自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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これで、『第一章:秘境の仙人編』は終了です。

楽しんでもらえたのなら嬉しいです~


エピローグ 彼女と彼ら

 □<首都・アムニール> 【幻獣騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 伝説級<UBM>、【魔樹妖花 アドーニア】との戦闘から三日が過ぎた。

 多くのモノを手に入れ、大切なモノを失った日。

 あまりにも大きな、大切な人を失った。

 だけど……嘆きはしない。

 師匠と過ごした修行の日々は変わることなく私の記憶に存在している。

 師匠がくれた言葉はしっかりと私の胸に届いているのだから。

 

 

 「……これで良かったんだよね、師匠」

 

 

 小さく呟かれた言葉は、活気のある呼び込みが響き渡る“霊都”の街並みへ霧散していく。

 あの日の前日と代わらない……活気に満ち溢れた都市だ。

 この街に暮らすティアンも<マスター>も、“霊都”<アムニール>が【魔樹妖花 アドーニア】の危機に晒されていたことなど微塵たりとも知らないのだろう。 

 別に師匠の存在を、成し遂げた事を知らないことに怒りを覚えた訳ではない。

 ……ただ、英雄の死に、何も変わらず迎えた明日に少し胸が締め付けられた気がしたのだ。

 

 (……何時までクヨクヨしてるんだ、私! 何も変わらない明日が来る、それが師匠の守りたかったものじゃない!)

 

 今日は大切な日(・・・・・)だと言うのに何時までも悩んで要られない。

 思考を振り払うように(かぶり)を振り、目を覚ますように頬を叩く。

 そんな私の様子を見て、隣を歩くアレウスとフェイが首を傾げた。

  

 

 余談だが、師匠のお墓は<旧・ハムレット平原>に造った。私と師匠が出会った、あの開けた場所だ。

 もちろんファフザーさんやジュシーネさんにも相談しての事だ。何とか頼み込んだら、二人とも快く承諾してくれた。

 

 (……そう言えば、私の他にも人が来てた痕跡があったなぁ~)

 

 お墓を造った翌日、再び師匠のお墓を訪れると、綺麗な一輪の花が添えられていたのだ。

 誰だかは遂に解らなかったが、少しだけ嬉しく感じる。

 

 

 「師匠の言っていた通り、私も成長出来てるのかな……そういう意味ではフェイが一番成長してるけど」

 

 『KIIIE?』

 

 

 私の<エンブリオ>である【炎怪廻鳥 フェニックス】

 TYPE:ガードナーでもあるフェイは、あの戦いの最中に第二形態へと進化した。

 

 ――紅と蒼の炎の模様をした炎の卵。

 

 その姿も進化に伴い大きく変化している。  

 ……と言うよりも孵化している。

 

 ――紅と蒼の炎を舞い散らしながら空を飛ぶ、体長二メテル程の怪鳥。

 

 それが進化したフェイの姿である。

 そして進化に伴い、私が《騎乗》出来るようにもなった。

 相変わらずAGIとHP以外のステータスは壊滅的だが、その空を駆ける速度はアレウスにも劣りはしない。

 そして何より大きな成長が、新たに獲得した『固有スキル』である。

 

 

 

 

 《紅炎の演舞》

 ・パッシブスキル

 自身の溜め込んだMP&SPを使用し、紅炎の攻撃を放ち、操る事が出来る。

 (炎の威力は込めたMP&SP依存。自身の敵性を識別し、攻撃可能)

 

 

 《蒼炎の再生》

 ・パッシブスキル

 自身の溜め込んだMP&SPを使用し、蒼炎で傷や状態異常を治癒することが出来る。

 (治癒の速度・回復力は込めたMP&SP依存。自身で対象を選択し、使用可能)

 

 

 

 

 ……そう、まさかの固有スキル二つ同時獲得である!

