自由への飛翔 作:ドドブランゴ亜種
凄く短いです、すいまs-
ほんと、一か月ぶりなんで読みにくかったらすいません。
□<アムニール> 【幻獣騎兵】ヴィーレ・ラルテ
「はぁ~、ほんとに疲れたね。まさかあんなに事になるなんて……」
『BURUUU……』
『魔王商店 中央大陸支部』を後にしてから半日。
森林に包まれた空が黄金色の夕焼けに染まり、木々の若葉が赤色を反射する夕暮れ。
一人の少女と一頭の黒馬が<アムニール>への帰路を歩いていた。
赤髪の少女こと、ヴィーレは疲れ切ったようにため息を吐き、そんな彼女を励ますようにアレウスが鼻息を鳴らす。
肩を落とし重たい足取りで歩くヴィーレ。
その様子は夕焼けに照らされ伸びた影法師と混じりあい、どこか哀愁を漂わせていた。
「……ただアロンのレベルを少し上げるだけだったのに」
その呟きに続く言葉は出てこない。
言葉を詰まらせるのは胸の奥で膨れ上がるショックによるもの。
いや、この感情は……驚きと戸惑い? に近いのかもしれない。
(……まさか半日かけてレベルが1しか上がらないなんて)
それが喉元まで出かかってつっかえた言葉。
半日……約十二時間のレベリング。
その成果は無慈悲に、それでいてしっかりと開いたステータスメニューに示されていた。
『【リソスフェア・ドラゴン】(アロン)Lv.2』
そう、半日かけて上がったアロンのレベルが1である。
“初心者狩場”である<グリム森林>での半日かけたレベル上げの成果だ。
だけど私が肩を落とす理由は、そのレベル上げに掛かった時間に対する成果によるものではない。
むしろ【リソスフェア・ドラゴン】であるアロンの戦闘力は、流石ドラゴンと言えるほどのものだった。
――山岳の凹凸のように尖り、硬い甲羅。
――地竜種特有の堅牢な竜鱗に覆われた四肢と太めな竜尾。
――下顎から上へと伸びた漆黒の二本の牙。
まさに『地殻竜』と呼ぶに相応しい姿だ。
小さな子亀サイズでヨチヨチとゆっくり歩く姿は……とても可愛かった。
レベルを上げずに、ずっとそのまま小さなサイズでいて欲しいと思ってしまうほどである。
それなのに……
「……どこで道を踏み外したんだろうね」
『BU、BURURU……』
何処か遠くを見つめる様な私に、アレウスが戸惑った鳴き声を出す。
……初めは順調だったのだ。
【リソスフェア・ドラゴン】であるアロンのSTRは10ちょっと、一般人であるティアンの子供と変わらないほどの値である。
しかし、その体格や大きく重たい竜甲ゆえに移動速度はまさに亀の歩みだ。
その為、私が親亀のようにせっせとモンスターを動けなくさせて、アロンの前まで運ぶことになった。
動けないモンスターは地竜種であるアロンの敵ではない。
その鋭く、強固な双牙でとどめをさす。
もしかして私がアロンに《騎乗》すれば自力でモンスターを狩ることも出来たかもしれないが、それも子亀サイズのアロンでは不可能だった。
結果、ゆっくりとモンスターを倒していったのだが……つい先ほど、それは起こった。
特に大した事でもない。
私も、そしてアレウスも何度も体験している現象。
――そう、『レベルアップ』である。
「あんなに可愛かったアロンが……もう、街中では出せないよ」
レベルアップに伴ったアロンの成長が凄まじすぎたのだ。
子亀サイズだった姿はもう見る影もなく、私がアロンの背に《騎乗》してもだいぶ余裕があるほどである。
……実際に凄かったし。
何がと言うと、レベルアップ後にアロンに《騎乗》して戦闘を行ったのだ。
【幻獣騎兵】の《幻獣強化》も既にレベルは最大まで上がり切り、強化率も100%になっている。
実質二倍のステータスの【リソスフェア・ドラゴン】。
それはもはや戦闘と呼べるものではない。
木々を踏み倒しながら猛然と突き進み、地面ごとモンスターをその強靭な顎で噛み砕く。モンスター……というよりも巨大なブルトーザーである。
(やっぱり流石、純竜って事なんだろうなぁ)
すでに“初心者狩場”では敵なし。
亜竜級モンスター相手ではまだ戦えないだろうがもう少しレベルが上がり、私が《騎乗》すればいい勝負ができるようになるだろう。
……いや、仮に今の状態で戦っても
私は思い出すように呟きながら、黄金色の夕空に向け肩を伸ばす。
「でも、新しい仲間が増えたのは嬉しいことだしね。しばらくは師匠へのリベンジの為に【幻獣騎兵】の
レベルを上げないといけないから、アロンのレベル上げはお預けになっちゃうけど……」
『BURUUU?』
独り言を呟く私をアレウスが不思議そうに鼻息を鳴らす。
私も返事を返すようにその鼻先をなでながら、道の先に見えてきた<アムニール>を見つめた。
