自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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遅くなりました。

ちょくちょく修正するかも


第18話 焼け落ちた楔と自由の翼

 □■□<グリム森林・奥地>

 

 

 

 

 

 【騎神】カロン・ライダー VS 伝説級<UBM>【魔樹妖花 アドーニア】。

 一人と一体の激戦の数々。

 地面が爆散する音が響けば、アドーニアの体が削り取られ。

 女性の嗤い声が聞こえれば、木々が生え伸び、地面に状態異常を付与する花が咲く。

 息も付けない圧倒的な攻防。

 短くも長い……永遠にも感じられる戦いがそこにはあった。

 

 

 だが、永遠のモノが在りはしないようにどんな激戦にも終わりはある。

 

 ——秀でた再生能力を持つ【魔樹妖花 アドーニア】。

  しかし無限に再生出来るわけもなく、眼に見えて再生速度が落ちていく。

 

 ——一方的なまでの槍撃を放ち、亜音速機動で動く【騎神】カロン・ライダー。

  しかしどんな英雄も寿命には勝てず、僅かな命を削りながらその四肢を動かす。

 

 まさにどちらが勝っても可笑しくないギリギリの戦い。

 『勝負は時の運』と言う言葉が存在するが、まさしくその通りだ。

 だからこそ……運を掴もうと勝負は動く。

 

 

 『AHAHAHAHAHAaaaaaaaaA!!』

 

 

 動いたのは【魔樹妖花 アドーニア】。

 伝説級<UBM>にして狡猾な知能を持つアルラウネ、彼女は自身が危機に陥っているのも理解していた。

 だから――賭けに出た(・・・・・)

 【魔樹妖花 アドーニア】がとった行動、それは……

 

 ……攻撃の一切を捨てた『完全防御態勢』。

 

 放っていた大量の状態異常のデバフを止め、余力を自身のバフにつぎ込んだ。

 同時に辺りから生え伸び、【騎神】を捕まえようと伸びていた植物を操り、自身の本体を守るように囲い込む。

 

 

 「あれは、球体?」

 

 「……さしずめ『樹の揺り籠』と言ったところですか。時間を稼いで私の寿命が尽きるのを待つ……考えたものです」

 

 

 その全貌に愕然と呟くヴィーレ。

 そんな彼女に、戦闘が始まってから初めて動きを止めた師匠が相槌を返す。

 

 大きな蕾から人型の姿を見せていた【魔樹妖花 アドーニア】。

 しかし目の前にはその影は何処にもなく、植物によって作られた半径2メテル程の球体が出来上がっていた。

 バフが何重にもかかった頑強な魔樹が何層にも折り重なり、あらゆる攻撃をはじき返す防御態勢。

 

 それは師匠の言った通り、赤子を守る『樹の揺り籠』。

 あるいは『(さなぎ)』か『蕾』とも言えるかもしれない。

 

 第一形態――初めの樹木型の状態で、《クリムゾン・スフィア》を防ぎきるほどのバフを掛けることが可能な【魔樹妖花 アドーニア】。

 全力で防御に回れば、ドラゴンの顎でも砕けぬ強固さを持つだろう。

 それは例え、1万以上のSTRを持つ師匠でも貫けはしない。

 激戦を繰り広げた師匠の寿命は……おそらくあと三日も無いだろう。このまま成すすべなく……戦わずして師匠の負けが決まる。

 そのことを理解し、ヴィーレは瞳を潤わせる。

 そして、眼前に立つ師匠の顔へ視線を向け……

 

 

 

 

 

 

 

 

 「【騎神】を、カロン・ライダーも舐められたものですね……」

 

 

 獰猛に不敵なまでの笑みをうかべる【騎神】を見た。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 レジェンダリアの南方。

 <グリム森林・奥地>と呼称される場所の奥に、何百メテルにも及ぶ大きな渓谷が存在する。

 その名は<アームンディムの円湖>。

 かつてレジェンダリアに侵攻した神話級<UBM>、【樹霧浸食 アームンディム】の襲来による大きな爪痕だ。

 ……と、レジェンダリアの人々には認知されている。

 

 しかしそれには大きな勘違いが一つ存在した。

 

 <アームンディムの円湖>、それは【樹霧浸食 アームンディム】ではなく<UBM>を討伐した際に造(・・・・・・・)られた(・・・)という事実。

 

 一人の英雄——【騎神】カロン・ライダーの一撃によって出来た爪痕だという事を。

 

