自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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今回の話は重たい、あまり報われない感じです。

デッドエンドが嫌いな方はブラバ推奨。



第9話 天使は泣き、神へ祈る

 □<ローゼン村> 【幻獣騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 それは古びれた教会だった。

 屋根の上には銀の十字架が立てられ、中にはたくさんの長椅子が――というような立派なものではない。

 

 ――物置小屋と言ってもいいほど小さな建物。

 ――草木の生え散らかった庭。

 ――最低限の祈り台。

 

 まるで、この教会だけ何年もの時間が過ぎ去ったかのような光景だ。

 歪な教会。

 私は《危険察知》に反応が無いことを確認し、慎重に足を踏み入れる。

 

 

 「何だぁ、この教会は? やけにボロっちいじゃねぇか。狭いし、何かあるようには見えねぇが……」

 

 「……狭い」

 

 

 同じく足を教会内に入ったホオズキとシュリちゃん。

 二人は各々の印象を呟きながら、協会内を調査し始める……が。

 

 (……本当に何にも無い)

 

 教会自体の広さは六畳もない小さな建物。

 その内装も祈りを捧げる教壇と、明かりを灯していただろう燃え尽きた蝋燭のみ。調べる事が無さすぎるほどに質素な造りになっているからだ。

 これでは人が住むことは不可能だろう。

 ある意味、藁にも縋るような想いでの調査だったがやはり手掛かりは見つるのは難しそうである。

 

 

 「ちっ、手掛かりも何にもねえな。こうなりゃ、山頂からモンスターを狩りつくしながら探すか?」

 

 「……探すか?」

 

 

 苛立ちを隠さず、無茶な提案をするホオズキ。

 そんな様子に私は顔を引きつらせながら苦笑する。

 

 

 「あ、あはは……それは最終手段かな。時間も掛かっちゃうし」

 

 

 ……やろうと想えば出来る。

 約一か月、【魔樹妖花 アドーニア】から貯めこんできたフェイのMPを使えばたやすいだろう。

 

 《幻獣強化》でMPとSP、AGIなどを約二倍にし、五十%性能が上昇した《紅炎の炎舞》にすべてのMPとSPを注ぎ込む。

 加えて、攻撃指定をモンスターのみに絞り込み、

 

 (……あれ? ほんとに出来ちゃうかも。言ったら、実際にやらされそうだから絶対に言わないけど)

 

 仮に【殺戮熾天 アズラーイール】を見つけ出しても、MPが尽きてしまっては戦闘に倒すことは難しい。

 【殺戮熾天 アズラーイール】は悪魔系統、もしくは死霊系統。

 どちらのモンスターとも戦ったことは無いが、死霊系統モンスターには『物理無効』の能力を持った敵も居るらしいからだ。

 

 

 「でもよ、それならどうすんだ。次の犠牲者が出るまで待つのか?

  それに俺たちは戦闘職。調査に役立つスキルなんて持ってねぇぞ」

 

 「……ねぇぞ?」

 

 

 確かにそうだ。

 私が持っている感知系統スキルも、《危険察知》だけ。

 他に使えそうなスキルなど持って……

 

 

 「あれ?」

 

 「あぁ、なんだよ? いい考えでも思いついたのか?」

 

 「ううん、いい考えは無いけど……私、持ってる」

 

 

 私の言葉に首を捻るホオズキとシュリちゃん。

 正直、私も存在を今の今まで忘れていた。だから二人はそれに気が付かなくても当然かもしれない。

 腰ベルトに付けたポーチ型アイテムボックス。

 その中から探すようにして、一つのアイテムを取り出した。

 

 それはつい先日発見したマジックアイテム。

 便利そうなのでオークションに出さず、私が貰っておいた装備。

 

 

 「……これ使うの忘れてた」

 

 

 引きつる頬を抑えながら――【鑑定士のモノクル】を取り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……そんなに怒らないでもいいのに」

 

 

 何故か教会の教壇に正座させられている私。

 その前では二メテル近くの大男が目を吊り上げながら私を睨んでいる。

 ……怖い。

 そんな中、私の頭の上で暇そうに髪の毛を啄ばむフェイ。

 この頃、まともに飛んでいる姿を見たことが無いんだけど……ほんとに駄鳥になっちゃうよ?

