自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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第13話 転職と閉話

 □<トラーキアの試練・第十階層> 【騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 幻想的な湖の中央に建つ蒼銀郷の祭壇。

 上へと伸びた緩やかな階段の上には見覚えのある、大きなクリスタルが鎮座していた。

 

 

 「あれが師匠の言っていたジョブクリスタルだよね?」

 

 

 おそらくそうで間違いない。

 ジョブクリスタル自体は“霊都”<アムニール>で【騎兵】に就いた時に見たことがある。

 そのクリスタルは目の前のクリスタルよりももう少し小さかったが……

 これが遥か昔、【女戦士】に就いていた部族が転職に利用していたクリスタルなのだろう。

 私も今から【騎兵】ではない、二つ目のジョブに就かなければならないのだが。

 

 

 「……どうしよう、私何のジョブに就けばいいんだろう?」

 

 『BURUU?』

 

 

 別に一切、次のジョブについて考えていなかったというわけでは無い。

 リアルでの<マスター>達による、ジョブについての考察が書かれた掲示板も少し覗いたことがあるのだから。

 しかし、その掲示板で書かれていたのは『自身の<エンブリオ>に適したジョブにつく』といったもの、後は有効なビルドの考察がほとんどだった。

 

 

 因みに、その時に見た最も有力視されていたビルド論は“野伏初撃必殺理論”。

 天地固有のジョブで、【野伏(ダウン・サムライ)】というジョブの固有スキルを利用したビルドだった。

 

 【野伏】系統に存在する、《背向(そがい)殺し》という相手の背後から攻撃した際のダメージを増強するといったスキル。

 この《背向殺し》で、『初撃に最大効率のダメージを与え、一撃必殺を狙う』と言った内容だ。

 

 

 実際、かなり有効なビルドで天地をスタート地点にした<マスター>はこぞって【野伏】に就いているらしい。

 最もリアルで何日も前に見たものなので、今はどうかは分からないが。

 それに天地固有のジョブなのであまり関係がない。

 国ごとにその国でしか就けない特有のジョブがあるのだ。

 ここレジェンダリアでは【妖精術師(フェアリーメイジ)】や【魔道具職人(マジックアイテム・マイスター)】がそうだと、ファフザーさんからも聞いたことがある。

 加えて私は騎兵だ。

 出来ることなら、【騎兵】の上級職に就いたほうがいいはずである。

 

 

 「まぁ、何に就けるか見ないことには始まらないよね?」

 

 

 私はそう呟きながら、思い出していた事を振り払う。

 そもそも何に就けるかもすらわからないのだ、考えるだけ無駄である。

 

 大型クリスタルに触れ、メニューを開く。

 すると転職可能なジョブがズラリと表示される。

 前回に比べ、いくつか条件を満たしたジョブがあるのかその数は増えている。

 

 

 「あっ、【大騎兵】もある……ジョブクエストの達成数、クリアしてたんだ」

 

 

 真っ先に目についたのはファフザーさんが就いていた【騎兵】の上級職、【大騎兵】。

 その他にも騎兵系統のジョブがいくつも並んでいる。

 下級職である【騎兵】をカンストさせたからだ。

 

 

 「【魔導騎兵(マジック・ライダー)】に【殲滅騎兵(ターミネーター・ライダー)】、【巨鷲騎兵(グレイト・イーグル・ライダー)】? 【強弓騎兵(ヘヴィ・ボウ・ライダー)】は【弓騎兵(ボウ・ライダー)】の上級職のはずだけど……転職条件を満たしたのかな?」

 

 

 その数は下級職をあわせれば数えきれない程の数だ。

 特に【兵士(ソルジャー)】系統は数が多すぎる。

 【死兵(デス・ソルジャー)】や【復讐騎(アヴェンジャー)】なんて見るからに地雷のようなジョブまであるほどだ。

 しかし、今の私の戦闘スタイルを強化しようと思うとその数はいくらかに絞ることが出来そうだ。

 その時だった。

 

 

 『BURUUUUU』

 

 「アレウス?」

 

 

 傍らに立っていたアレウスが鼻先でアイテムボックスを突く。

 細かい意思までは読み取れないが、何が言いたいのかは多少分かる。

 きっとこれはアイテムボックスの中にある何かのアイテムを、私が忘れていると伝えたいのだろう。

 そんなアレウスに従うように、アイテムボックスの中をまさぐる。

 そして取り出したのは、

 

 

 「【転職診断カタログ】~って、こんなアイテム私もってたっけ?」

 

