喫茶『Star Gazer』   作:STERNHEXE

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喫茶と書いてあるのに喫茶要素ゼロ。
二話があれば出てきます。……二話があれば。 


星を観る人

 カウントダウンに伴い現状を整理し、それに合わせて作戦を練る。必要な準備を胸の中で進め、必要に応じてギアを調整していく。

 

 3、2、1……。

 

『0ッ!!』

 

『Smoke Diffuse』

 

 開始の合図とともに準備しておいた魔法を開けた空にブチまける。実力が上の相手に正面から突撃して戦う程愚かではない。罠を二つ仕掛け、直ぐに移動する。能力的にこちらを上回る相手の動きはシンプルで故に強い。が、その分読みやすくもあった。

 

『Devine Radiste』

 

 直前まで自分がいた空間をなぎ払う拡散型の砲撃。こちらを牽制すると同時に、邪魔な煙を吹き飛ばすつもりなのだろう。しかし、読み通りである。

 

『Smoke Mine』

 

『React arrow』

 

 起動する二つの魔法という名の罠。煙を吹き飛ばそうとした砲撃によって、更に大量なスモークが当たりに拡散する。同時に反撃として放たれた魔法の矢は敵の追撃を一瞬遅らせる効果があればいい。

 

『Flash Move』

 

 拡散した煙の、一見偶然ようにしか見えない程度に増量した下方向を迂回して相手に迫る。普通なら相手はこちらを見失うだろう。実のところ、こちらからも相手は見えないので後は憶測に頼ることにはなるのだが、空中戦において真下や真上は真後ろに並んで死角になりやすい。特に相手のバックアタックを警戒せざるおえない状況は、尚の事に上下への警戒を薄くする。

 

 普通なら、それで決着となっても可笑しくはない。しかし相手はエースオブエース。念には念を、実力には敬意を持って相対する。こちらからではなく、あちらから攻撃して貰いペースを握っている、と勘違いさせる。

 

『Phantom Piece』

 

『Devine Rediate』

 

 再び放たれる閃光。やはり常人では気づかないような若干の差異を感じ取っていた。上方から撃ち下ろされた砲撃が煙の一部をかき消して、両者の視線が再び空を挟んでぶつかる。

 

『Accel Shooter』

 

 砲撃を撃つ前に準備を整えていたのだろう。十数発の誘導弾が次々と繰り出される。いくつかがこちらのスモークを利用して迂回しようと試みていたようだが、当然対策済み。ただの目くらましには必要ない量の魔力を含んだ煙は、誘導や遠隔操作を遮る幕としても機能する。

 

『Punish Panel』

 

 誘導弾で足止めしてからのバインド、そしてフィニッシュへとつながる一連のコンボは実にシンプルであり、対策法も限られ、最も実力が差として現れる部分でもあった。躱せば躱すほど数は増え続け、防げば足が止まってバインドの餌食。相手を上回る速度で近寄るか、多少の被弾をものともせず強引に詰め寄るか、一発一発を確実に打ち落とすしか方法はない。俺がとったのは三番目の手段。

 

「そこっ!」

 

 相手の魔法を打ち消すのは単純に魔力量で上回るのが手っ取り早い。しかし、シールドのように拡散してはその分多くの魔力を必要とするし、同じ魔法弾は迎撃に技術が必要だ。だから俺は小さな盾を選んだ。こぶし大使い捨ての代わりに消費魔力が抑えられる盾片。相手の狙いが正確なのは逆にありがたいぐらいだった。

 

「……っ!」

 

 息も付かぬやり取り。所謂千日手と言われる一進一退の攻防が続く。先に動いたのは準備が完了した俺の方だ。

 

「行け……!」

 

 煙の中から飛び出した複数の魔力弾が敵を襲う。当然、煙が阻害するのは相手の魔法だけ。ここは、この空は既に俺のフィールドである。

 

「――なっ!?」 

 

 不意を打たれた相手の攻撃が一瞬緩む。態と相手に見えるように大げさにモーションを取ってバインドを編む――。目論見通り、相手はガードは諦めてこちらから逃げ出す。今まで攻撃に使われていた誘導弾の残りがこちらの誘導弾を迎撃に回される。

 

 相手は格下、一旦煙の中を抜けて体勢を立て直す。不意を打たれなければ負けることはない。最初に自分が穿った煙の穴の先、僅かに見える空の青色を目指す――。そんな思考が透けて見えた。

