自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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魔王ジョブきてゾクゾクしたww

章名を変更します~






第4話 旅は道連れ

 □【幻獣騎兵】 ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 「いやー、ほんとに助かったぜ! まさか【睡眠不足】で気を失うなんてな、ガッハッハッハッハ!!」

 

 「……助かったぜ?」

 

 

 先程の轢き逃――不慮の事故から一時間後。

 私はアレウスに《騎乗》し、再び“交易都市”<ブルターニュ>へ向け、駆け目指していた。

 そのスピードは先程までの遅れを取り戻すため少し速い。時速四十キロ程はあるのではないだろうか?

 しかし進む速度以外にも<アムニール>を出発した時とは大きな違いが一つある。

 いや……言わずともわかるだろう、それは……

 

 

 「助けて貰った上にまさか<ブルターニュ>まで乗せてくれるなんて……頭も上がらねぇ!!」

 

 「……上がらねぇ?」

 

 

 アレウスに《騎乗》する私。

 その後ろに続くように一人の大男と蒼髪の少女が跨がっていた。

 

 身長は二メートル近く、蒼い髪が特徴的な筋肉質な身体。最低限の箇所しか守らない薄い装備は野性味を感じさせる。

 そんな大男の左手の甲には“血に濡れた鬼”の紋章――<マスター>であることが見て取れた。

 

 私はそんな背後で大きく笑う男に軽く視線を送りながらため息を吐く。

 

 

 「はぁー、別に乗せるのは良いですけど……感謝してるなら声のボリュームを下げてくださいよ」

 

 

 眠気は完全に覚めているが、耳元で大声を出されると気が散ってしょうがない。

 そんな私の言葉に大男は再び笑う。

 

 

 「分かってるって! な、シュリ?」

  

 「……かんぺき」

 

 

 大男は背後に跨がる蒼髪の少女――シュリに話しかけ、彼女は小さく頷いた。

 ……可愛い。

 だけど、この男はほんとに分かっているのだろうか?

 全く理解していなさそうな大男を訝しげに睨む。

 

 

 「あ、変なところ触っても燃やしますから」

 

 「ガッハッハ! “放火姫”に手を出すなんてしねぇーよ、怖いナイト様も付いてるしな」

 

 「……怖い怖い」

 

 

 笑いごとではないんだけど……。

 いや、しかしそれ以上に聞き捨てならない言葉を聞いたような気がする。

 

 (“放火姫”って……もしかして私の事!? 『姫』はともかく『放火』は不名誉すぎるんだけど)

 

 この大男だけがそう呼んでいるなら問題は無いが広まってしまうと困る。特に掲示板なんかでは『二つ名』を付けることがブームらしいし。

 私は先ほどの事を聞き出そう、チラリと横目で大男を見る。

 そして……

 

 

 「ん? あぁ、もしかして俺の名前か? そういえば名乗ってなかったぜ」

 

 

 大男は私の視線に気が付いたのか納得するように鷹揚に頷いた。

 確かに肝心な名前を聞くのを忘れていたが……

 

 

 「名前も聞きたいけど――」

 

 「俺の名前は『ホオズキ』――【狂戦士(ベルセルク)】のホオズキだ! 短い間だがよろしく頼むぜ!」

 

 「……【吸血鬼(ヴァンパイア)】シュリ」

 

 「えっと……【幻獣騎兵】のヴィーレ・ラルテです。こちらこそよろしくお願いします? でいいのかな?」

 

 

 私の言葉に被せるように告げられた自己紹介。

 有無を言わせないような大きな声に思わず私も流れに乗ってしまう。

 

 (よく考えると、名前も知らない相手をアレウスに乗せるなんて不用心すぎな気もするけど)

 

 喉元まで出かかった呟きを飲み込みながら無視する。

 ここまで来てしまえば今更である。

 幸い、ホオズキさんもシュリちゃんも悪い人には見えない。仮に悪人でも、気配や敵意に敏感なアレウスやフェイが反応するはずだ。

 しかし、

 

 

 「何ていうか……ホオズキさんは見た目的にも【狂戦士】は納得だけど、シュリちゃんが【吸血鬼】って意外ですね。見た目的には【魔術師】系統かと思ったんですけど」

 

 

