自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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……無理でした。
ホオズキと“ジャガーノート”の戦闘シーン書けんわw


第11話 街での会話と殺しあい

 ■<ブルターニュ>

 

 

 

 

 

 人影一人すら見かけない<ブルターニュ>の街。

 レジェンダリアとカルディナを結ぶ“交易都市”では有り得ない――目を疑うような状況だ。

 もぬけの殻となった街並み。

 そんな街の中央――大樹の中身をくり貫いたような外見をした『オークション会場』の屋上に一人の男が立っていた。

 レジェンダリアでは珍しくもない種族、エルフの青年だ。

 燕尾服を着こなし、後ろに纏められた金髪が不思議と落ち着いたような雰囲気を滲ませるエルフの青年。

 

 そんな容姿だからだろうか?

 人影一人見られない街並みに佇む一人の青年、それはどこか違和感を生み出している。

 しかし違和感を生み出しているのは彼自身、当の本人がその事に気付くはずも無い。

 エルフの青年は空っぽの街に目を細め、口端を上げ『クツクツ』と嗤う。

 

 

 「どうかしたんすか? そんなニヤニヤして気持ち悪いっすよ?」

 

 「気持ち悪いとは失礼ですね……まぁ、嬉しくてニヤニヤしてしまっているのは事実ですが」

 

 

 肩を竦めながら嗤うエルフの青年。

 突如掛けられた声にも驚かず一点を見つめる彼の背後で、一人の人物がもたつきながらゆっくりと彼の居る屋上へと登り上がった。

 屋上へと登るのが疲れたのか、その人物は大きく息を吐きながら肩を伸ばす。

 

 

 「……それより“ジャガーノート”は無事見つけられましたか?」

 

 「ばっちりっす!! レベルの高いモンスターがうようよ居るところに籠ってたんで苦労したっすよ~。

  でも、流石オレっちの<エンブリオ>っすね! この程度ならお茶の子さいさいっす! 

  まぁ、<ブルターニュ>に着いてすぐにどっかいっちゃったすけど……連れてきた方が良かったっすか?」

 

 

 エルフの青年の疑問に、謎の人物は軽い調子で返事を返す。

 しかし、その喋る姿は……異様だ。

 誰一人居ない街に立つエルフの青年以上に異様と違和感の塊と言っても間違いではないだろう。

 

 

 ――長く立派な白髭と帽子に隠れた短い白髪。

 

 ――首には探検家らしい大きなマフラーに背にはバックアップ型のアイテムボックス。

 

 ――そしてその老人の頭の上には……左手に“器を握る手”の紋章を持つ青い(・・・・・・・)()が乗っている。

 

 

 これほど違和感があることは無い。

 <マスター>の紋章を持つ、喋る鳥だ。

 エルフの青年は、冒険家風の老人の上で喋る鳥に視線を移しながら口を開く。

 

 

 「いえ、別に構いませんよ。それに彼女の居場所は把握していますから」

 

 

 そう言いながら街へと視線を戻し――塵となって崩れる建物を見た。

 

 

 「アッハッハッハ、分かりやすいっすね! ジャガーさんの戦闘を見たのは初めてっすけど……こう見ると凄いっす」

 

 「私達の中で唯一の戦闘職ですから。それに何でも、リアルで中国拳法を齧っていたそうです」

 

 「……怖すぎるっす。もしかして殴られたら一撃でデスペナルティになるん――」

 

 

 言葉を言い終える直前。

 何かが吹っ飛び、再び大きな建物が瓦礫と化した。

 

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……そう言えば、何でそんな恰好してるんすか? そんなモテたいかの様な格好して……今は『セトゥー』さんでしたっけ?」

 

 

 目の前で起きた惨劇から、目を反らすように投げかけられた疑問。

 その疑問にエルフの青年――【高位鑑定士】兼、【競売人】であるセトゥーは首を傾げ、何かに気が付いたかのように大きく頷いた。

 

 

 「そうでした、長い間この姿になっていたので……」

 

 