 

 

 「あぁ、糞っ。俺もお前に言えた立場じゃねぇが、そんな大切な物忘れてんなよ」

 

 「……駄目な子」

 

 

 棘のある言葉を吐き捨て、荒々しい鼻息を立てるホオズキ。その隣でシュリちゃんが肩を竦める。

 

 (人に言える立場じゃないなら、あんなに長々説教してくれなくても)

 

 思わず喉まで出かかった文句を飲み込みながら立ち上がる。

 言ってしまえば、再び長い文句と愚痴が再開されるのは明らかだ。こうしている間にも【殺戮熾天 アズラーイール】がティアンを殺しているかもしれない、今は少しでも時間が惜しいのだ。

 私は【鑑定士のモノクル】を装備し、埃の付いたスカートを手で払う。

 

 

 「それでその装備はどんな事が出来るんだ? また、一から調査し直しとなると骨だぜ?」

 

 「この【鑑定士のモノクル】にはレベルは低いけど、《鑑定眼》と《透視》がついてる。無いよりはましだと思うよ。

  それにもう見つけたしね」

 

 「あぁ? どういう意味だよ?」

 

 「……意味だよ?」

 

 

 訝しげに送られる視線。

 私はそんな二人に細く笑った。

 

 

 「まだ手掛かりと決まったわけじゃないけど……当たりだったみたい」

 

 

 私は二人に背を向け、背後に設置された教壇へと近寄った。

 そして古びた教壇――を通り過ぎ、壁に掛けられた聖十字を外し、中に隠れたレバーを押し上げる。

 そう、偶然とはいえ見えてしまったのだ。

 スカートに付いた埃を払おうと下を向いた瞬間に、隠された地下通(・・・・・・・)()と地下深くに残されたアイテムボック(・・・・・・・)()を。

 

 地鳴りのような小さな揺れ。

 石と石がすり合わさるような音と共に、古びた教壇がスライドし、それは姿を現した。

 

 ――地下深くへと伸びた螺旋階段。

 

 その様子を唖然と見つめるホオズキとシュリちゃんに私は胸を張ったのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 村外れにポツンと建った寂れた教会。 

 そんな教会に隠された、地下へと伸びた一際古い隠し部屋。

 手掛かりとしては――あった、と言うべきだろう。

 【殺戮熾天 アズラーイール】を追跡するための手掛かりとは成りえないが、ある意味大きな、重大な手掛かり。

 

 

 「ここだな、【殺戮熾天 アズラーイール】が潜伏してたのは。んでもって、何者かと戦闘になったってところが妥当か?」

 

 

 隠し部屋に広がっていたのは、原形が無いほどに戦っただろう戦闘痕だった。

 

 ――融解した鉄の鍋。

 ――何か大きな刃物によって、つけられただろう斬撃痕。

 ――明らかに致死量の出血痕。

 

 戦った敵が同等の力を持つほど強かったのだろう。

 僅かに誰かが生活していたような家具が残っているが、今は姿かたちもない。

 

 

 「……この血」

 

 「あぁ、人間のものに近いが何かおかしい。これは初めて見るな」

 

 

 さすが【吸血鬼】。

 血に関してはかなり詳しくわかるようだ。

 私も負けじと《鑑定眼》を駆使しながら手掛かりを探す。

 『メメーレンの遺跡』とは違い、幾つかの部屋に分かれた広めな隠し部屋である。手掛かりも多少は残っているはずだ。

 私は原形を保っている家具などを漁る。

 そして……

 

 (あれ?)