 どちらのスキルも『不死と再生の象徴』たるフェニックスに相応しい、強力な固有スキルだ。

 

 

 「燃費が悪いのがたまに傷だけどね」

 

 『KUUUU!!』

 

 

 からかうように笑いながら……アレウスの背の上に留まっている小さな雛鳥サイ(・・・・・・・)()のフェイを撫でる。

 フェイはそんな私に抗議の声を上げた。

 

 本来は炎を舞い散らしながら飛ぶ怪鳥型のフェイ。

 しかし、今は体力の温存の為か炎を纏うこともなく、雛鳥サイズになっている。

 

 第二形態へと進化したフェイだが、新たに大きな欠点が見えてきたのだ。

 

 それは、『MP&SPの蓄積が完全に私便り』だと言う点。

 

 フェイ自身のMP&SPは驚く程低く、私自身も騎兵系統ジョブ故、それほど多くはない。

 今は約二週間フルに《火炎増蓄》で二倍にして貯めた分が残ってはいるが、そのうちに絶対足りなくなる。

 ある意味、強力なスキル故の欠点とも言えるかもしれないが……

 

 

 「でも、改めて考えると私も成長してるのかな? 【魔樹妖花 アドーニア】の特典武具も手に入れたし……」

 

 

 そう言いながら、鮮やかな赤髪をまとめる髪結いに手を触れる。

 髪結い型――アクセサリー型の特典武具だ。

 新緑色の蔦、そして澄んだ黄色と薄紫色の花を模した髪留め。

 少し長めのロングヘアを、【花冠咲結 アドーニア】がポニーテールに一括りにしている。

 

 そして流石、特典武具と言うべきか。

 他の装備品よりも高い装備補正と装備スキルを兼ね備えている。

 

 【花冠咲結 アドーニア】はこう言った感じである。

 

 

 

 

  【花冠咲結 アドーニア】

  <伝説級武具(レジェンダリーアームズ)

  魅了を操り、あらゆる状態異常を自在に振りまく妖花の概念を具現化した伝説の至宝。

  状態異常を蓄積・成長させ、周囲一帯のバフ&デバフを操る力を持つ。

  ※譲渡・売却不可アイテム

  ※装備レベル制限なし

 

 

  ・装備補正

  MP+[着用者の合計レベル]×5

  SP+[着用者の合計レベル]×5

 

  ・装備スキル

  《ドレイン》

  《栄華の庭園(ザ・ガーデン・オブ・グローリー)

 

 

 

 

 ステータス補正は低めだけど……【騎兵】である私にアジャストした結果ともいえるのかもしれない。

 私は弓を使うのでそれほどステータスは重要ではないからだ。

 それに【■■王の指輪】もあるのでSTRは十分である。

 

 もしステータスが物足りなくなってきたら……苦渋の思いで、レズにステータス重視の装備を作ってもらおう。

 

 

 「これで私たちの戦略の幅も広がるね」

 

 『BURUUU』

 

 『KIIIIE、KIIE』

 

 

 私の言葉にアレウスとフェイが返事を返す。

 しかし、成長しているのは私たちだけではない。

 

 約三週間ぶりに連絡が取れたフィガロ。

 彼は【剛闘士(ストロング・グラディエーター)】に転職し、アルター王国で『決闘ランキング』に名を連ねているらしい。

 そして、私と同じように<UBM>も討伐したらしい。

 いや、私の場合は師匠がいなければやられていた。きっと私以上に成長しているのだ。

 

 【鎧巨人】の田中さんも自分探しの旅に出た。

 行先は決めてはいないらしいが北上した後、天地を目指すらしい。

 

 他にも騎兵ギルドに新たな<マスター>が所属し、凄まじい勢いでレベルを上げている。

 もたもたしていてはすぐに追い抜かれてしまうだろう。

 しかし……修行より先に果たさねばならない約束がある。

 

 

 私は目的地にたどり着き、大きなクリスタルを右手で触れる。

 【幻獣騎兵】のレベルはまだ半分にも達していない。

 だけど……私を待っていてくれる人がいるから。

 

 目の前に表れた簡易メニュー。

 その中には以前まで就けなかった、表示されていなかったジョブが薄い文字で表れていた。

 

 

 

 

 ――【騎神】

 

 

 

 

 私は背後のアレウスとフェイに目配せをすると、ゆっくりと選択する。

 

 

 【転職の試練に挑みますか?】

 

 

 「うん、もちろん」

 

 

 同時に一瞬に浮遊感とともに不思議な空間に飛ばされた。

 空は白く、地平線の彼方まで緑の草原が広がっている。

 ここが『転職クエスト』の舞台ということなのだろう。

 そして……

 

