自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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ほんまに長い……
ほんとは16話でエピローグまで行く予定だったのに……


第17話 英雄回帰

 □■□ 『とある文献・【神】系統超級職について』

 

 

 

 

 

 【騎神(ザ・ライダー)】:騎兵スキル特化型超級職。

 

 《転職条件》

 ・【騎兵】系統ジョブでのボスモンスターのソロ討伐。

 ・騎乗技術の一定以上の技巧。

 

 《転職クエスト》

 ・前任【騎神】との決闘。

 

 

 【騎神】は例に漏れず、高い水準の技術を持つ事を前提とされた【神】系統ジョブである。

 転職条件も明確であり、【神】系統では転職しやすい部類に入る。

 

 しかしそれに対して【騎神】の性質は扱いずらく、ピーキーなジョブだ。

 

 【騎神】はAGI型超級職である……がそのステータスは全く上昇しない、まさしくスキル特化な超級職と言える。

 似ているジョブとしては、【抜刀神】が上げられる。

 対人・対モンスターのどちらにでも対応できるジョブ。

 同時に最も死亡数が多く(・・・・・・)移り変わりが激(・・・・・・・)しいジョブ(・・・・・)だ。

 その死因の多くが『事故死』。

 【騎神】をまともに扱えた者は片手で数えるほどしかいない。

 

 

 

 その原因は【騎神】の奥義でもあり、パッシブスキルである《一騎当神》。

 

 ・《一騎当神》:パッシブスキル

  【騎神】の奥義

  騎乗状態中のみ自身の騎獣が、LUCを除く全ステータスが装備補正等を除いた素の状態の10倍になる。

 

 

 

 自分自身ではなく、騎獣(・・)、もしくは乗り物(・・・)のステータスを格段に引き上げるスキル。

 しかし……これは罠である。

 今まで亜音速……もしくはギリギリ超音速で動いていた騎獣が、突然に超音速で動き始めるのだから。

 以前に記述した通り、AGIが1万を超えるとその速度は比例して上がる。

 超音速で動く騎獣、それは下手すれば神話級<UBM>にすら匹敵するステータスを手に入れる。

 まさに一騎当千、【騎神】が駆る騎獣にふさわしいと言えるだろう。

 

 だからこそ、【騎神】に就くものは『事故死』する。

 騎獣は超音速機動で動くが……それを駆る騎兵自体のAGIは亜音速がほとんどなのだから。

 

 彼らは自身の騎獣を御しきれずに死んでいくのだ。

 過去に一度、END特化の騎獣を駆る【騎神】が現れたことを確認したが、【狙撃王(キング・オブ・シューター)】に【騎神】自身が狙われ死亡。

 元がAGI型である【騎神】はEND型の騎獣では本領を発揮できないことが確認された。

 

 

 【騎神】は【神】系統ジョブでは異端中の異端。

 天才が就くことが出来るジョブではなく、【騎神】に就いた上で天才的な技術を要求されるジョブである。

 

 だが……もし仮に、【騎神】を十全に扱える騎兵がいたとするならば。

 その【騎神】は、おそらく『一騎当神』の名を語るにふさわしい……

 

 

 

 

 ……神話級<UBM>を打ち倒せるほどの力を持つであろう。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇<グリム森林・奥地> 【幻獣騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 「……師匠? 師匠がファフザーさんの言っていた天才騎兵?」

 

 

 目の前で【魔樹妖花 アドーニア】や残った四人の<マスター>から守るように立つ師匠。

 その名前に……名乗りに戸惑いの声を漏らす。

 

 

 「……ええ、ですが過去の栄光です。今の私は唯の【騎神】、しがない老人ですよ」

 

 「それは……そう? なのかもしれませんけど……」

 

 「ヴィーレさんは私がカロン・ライダーでは嫌ですか?」

 

 「……いや、そう言うわけじゃないですけど」

 

 

 優しく、そしていつもとは打って変わって獰猛に笑う師匠。

 その言葉に焦りながらも首を振る。

 別に師匠は師匠だ。

 私にとっては【騎神】であり、スパルタな優しい師匠。それは変わらない事実である。

 

 (あれ? ……もしかして気づかなかったのって、私が鈍かっただけ?)