 【騎神】カロン・ライダーが編み出したオリジナルスキルであり、彼が“超人幻馬”と呼ばれる由縁。

 ああ、あえて再度言おう。

 【騎神】カロン・ライダー、彼は英雄であり天才であり、そして……

 

 

 歴代最強の【騎神】であると。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 師匠の編み出したオリジナルスキル。

 それは一言で言い表すのならば――『自滅技』という表現が一番しっくりと来るだろう。

 騎兵系統ジョブの上位職は【幻獣騎兵】や【大騎兵】【疾風騎兵】というように、各々に特化したジョブが存在する。

 上位職で手に入るスキルは様々、【騎兵】を基礎として発展したようなスキルが多い。

 だが、そんな数多いスキルの中に一つだけ共通して獲得するスキルが存在した。

 

 そのスキル名は――《一騎駆け》

 

 自身のSTRとAGIを引き上げる代わりにENDが低下するアクティブスキル。

 その名の通り、自滅覚悟の諸刃の剣だ。

 そして【騎神】である師匠のオリジナルスキルは《一騎駆け》の発展技である。

 

 その効果は『AGI×走った距離分だけ攻撃能力を強化(・・)し、ENDからAGI×走った距離分を減算する』。

 

 走った距離、疾走する速度によって攻撃力を引き上げる極限の『攻撃特化スキル』

 その一撃はSTR特化型超級職にも匹敵し、あらゆるものを打ち砕く攻撃力を持つだろう。

 

 

 ——もちろん、当てることが出(・・・・・・・)来れば(・・・)……の話ではあるが。

 

 

 そんなスキルの前に立ちふさがるのが一つある。それはリアルにも存在する自然法則、『相対速度』。

 公式で言うならば、『(対象物)-(基準)』だ。

 AGIが4万を超える超音速機動で疾走する師匠、そのENDは【リトルゴブリン】の攻撃でも致命傷になるほど脆い。

 唯でさえ障害物が多い森の中でそんな事をするなど正気の沙汰ではないだろう。

 普通の【騎兵】では、木の根につまずけば足が折れ、敵の攻撃を食らえば体に風穴が開く。

 

 

 あぁ、唯の【騎兵】なら……だが。

 

 

 ——防ぐことなかれ、それはあらゆる攻撃を穿つ必殺の一撃。

 

 ——避けることなかれ、それは超音速で駆ける必中の一撃。

 

 ——そして……希望を持つことなかれ、その一撃を彼は、【騎神】は絶対に外さない。

 

 

 彼は自らのオリジナルスキルを放とうと森の中を疾走する。

 その姿は幻影のみを残して掻き消え、地面を駆ける一歩一歩が草木を散らし、クレーターを作り出す。

 そして……

 

 

 「ッツ!」

 

 

 ENDの下がり切った体に小石が当たり……体に小さな穴を穿った。

 ティアンに痛覚無効の設定など有るわけがない。

 老いた身体中が悲鳴のような軋みを上げ、痛みに一瞬思考が飛ぶ。

 だが、そんな無謀な自滅技を使いながら、彼は嬉しそうに頬をつり上げる。それは気が狂った訳でも、ましてや彼が戦闘狂だからでもない。

 

 

 「まさかこんな日が来ようとは……無為な日々を送る100年でしたが、私はこの瞬間の為に生きて来たのかも知れませんね」

 

 

 それは彼のオリジナルスキルを放つ意義にあった。

 100年前の【樹霧浸食 アームンディム】の侵攻では、目の前でたくさんの仲間が死んだ。

 

 その脚によって地面の染みとなった者。

 霧の中で迷い死んだ者。

 魔樹に体を貫かれ死んだ者。

 

 【騎神】カロン・ライダーはその様子を止める事はできなかった。

 そして気がつけば、彼の周りには誰一人として立っているものはいなくなっていた。

 ただそこに有ったのは、深い絶望と悲しみ。

 彼はそのとき、初めて最後の一人となる悲しみを知ったのだ。

 

 自身の背後にはまだ守るべき故郷が残っている。

 

 守らねばならぬ仲間も討たねば為らぬ敵も以前としては存在していた。

 それでも彼の周囲に仲間は居ない。

 そして【騎神】カロン・ライダーは仲間の後を追おうと自身のオリジナルスキルを使い……結果として生き残ってしまった。

 そんな彼を待っていたのは、無惨にも死んでいった仲間への……騎兵ギルドへの懺悔と後悔。

 『特典武具』である【霧鹿樹脚 アームンディム】のせいで自殺も許されない。

 その苦しみは100年経っても消えることはなく、毎日夢にうなされた。

 そんな時だ……目の前に彼女が、ヴィーレが現れたのは。

 

