機動戦士ガンダム0080 in Winter 作:kenji_kk
両親とも連邦政府関係者の地球出身者で自身も地球の居住権を持つ地球連邦軍士官。
連邦軍中枢ではエイブラハム・レビル将軍派に属していたが戦争中に宇宙へ上がることはなかった。
地球の士官学校を卒業して順当に昇官し、開戦時には地球連邦軍の大本営ジャブローから3,000km離れた同じ南米大陸の最大の都市サンパウロに駐在していた。
地球圏総人口の殆どが強制移住で宇宙居住者となった後でも政治経済の中心として栄えていたが衛星都市の多くは消滅していた。
戦前は連邦軍高官のレビル将軍が頻繁に宇宙へと上がることを訝しむ声が多かった。
月の裏側にある宇宙コロニー群がジオン公国として君主制を取って軍備を増強していても連邦政府の1/10の国力しか持たない宇宙居住者を大方の地球居住者は危険視していなかった。
1月3日、ジオン公国軍元帥ギレン・ザビの独立宣言とともに戦争の火蓋は切られた。
コロニー駐留軍だけで抑えらると思っていた戦争は核兵器も使用され、半分以上のコロニーが消滅した。
ハッテ・サイドのアイランド・イフィッシュ・コロニーが中の住民を虐殺された後に核パルスエンジンに点火されて月の公転軌道から地球への落下コースを取り、地球軌道艦隊の必死の防戦によりジャブローへの落下は防げたがシドニーを蒸発させた。ここに至って政府中枢である地球居住者は初めてこの戦争は他人事で済まされない状況になっていることを自覚した。
連合艦隊が編成され、中旬には月を挟んでジオン公国の反対側にあるルウム・サイド近海でジオン艦隊と激突した。しかし、連合艦隊はジオンの新開発された人型機動兵器の前に大敗し、ルウム・サイドも戦火に巻き込まれ1基のコロニーだけを残して消滅した。
ルウム戦役で捕虜となっていたレビル将軍が連邦軍特殊部隊の手でジオン公国から救出された。
これにより連邦政府とジオン公国は南極で戦時条約を結んだ。お互いの捕虜の取り扱いと核兵器やコロニー落としのような大量殺戮兵器の使用を禁じるもので、混乱に陥っていたジャブローを一応の安堵を得た。
3月中旬、ジオンは上旬のカザフスタンに続き第二次地球降下作戦として機械化師団を北米大陸西海岸のサンフランシスコの工業地帯と東海岸の宇宙拠点ケープカナベラルに降下させて制圧した。
これにより連邦軍は多数の潜水艦、戦車を鹵獲されて工業力を失い、ジオンは地球上での生産拠点と宇宙にあるジオン本国との兵站路を手に入れた。
所属部隊はジャブローに集められた後に北米戦線へと向かった。
前線に復帰したレビル将軍はジャブローの地下工廠で建造されていた反重力機関を持つ宇宙強襲揚陸艦がV作戦に組み込んだ。
6番艦まで計画されている内、乾ドックでは1番艦ペガサスから3番艦まで船体が出来、艤装中であった。
ジオンの技術力の前に宇宙艇空母になる予定だった艦にそれまで細々と研究が続けられて来た連邦軍製の機動兵器を運用出来る宇宙強襲揚陸艦に変更された。
ジオンの北米大陸司令官は士官学校を卒業したばかりのジオン公国の首魁ザビ家の末子ガルマ・ザビ大佐の青二才だった。
しかし、ジャブローの核シェルターに閉じ籠りモグラと揶揄されている連邦軍首脳に対し、ガルマ・ザビは戦線に立ち、役者顔負けの容姿で政治手腕をふるい、支配地域の首長を懐柔し後方撹乱もうまくいっていない。
連邦軍は物量で上まっているにも関わらず宇宙拠点を抑えられ次々と降下して来る敵部隊を止められず、機甲部隊の戦車では機動兵器に対応出来ず、雨のように砲弾を降らせて東部コーンベルトを近隣の街ごと有史以前の荒地に戻してどうにか戦線を維持していた。
10月、組織改編でジャブローへと戻された。
V作戦で得られたデータを元にジャブローでは連邦軍の初の生産型機動兵器が昼夜敢行で製造されていた。
レビル将軍は来月に迫ったカザフスタンから降り立った欧州のジオン勢力を一掃するオデッサ作戦の指揮するためにヨーロッパへと渡っていた。
この為にヨーロッパ、アフリカ、アジアから部隊を集結させジオンの5倍の戦力を用意した。
同時期、既に東南アジアのコジマ大隊に生産型と別のラインで製造された試験評価用の機動兵器が先行配備され戦果を挙げていた。
11月、オデッサ作戦には間に合わなかったがジャブローで生産型機動兵器ジムの量産体制が整い殆どの戦地に機械化部隊を派兵出来ることになった。
ジムは大量生産を優先した為にV作戦で投入された試作型より大胆なコミットメントがなされた。
それまで全長200m級の艦船にしか搭載することが出来なかったプラズマ粒子砲の小型化に成功したが機動兵器の原子炉の制約から大出力のビームライフルが使えずさらに威力の小さいビームピストルですらジャブロー防衛と最前線の宇宙へ運ばれることが決定した。