 

 今更だが、よく考えればそれらしい行動や発言をしていた気がする。

 過去に滅びた【女戦士】に就く種族など、それこそ百年も前に生きていなければ知りようも無いのだから。

 そして同時に思い出す。

 

 

 「でも師匠。 師匠はその……戦っても大丈夫なんですか?」

 

 

 『寿命はとうに超え、いつ死んでも可笑しくない』、そう言っていた師匠が戦えるとは思えない。

 もし、戦えたとしても……

 

 

 「ええ、ヴィーレさんの考えている通りです。

  これ以上戦えば……私は死ぬでしょうね」

 

 「……ッツ! なら!、「ですがこのままではヴィーレさんは勝てないでしょう?」……」

 

 

 その言葉に唇をかみしめる。

 ……そうだ、師匠がここに出てくる原因は私にある。

 自身の実力不足のせいで師匠の寿命を縮めてしまう……これほど悔やんだことは無い。

 

 

 『BURUUU……?』

 

 

 心配げに私を見るアレウス。

 その体は木々や植物の攻撃が当たったのか傷だらけになっている。

 俯く私、そんな様子に師匠は微笑む。

 

 

 「悔やまなくてもいいんですよ、どうせ死を待つだけの運命です。最後に師匠として弟子の力になれるのなら、これほど師匠明利に尽きることはありません。

  そしてヴィーレさんには未来がある、これから強くなっていけば良いのですよ。それに……」

 

 

 師匠は一転して厳しい視線を前方に向ける。

 その先には四人の<マスター>……ではなく<UBM>である【魔樹妖花 アドーニア】がいた。

 全身に矢を生やしたアドーニア、しかしその様子は何処かおかしい。

 まるで何かを我慢しているかのようだ。

 

 

 「それに……私の推測は間違っていたようです。

  あの<UBM>は……【魔樹妖花 アドーニア】は既に『開花』しています」

 

 「……え?」

 

 

 その瞬間、師匠と私、そしてアレウスの目の前でそれは起こった。

 

 

 「……へ!? なにこれ……何なのよ! こんなの今までしてこなかったじゃない!」

 

 「あぁ~、油断したな~。《クリムゾン・スフィア》が使えない……いや、他のスキルも駄目そうだ」

 

 

 師匠の出現を警戒していた四人の<マスター>。

 その背後の地面から伸びた蔦が四人の四肢に絡みつき、その体を急速に干からびさせていく。

 それはまるで水分が吸い取られていくかのよう。

 スキル使えないのか、抵抗も出来ず10秒後には光の塵となって消えていく。

 そして……

 

 

 『AH、AHAHAHAHAHAHAHAHA—————————ッ』

 

 

 それを成した、四人の<マスター>を殺したであろう【魔樹妖花 アドーニア】の笑い声が朝焼けの森に響き渡る。

 先ほどまでの声にならない高周波のような叫び声ではない。

 今まで以上にはっきりとした、女性の嗤い声。

 しかし……どこか聞いていて心地の良い、綺麗で透き通るような美しい声。聞いているだけでも魅了されそうになってしまう。

 

 そしてその姿も大きく変貌を遂げていた。

 大樹のような樹木型だった容姿。

 大きな大樹は縦に割れ、その中から大きな蕾が出現し、中から等身大の女性がこちらに微笑んでいる。

 髪は新緑色で流れるように揺れ、黄色の瞳の顔が妖艶に嗤う。

 

 

 「……凄く綺麗」

 

 「魅入られては駄目ですよ。【アルラウネ】は状態異常とその美しい容姿で敵を惑わすモンスターですから」

 