 

 【前任【騎神】に勝利せよ】

 【成功すれば、次代の【騎神】の座を与える】

 【失敗すれば、次に試練を受けられるのは一か月後である】

 

 

 無機質なアナウンスが頭に響き、歪んだ空間から一人の人馬種族の男が現れた。

 転職クエスト自体はすでに師匠から聞いていた内容。

 つまり、目に前にいる男は……

 

 

 「無事、<UBM>を討ち倒したようですね。ヴィーレさん」

 

 「……ッツ。 師匠のおかげです」

 

 

 私の師匠、【騎神】カロン・ライダーに相違ないということだ。

 

 

 「師匠、私言いたいことが……伝えたいことが沢山あって!

  でも……とにかく今はすごく嬉しいです……」

 

 「ええ、ゆっくり沢山聞かせてください。ただ……」

 

 

 師匠はゆっくりと馬上槍を構え、優しく笑う。

 

 

 「……ヴィーレさんの実力も見てから、それからゆっくりと話しましょう」

 

 「――! はい!!」

 

 

 その身に一切の特典武具を身に着けずに槍を構える師匠。

 しかし最盛期の頃の姿で試練に現れた師匠の気迫は、以前よりも遥かに強く、鋭く研ぎ澄まされていた。

 生前でも私より技術も経験も上。

 今ではその差はもっと大きくなっているだろう。

 

 だけど……諦めたりはしない。

 

 私はアレウスに騎乗し強弓をその手に《瞬間装備》する。

 そしてニヤリとほほ笑む。

 

 だって、私は【騎神】に認められた騎兵であり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「負けず嫌いな女の子だもん……」

 

 

 そして今、二人の騎兵が互いに向けて走り出したのだった。

 

 

 

 To be continued

 

 

 

 

 

 ◇◆◇クラン<■■■■■・■■■■>

 

 

 

 

 

 時を同じくして“霊都”<アムニール>を二人の<マスター>が歩いていた。

 

 一人は、全身真っ黒なタイツを身に纏い屈託のない笑顔で笑う若い男。

 

 一人は、普通の服装……の上から腰に白鳥の形を模した模型を着けた男。

 

 二人の<マスター>は互いに大声で笑いながら大通りの中心を歩く。

 

 

 「いやぁ! 凄かったな、あのティアン! あれが噂に聞く『超級職(スペリオル・ジョブ)』ってやつか!?」

 

 「たぶんそうだネ。だけど……せっかく他の<マスター>の邪魔を楽しんでいたのに、終わってしまったのは残念ダワァ」

 

 「それな!! 中身がガキっぽい<マスター>を焚きつけて、<マスター>同士の殺し合いに発展させるって……ほんとーーーに面白かったぁ!」

 

 

 他の<マスター>が聞いたら眉を顰めるだろう話を大声で話しながら二人は笑う。

 もしその場に彼らに【魔樹妖花 アドーニア】の討伐の邪魔をされた<マスター>がいたなら気づいたかもしれない。

 彼らが――PKをしていたパーティーの内の二人だということに。

 大通りを歩く何人かの<マスター>はその考えを頭に浮かべ……笑って否定した。

 PKがあんな道の真ん中を堂々と歩き、あんな話をするはずないと。

 そしてあんな格好をした<マスター>はいなかったはずだと。

 

 

 「しっかし、お前! ガキを煽りつける為だけに【詐欺師(デフローダー)】と【道化(クラウン)】に【吟遊詩人(バード)】をカンストさせるとか……やばすぎだろ!」

 

 

 全身タイツの男は腹を抱えながらケラケラ笑い、地面を踏みつける。

 男の言ったことは冗談などではない。

 白鳥の男、彼は<マスター>を煽りつける為だけに三つの下級職をカンストさせたのだ。

 もちろんそれは本来の取りたいジョブではない。

 もし目の前にジョブクリスタルがあれば、迷いなくすべてのジョブをリセットするだろう。

 

 

 「キミに言われたくないナァ~。どうしてそんなパーソナルでTYPE:メイデン(・・・・)の女の子が生まれるかがわかんねぇヨ」

 

 『……それには私も同感ですわ』

 