 

 「あの時に比べれば……何でもない!」

 

 

 自身の背後には弟子が居る。

 これから多くの未来が存在する彼女が。

 故にそこに絶望はなく、失望もない。有るのは一つ、未来へと繋げる希望の光。

 

 弾丸のような植物の雨を潜り抜け、迫り来る樹木の上を駆け抜ける。

 【騎神】の名に恥じぬ技術の頂。

 その末に……彼はたどり着いた。成し遂げた。

 眼前に有るのは【魔樹妖花 アドーニア】の樹の揺り籠。

 そして彼は……【騎神】カロン・ライダーは自身のオリジナルスキルである、そのスキル名を高らかに吼える。

 

 

 「《ライド・オブ・ザ・オーバードライブ》!!」

 

 

 森に響き渡る声と同時に轟音が鳴り響き……

 

 

 絶対防御形態をとる【魔樹妖花 アドーニア】の球体に大穴を穿ったのだった。

 

 

 

 

 

 ◇【幻獣騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 「——師匠!」

 

 

 まさに一瞬、刹那の出来事。

 轟音と共に地面が割れ、木々をなぎ倒しながら突撃槍が線を描く。

 私は砂煙の視界が封じられた先……【魔樹妖花 アドーニア】の向こう側へ視線を向ける。

 朝焼けの陽光に照らし出され、丸い円とその先に立つ一人の人影が浮かび上がる。

 

 

 「すいません、ヴィーレさんの試練だったんですが……久しぶりの戦闘で私も高揚していたようですね」

 

 

 そんな自嘲的なトーンで呟かれた言葉。

 私はその言葉に安堵の息を吐く。

 そして視界が晴れると同時に師匠の姿が見え……その姿に思わず息を飲んだ。

 

 ——年老いながらも筋肉質だった四肢は地面との摩擦か【炭化】している。

 ——体の所々にはいくつかの小さな穴が開き、止まることなく血が溢れ出していた。

 

 『死に体』……そんな言葉が頭によぎるほどのひどい傷。

 師匠のオリジナルスキル、《ライド・オブ・ザ・オーバードライブ》の反作用だ。

 私も修行中に何度も体験した思い反動。

 しかしそれは【出血】や【硬直】といった小さなものだった。

 

 (何で……何でそんな大怪我を)

 

 その姿に言葉を失い、立ち尽くす私に師匠は笑う。

 

 

 「そんな顔をしないでください、ヴィーレさん。

  これは……私の老いが原因です。生前よりもステータスも落ちたからですかね、少し被弾してしまいました」

 

 「そ、んな! 笑ってる場合じゃ! 早く、早く治療しな「無駄です」……」

 

 

 慌てる私に師匠は微笑む。

 

 

 「私の寿命では……これほどの傷はもう手遅れです。

  それにヴィーレさんも知っているでしょう? 戦闘を行った時点で私に未来はありません」

 

 

 師匠はそう言いながら……視線を自身の右後ろ脚に送る。

 そこにあったのは半分ほど燃え尽き、無くなった【霧鹿樹脚 アームンディム】。

 その光景に……師匠の言葉を理解した私は目を伏せる。

 

 分かってはいた、受け入れた。

 それでも……耐えられない胸の痛みに頬を濡らす。

 師匠と目を合わせるのが辛く感じる。

 でもこのまま終わってはいけないのは分かっている、師匠に言いたい文句も誓いたい言葉も。

 だから私は顔を上げ、師匠の元へと近づこう歩き出し……

 

 右足の異常に気(・・・・・・・)が付いた(・・・・)

 

 

 

 

 「ッツ! ……ヴィーレさん!!」

 

 

 同時に凄まじい風圧と僅かな時間の浮遊感。

 それを追うように鈍い痛みが体を襲う。

 

 (……何が?)