 【吸血鬼】、確かレジェンダリア特有のジョブだったはずである。

 【戦士】系統派生の【血戦士(ブラッド・ファイター)】の上位職。

 レジェンダリアに住む長命種のティアン――吸血鬼が就く独自のジョブだ。分類的にいえば【女戦士】や【女傑】に似た、部族特有のジョブである。

 『ジョブ専用掲示板』で一時期、話題になったのでよく覚えている。

 血液を操り、戦うジョブなので吸血鬼では無い<マスター>にはほとんど使いこなせない、とすぐに忘れられていったはずだ。

 【女戦士】に就こうか迷っていた私が言うのも何ではあるが、かなりのもの好きである。

 

 

 「凄く失礼なことを言われた気がするが……まぁいいか。俺もそうだがシュリの<エンブリオ>は【吸血鬼】に合ってるんだよ。むしろ【魔術師】は相性最悪だぜ」

 

 「……最悪だぜ」

 

 

 私の知っている<エンブリオ>自体数少ない、だけど【吸血鬼】に合うなんて変わった<エンブリオ>だ。

 そんな事を考えながら、アレウスの頭の上で眠り続けるフェイを見る。

 フェイもこれから進化していけば変わった<エンブリオ>になるのだろうか?

 楽しみなような、このままでいて欲しいような複雑な気持ちになる。フェイは進化が特別遅いのでまだまだ先の事だろうけど。

 

 

 「あの、参考までに<エンブリオ>の到達形態って聞いても……」

 

 「別に良いぜ? 確か……えっと、何形態だっけ?」

 

 「……三」

 

 「そうだ! 第三形態だ!」

 

 「自分の<エンブリオ>の形態ぐらい忘れないでよ……」

 

 

 ……しかし改めて聞いてもフェイの進化が遅いのは明確である。

 進化する条件が判明していない以上、考えても仕方の無いことでもあるが。

 そんな時だった、今まで静かだったシュリが話しかけてきた。

 

 

 「……ヴィーレは何しに行く?」

 

 

 “交易都市”<ブルターニュ>に行く目的の事だろうか?

 

 

 「私はレベル上げとお金稼ぎに行くつもりだよ。あとは……天然の温泉やオークションもあるらしいから観光かな?」

 

 

 “交易都市”<ブルターニュ>はその名の通り、さまざな交易品が集まり、そして交わる都市だ。

 

 ――レジェンダリアの『妖精工房』で造られたマジックアイテム。

 ――カルディナから運び込まれた各国の珍しいアイテム。

 ――アルター王国の豊富な回復アイテム。

 

 カルディナには劣るものの、その種類の豊富さはトップレベルである。加えて近くに高レベルのモンスターが出る森も存在するので<マスター> にも人気な都市だ。

 特に私としては熱帯樹林のような気候を利用した天然な温泉、これは絶対に見逃せない。

 ……もちろん一番の目的はレベル上げだが。

 

 

 「丁度良い! それなら俺達とパーティーを組まないか!?」

 

 「いきなり何ですか……」

 

 

 後ろへ振り返りながら説明を求める。

 

 

 「実は俺達の目的も資金稼ぎでな。丁度良いと思ったんだ!」

 

 「……丁度良い」

 

 

 嬉しそうに声を上げるホオズキさんと、しきりに頷くシュリ……可愛い。

 しかし私は【幻獣騎兵】。

 【狂戦士】や【吸血鬼】もパーティーよりも独り(ソロ)を得意とするジョブだ。

 あまりパーティーを組むメリットが見つけられない。

 

 

 「あー、何で? って顔してんな」

 

 

 ……どうやら顔に出ていたようだ。

 

 

 「そうだな……理由を付けるとしたら幾つか有るが。<ブルターニュ>で新しい遺跡が見つかったのは知ってるか?」

 

 「ううん、初耳だけど……」

 

 「その遺跡に結構高レベルのモンスターが出るらしくてな。俺とシュリだけでは不安に思ったわけだ。

  あとは<UBM>らしきモンスターの目撃情報だったり、山奥の村のティアンが突然消えたりときな臭いからだな」

 

 

 その話題は<DIN>のニュースで見た気がする。

 レジェンダリアの山奥、人口が二百人程度のティアンが住んでいた村での惨殺事件。

 一晩のうちに村人であるティアン全員の首が切りとられて死んでいた事件だ。衝撃的だったのでよく覚えている。

 掲示板でも『<マスター>の仕業』、『新たな<UBM>が出現した』等と騒がれている。

 