 

 目についたのは燃えかけの一枚の写真。

 《鑑定眼》を使ってもなんのスキルも特殊性も見られない唯の写真だ。

 戦闘の余波でも受けたのか、三分の一は燃え尽きている。

 だけど私が気になったのは、その写真に写る人物。

 

 

 「……これって――」

 

 「何だ? お前が知ってるやつでもいたのか?」

 

 

 ……ビックリした。

 後ろから覗き込むように回り込んできたホオズキに、悲鳴を漏らしそうになりながら返事を返す。

 

 

 「分からないけど……少しアイラちゃんに似てるなって思っただけだよ」

 

 

 「アイラちゃん」とでも言いたげに首を捻るホオズキ。

 

 (そうだ、ホオズキ達は先に村に行っちゃったから、会ってないんだ)

 

 加えて、村に着いた後は周辺でモンスター狩りをしていたはずだ。村人であるティアンと話していたかも怪しい程だ。

 

 

 「天然温泉がある村に居る女の子だよ。真っ白な服に白髪の少女、私が【殺戮熾天 アズラーイール】の討伐クエストを受けたきっかけかな?」

 

 「……そんな奴いたか?」

 

 

 眉を顰め訝しげな声を出すホオズキに無言で頷く。

 村にいた時間自体は一日も経っていないから会ってないんじゃないだろうか? 私は昨晩と今朝会ったから印象に残ってるけど。

 

 

 「そうか……まぁ、こんな格好だから避けられたのかもな」

 

 

 有り得そう。

 ホオズキの姿は一見すれば鬼のようである。

 ただですら二メテル近い身長なのだ。そんな大男に上から睨まれたら、どんな子供も逃げ出してしまうだろう。

 

 

 「でもどうするの? ここに【殺戮熾天 アズラーイール】がいたのは確かだろうけど――」

 

 「それなら問題ねぇ」

 

 「……ねぇ」

 

 

 ホオズキの後ろの部屋から顔を覗かせたシュリちゃん。

 彼はそんなシュリちゃんを顎で指しながら笑う。

 

 

 「血に関してはシュリの得意分野だ。あの出血から追跡できると思うぜ?」

 

 「……えへん!」

 

 

 胸を張るシュリちゃん。

 

 

 「血を出した死体が無いんだ。死霊系統なら眷属として、悪魔系統なら食うかなんかしてるだろ。

  ……まぁ、ある意味賭けだがな」

 

 

 ……凄い。

 思った以上に【吸血鬼】のスキルは凡庸性が高いようだ。

 だけど……私とホオズキが何もしてない気がするのは気のせいかな?

 

 (……帰ったら好きなもの買ってあげよ)

 

 私はシュリちゃんを撫でながらそんなことを考える。

 

 

 「もうここには用はないだろ? モンスターでも狩りながら帰ろうぜ。

  悪魔系統にしろ死霊系統にしろ動くなら夜だ」

 

 「……お酒タイム」

 

 

 出口へと向かいながら笑う二人。

 <UBM>の調査は順調、うまくいけば明日中には決着がつくだろう。

 前を歩く二人がこれほど頼もしく感じたことは無い。

 

 

 「……お酒は体に良くないよ? レムの実のジュースがあったから後で一緒に飲も?」

 

 「……レム酒、飲む」

 

 

 螺旋階段をのぼりながら、頬を膨らませるシュリちゃんに私は微笑んだのだった。

 

 

 

 

 

 ◇<ローゼン村> 【幻獣騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは『地獄』だった。

 

 それは『人』だった。

 

 それは『殺戮』だった。

 

 

 ――血、首、血、血、足、そして首。

 

 夕焼けに染まった茜色の光が血の湖に反射し、オレンジ色を揺らめかせる。

 

 ――悲鳴は聞こえない。

 

 体に絡みつくような重たい空気が足を鉛に変え、噎せ返るような臭いが胃の中を蹂躙する。

 

 ――赤い霧。地中から噴き出た蒸気が血を含み、鮮明に染めた。

 