 

 アイテムボックスから取り出したのは分厚いカタログ。

 因みに取り出した時のイントネーションはわざとやったわけでは無い、何かに突き動かされたのだ。

 しかしこんなアイテム持っていた覚えがない。

 師匠にこんなものを貰った記憶も無ければ、ダンジョン内で拾ったわけでも【宝櫃】から出たわけでもない。

 

 (“初心者狩場”でレベル上げの合間に受けていた『イベントクエスト』の報酬の中にでもあったのかな)

 

 思いつくのはそれぐらいである。

 しかし持っているからには使わなければ勿体ない。

 

 

 「えっと……質問形式で今就くことが出来る最適なジョブを見つけてくれる。……凄く便利だね」

 

 

 まさに今の私にうってつけだ。

 早速、階段に座り込む形で診断を開始する。

 

 

 

 ……で、なんだかんだで5分ほどで結果は出たのだが。

 

 

 「【幻獣騎兵(ファンタジー・ライダー)】と【従魔師】、あと【女戦士】か~」

 

 

 出来るだけ、『騎獣であるアレウスを強化出来るジョブ』という希望で診断した結果だ。

 恐らく、数が少ないのはまだ私の戦闘スタイル……ビルドが定まっていないからだ。

 それでも【転職診断カタログ】からは複数のジョブがでた。

 私は導き出されたジョブを検索して、転職条件を調べていく。

 

 

 「【従魔師】は……転職条件は無いよね」

 

 

 【従魔師】は従魔師系統ジョブの下級職。

 私がアレウスを買い、【騎兵】か【従魔師】で迷った内のもう一つだ。

 戦闘系支援職であり、従魔キャパシティを増やす《従属拡張》や配下モンスターを強化する《魔物強化》等のスキルが豊富で、ステータスとしてはMPが伸びやすい。

 

  私もいつかは就きたいと思っているジョブ残ったのは一つだ。

 

 

 「【女戦士】は……『き、《騎乗》Lv.5でレジェンダリアのクリスタルで転職』!?」

 

 

 どうやら【女戦士】はレジェンダリア固有のジョブだったようだ。

 しかしそれ以上に目を引くのは、転職条件の難しさ。

 《騎乗》スキルは汎用スキルだからか上限が他のスキルよりも高い、その代わりにあらゆる騎獣に《騎乗》することが出来るスキルだ。

 しかし、騎兵系統でも上げられるのはスキルレベル10まで。

 それをスキルレベル5となると、ほぼ初めに就くのは不可能な難しさだ。

 

 そしてスキルや伸びるステータスについては……不明。

 師匠なら何か知っているかも知れないが……。

 

 

 「最後に【幻獣騎兵】だね……。

  転職条件は……『亜竜級騎獣の所持、純竜級モンスターのHPを一人で60%削る、ジョブのクエストの一定数達成を満たしたのち、レジェンダリアのクリスタルで転職』って」

 

 

 ……信じられないくらいに難しい。と言うよりも他の上級職と比べて難しすぎる。

 達成しようものなら、いくつ命があっても足りないくらいだ。

 

 (私は一応、転職条件を満たしてるけど)

 

 保有スキルや伸びるステータスは解らないが、もしかしたらそれなりにレアなジョブなのかも知れない。

 

 そして肝心な私の二つ目のジョブだけど……

 

 

 「……一つしか無いよね」

 

 

 消去法で残るのは一つだけ。

 【従魔師】は【騎兵】のスキルを使えなくなるので、師匠からのイベントクエストを受けている今は除外だ。

 そして【女戦士】だか、どんなジョブかも解らない今、無闇に就くのは少し怖い。

 結果的に【騎兵】の上級職であり、レアそうなジョブである【幻獣騎兵】以外なくなってしまった。

 上級職である以上、ステータスの伸びもいいはずだし、《騎乗》スキルも上限が解放されるはず。選択肢としては悪くはないはずだ。

 

 

 「うん、二つ目のジョブは【幻獣騎兵】に決めた!」

 

 

 【幻獣騎兵】は特別何かの準備が必要な訳ではない。 

 私はそのままクリスタルから【幻獣騎兵】への転職を実行する。  

 すると……

 

 

 「キャッ!?」

 

 

 転職が終わると同時に光に包まれるようなエフェクトが発生し、簡易ステータスの表記が【幻獣騎兵】へと切り替わった。

 

 (ビ、ビックリしたぁ~)

 

