらんぞ、死にたくないからな。」
バイスロギア「同じく。消し炭にはなりたくない。よって一人でやってこい。」
グランディーネ「そうですね、私も死にたくないのでスキアドラムだけで行ってきてください。大丈夫、明日には戻ってこれるようにバーニアの魔法はかけてあげましょう。さぁ、行ってきてください。」
スキアドラム「…なんだろうな、急に涙が出てきた…。」
イグニール「………。」
イグニール(テオよ、お前のことを知りたいと、理解したいと思っている者達はいるぞ。お前の寂しさを埋めることができる存在は世界に必ずいるのだ…。)
なんとか続き書けました!
これでテオの過去話は終わりです。次回からいよいよあの暗示目録と相対することになりますよ!
スキアドラムが可哀想なことになってますけど、原作では殆ど出番なかったし、少しスポット当ててあげようと思っていじられ役にしました(笑)
スキアドラムのファンの方、申し訳ありません(汗)