自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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途中から一人称になります。
読みにくかったらすいません。


第5話 メメーレンの遺跡

 □<メメーレンの遺跡> 【幻獣騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 「《フィジカルバーサーク》! ■■■■■■ッ!!」

 

 

 空気を揺るがすような雄叫び。

 思わず耳を塞ぎたくなる咆哮がビリビリと空気を叩き、ホオズキが振るう長剣が唸りを上げる。

 

 【狂戦士】固有のスキル、《フィジカルバーサーク》。

 身体ステータスを爆発的に上げる代償に肉体の制御を失い、他のアクティブスキルも使用不可能になる諸刃の剣だ。

 【騎兵】系統で例えるのなら、上位職に存在する《一騎駆け》。

 もちろんリスクとリターンの差は《一騎駆け》とは比較にならないほど大きい、【狂戦士】だけに許された際物スキルだ。

 

 そんな《フィジカルバーサーク》を発動したホオズキはまるで()のよう。

 悪鬼修羅のように貌を変え、殺気交じりの裂帛を放つ。ホオズキの大きな体も合わさり、【オーガ】より鬼らしい風貌をしている。

 対面してしまえば【ゴブリン】だって逃げ出してしまうだろう。

 

 しかし、彼の前に立ちはだかるモンスターは動じもしない。

 それはモンスターであり、生き物ではない――遺跡などでは定番のモンスター。

 

 ――【ロックゴーレム】

 

 長重の巨拳をもって、侵入者を葬らんと腕を振り下ろす【ロックゴーレム】。

 だがその拳は侵入者をとらえることは無い。

 強固で有名なその体は剛腕で振るわれた長剣によって一瞬で瓦礫(ゴミ)へと変化したのだ。

 だが……まだだ。

 【ロックゴーレム】はまだ止まらない。

 侵入者を追い続ける赤い一つ目の光は消えていない。

 砕けた下半身、無事な上半身だけで侵入者へと手を伸ばし――

 

 

 「……《血の対価(ブラッドディール)》」

 

 

 ボソリと宣言されたスキルと同時に伸びだ『血の針』によって動きを止めた。

 

  

 「ホオズキ……どうせなら一撃で倒してよ。瓦礫が飛んできて怖いんだけど」

 

 

 ヴィーレはアレウスに《騎乗》し、矢を射ながら眉をしかめる。

 放たれた矢は【クリエイト・ストーカーアイ】へ深々と突き刺さり光の塵へと変えていく。

 ドロップアイテムは……【青の涙核】、何に使うんだろ?

 売るかアロンのおやつかな~

 

 

 「……ヴィーレの言う通り。……私の血もタダじゃな(・・・・・・・)()

 

 「フゥーー、悪かったって。だけどこれでも気をつかってるんだぜ?

  こんな狭い通路じゃ、まともに戦えやしねぇ」

 

 

 ヴィーレとシュリの愚痴にホオズキは肩をすくめながら、言い訳を吐く。

 正直、「《フィジカルバーサーク》を使わなければいいんじゃないか?」とも疑問に思うがホオズキの言いたいこともよく分かる。

 

 “交易都市”<ブルターニュ>へ到着してから一日。

 パーティーを組んだ私達は、噂になっている『メメーレンの遺跡』へとレベル上げに来たのだ。

 <ブルターニュ>から少し南方、<アムニール>から見れば南東に位置する地下迷宮型の『メメーレンの遺跡』。

 ここはヴィーレやシュリ、ホオズキにとって相性が悪すぎる場所だった。

 

 地上にポッカリと開いたら穴から入る事が出来る『メメーレンの遺跡』。

 遺跡内は狭い通路が迷路のようにいりくみ、【ロックゴーレム】や【クリエイト・ストーカーアイ】といったエレメンタル系モンスターが徘徊している。

 ある意味、ダンジョンで定番の形。

 ヴィーレが以前潜った<トラーキアの試練>のような自然ダンジョンとは全く違う、人工ダンジョンだった。

 

 

