「ほ...ほんとに傷が残ってる...!」
岳山は何度も見直した。しかし傷がある事実は変わらなかった。
「な?言ったろ?」
「わっ」
いきなり机の上から声がした。声の主は勿論...おみくじだ。
「そろそろおみくじから声がするのに慣れろよ...。」
日本、いや世界中どこを探してもいきなり紙から声がして驚かない人はいないと思うが。
「いやごめん、それにしてもほんとに俺過去に行ったんだな...」
傷がある以上、過去に戻って未来へ戻ってきたことを認めざるを得ない。しかし岳山には疑問が尽きなかった。
「...なぁ、少し聞いていいか?」
「何だ?」
「これ過去だったらどのくらいまで遡れる?
ってか何で俺がこんなことをする羽目に?」
真っ当な疑問である。
「そうだね...まずは戻れる範囲を教えとこうか。戻れる範囲は2年前の今日だけ。つまりもう一昨年の昨日には戻れないよ。その日の2年前の今日限定ってことさ。」
「短いのに複雑な説明だね...何で限定されてるの?」
「まあ簡単に言うと大きく君の過去を変えないように、かな。変えすぎて未来に影響が出まくっても困るだろ。特に帰ってきたときに。あと赤ちゃんとかに戻られても帰って来れなくなるだけだろうしな。」
確かに、高校時代に戻って別の大学に入ったり変な事をしでかすよりはそっちの方がいいだろう...赤ちゃんの説明も納得がいく。しかし...
「何で【2年前】なの?」
「うーん、簡単に言うと2年前の5月1日に初めて君が神社に来たからさ。」
「2年前の昨日?」
「そう。君すごい浮かない顔して神社に来て願い事するもんだからおかしくてね。その後も同じような顔してくるから君が気になっちゃって。だから2年前から帰れるように、そして未来を変えれるようにしてあげようと思ったまでさ。」
「そんな理由だったのか...」
理由が顔と行動がおかしかった、というのが気に食わなかったが受け入れる他ない。
「じゃああのおみくじの箱は神主じゃなくて君が...」
「そう。君が来るのをわかってたからね。」
「未来までわかるの?」
「あぁ。ちなみにあの箱には未来に行ける紙もあったけど引かなくて正解だね。未来が分かっちゃうなんて嫌だろ?それに変えるなら過去を変えた方が面白そうだしな。」
おみくじの声がいじわるげな声に変わる。
「まあ君がどんな形で過去を変えようが僕には関係ないからね。好きに使ってくれ。」
...確かにそうだが時を司る紙(神)として良くない発言のような気もする。
「あ、ちなみに過去に帰るのを辞めたいときは神社で僕を燃やしてくれ。そうすればこの効力は無くなる。逆にやらなければ...」
「ずっと寝た時に過去に戻り続ける...」
「へへ、そこは想像に任せるよ」
またおみくじが意地悪そうな声で笑う。
恐らく戻り続けるのであろう...考えようによってはいいことであるが逆に言うと過去と現在がわからなくなりかつ常に過去現在が変わり続けることになる...恐ろしい効力だと、岳山はゾっとした。
「それよりいいのかお前。今日学校だろ?」
「...あっそうだ...!」
時間は12時を過ぎていた。岳山は急いで準備を終え、浮かない顔のまま玄関を飛び出した。