「騎兵ギルドに戻ったらご飯にしよっか?」
『KIEEEEE!!』
ご飯の言葉にあアレウスの背で寝ていたフェイが嬉しそうに鳴き声を上げ、その様子に思わずくすくすと笑ってしまう。
そして、
「あれ? ……アロンって何を食べるんだろう?」
新たな疑問に困惑しながら、歩くスピードを少し落とすのだった。
◇◇◇
茜色の夕焼けは夕闇に沈み、<アムニール>では街灯のようなマジックアイテムが辺りを照らし始める頃。
ヴィーレは人気の少ない騎兵ギルドにいた。
夜だからか、唯でさえ数少ない<マスター>はだれ一人として居ない。
騎兵ギルドにいるのは私とアレウス、フェイにアロン、そしてジュシーネさんぐらいだ。
そんな静かな騎兵ギルド。
私は騎兵ギルドの庭のような開けた場所で頬を机に足を揺らす。
「どうかな……美味しい?」
『BURUUU』『KIEEEE~』『GAWUWUWU!!』
「あはは……それなら私も嬉しいよ」
目の前で美味しそうにご飯を頬張るアレウス達の大きな返事に苦笑を漏らす。
今日はアロンの仲間になった記念に奮発した晩御飯。
これで美味しくなかったら流石にショックだ。
それ故か嬉しさ半分、予想以上の出費の苦笑い半分である。
私は露店で立ち寄って買った果実ジュースを喉に流しながら、改めて皆の食事の様子を眺める。
アレウスの食事は出会って頃から変わらない。
基本雑食であり、干し草や穀物、果実なんかが好きなようだ。
リアルで言う重馬種以上の大きな体を持つからか、本当によく食べる。
……本当に、すごく大量に食べる。
逆にフェイの食事は変わっている。
フェイが食べるのは『炎』。
まるで吸い込むように炎を吸収する。食べるのは炎なのでかなりお財布に優しい食事だ。
だけど味に煩い? ……のか、かなりこだわりがあるらしい。
今までの食事を見る限り、燃やす物体と炎の熱量が味の決め手のようだ。
そして最後にアロンであるが……
「盲点だったなぁ……まさか
目の前で大きな岩石を噛み砕きながら頬張るアロンを眺めながら呟く。
そう、アロンの食事は鉱石――厳密に言えば鉱石の成分を含んだ物体だったのだ。
(地竜種って言うぐらいだから可笑しくは無いんだろうけど……)
うん、やはり以外ではある。
『ドラゴン』と付くぐらいだから肉類を食べると初めは思ってしまったほどだ。
一応ドロップアイテムでも鉱石に近ければ食べるみたいだが、
(食費が……。また資金集めをしなくちゃ)
打倒師匠の為にもレベル上げと技術の研鑽に専念したいところだけど、思い通りにはいかないようだ。
これまで通り、もしくはそれ以上にクエストを受けなくてはいけないのだろう。
「……はぁ」
その事実に思わず重いため息が零れる。
クエストを受けるのが嫌だというわけではない、むしろ『ジョブクエスト』なんかは積極的に受けているほうだ。
問題は……
(まさか受けられるクエストがほとんど無いなんて……)
当たり前の事だがクエストは無限に存在するわけではない。
受けられるのは護衛クエストや配達クエスト、もしくは<マスター>が受けることができないクエストばかりである。
<マスター>の増加するにつれてクエストも少なくなってしまっているらしい。
その他にも、一部のモンスターが全滅しかけるなど<マスター>増加の影響が出ていると掲示板でも噂になっていた程だ。
それに加えて、<アムニール>はレジェンダリアにおける首都。
受けられるクエストも“初心者狩場”の低難易度のクエストばかりである。
詰まるところ『美味しくない』のだ。
だが逆に言えば<アムニール>以外ではいいクエストも強いモンスターも居るということでもある。
だから……
「……うん、決めた」
『BURUUU~?』
不思議そうに私の方へ顔を上げるアレウス。
私はそんな相棒に向かい挑戦的な笑みを浮かべる。
「少し遠出――“交易都市”<ブルターニュ>に行ってみよっか?」
こうして、新たなヴィーレの冒険は……運命の歯車は音を立てて動き始めるのだった。
アレウス/【グランド・クリムズン・ウォーホース】
種族:魔獣
クラス:亜竜級
備考:ヴィーレの騎獣の第一号であり、ヴィーレの相棒。
気性は荒く、ヴィーレだけに従う真面目なナイト的な存在である。
特殊能力は持たないが、高いポテンシャルを秘めており【騎神】による修行の際に独自に高い技術を身に着けた。
ステータスはSTRとAGIに特化し、数値だけなら純竜級に張り合えるほどの力を持つフィジカル特化の戦馬。
ヴィーレの<エンブリオ>はメイデンでもアポストルでもないので会話(独り言)を成立させるのに便利な相槌役。