装甲も大量調達が可能な材料に変えられジオンのザクの主兵装120mm榴弾砲の直撃に耐えるような芸当は出来ない。
但し、V作戦で得られたデータのフィードバックである程度の動きは既にコンピュータに記憶され、即席パイロットであっても歩かせることに何の問題もなかった。
甚大な被害を出しつつもヨーロッパでジオンの勢力を一掃することに成功した。
パイロット候補生がシミュレーション漬けの間、上層部は宇宙での反攻作戦と地球上での掃討作戦を立案していた。
レビル将軍がオデッサ作戦の指揮をしている間、ジムと並行して将軍派の重鎮マクファティ・ティアンム提督がルウム戦役で大損害を受けた宇宙艦隊を再建すべきビンソン計画を指揮していた。
月の裏側にあるジオン本国へ侵攻する準備は着々と進められ、さらにガルマ・ザビがシアトルで戦死しても未だキャルフォルニア・ベースは健在であった。
その中で極東でオデッサから離脱したジオンの残党の掃討を命じられた。
月末に入港するペガサス級宇宙強襲揚陸艦2番艦と入れ違いにジャブローからはウォーリー・ワシントン中尉と新兵同様のジュディ・ケンジントン少尉、そしてロールアウトしたばかりのジムを搭載した大気圏内大型輸送機ミディアで極東の掃討作戦へと出立した。
ジャブローの飛行場も工廠同様に地下シェルター内に造られ、ミディア は機動兵器3機1個小隊と補充部品を積載出来るペイロードを持ち、6連装熱核ジェットエンジンは無寄港で太平洋を横断し、リフトファンエンジンは未整地の最前線でも短距離離着陸可能なことで世界中で運用された。
制空権を奪還した太平洋上空は快適な移動となった。
出立直後、ジオンは核攻撃にも耐えるジャブローに対してキャルフォルニア・ベースから無尾翼機輸送機ガウで殆どの地上戦力を投入させた空襲を失敗させ地球上での影響力をほぼ失った。
これでジャブロー上空の制空権を完全に掌握し、連邦軍を主導しているレビル将軍とティアンム提督とその側近たちは新造されたばかりの大艦隊で安心して宇宙へと上がること出来る。
キャルフォルニア・ベースの奪還作戦も時間の問題だった。
12月1日、ハバロフスクで宇宙から降りて来たカゲトラ・タケダ少尉、ロドリゴ・マニラ伍長とヨーロッパ戦線から転属となったイーゴリ・アントノフ少尉、イリヤ・ハルキウ伍長が合流し、指揮車両ビッグトレーと機動兵器6機2小隊を持つ中隊長として着任した。
アジアはオデッサから撤退したジオンの残党が立て籠っていたラサの鉱山基地が陥落し、連邦軍も指揮していたライヤー連隊長が戦死、コジマ中佐も失脚した。
ジオンは大規模戦闘を行う能力を失い、連邦は最大の功労者が去り、ジャブローの興味を失っていた。
12月中旬、偵察隊からの情報でジオンの輸送隊が立て籠もる塹壕を発見し、ワシントン中尉がゴミ山と命名し、攻略を開始した。
ブリティッシュ作戦で落下した重量数百億tのコロニーは熱圏で崩壊してシドニーとヤクーツクから1000Km離れたバイカル湖に落下した。シベリア中に磁気を帯びた小さな残骸が降り注ぎ、電波障害で投降勧告は意味をなさず、友軍でも近距離でしか無線が使えなかった。
クリスマス直前、戦況はトラノコと呼称しているジオン残党の未知の機動兵器を筆頭に徹底抗戦を続けて長期化していた。
非公式なルートから高性能機動兵器を研究しているオーガスタ基地がガンダムタイプの運用先を探している情報を得た。
ガンダムはジムの生産を軌道に乗せる前にV作戦で実証評価を行う為に製造された試験機のコードネームである。
試作2号機から3体が宇宙へと運ばれたがグリーンノア・コロニーで2機がザクに破壊され残った1機でV作戦が継続されオデッサ作戦にも参加した。
その中で陸戦型ガンダムは当初の試作計画には無く、激戦地で一日でも早く最前線に投入する目的で別の設計局がガンダム の設計思想を流用してガンダムの検査で不合格となった部品を元に造られた、本家には及ばないがジムよりは高性能な機動兵器である。
コジマ大隊が解体されて所属していた2機がオーガスタ基地に運び込まれ、最高機密の試作4号機の補修部品を詰め込まれた。
試作4号機はジオン本国の最終防衛ラインにある宇宙要塞ア・バオア・クー攻略作戦に投入する為に実戦投入された新技術のマグネットコーティング、推力増強、コンフォーマルタンクの追加がなされたものであり、シャトルのコンテナの容量の関係で基地に残っていた補修部品があった。