 「ッ! はい!」

 

 

 師匠に叱られ、目が覚める。

 ……気が付かないうちに魅了されていたようだ。見ているだけで頭に霞が懸かるように、ボーっとする。

 大樹形態での【魅了】より遥かに強いのかもしれない。

 私は女性だから効きずらなくてもこの効果。

 アレウスは《獅子勇心》で防げているようだけど……師匠も大丈夫そうだ。

 

 

 「師匠は【魅了】が効かないんですか?」

 

 「ええ、昔【魅了】を使う【ハーピィー】の<UBM>を倒したことがあるので」

 

 

 師匠は視線を【魔樹妖花 アドーニア】から離さずに警戒しながら、首に懸けた羽根型のアクセサリーをこちらへ見せる。

 きっと『特典武具』と言う奴なのだろう。

 【魅了】を使うモンスターと言うのは以前話してくれた、騎兵を止めた仲間の話で出てきたモンスターなのかもしれない。

 

 

 「推定、伝説級と言ったところですか……ヴィーレさんは少し休んでいてください」

 

 「え? でもこれは私の試練なんじゃ?」

 

 「ええ、ですからその間にアレウスを治療しておきなさい。万全の状態でもあれはかなり手ごわいはずですから」

 

 

 ……確かにそうだ。

 アレウスは既に傷だらけになり、私も【毒】や【麻痺】、【衰弱】のせいでまともに戦えない。

 このまま戦っても死んでしまうのが見て取れる。

 

 (そうだ、私に出来るのは早く傷を治して師匠を助太刀すること)

 

 私は師匠に向け、ゆっくりと首を縦に振る。

 

 

 「ええ、それでいい。……では、私が時間を稼ぐとしましょう」

 

 

 そう言いながら……【騎神】カロン・ライダーは突撃槍を構える。

 

 

 こうして【魔樹妖花 アドーニア】と【騎神】カロン・ライダーの戦いが火蓋を切るのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 ——轟音。

 同時に師匠の姿が掻き消え、【魔樹妖花 アドーニア】の右腕が消し飛んだ。

 私もアレウスも、そしてアドーニア自身もその姿を捉えきれない。

 ただ、先ほど立っていた場所にはクレーターだけが残っていた。

 

 

 「……右腕だけ、やはり体が鈍ってますね」

 

 

 呆然と見つめる先、【魔樹妖花 アドーニア】の向こう側で師匠が困ったように突撃槍を乱雑に振る。

 同時に突撃槍に刺さっていた右腕が地面に転げ落ち、師匠の馬脚に踏み砕かれた。

 そこにはいつもの師匠の影は無い。

 そこに居たのは【騎神】カロン・ライダーとしての姿。

 粗々しい足踏みに獰猛な笑み。

 過去の英雄がそこにいた。

 

 

 「見えもしないなんて……速すぎる」

 

 『BURURURUR』

 

 

 その姿に私も治療の手を止め、呆然と見つめてしまう。

 アレウスも驚いているのか小さく嘶く。

 

 

 「老いには勝てないと言う事ですかね……それでもこの<UBM>相手には十分でしょうが」

 

 

 ヴィーレも知らない事だが、師匠の【騎神】のレベルは300を超える。

 合計レベルで言えば800を超えるだろう。

 騎兵系統で埋められたジョブ、そのAGIは6000近い。

 老いから来る【老化】や【衰退】なども踏まえれば、そのAGIは4000程度といったところだ。素のAGIはアレウスと同じぐらいだろう。

 

 では、【騎神】のパッシブスキル。

 《一騎当神》はどう影響されるのだろうか?