 迷路のようにいりくんだ地下迷宮。

 ――故に、アレウスを全力で駆けることもフェイの《紅炎の炎舞》を使うことも出来ない。

 

 敵は血を持たないエレメンタル系モンスター。 

 ――故に、【吸血鬼】としての真価を発揮することも出来ない。

 

 狭く戦闘に適さない通路。

 ――故に、回避行動すら制限される《フィジカルバーサーク》は命取りとなり、武器である長剣も扱いづらい。

 

 

 まさに百害あって一理無し。

 あえて利点を上げるなら……モンスターのレベルが高い事がぐらいだろう。

 

 

 「うーん、まぁパーティーも組んだばかりだし。でもそれなら何でここをレベル上げに選んだの?」

 

 

 レベル上げだけなら『メメーレンの遺跡』に拘る必要はない。

 カルディナとの境界やレジェンダリアの森の奥地等、強いモンスターが居る場所は少なくない筈だ。

 

 

 「あぁ、それはここが『メメーレンの遺跡』だからだ」

 

 「……『メメーレン(・・・・・)の遺跡』

 

 

 ……どういう意味だろう?

 ヴィーレは意味を理解出来ず首を傾ける。

 

 

 「【装飾王(キング・オブ・オーナメント)】メメーレン。それがここ(デンドロ)で確認されてる最後の【装飾王】なんだとよ」

 

 「……今は空席。就く為の条件も不明」

 

 

 変に勿体ぶるなぁ……でも、伝えたいことは分かった。

 つまり【装飾王】は『ロストジョブ』であり、

 

 

 「ここは【装飾王】の手掛かりが残された工房って事なんだね」

 

 「おう、んでもって【装飾王】が作ったアクセサリーも残ってるかもしれないってわけだ」

 

 「……わけだ」

 

 

 シュリちゃん……可愛い。

 

  

 「でも、そんなアイテム有ったら他の<マスター>に取られてそうだけどね」

 

 「そんなことないぜ? 何でも工房のような部屋はまだ見つかってないらしいしな。それに遺跡に隠し部屋なんてお決まりだろっと!!」

 

 

 ホオズキは器用に返事しながら【ウルフゴーレム】を蹴り飛ばす。

 

 (ゴーレムってかなり重たいはずだけど……<エンブリオ>のステータス補正が高いのかな?)

 

 そんな様子を眺めながらヴィーレも矢を放ち、アレウスがその剛脚で踏み砕く。

 ……ついでにフェイはモンスターがゴーレム等で燃えにくく、地下なので炎を使えないので拗ねて紋章に戻ってしまった。

 

 

 「うーん、隠し部屋か……。《危険察知》くらいしか感知系スキルは持ってないんだよね」

 

 

 チラリとホオズキとシュリちゃんに視線を送る。

 

 

 「俺も持ってねぇよ。生物なら何となく分かるんだが」

 

 「……血が通った物なら」

 

 

 ……駄目だ。

 ホオズキ達はどうか知らないが、ヴィーレは【幻獣騎兵】。元よりダンジョン等、限られた空間での戦闘を考慮しているはずもない。

 そもそも隠し部屋が存在するかも分からないのだ。

 

 

 「完全に手探りで探すしかないね……」

 

 

 【ロックゴーレム】を蹴り砕いたアレウスのレベルアップを告げるウィンドウを確認しながら溜め息を溢す。

 そして次の別れ道へと進もうとする。

 その時だった。

 

 

 『BURUUU?』

 

 「へ? どうしたのアレウス?」

 

 

 大人しかったアレウスが何かに気づいたかのように顔を上げる。

 顔を上げた先にあるのは行き止まりの通路。ヴィーレ達が進もうとした別れ道の片割れだ。

 そして……

 

 

 「ッ! アレウス!?」 

 

 

 ヴィーレの制止の声を聞くことなく、行き止まりの通路へと猛然と駆け走る。

 必死に止まるように指示するが、その速度は遅くなるどころか加速していく。

 

 (アレウス……もしかして反抗期!?)