 

 白鳥の男が笑いながら返した言葉。

 その言葉に追従するかのように何処からともなく声が響く。

 そして……全身タイツの男の左手の甲にある『壺を持つ女神』から光の粒が溢れ出し、一人の少女を形作っていく。

 

 

 『私も何でこのような主から生まれたのか疑問に思いますわ』

 

 「はっはっは! 酷いこというなぁ!」

 

 

 現れたのは、流れるような金髪と藍の瞳を持った一人の少女。

 口癖からくるお嬢様のような印象と黒のドレスが見る人に違和感を感じさせるような姿をしている。

 そんな少女は口を尖らせながら文句を呟く。

 

 

 『それに……もう少しましな格好をしてもらいませんと、私の主としては不相応ですわ!』

 

 「おいおいおい! これでも真っ白な全身タイツをお前に合わせて黒にかえたんだぜ? 変な文句を言ってんじゃねぇよ、パンドラ(・・・・)

 

 『……その名前で呼ばないでと言いましたわよね?』

 

 

 名前を呼ばれたことに怒りを滲ませ、互いに睨みつける二人。

 そんな二人の様子に慌てて白鳥の男が仲介に入る。

 

 

 「まぁまぁ、おちつけッテ! それより【工作兵(ワーカー)】の爺さんが面白いものを見つけたっテヨ」

 

 「へぇー、あの爺さんが? 何見つけたんだ?」

 

 

 その言葉に白鳥の男はニヤリと嗤い言い放った。

 

 

 「なんでも<UBM>が守護してる遺跡があったらしいゼ? お前の<エンブリオ>なら上手く暴走させられるんじゃねぇかっテサ」

 

 「へぇ……いいじゃん、いいじゃん! ちょー面白くなりそうじゃん!!」

 

 

 少女が胡散臭げに見つめる横で、全身タイツの男が嬉しそうに飛び跳ねる。

 

 

 「どうせなら“ジャガーノート”も呼んで行こうぜ! 

  んでもって、お前と俺の<エンブリオ>でもう一体<UBM>を探し出して……

 

 

  ……どっかの街でぶ(・・・・・・・)つけ合おう(・・・・・)!!

  <UBM>同士の怪獣バトル! 絶対に楽しく面白くなること間違いなしだ!」

 

 

 メイデン(・・・・)の<エンブリオ>を持つ全身タイツの<マスター>は躊躇うことなく、楽し気にそう言い放った。

 そしてその言葉に白鳥の男もケラケラ笑う。

 

 

 「いいナ、いいナ! 楽しそうだ。それならさっそく行かなきゃナ!」

 

 「おう! すぐ行こう、今行こう、全力で行こう!!」

 

 『……本当に主と言い、お前と言い』

 

  

 頭を抱える少女の横で、テンションが振り切れた二人の男は笑いながら大きく叫ぶ。

 

 

 「「俺たちゃ、笑顔を届ける愉快犯!! クラン<クレイジーパレード>のクエスト開始だぁ(ダァ)!!」」

 

 

 

 

 こうして新たな物語は動き出す。

 大通りに響く、愉快な笑い声と共に……

 

 

 

    




・【花冠咲結(かかんえみゆい) アドーニア】
  <伝説級武具(レジェンダリーアームズ)
  魅了を操り、あらゆる状態異常を自在に振りまく妖花の概念を具現化した伝説の至宝。
  状態異常を蓄積・成長させ、周囲一帯のバフ&デバフを操る力を持つ。

  ・装備補正
  MP+[着用者の合計レベル]×5
  SP+[着用者の合計レベル]×5

・装備スキル
  《ドレイン》
  《栄華の庭園(ザ・ガーデン・オブ・グローリー)

  形状:アイテム(髪留め)
  所有者:ヴィーレ・ラルテ
  備考:【魔樹妖花 アドーニア】の特典武具。
     まだ成長過程のヴィーレに【魔樹妖花 アドーニア】の高い成長性がアジャストし、『状態異常を育成し、自在に操る』といった可笑しなスキルが生えてきた。
     本来なら小補正の状態異常耐性がつくはずだったが、フェイのスキルによっていらない子に……結果《栄華の庭園》にリソースが割り当てられた模様
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