 【騎兵】への転職の際は何も起きなかったので油断していたが、上級職への転職では演出が出るようだ。

 だけど上級職でこれだと超級職ではどんな演出が出るのか少し気になる、戻ったら師匠に聞いてみよう。

 高鳴る心臓を深呼吸で沈めながら、【幻獣騎兵】に転職して手に入ったスキルの確認にはいる。

 

 

 メニューから確認出来る新たなスキルは二つ。

 

 《獅子勇心(ライオンハート)》Lv. 1

 ・アクティブスキル

 一定時間、自身が騎乗する騎獣への『精神・制限系状態異常』耐性を大幅に引き上げる。

 上昇値は騎獣依存。

 汎用スキルであるので、多くのジョブで使用できる。

 

 

 《幻獣強化》Lv.1

 ・パッシブスキル

 自身の騎乗状態である騎獣に騎獣の全ステータス中から『4つまでの数値をLv.×+10%』。

 騎獣の保有スキルの性能を『Lv.×5%』引き上げる。

 《騎乗強化》と併用は不可能。

 騎乗状態であればどのジョブでも使用できる。

 

 

 「……凄く強い気がするけど」

 

 

 どちらも使いやすい上に汎用スキル。 

《幻獣強化》は《騎乗強化》が変化したスキルのようだ、上級職だからか強化値が約二倍ぐらい上がっている。

 今までの《騎乗強化》は騎獣や騎乗可能アイテムでも使用可能だったが、《幻獣強化》へ変化し騎獣に特化したスキルになったからだろう。

 その分、強化値が上昇したのだ。

 勿論、変化とは言っても《騎乗強化》が消えてしまったわけでは無いので、乗り物にも多少は乗れるが。

 

 

 「また、ジョブクエストなんかを受けなきゃ出ないスキルもあるのかな?」

 

 

 ジョブクエストは騎兵ギルドの復興につながるので嫌いじゃない、しかし特殊な条件で出るスキルもあるそうなので少し面倒だ。

 

 

 「だけど……とりあえずこれで、師匠の条件は達成できたね!」

 

 『BURUUUUU!』

 

 

 隣に伏せていたアレウスと共に笑い合う。

 辛く、厳しい戦いばかりだったがアレウスとフェイがいたから耐え抜くことが出来た。

 だから……ご褒美をあげなきゃね。

 幸いにも制限時間の四日まではまだ半日ほど残ってる。

 そしてここには泳ぐのに適した(・・・・・・・)湖が広がっている。

 こうなれば、やることは一つだ。

 

 

 「フフ、時間も残ってるし……一緒に泳ごっか? アレウス」

 

 『BU、BURUUUU!?』

 

 

 私はアレウスに向け妖艶にニヤリと微笑み……装備を全部《瞬間装着》で脱ぎ捨てた。

 とは言ってもワンピースとブーツだけなのだが……。

 

 

 「……実は少し夢だったんだっ。何も着ることなく、大きなプールで自由に泳いでみたかったの」

 

 

 もちろんリアルでは絶対、この世界でも人目がありそうな場所では実行しないが。

 そう言う意味ではここは最適だ。

 絶対に人目につくことは無い。

 体を見渡すように確認すると、【ハイ・スパイラル・ドラゴン】との戦闘で出来た傷が所々に存在している。

 

 (水に触れたら痛そうだけど……)

 

 しかしそれ以上に私も乙女である。

 血や泥だらけの体で外を歩きたくない。

 そして湖に飛び込もうとした瞬間……全く反応が返ってこないアレウスに気が付いた。

 

 

 「……? どうしたのアレウス? ほら、行こ?」

 

 

 私を見たまま彫刻のように微動だにせず、固まっているアレウス。

 そんなアレウスに私は首を傾げる。

 あ、もしかして泳げないのだろうか?

 それとも傷が水に触れるのが嫌?

 だけど、アレウスも泥だらけ。ブラシかけてあげようにも、このままでは毛並みを痛めるだけだ。 

 

 

 「アレウス? アーレーウースー! そんなに泳ぐのが嫌なの?」

 

 

 私の言葉に我に返ったかのような動きを見せるアレウス。

 しかし、本当に泳ぐのが嫌なのか顔を私から逸らす。

 

 

 ……ふっふっふっ、私を無視するとは。

 そんな態度をとるなら私にも考えがある。

 

 

 「できればこんな手段、使いたくなかったけど……《送還》、そして《喚起》、アレウス!」

 

 

 【ジュエル】を使った疑似的な瞬間移動!

