帰想神社夢(きそうじんじゃゆめ)   作:安幸 広

1 / 4
第1話 「日常」

「はい、今日のゼミはここまで。次の発表者はレジュメ、パワポを用意しとくように。次は誰?」

「私です。」

「岳山君ですね。お願いしますよ?」

「...はい」

「「お疲れさまでした~」」

 

「...どうしようかな。って言うかもう俺か。早ぇよ...」

 

ぼんやりと続けていた大学ももう3年。夕焼けに染まる帰り道を一人歩きながらぼやく。

 

「何を研究すればいいんだよほんと」

 

いつも同じ帰り道。家は大学から歩いて20分の一人暮らしアパートだが、大多数が電車やバスで帰る。同じ方向に帰る友達はおらず、岳山の帰りはいつも1人であった。

 

「何がしたくて入ったんだっけなぁ、大学。」

 

そんな問いを投げかけてみるも、返ってくるのはカラスの鳴き声だけである。

 

「こんな大学生活、高校の時と全く想像が違うな...」

 

高校の時は、もう少し充実した学生生活を送っていると思っていた。

友達と呑み会をしたり彼女を作ったり1人暮らしを自由に送ったり...

比較的華やかな学生生活を想像していた。

 

「今じゃなんだよ、呑むような友達はいねぇし彼女も出来ないし1人暮らしには飽きたし...旅行すら行ってねぇ。ゼミの中でこんなに遊んでないの、俺だけじゃないか?」

 

少し、冷たい風が吹き抜ける。

思えば思うほど、不満というか情けなさというか。哀しさがこみ上げる。

 

「...しゃーねぇ。神社寄るか。」

 

二手に分かれた道。右に行けば神社、左に行けば自宅である。

迷わず右へ進む。

 

「どうせ将来の進路も二手に分かれてて1つは成功、1つは失敗なんだろうな。あ、普通ルートがあれば3手になるか。」

 

一人暮らしの中でいつも独り言を言う癖は、いつの間にか外出していても発するようになっていた。

 

「ほんと人生ってなぁ...」

 

そんな独り言を吐くうちに、神社の鳥居前に着く。悩み事があると神社を少し見て帰るのが岳山の気分転換の方法だった。

 

「どうしようか、今日は久々に本殿まで行ってみるか。」

 

本殿は至って普通の神社とほぼ同じである。元日には近所の人で賑わうが、現在5月初旬。況してや夕方、誰もいない。

 

「ほんと変わらないよなぁ、ここ。しかしこんな夕方、ちょっと怖い...ん?」

 

いつもと変わらないと思っていた神社だが、いつもと違う物があった。

 

「おみくじ...ここ正月しか無かったはずなのに何で...」

 

小さな箱におみくじが数十枚。1つ50円。

 

「何かの縁か。引いてみよう。」

 

箱に入れる50円。この行動が思いもよらぬことになるとはこの時考えもしなかった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。