 

 その痛みに眉をひそめながら体を起こす。

 そして背後を振り返り……それを見た。

 

 眼に映り込んだのは四本の足が大きな木の根に拘束された師匠だった。

 苦しそうな顔に汗を浮かべる師匠。

 同時に拘束をしている木の根が大きく脈打ち、師匠の足が干からび始める。

 

 

 「あ、アレウス!」

 

 

 私の叫びにも似た呼びかけ。

 その言葉に反応したアレウスが、師匠の足を拘束していた木の根を踏み砕く。

 ……酷い。

 体中からは変わらず血が流れだし、足は【魔樹妖花 アドーニア】の能力《ハイ・ドレイン》によってミイラのように細く干からびていた。

 

 

 「……あぁ、無事でしたか」

 

 「何……何で。私は<マスター>だから、死んでも三日後にはまた復活できるのに」

 

 

 私たち<マスター>がデスペナルティになればリアルの24時間、こちらの世界で三日後には復活できる。

 それを師匠が知らない訳がない。

 

 

 「フフ、ヴィーレさんは馬鹿ですね……。目の前で弟子を死なせる師匠がどこに居ますか。

  それに、目の前で大切な人を……仲間を死なせるのはもうこりごりです」

 

 

 私は泣きながら師匠に回復アイテムを使用する。

 ……まだ感謝の言葉を、言いたいことも言えてないのだ。

 だから、

 

 (お願いだから、まだ死なないで!)

 

 しかしそんな思いとは裏腹に師匠は嬉しそうに私を話しかける。

 

 

 「私も勘が鈍ったものです……止めを刺しきれないとは」

 

 

 その視線の先にいるのは【魔樹妖花 アドーニア】

 先ほどまでの完全防御態勢を解除し、ゆっくりと以前の女性型の姿へと戻っていく。

 しかし無傷ではない。

 常に響かせていた嗤い声は途切れ途切れになり、体の再生も遥かに遅い。

 その体力は確実に師匠の《ライド・オブ・ザ・オーバードライブ》で削れている。

 

 (きっと【ハイド・グラビティー・グラトニーフォレスト】と同じ。地中に核を埋め込んで致命傷を避けたんだ)

 

 ヴィーレはそう考えたが、その予想は当たっている。

 【魔樹妖花 アドーニア】は一つの賭けをしたのだ。

 

 ——【騎神】カロン・ライダーを倒すため(・・・・)に。

 

 そして戦闘中にその弱点を探し、見つけた。

 ヴィーレという(・・・・・・・)弱点(・・)を。

 完全防御態勢をとり、屈強な人馬種族を引き付けている間に地中から根を伸ばしヴィーレを襲う。

 いくつかの予想外なアクシデントは発生したものの、その賭けに【魔樹妖花 アドーニア】は勝ったのだ。

 

 

 『A、AH……AHAHAHAHAHAHAHAHAAAAA!』

 

 

 師匠の姿に笑い声を上げる【魔樹妖花 アドーニア】

 姿が完全に女性型へ再生すれば、師匠と私の殺そうと攻撃を開始するだろう。

 私は涙が止まらない目で睨みつける。

 

 

 「ヴィーレさん、私の代わりにあの<UBM>を討ちなさい」

 

 「……え?」

 

 「もともとこれはヴィーレさんの試練、これで晴れてヴィーレさんと<UBM>の一対一です。

  貴方の……私の弟子としての力を最後に見せてはくれませんか?」

 

 「でも……師匠が倒せない敵を私が?」

 

 

 師匠のオリジナルスキルでも倒せないような敵を私が倒せるのか?

 素直にそんな疑問が湧き上がる。

 するとそんな私の頭をゴツゴツとした……力強い手が頭を撫でた。

 

 

 「ヴィーレさんは私と出会った時も不安に満ちた目をしていましたね……。  

  ですが貴方は変わった」

 

 

 その声は優しく、聞いているだけで胸の奥の悲しみや不安が解け消えていく。

 

 

 「貴方は私が、【騎神】が認めた騎兵です。  

  自身を持ちなさい。

  私のオリジナルスキルも受け継ぎ……アレウスと共に成長している。それは紛れもない一つの事実です」

 

 

 その瞬間だった。

 背後で森に響くほどの大きな笑い声が響き渡る。

 

 

 「そして……どうやら、貴方を縛る鎖を焼き払い、自由へと舞う為の翼も……手に入れたようだ」

 

 

 何かが風切り音を立てながら私へと高速で迫りくる。 

 それは私のすぐそこまで生え伸びて……真紅の炎に焼き払われた。

 それだけではない。

 辺り一帯を真紅の炎が包み込み、私の体を真蒼の炎が優しく包む。

 

 

 「……【騎神】として、貴方の師匠として……何か渡したいのですが、残念ながら……私の手にあるモノは『特典武具』ばかりで、あ、なたに渡せるものは……少なさそうです。

  だ、から……これ、と……ヴィーレさんに、師匠として、最後の、言葉……を」

 