 確かにそう考えるとパーティーを組んだ方が得策だろう。

 私自身死なないとはいえ、デスペナルティにはなりたくない。

 何より……

 

 (アレウスやアロンが死んでしまう何て、絶対に嫌)

 

 出来るだけ高性能な【ジュエル】を買ったとはいえ、従魔であるアレウス達は死んでしまえば生き返らない。

 その事実が重たく私にのし掛かる。

 

 

 「……そう、ですね。私からもパーティーを組むのをお願いします。安全に越したことはないですから」

 

 「お、おう! 何だないきなり肯定的になって……気持ち悪いな」

 

 「……ゾクゾク」

 

 「蹴り落とされたいんですか?」

 

 

 横目で後ろを睨み付けるように視線を送る。

 

 

 「……ホオズキ」

 

 「何でお前はこんな時だけ俺に降るんだ……まぁ、とりあえずパーティーを組んでくれるってことでいいんだよな?」

 

 

 確かめるような言葉。 

 その確認に私は前方を見つめながら無言で頷く。

 

 

 「なら改めて、【狂戦士】ホオズキと……」

 

 「……【吸血鬼】シュリ、タメ口でいい」

 

 「うん、【幻獣騎兵】ヴィーレ・ラルテ……ヴィーレって呼んで欲しいな」

 

 

 こうして一時的な小パーティーは結成され、

 

 

 『BURURURーー!!』

 

 

 私たちの目的地――“交易都市”<ブルターニュ>への地に足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇“交易都市”<ブルターニュ>

 

 

 

 

 

 「……で、一時的に解散するって聞いたんだけど」

 

 『KIEEE~?』

 

 

 一日働いて貰ったアレウスを【ジュエル】に《送還》し、『冒険者ギルド』を目指して歩いていた私は後ろへ振り返る。

 すると視界に映りこんできたのは、大男と蒼髪の少女。

 まるで何処かの探偵のように物陰に隠れて私をつけてくる、が……

  

 (凄く……凄く目立ってるんだけど) 

 

 身長二メートル程の大男に、ただでさえ目立つ蒼髪の二人だ。道を歩くティアンや<マスター>も二人を避けて歩くので悪目立ちしている。

 頭の上で荒ぶるフェイを撫でながら、再び深いため息を吐く。

 

  

 「それで何か用なの?」

 

 

 話し掛けるとあからさまに動揺するホオズキ。

 そんな彼の脇腹をシュリが小突く。

 

 

 「その、奇遇だな!!」

 

 「……奇遇」

 

 「それでどうしたの?」

 

 

 黙る二人。 

 再びシュリが先程より強く小突く。

 駄目だ、何を言いたいのか全く読み取れない。

 

 

 「その……俺達、<ブルターニュ>に資金稼ぎに来たって言ったよな?」

 

 「……よな?」

 

 

 無言で頷く。

 

 

 「実は今、所持金が心許なくって……な?」

 

 「……な?」

 

 

 嫌な予感がする。

 あの身に纏う雰囲気、私も見覚え……いや、具体的に体験したような。

 

 

 「所持金が無い――0リルしか持ってないんだ!!」

 

 「……悲しみ」

 

 

 この世界に来たばかりの、<Infinite Dendrogram>を始めたばかりの光景がフラッシュバックする。

 

 ――『はぁ……お金を使い切っちゃうなんて何やってんだろう、私は』

 

 そして彼は言う。

 

 

 「その……頼む! お金を貸してくれ!」

 

 「……私だけでも」

 

 

 その言葉に、私はこれまでで一番大きなため息を吐いた。

 

 

 「はぁ……」

 

 『KIEEE?』

 

 「うん、じゃあいこっか? シュリちゃん」

 

 「……一生ついてく」

 

 「え? 俺は? パーティーだよな!?」

 

 

 もしかして……いや、もしかしなくてもパーティーを組む相手を間違えたかもしれない。




アロン/【リソスフィア・ドラゴン】

種族:ドラゴン
クラス:亜竜級以下
備考:ヴィーレの騎獣モンスター第2号。
  地竜種であり、目撃例も少ないレアモンスター。隠密能力と防御能力に特化している要塞亀……の子供
  水陸両用の期待の新人。


  ……良いところの生まれの変異体。
  出番来るよね……?
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