 おそらく第三者が聞いても、首を傾げるだけの意味の分からない言葉。

 そんな意味の分からない言葉をセトゥーは呟き……

 

 

 「……《二十の怪人》」

 

 

 ――自身の顔面を引(・・・・・・・)ん剝いた(・・・・)

 

 

 同時にエルフ特有の長耳はゴミのように崩れ落ちる。

 後ろに纏められていた金髪、女性が羨むような白い肌はもう姿形もない。

 そこには燕尾服を身に纏う、全くの別人が立っていた。

 

 

 「あァー、この姿になるのも一か月ぶりだナァ。ずっと変装(・・)していると前の姿を忘れてしまうワ」

 

 

 紳士のような丁寧な口調ではなく、片言交じりの言葉。

 彼は懐かしそうに自身の姿を見渡し……“白い仮面”の紋章が刻まれている左手の甲を空に掲げる。

 

 

 「いつ見ても凄いっすね! オレっちの腹話術なんかと比べ物にならない演技力っす」

 

 

 楽しそうに声を荒げる青い鳥。

 

 

 「慣れだヨ、慣レ。何なら爺さんも【役者(アクター)】でも取ってみたらいいんじゃねぇカ? 結構使えるスキルも多いゼ?」

 

 「嫌っすよ! オレっちは全部のジョブを【探索者(シーカー)】系統で埋めるって決めてるっす!!」

 

 「はぁーン。そのアバターと言イ、変わった爺さんだナ」

 

 「腰に白鳥の模型を着けている変態に言われたくないっす! あ、でもさっきより、そっちの姿の方が似合ってるっすよ?」

 

 

 互いに笑いながら軽口を叩きあう一人と一匹。

 笑い声が響かせながら、オークション会場の屋上で<ブルターニュ>の街の向こうを眺める。

 そして笑い声が止んだ時だった。

 青い鳥の<マスター>――クラン<クレイジーパレード>内で“爺さん”と呼ばれる鳥が何かを思い出したかのように羽をパタパタと動かした。

 

 

 「そういえば、これってどう収拾つけるんすか?」

 

 

 【炬心岳胎 タロース・コア】を呼び起こした張本人は他人事のように、隣の仲間へと話しかけた。

 

 

 「しらねーヨ。他の<マスター>が倒すか、『超級職』のティアンが最後は何とかしてくれるんじゃねぇかナ?」

 

 

 同じく、【嵐竜王 ドラグハリケーン】を呼び込んだ白鳥の男は適当に返事を返す。

 

 

 「……適当っすね~」

 

 「お前もナ」

 

 

 <ブルターニュ>の街を阿鼻叫喚に落とし込んだ元凶の一人と一匹。

 そんな二人は興味が無いように会話を交わす。

 彼らは――<クレイジーパレード>は『遊戯派』の集団。

 

 ――暇だから。

 

 ――イベントを待つのは退屈だから。

 

 そんなしょうもない理由から、自分たちで楽しいことをしようと行動する愉快犯。

 故に彼らは、すでにこの現状について興味はない。

 楽しいことを起こし、後は事態が収束するのを待つだけなのだから。

 

 

 「よし!」

 

 「ン? どうしたんだよ、爺さン?」

 

 「暇なんで、<ブルターニュ>に隠されているお宝でも貰って来るっす!!」

 

 

 暇だから。

 そんな理由で、火事場泥棒をすると宣言する仲間に男は興味なさげに相槌を返した。

 

 

 「【ドラグハリケーン】がたどり着くまでに終わらして来いヨ。あれが来てからが本番だからナ」

 

 「分かったっす!」

 

 

 元気よく返事する青い鳥。

 そして……

 

 

 「行くっすよ! 《聖杯探索》!」

 

 

 紡がれたスキル名と共に、青い鳥である<マスター>を乗せていた老人型<エンブリオ>が掻き消えた。

 そんな仲間の姿を傍目に、白鳥の男はため息を吐く。

 再び、独りだけになった屋上。

 その時を待つ(・・・・・・)彼は暇そうに<ブルターニュ>の街へと視線を移す。

 