 

 頭に置かれた手の力は弱弱しく、その暖かさを無くしていく。

 

 

 「我が弟子、ヴィーレ。……君は、自由だ」

 

 

 涙が一滴、地面に落ちて吸い込まれていく。

 

 

 「勝て……そして、こ、の……そして世界を、見て回り、なさい。

  そして……私の! …………【騎神】を引き継げ」

 

 

 同時に言葉は消え、頭に乗せられた手は静かに地面に落ちていく。

 

 

 「……」

 

 『BURUUU』

 

 「うん、行こう。アレウス、フェイ」

 

 

 師匠に返す言葉は無く、私は無言で後ろを向いた。

 そこでは【魔樹妖花 アドーニア】ごと辺り一面を焼き払いながら空を舞う、一匹の紅と蒼の不死鳥がいた。

 【炎怪廻鳥 フェニックス】第二形態。

 フェイは私の言葉に従うように辺りを舞い、アレウスが私を乗せ荒く鼻息を鳴らし嘶く。

 

 

 『AHAHAHAHAHAHAHAAAAA!?』

 

 

 笑い声を上げながら植物を操り、デバフをまき散らす【魔樹妖花 アドーニア】。

 再生能力は格段に落ち、弱っていてもその能力は変わらない。

 師匠を倒した伝説級<UBM>のままだ。

 ……だけど、もう勝てないとは思わない。

 私は強く、意思の籠った目で眼前のアドーニアを睨みつける。

 

 

 「【騎神】が弟子、【幻獣騎兵】ヴィーレ・ラルテ」

 

 『A、AHA?』

 

 「師匠に代わり、お前を討つ者」

 

 

 【魔樹妖花 アドーニア】にも聞こえるように大きく、高らかに私は吼える。

 

 

 「いざ、尋常に……

 

 

 

 

 

 

 ……勝負!!」

 

 

 【魔樹妖花 アドーニア】との距離は約50メテル。

 私はアレウスに《騎乗》し、師匠から受け継いだオリジナルスキルを行使する。

 

 師匠ほどの威力も無ければ、速度も無い。

 実践で使うのも初めてのある意味、未完成の名前の無い『スキル』。

 

 だが、それでも止まらない。

 【魔樹妖花 アドーニア】からの攻撃はフェイの真紅の炎で燃え尽き、突破してきた攻撃をアレウスが駆けぬけ潜り抜ける。

 本来ならまともに戦えるはずのない程の大量のデバフは、真蒼の炎に焼却された。

 炎をまき散らし、一進に駆けるその姿はまさに人馬一体。

 そのヴィーレの姿は、【騎神】の《ライド・オブ・ザ・オーバードライブ》を彷彿とさせる。

 

 

 電光石火、猛火突進。

 

 

 言葉では言い表せられないような、強い気迫を纏い駆ける。

 

 

 『A、AHAHAHAHA!!!』

 

 

 その姿に怯えるかのように【魔樹妖花 アドーニア】が防御の姿勢をとるが……遅い。

 私は強く、大きく【純穿蛇竜の強弓・ネイティブ】を引き絞り……

 

 

 【クエスト【弟子入り――【騎神(ザ・ライダー)】の技を引き継ぐ者 難易度:七】が達成されました】

 

 

 「ッツ!」

 

 

 頭の中に鳴り響くそのアナウンスに涙を流しながら高らかに叫んだ。

 

 

 「《ザ・ラ()イダー()・デ()ディ()ケイ()テッ()ド・()ブロー()》!!」

 

 

 放たれた必殺の矢。

 矢は真紅の炎を纏い、ヴィーレのオリジナルスキルによって加速する。

 その一撃はまるで流星。

 かわすことも許さず、あらゆる防御を貫き進み。

 

 

 『A、AH?』

 

 

 【魔樹妖花 アドーニア】の心臓である核を正確に射ち貫いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【<UBM>【魔樹妖花 アドーニア】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【ヴィーレ・ラルテ】がMVPに選出されました】

 【【ヴィーレ・ラルテ】にMVP特典【花冠咲結 アドーニア】を贈与します】

 

 

 

 【条件解放により、【騎神】への転職クエストが解放されました】

 【詳細は騎兵系統への転職可能なクリスタルでご確認ください】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




師匠……死!!
「クエスト達成」=師匠の死って意味でした。
ついでに師匠の突撃槍も特典武具です(恐らく貫通能力持ち)~
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