 アレウスはいきなり湖に落とされて驚いているのか、ビックリして水しぶきを飛ばして慌てている。

 そんなアレウスに私は笑い声を上げる。

 

 

 「それじゃ、私も!」

 

 

 アレウスに飛びつく様に透き通った湖に跳びこんだったのだった。

 

 

 

 

 ……左腕が骨折しているのも忘れて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇閉話 【幻獣騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 「……その、ごめんね?」

 

 『BURUUUUUU!』

 

 

 怒ったように大きく鼻息を荒げるアレウスを上目遣いで覗きみる。

 結局、飛び込んだあと、左手の痛みにパニックに陥った私をアレウスが助けてくれた。

 ……本当に優秀な相棒だ。

 

 しかし、傷口や骨折の痛みもすぐに感じなくなった。

 と言うよりも、傷が全快したと言った方が適切だろう。

 少しづつではあるが湖で体を清めている内に、傷が治っていったのだ。

 アレウスの傷と私の骨折も時間が掛かったが完治してしまった、神聖な雰囲気がする湖だと思ってはいたが本当に凄い湖だったようだ。

 

 そして今、湖から上がった私たちはフェイに体を乾かしてもらいながら、アレウスのブラシがけ兼フェイの殻磨きをしている。

 アレウスが怒っているので恐る恐るにだが……。

 

 

 そして濡れていた体も乾き、元のワンピースを《瞬間装着》で着た時だった。

 

 

 「……あれ?」

 

 

 見つけたのはクリスタルの奥。

 祭壇の奥に丁寧に置かれた手の平に乗る程度の小さな黒い箱だった。

 クリスタルでの転職を果たした後、少し祭壇を見て回ったのだがあんなものはなかった気がする。

 

 

 「……」

 

 

 確認の為、アレウスにも目配せするが……くびを横に振っている。

 やはり先ほどまではあんな箱は無かったということだ。

 ここには私とアレウス、そしてフェイしかいないはずなのだが……。

 限りなく低いがモンスターの可能性もある、【ミミック】と言う物への擬態に特化した罠モンスターもいると聞いたことがあるからだ。

 だけど……

 

 (少し興味もあるんだよね……)

 

 

 念の為、アレウスを後ろで待機させ、ゆっくりと黒い箱に近づいて行く。

 そして、ギリギリまで手を伸ばし……指先を少しふれさせた瞬間だった。

 

 

 

 【【■■】の宝櫃】を開きますか?】

 

 

 

 思わず全力で距離をとった私の脳内に、不思議な……一部が聞き取れない擦れたアナウンスが鳴り響く。

 突然のアナウンスに、変な声が出そうになってしまった。

 心臓に悪いアナウンスだ。

 しかし、とりあえずモンスターの可能性は消えた。

 

 

 「【宝櫃】って……もしかしてランダムな宝物?」

 

 

 しかしまた疑問が浮かび上がる。 

 いきなり目の前に現れた謎の【宝櫃】、警戒しない方が可笑しいというものだ。

 しかしダンジョンで【宝櫃】……聞いたことがある。

 確か掲示板で一時期話題になっていた話だ。

 

 ダンジョン内ではランダムに強力なモンスターが徘徊していたり、宝箱のようなものから強力なアイテムが手に入ったりすると。

 

 つまりこれはそれと同じ宝物なのかもしれない。

 そしてそうだとしたらミスミス見逃すのももったいない。

 私はゆっくりと簡易メニューの『YES』を指で押す。

 

 

 

 【【【■■】の武の指輪】を獲得しました】

 【【エレベータージェム】を獲得しました】

 

 

 《鑑定眼》を持っていないからか、黒く塗りつぶされ見えないアイテム。

 その事に眉をひそめながらアイテム詳細を開く。

 

 

 

 【【■■】の武の指輪】

 【女戦士】と【女傑】に認められた【■■】の証。

 全ての戦士を打ち倒し、強さを証明したものだけが持つことを許される武の指輪。

 

 ・装備補正

 STR+150%

 

 ・《装備スキル》

 《■■咆哮》Lv.1

 

 

 

 一部が黒く塗りつぶされ、詳細を確認できないアイテム。

 しかしそんな事さえも今はどうでもいいように感じられた。

 しかしそれもしょうがない事と言える、だって……

 

 

 「これがあれば、【純穿蛇竜の強弓・ネイティブ】を装備できる!」

 

 

 私の目には装備補正の『STR+150%』の文字しか映っていなかったのだから。

 

 

 

 

 




3500文字を越えた辺りから、だらけて適当になっていく……すいまそん。

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