自由への飛翔 作:ドドブランゴ亜種
言い訳をすると、少し重たい話なので明るくしました。
適当にだらだら更新します~
前話 契約と約束と願い
□■□とある<UBM>
ソレの始まりは一体の小さなモンスターだった。
松明ほどの小さな青白い炎を灯し、宙を彷徨い浮かぶ球体型のモンスター。
識別上のモンスター名は、【イグニス・ファトゥス】。
リアルでは『ウィルオウィスプ』もしくは『鬼火』、最も一般的な呼び名としては『ジャック・オ・ランタン』が有名だろう。
悪魔との取引で、地獄にも天国にも行けなくなった死者の魂がモデルのモンスターだ。
この<Infinite Dendrogram>の世界でもそれは変わらず、怨念を燃やし攻撃するモンスターとして知られていた。
アンデット種族の死霊型・希少モンスター【イグニス・ファトゥス】。
それがソレの名前だった。
モンスターであり、アンデットであるソレには感情といえるものが存在しない。
唯々、何かに導かれるように彷徨うのみ。
尽きることのない永遠の命を持って、彷徨い続けるだけのモンスター。
しかしソレにも、一つだけ持ち得る感覚のようなものが存在した。
それは『寒さ』。
生まれてから消えることのない、凍えるような寒さに苦しみ続ける。
そんな寒さを紛らわせるように怨念を燃やし、蓄え続ける日々。
――太陽が昇っている間は、暗く冷たい洞窟の中で耐え忍ぶ。
――暗闇が辺りを満たせば、燃やせる怨念を探し彷徨い浮かぶ。
なんの変哲もない毎日、何十年……何百年という長い年月の中を繰り返す日々だった。
冒険者に討伐されなかったのはまさに幸運としか言うほかない。
そして更に幸運なことに、ソレが生きていた時代は後に“三強時代”と呼ばれる時代。
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三人の絶対強者が並び立ち、互いに凌ぎを削りあっていたのだ。
それ故か、毎日のように死者の怨念は消えることなく、ソレが寒さを紛らわせるのに困ることは一度としてありはしなかった。
たらふく燃やし、暖をとる。
【イグニス・ファトゥス】にとっては幸せな……夢のような日々だった。
そんな幸せな毎日に満足していたある日。
ソレは自身が変化していることに……『寒さ』を感じなくなっていることに気が付いた。
青白く、小さな火の玉だった心細い体も実体が出来、感覚や自我が芽生えていることを遅すぎながらも自覚したのだ。
――指は白く、細く固い……夜の暖を取っている場所に落ちている骸のような細い骨。
――身体を隠すように頭から被った、ボロボロな黒い布切れ。
――足元で燃える青白い炎に、いつの間にか手に握っていた大鎌。
その姿はまさに死神。
名も新たに【燃怨喰霊 ズー・ルー】へと変わっている。
数百年と長い年月と沢山の怨念を得たことによって、ソレはモンスターの頂の一つともいえる<UBM>へ進化していた。
そんな変化にソレは戸惑い……毎日のように怨念を燃やす日々を始めた。
一度として強者に、自信を狙う者に襲われたことがないソレには、圧倒的に危機感が足りていなかったのだ。
それ故か、そんな日々もすぐに終わりを迎える。
ソレの平穏は、一人の超級職によって瓦礫の如く崩れ去った。
ソレの同類でもあり、好敵手。
――【
僕にされそうになったわけではない。
ただ、邪魔だから……特典武具を狙いで襲われたのだ。
しかし【燃怨喰霊 ズー・ルー】の<UBM>としての特異性は、死霊に対してその効果を発揮する。
たいして【死霊王】の攻撃は生者に対して真価を発揮するものであって、【燃怨喰霊 ズー・ルー】には相性が悪い。
戦闘にすらなりはしない。
相性的に言えば、『木乃伊取りが木乃伊になる』
決着は一方的に【燃怨喰霊 ズー・ルー】の勝利で……終わるはずだった。
ただ、一つ問題がある。
それは【燃怨喰霊 ズー・ルー】が一度も戦闘を経験したことがなく、芽生えた自我も平和的なものだったこと。
【燃怨喰霊 ズー・ルー】は死霊特化の<UBM>であり……臆病者なモンスターだった。
そんなソレがとった行動。
それはただ一つに限られる。
『敵前逃亡』
(……怖い、怖い怖い怖い!!)
ソレは戦うことも、向き合うこともせず一目散に逃げだしたのだった。
◆
それはまさに……馬鹿らしい逃避行だった。
【燃怨喰霊 ズー・ルー】は【死霊王】から逃げるように、夜の闇の中を浮かび走る。
【死霊王】も逃げる<UBM>を逃がさないと追いかける。
……そして朝になれば互いに洞窟へ隠れる。
まさに馬鹿らしいとしか表現のしようのない逃避行。
しかし、更に奇跡……ともいえない馬鹿らしい『悲劇』が起こった。
それは【死霊王】にとっての悲劇。
【燃怨喰霊 ズー・ルー】は無知ゆえに、追われる恐怖からの必死さ故に感知できなかった悲劇。
数日にも渡る逃避行の末、レジェンダリアの森林へと逃げ込んだ【燃怨喰霊 ズー・ルー】は……
(助けて~~~!)
【
そのアルター王国から使節団としてレジェンダリアを訪れ、帰路についていたティアンに泣きつき、助けを求めたのだ。
ティアンである、【
共にアルター王国固有の司祭系統超級職。
回復に秀でた【
その超級職である【枢機卿】。
【司祭】から派生し、戦闘もこなせるジョブである【
その超級職である【天将軍】。
【燃怨喰霊 ズー・ルー】が助けを求めるには、あまりにも天敵すぎるティアン。
……<UBM>がティアンに助けを求めること自体が間違っているが、それを何百年と引きこもってきた【燃怨喰霊 ズー・ルー】が知る由もない。
だが、結果的に【燃怨喰霊 ズー・ルー】は生き延びた。
【死霊王】は【天将軍】率いる数多の天使系モンスターによって討ち取られ、【燃怨喰霊 ズー・ルー】は
今では一部の村でのおとぎ話に聞かされる、500年も昔の笑い話。
誰も信じる者はいない滑稽な話だ。
……とある村に住む、二人の少女を除いては。
そして今日、この時代。
500年の時を超え、二人の少女の願いと遥か昔の契約に従い、一体の<UBM>が目を覚ます。
そして、その青白い炎を大きく揺らめかし頷いた。
(……その願い、僕が果たすよ)
すいません……次からは真面目に書きます~
三日書かないだけでも書けなくなるね~