 瞳孔の開いた目、まるで自身が死んだことにも気が付いてないような生首が血に沈んでいる。

 

 

 「……な、にこれ?」

 

 

 口から漏れた呟きに返ってくる返事は無く、眼前に四肢が無事な(ティアン)はいない。

 今も葡萄酒のような血が、首のあった断面からドクドクと溢れだし続けている。

 『屍山血河(しざんけっか)』、『阿鼻叫喚』。

 いや、悲鳴は聞こえない。村人全員、皆殺しにされているのだから。

 先日泊まった宿。

 今や壊滅した村を呆然と見つめることしか出来ない私の隣でホオズキが舌打ちする。

 

 

 「糞が……まだ体温が残ってる。まだ殺られて間もないぞ」

 

 「……五分経ってない」

 

 

 物言わぬ骸と成ったモノに手を当て、冷静に――そして今までにないほどの怒気を込めて呟いた。

 そんな横で【吸血鬼】であるシュリちゃんも冷静に告げる。

 

 (何で……どうしてこんな事に)

 

 余りの光景に思考は停止し、声は出ない。

 

 

 「おい、何フリーズしてんだ」

 

 「……ヴィーレ?」

 

 

 声は聴こえる。

 でもそれは私の思考まで届かない。

 

 

 「おい、お――。――!!」

 

 「……――」

 

 

 まるでノイズが走ったかのよう。 

 鼓動だけが何かを知らせるように私の鼓膜へ音を響かせ、雑音のようなノイズを掻き消していく。

 まともにたってい居られない。

 クラリとよろめく足。

 私はそんな足を踏ん張ろうとして――身体が宙に浮いた。

 

 

 「ふざけんな!!」

 

 

 苦しい胸ぐらに鬼も逃げ出すような怒り顔。

 久しく心拍数以外の音が聞こえてきた。

 

 

 「お前は何の為に<UBM>を討伐しようとしてんだ、大切な奴を殺させないためだろ! それならこんなところで固まってんじゃねぇ!

  まだ、助けられる奴まで見殺しにするつもりか!!」

 

 「……っ!」

 

 

 (……そんなわけない。助けたいに決まっている!)

 

 私はホオズキの脛を蹴り、掴んだ胸ぐらを放してもらう。

 

 

 「ありがと。でも、男としてやってることは最低だからね?」

 

 「ハッ! 苦情は後で聞くぜ」

 

 「……ヴィーレ、良かった」

 

 

 同じく心配してくれたシュリちゃんにもお礼を言いつつ考える。

 『血が通った生物』限定で感知能力を有するシュリちゃんにホオズキ。そんな二人がまだ助けられる人がいると言っているのだ。

 つまり……まだ生きている人も少なからずいる。

 

 (そしてアイラちゃんも……)

 

 僅かな、低すぎる賭け。

 むしろ個人的な願望と言っていいものを信じながら私は顔を上げる。

 

 

 「まだ生きている人が――アイラちゃんがいるかもしれない。ホオズキ、その生きている人達の元まで案内して――「……なぁ」――ホオズキ?」

 

 

 今度は先ほどとは打って変わって訝し気な視線を向けてくるホオズキ。

 そんな様子に戸惑い、眉を顰める。

 一瞬の静寂、そして何かを確信するかのような――躊躇うようなそぶりで彼は口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 「……アイラ。そのお前が言う『アイラ』っていうのは本当に人間(・・)か?」

 

 

 質問の意味がよく分からない。

 

 

 「それってどういう意――」

 

 「俺は昨晩は一人でモンスターを狩りに行ってた。知らなくても当然、だがそんな目立つ容姿をした女の子なんて見たことも、ましてや聞いたこともねぇ」

 

 

 それは……たまたま聞かなかっただけじゃないだろうか?