急造品であってもガンダムタイプの補修部品は高価で、正規の計画から外れて製造された陸戦型ガンダムはジムとの部品共有率が低いにも関わらず力づくで搭載したことで、仕様面でも価格面でもレビル将軍秘蔵の第13独立部隊に配備された試作3号機に匹敵した。
オーガスタ基地は単純に投入した金額に見合う戦闘データを欲しがったが、主戦場が宇宙となった現在、重力下専用の陸戦型ガンダムの運用先に困っていた。
ジャブローのレビル派は殆どが宇宙へと上がり対立するゴップ大将派の口添えで運用先が決まる前にガンダムの入手に成功した。
宇宙では大量破壊兵器であるソーラ・レイも投入され、且つティアンム提督の尊い犠牲の上でザビの次男ドズル・ザビの抹殺とア・バオア・クーまでの航路の制宙権の奪取に成功した。
地球のモグラは既に戦後処理に向けて動き出していた。
コクピットはジム用に換装されており、ジムのパイロットなら動かすだけなら問題ないとの説明だった。本来、エスパーでもなければ操作出来ない程のセンシティブな操作性で本来の性能を引き出せるかはパイロットの腕次第であった。
第13独立部隊で16歳の下士官が戦果を挙げているのは有名な話であり、19歳の少尉をガンダムのパイロットにした。
12月30日、レビル将軍の戦死が伝えられた。
ジオンの大量殺戮兵器で連邦軍を主導して来た最高幹部の戦死と艦隊の半分を喪失しても星一号作戦決行の報を受けると危険を承知で夜間作戦を決定した。
ジャブローではレビル派と認識されており、戦後掌握するであろうゴップ派に対して実績が必要だった。
1月2日、ビッグトレーでカゲトラ・タケダ少尉からの報告を受けた。
ザビ家の構成員の全てが死亡し、中立地帯の月面都市グラナダでジオンとの終戦協定が結ばれて24時間が経過しワシントン中尉はゴミ山に到着すら出来ずに中隊から初の戦死者を出した。
まだ損耗したのがジムと下士官だったのが救いだった。
1月14日、終戦協定が結ばれてから半月が経過し世界ではお祭り気分が続いていたが、ジャブローは各地に残る残党の一斉掃討を計画していた。
この一ヶ月で中隊の火力不足は明らかで機動兵器のロケット砲ではゴミ山に積もっている雪を吹き飛ばす事しか出来ないのは承知していた。
無能の烙印を押され中隊が解体される最終ラインに電撃作戦を敢行した。
結果は惨憺たるものだった。
ガンダム1機、ジム1機を損失、イリヤ・ハルキウ伍長が戦死、ケンジントン少尉が意識不明の重体となった。
報告を受けて頭の中は真っ白になった。
1月15日深夜、電波障害で数百Km離れたハバロフスクまで敷設された有線ケーブルを通して昼間のジャブローから通信があった。
ジャブローは作戦の主導を握って早期解決することにした。
1月下旬、ビッグトレーの作戦司令室でパイロット達にジャブローの決定を告げた。
ゴミ山攻略に当初の半分の数となったパイロットは補充されないが、決定的なダメージを与えるために宇宙艦隊を出動させることになった。
地球軌道に展開している艦隊を主砲の射程圏内まで降下させて艦砲で事態を収拾する。
戦闘艦の主砲はデブリの衝突にも耐えうる厚さ30mの隔壁を持つコロニーの外壁も貫通することが出来る。直撃すれば山ごと吹き飛ばせる。
それでも主砲の射程内に収める為にはカーマン・ラインまで高度を下げる必要がある。
そこは重力の井戸に引っ張られる危険がある上に終戦を迎えて一ヶ月、除去の目途が立たないデブリが多量に浮遊し危険を伴う、大本営の命令でもない限りは絶対にはやらない。
地上部隊は全ての軍事衛星を落とされてレーダー誘導が使えない艦隊が目視でゴミ山を視認出来るようにロケット砲の爆炎を目印として支援するものだった。
準備は即座に始められ、機動兵器のコンピューターのアップデートも行われた。
トラノコと呼称していた機動兵器はグフ重装型で欧州の西部戦線で少数ながら交戦データがあった。
グフの特徴である近接戦闘では不利だが中距離以上ではガンダムの方が有利とのシミュレーションの結果も出た。
補給部隊が大量のロケット弾を持ち込み、ゴミ山ごと敵の機動兵器も吹き飛ばす計画だが、撃ち漏らした時の為に貴重品であるビームライフルも提供された。
絶対安静でビッグトレーに留められていたケンジントン少尉は意識の回復しない儘に後方へと運ばれた。
U.C.0080-02-01T09:00+9:00
シベリア ヤクーツク付近
曇り空ではあるが、これ以上天候が好転する見込みがない為に作戦決行の連絡があった。
機械化小隊が進軍を開始しこれ以降は通信が出来なくなる。
作戦準備が始まってから殆ど隊長室から外出ていないが、上官が居なくても中隊は勝手に動いた。
作戦の途中にも関わらず中隊長解任が発令され、作戦の結果を見ることなくヤクーツクを離れた。