 

 そんなヴィーレの思いをアレウスが知るよしもない。

 アレウスは壁際まで加速し急転回すると共に、壁へ脚撃を叩きつけた。

 薄暗かった通路に轟音が鳴り響き、崩れた壁が地面に落下し砂ぼこりを上げる。

 

 

 「……なぁ、お前の騎獣どうなってんだ」

 

 「……てんだ」

 

 

 呆然と呟くホオズキとシュリちゃん。

 正直、アレウスが何なのかと聞かれても「【グランド・クリムズンウォーホース】のアレウス」としか答えようがないが……此れだけは言える。

 

 

 「私の……私の自慢の相棒!!」

 

 

 思わずアレウスの首もとへ抱き付く。

 そんなヴィーレの後方、ホオズキ達が呆然と見つめる先には――

 

 

 

 ポッカリと顔を見せた『隠し部屋』が現れていたのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 砂煙が舞う、薄暗い隠し部屋。

 四方は特殊な鉱石の壁に覆われ、出口は蹴り破られた箇所しか見当たらない。

 完全な密室な隠し部屋だ。

 

 そんな隠し部屋へ、アレウスから降りたヴィーレが足を踏み入れる。

 本来ならゴーレム等の侵入者迎撃装置があってもおかしくはないが。

 

 (《危険察知》に……反応はない、かな?)

 

 上げられる上限まで上がりきった《危険察知》に反応がないのだ。罠等がある可能性は低いと見るべきだろう。

 もしかしたら、特殊な鉱石の壁なんかから察するに隠蔽性に長けた仕組みの隠し部屋なのかもしれない。

 だけど……

 

 

 「この隠し部屋ってもしかして――」

 

 「工房……には見えねぇ。資料室ってところだな」

 

 「……本、たくさん」

 

 

 隠し部屋は工房と呼ぶには余りにも不釣り合いな、本棚が立ち並んだ部屋だった。

 幾つもの本棚にぎっしりと本が並び、部屋の隅には何かが入れられているだろう箱形のアイテムボックスが置かれている。

 余り、重要そうなアイテムが置かれているようには見えない。

 

 

 「まぁ、何かないか探してみようぜ? もしかしたら【装飾王】への転職条件が乗った本なんかもあるかもしれないしな」

 

 「……お酒あったらいいな」

 

 

 ゆっくりと奥へと歩き出すホオズキ。 

 その後ろをシュリちゃんがトコトコとついていく。

 ……お酒は駄目だよ?

 

 

 「……私達も探そっか?」

 

 『……BURURU』

 

 

 小さな静寂。

 ヴィーレはアレウスと共に歩き出すのだった。

 

  

 

 

 

 

 そして一時間後。

 探索を終えたヴィーレとホオズキ達は隠し部屋の入り口へと集まっていた。

 各々の手には探索で見つけたらアイテムや本などが抱えられている。

 

 

 「こんなもんか。いまいち何がレアなのかはよく分からなかったから適当だが」

 

 

 ホオズキは軽口を叩きながら見つけてきたアイテムを地面に置いていく。

 そのアイテムは様々だ。

 

 【試作品23:救命のブローチ】や【敏捷の腕輪】、【ジェム-《ホワイト・フィールド》】や【レジェンダリアの部族について】と書かれた本、【勇者の冒険-《終焉》】なんて言う絵本もある。

 

 本当に適当に持ってきたのだろう。

 その他にもネタのようなものまで幾つかある。

 

 (……私も大して変わらないんだけど)

 

 ヴィーレもそんなホオズキに倣って見つけたアイテムを並べていく。

 

 【レシピ】や【鑑定士(アプレイザー)のモノクル】、【契約書】に【清浄のクリスタル】。

 後は……【ヒヒイロカネの(ヤスリ)】等だ。

 

 最初に【鑑定士のモノクル】を見つけたお陰で中々良いものを見つける事が出来た。

 

 

 「ほんとはここに在るもの全部、かっさらうのが一番なんだが……」

 

 

 ボソッと呟くホオズキ。

 そんな様子に、

 