 

 

 「あの地下室で俺は言ったよな? 「お前が知ってるやつでもいたのか」って。あれはな、地下室の血だまりによく似た気配をお前から感じたからだ。

  ヴィーレ、お前が血だまりの主――【殺戮熾天 アズラーイール】にどこかで会ってるんじゃねぇかと想ってな。あまりの馬鹿馬鹿しさにすぐに考えるのを止めたが……」

 

 

 血の気配? 

 私が【殺戮熾天 アズラーイール】と会っていた? そんなはずは無い。

 

 

 「地下の隠し部屋で見つけたあの写真。お前はどう考えているか知らねぇが、一つ言っておくぞ。

  あの村のティアンは一人残らず(・・・・・)死んだんだ。これは専門のジョブに就く奴が調べて<DIN>に載せられた確かな情報だ。

  生き残りはいねぇ。

  生きて村を出れるのは――それこそ殺人犯(<UBM>)ぐらい」

 

 

 ……もう聞きたくない。

 

 

 「なぁ、ヴィーレ。一応聞くが、その『アイラ』ってのに会ったのは何時だ?

  夜か早朝じゃねぇだろうな?」

 

 

 ……嫌だ、嫌だ!

 

 

 「ヴィーレ、その『アイラ』っていうのは本当に人間――」

 

 

 長々と語っていたホオズキの言葉が止まる。

 いや、正確には違う。

 止められたのだ。

 

 

 ――『突如、背後に出現した死神(・・)の大鎌で心臓を刺され、止められた』

 

 

 大量に吐血しながら膝をつくホオズキ。

 その隣でシュリちゃんが「ホオズキっ!」と名前を呼ぶ。

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヴィーレお姉ちゃん?」

 

 

 背後、誰もいなかった場所から聞こえる聞き覚えのある声。

 昨日の晩に、今日の早朝に聞いたばかりの綺麗な声が聞こえてくる。

 

 背後を振り返る。

 

 そこに居たのは、いつもと変わらぬアイラちゃん。

 天使の様に(・・・・・)白い髪、透明感のある紫色の瞳、汚れ一つない真っ白なワンピース。

 だが、同時にいつもと違う点もある。

 それはアイラちゃんの背後。

 

 ――先ほどホオズキを刺した死神。その死神の漆黒のローブが彼女の背後で六枚の天使の翼(・・・・・・・)のようにそれぞれへ伸び、青い炎が燃える頭蓋骨が天使の光輪(・・・・・)とばかりに頭上に浮かぶ。

 

 白の天使。

 黒の死神。

 まるで何一つかみ合わない、正反対な二つが組み合わさったような姿だった。

 

 

 「――ッ!!」

 

 

 同時に私は彼女の元へと走り出す。

 助けようと、救おうと願うように手を伸ばす。

 

 

 「ガハッ、糞っ……ヴィーレ!! 逃げろ! そいつは――」

 

 

 後ろから聞こえてくるホオズキの声。

 その声は途中から耳に入ってこない。

 今度は止められたんじゃない、私が自ら聞くことを拒絶したのだ。

 

 (お願い、お願い、お願い!!)

 

 信じたいと。

 そんなの嫌だと。

 きっと嘘だと。

 手を伸ばす私の目には見えている、『アイラちゃん』だった者の名が。

 それでも、手を伸ばさずにはいられないのだ。

 

 (……どうか神様。お願いだからそれだけは!)

 

 この日、私は初めて神へと祈った(・・・・・・)

 ソレに手が届くまで、後数歩。

 その時だった。

 再び、透き通るような声が頭に響く。

 

 

 「ごめんね、ヴィーレお姉ちゃん?」

 

 

 彼女は泣きながら宣言する。

 

 

 『《アズラーイ-ル》』

 

 

 そして【殺戮熾天 アズラーイール】は片手に持つ十字架を模したナイフで――自身の首を掻っ(・・・・・・・)切ったのだった(・・・・・・・)

 

 

 

 

【致死ダメージ】

【蘇生可能時間経過】

【デスペナルティ:ログイン制限24h】

 

 

 

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