 

『Final Buster』

 

 煙の海を突き抜けた敵の真後ろ。濃煙を背に、相手が出てくるのを俺は待ち構えていた。先程まで対峙していたのはフェイク。必死になってブロッキングしていたのはブラフ。全てはこの瞬間を形作るためのファクター。

 

「行け、魔力の一滴まで燃やしつくせ……!」

 

 安直に最後の、と名付けられたその魔法は難易度自体はそう高いものじゃない。ただ単純に自分の全魔力を放出する魔法というのもおこがましい物で、実践ではとてもじゃないが使えるものじゃない。使ったら文字通り最後、戦場から自力で戻ることすら叶わないのだ。

 

 手応えはあった。直撃は確実。多分シールドも間に合っていないはずだ。後は素の防御力を抜けるか否か。ファイナルバスターは間違いなく、俺にとって最も攻撃力があり、そして唯一通じる可能性のある魔法だ。だが、この一発を当てるためだけにかなりの魔力を消費した。ここまでやっても勝敗の行方は賭の様なものなのだからままならない。

 

「やった……か?」

 

 その言葉はネタだとかフラグだとか以前に、驚く程自然に俺の口から漏れた。そして、後悔する。完璧に相手は術中に嵌ってくれた。フェイクを操作しながらではあるが、足を止めてMAXまでチャージした砲撃がモロに入った。にもかかわらず、

 

「やってくれたね」

 

『Starlight Breaker』

 

 見上げた空には星光の光が瞬いていた。無傷とは言わないものの、無事な姿を見せる高町なのはと共に。

 

「――遠いなぁ」

 

 本当に遠い。手を伸ばして幾ら足掻いても、星の光には手が届かない。俺はいつだって憧れる側の人間。星を観る人(スターゲイザー)でしかないのだ。そんな事を魔力切れの自由落下の最中に考えていた。あ、バリアジャケットももう限界か……。

 

「これが私の全力全開!!」

 

「ま、待ってなのは! 生身に撃ったら冗談抜きで死んじゃうから!」

 

 もしもなのはが撃たなかったとしても、結構な高さからの落下だったため、スピード自慢のフェイトが拾ってくれなかったら本当に死んでしまっていたかもしれないらしい。模擬戦で一体何をやっているのか、と。後からそのことでこってり絞られ、お詫びを要求されることとなるのはまた後日談。そもそも、その場に居合わせすらしなかったはやてには何の関係があるというのだろうか。

 

 しかし、やはりと言うべきか俺の力はなのはには及ばなかった。

 

 同じ地球で産まれて、幼馴染として、もはや兄弟のように育った数少ない魔法の力を持つ少年少女。スタート時期はほぼ同時だが、そもそもスタートラインが違ったのか、後はまあ、潜在能力(ポテンシャル)も桁違いだろう。俺なんてもう今でも限界ギリギリなのに、なのははまだ伸びしろがありそうで怖い。

 

「潮時、なのかなぁ」

 

 誰に向けてでもなく、もしくは自身の無意識に向けたその言葉は意外なほどすんなりと胸に収まった。要するにそういうことなのだ。今回の件だって、自身に区切りを、けじめをつけたかったのだ。だから、なりふり構わず使える手札は全て切った。体も魔力も使える限界ギリギリ、もしくはそのラインを一歩踏み越えるところまで使ったし、模擬戦であることも最大限使うし、今更知らないことのないようななのはの戦術だって改めて研究し直して、何度もシミュレートして……。あれだけ万全の準備をしたにも関わらず、おおよそシミュレート通りの展開になったにも関わらず。勝てなかったのだ。

 

 だから、仕方ない。

 

 

 

 

 

 その後。幼馴染三人娘には何も言わず、時空管理局を辞めることにしたのは。やめてしまったのは、その半年後の話になる。

 




ちょっと気まぐれで投稿。
正直別のアカウントで投稿しようとも思ったけど面倒だったのでそのまま。
本作や他作品の更新は今後のモチベーション次第。アイデアは浮かぶけどまとまらない、まとめる時間がない。

今回のは星の光を見上げる凡人のお話。今後のバトルは無し、sts系のキャラが訪れるよくある喫茶店方式? ただしstsは兎も角それ以降の話がイマイチわからないのがたまにキズ。
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