 (もしかしてホオズキは【狂戦士】じゃなくて【盗賊(バンディット)】なんじゃ……)

 

 そんな言葉が喉まで出かけるが口には出さない。

 ……私のやっている事も大して変わらないしね。

 

 

 「でも……どうしよっか? まとめてオークションに出すの?」

 

 

 私の尋ねるような言葉。

 

 

 「あー、俺達で使えそうな者は取っておこうぜ? 使えそうな物以外はオークションに出してしまえばいいだろ?」

 

 「……欲しい物、ある」

 

 

 それもそうである。

 使えそうな物まで売る必要は無い。 

 そして、アレウスを除く三人で見つけたアイテムを分けていく。

 のだが……

 

 

 「ほんとにこれで良かったの?」

 

 

 欲しい物を取りきった蹴り破られた……

 ホオズキの手の内には【ジェム-《ホワイト・フィールド》】や【勇者の冒険-《終焉》】、【契約書】が。

 シュリちゃんの手の内には年代物そうなお酒が抱えられてる。

 このままでは私の取った数が多すぎる。

 

 

 「やっぱり三人で平等に分けた方が――」

 

 

 「いいって、それにこれは俺達が欲しい物を取った結果だ。別にお前に遠慮したわけじゃねぇよ」

 

 「……ねぇよ」

 

 「でも……」

 

 「納得出来ないなら、昨日の宿代と助けてくれた礼だと思ってくれ。それに、ここ(隠し部屋)を見つけたのもお前なんだ。俺達は分け前を貰えるだけでも得してるんだぜ?」

 

 

 私が納得していなそうに見えたのかホオズキが念を押し、その横ではシュリがコクコクとしきりに頷く。

 ホオズキは見た目以上に義理堅いようだ。

 そこまで気にしてるとは思っていなかったので少し驚いた。

 

 

 「それなら私が貰っちゃうけど……」

 

 「ん? 何だよ?」

 

 

 まだあるのか? とでも言いたげなホオズキ。

 私はそんな彼の手に掴まれた絵本に視線を移しながらニヤリと笑う。

 

 

 「もしかして、そういう英雄叙事詩(ヒロイック)が好きなのかな~って」

 

 「……当たり、いつも読んでる」

 

 

 からかうような私の視線とまさかのシュリからの裏切りに、ホオズキは顔を真っ赤に染める。

 

 

 「……悪いか」

 

 「ううん、別に~。ただ男の子だな~って」

 

 「……ヴィーレ、駄目。男の子は複雑……ッフ」

 

 「うっせぇーよっ!! そんな(なご)ましい目で見んな!」

 

 

 怒ったのか大きな足音を立てて隠し部屋から出ていくホオズキ。  

 戦利品をしっかり回収している辺りちゃっかりしている。

 私はそんな後ろ姿を見ながら微笑した。

 

 

 『BURUU~?』  

 

 「あはは、私にも弟がいればあんな感じなのかなって」

 

 

 私――碓氷八雲には、弟はいないがそんな事を考える。

 

 (弟がいれば現実でもこんな風に笑えるのかな?)

 

 そんな事を想い――首を振り、考えるのを止めた。

 仮に居ても、今まで私が積み上げてきたモノを弟が背負うだけ。

 重荷を背負う弟と自由な私、それはきっと相入れない存在だろう。

 

 私は地面に置いたままのアイテムをアイテムボックスにしまい、アレウスに《騎乗》する。

 そして……

 

 

 「おい、早く来い! 置いてっちまうぞ!!」

 

 「……ちまうぞ」

 

 

 弟……かは分からない。

 だけど彼らとは仲良くなれそうだ。

 

 

 「……うん、今いくよ」

 

 

 そんな予感と共に『メメーレンの遺跡』を後にしたのだった。




【鑑定士のモノクル】
【装飾王】メメーレンによって作られたマジックアクセサリーのモノクル。

『装備補正』
なし

『保有スキル』
《鑑定眼》Lv. 5
《透視》Lv. 3

※装備制限:装備枠『頭』の使用。

けっこうレア!!
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