 

 答えは一つ——人馬種族でも騎兵系統に就けるように、自身の体が騎獣と判定される。

 結果、カロン・ライダーのAGIは4万を超えていた。

 

 

 「ハァッ!!」

 

 

 4万を超えるAGIに1万程度のSTR。

 そのステータスと技巧で振るわれる突撃槍は、その一撃一撃が必殺の威力を持つ。

 

 

 『A……AAAaaaaaaaaA!!』

 

 

 そんな攻撃を防ぐ様に【魔樹妖花 アドーニア】も、自身の手足である植物を操る。

 

 

 【魔樹妖花 アドーニア】の<UBM>としての特異能力。

 それは突き詰められた高能力なバフとデバフ。

 自身にバフを付与し、敵に多量の状態異常をかける結界。 

 

 そして自在に操ることが出来る植物で自身を守り、敵の衰弱死を狙うのこそが【魔樹妖花 アドーニア】の本来のスタイルだった。

 既に本来の姿に戻ったその状態異常の効果は凄まじい。

 【魅了】や【猛毒】、【強制睡眠】や【麻痺】。

 <Infinite Dendrogram>の世界において状態異常の力は重く、全ての状態異常を完全に無効出来ない以上【魔樹妖花 アドーニア】の強さは語るまでもない。

 加えて、樹木型モンスター特有の再生能力もあればなおさらだ。

 

 

 未だに誕生して間もなく、力を蓄えているゆえに伝説級<UBM>ほどの力しかない【魔樹妖花 アドーニア】。

 ……だが、もしその状態異常の結界を広範囲で展開したのなら?

 その状態異常で多くのティアンや<マスター>、そしてモンスターが死んだとしたら?

 そのリソースによって強化され『古代伝説級』、もしくはそれ以上……『神話級』<UBM>にすら成長するだろう。

 

 

 

 

 実際、そういう『テーマ』でデザインされた<UBM>。

 このまま成長を遂げれば、その通りになっていただろう。

 

 

 

 

 そう、ヴィーレに……【騎神】カロン・ライダーに出会う事さえなければ。

 

 

 自在に伸びる植物、そしてばら撒かれる状態異常。

 だが【騎神】はそれさえ超えていく。

 【騎神】カロン・ライダーの……彼の持つ神話級『特典武具』、【霧鹿樹脚 アームンディム】との相性が悪すぎた。

 <UBM>としての格が違い過ぎていた。

 

 

 『A、AHA————————?』

 

 

 【霧鹿樹脚 アームンディム】のスキルはたった一つ。

  ――《幻想の樹鹿(アームンディム)》。

 半径五メートルの結界内の植物を操り、霧を発生させる義足型の特典武具。

 カロン・ライダーの寿命が尽きた今、彼を生かしている特典武具であり、結界内の生命力を操る能力を持つ特典武具だ。

 既に尽きかけの有限の生命力。

 この生命力が尽きると共に彼も……【騎神】も死ぬ。

 だからこそ、彼は迷わない。

 躊躇いなく消費される生命力は【猛毒】のダメージさえも上回り、【麻痺】や【強制睡眠】が莫大なMPによってレジストする。

 

 

 戦闘時間にして3分もない短い時間。

 しかし超音速機動で動くカロン・ライダーに木々の防壁は削り取られ、体は爆ぜ、操る木々は避けられていく。

 

 

 まさに一騎当神。

 

 残像さえ残し、超人的な技術を持って敵を討つ“超人幻馬”

 

 全盛期ほどの力はないけれども、神話級<UBM>すら打ち滅ぼす一人の英雄がそこにいた。

 

 

 

 




騎兵スキル特化型超級職、【騎神】。
カロン・ライダーが人馬種族&超技術(次話で出る?)を持っているから可笑しくなってるだけの駄目ジョブ。

リアルで言うなら、『ゴールド免許取った瞬間にジェット機を操縦させられるジョブ』


ps.【霧鹿樹脚 アームンディム】、生命力って何やねんって言わないで……
自滅因子操る竜王さんもいるぐらいだし……

元ネタは、ものの〇姫に出てくるしし神様です(最終形態)。
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