 

 「まァ、偶にはこんなのも悪くないかナ」

 

 

 おそらく、もう一人の仲間である“ジャガーノート”が戦っている戦場へと、視線を落としたのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 「■■■■■■ァアッ!!」

 

 「ニャッハッハッハッハ!!」

 

 

 互いの拳が、振り抜く脚がぶつかり合い空気を揺らす。

 外れた鬼の剛腕は地面を大きく抉り取る。

 振るわれた猫の脚は弾丸のように飛び散る瓦礫を塵へと変える。

 

 ――鬼の剛腕、受け流す。

 

 ――唸りを上げる猫の尾、蹴り弾く。

 

 ――隙を狙う血の剣山、回避。

 

 ――超振動する猫の手、迎撃。

 

 それはまさに一撃必殺の殺し合い。

 猫が三次元的に壁を疾走し、鬼がその拳で瓦礫に変える。

 見る者が見れば、<UBM>との戦闘が起こったのではないかと幻視するような戦闘跡。

 辺りをなりふり構わず破壊しながら二人の<マスター>が猛っていた。

 

 

 片方は猫の女、“ジャガーノート”

 

 ――猫を模した黄金の篭手と脚甲。

 

 ――彫刻を施された黄金の鈴を耳に付け、黄金の装甲を纏う尻尾が空気を鳴らす。

 

 ――獣のような――猫のような動きで辺りを駆ける。

 

 

 局所的に全身に纏う黄金の装備、それこそが彼女の<エンブリオ>であり“ジャガーノート”たらしめる所以。

 ――Type:アームズ、【狂震猫装 バステト】。

 両手、両足。そして長い猫の尾から響く超振動が辺りの建物を破壊し、殴ったところを塵へと変えていく。

 モノを破壊することに長けた<エンブリオ>。

 では、この【狂震猫装 バステト】で生物を殴ればどうなるか?

 もちろん答えは一つである。

 

 

 「ニャハハ、さっさとくたばるニャ!!」

 

 

 振るわれた長い猫の尾が、空気を切りながらホオズキの右腕を打ち抜き……

 

 

 「チッ! てめぇが死ねや!!」

 

 

 血が噴き出し【右腕骨折】と【出血】が表示された右腕。

 超振動、超音波を用いた内部からの人体破壊。

 しかしそんなズタボロと成った右腕で、ホオズキは“ジャガーノート”へと殴り掛かる。

 AGIの差だろうか?

 ユルリと躱された右腕が空気を叩く。

 そして……

 

 

 「ほんとにおみゃーは人間かニャ? まるでモンスターと戦っている気分だニャ」

 

 「てめぇこそピョンピョンと変に動きやがって。獣か何かと戦っている感覚だぜ」

 

 

 血煙を上げなが(・・・・・・・)ら再生する右腕(・・・・・・・)を傍目に距離を取る。

 ホオズキをモンスターのようだと言う“ジャガーノート”。

 ……その言葉は的を得ている。

 正しく、今のホオズキは『人』ではない。

 

 

 ――額から生え伸びる、長さの違う二本の鬼角。

 

 ――体を渦巻くように広がっていく、黒の紋様。

 

 ――そして血煙を上げながら再生を続けるホオズキの巨体。

 

 

 その姿はまさに『鬼』であり、種族も『人』から『鬼』へと変化している。

 ――Type:メイデンwithアームズ、【到達鬼姫 シュテンドウジ】。

 それこそが彼の、ホオズキの<エンブリオ>。

 

 【狂戦士】のSTRとAGIに加え、鬼特有の筋力と再生力。

 それを言い表すならまさに『鬼』、モンスターと言う名が相応しいだろう。

 そんなホオズキに“ジャガーノート”はケラケラと嗤い、話しかけた。

 

 

 「しかし、おみゃーの<エンブリオ>は変なもんだニャ―。自信を強化する<エンブリオ>は腐るほど見てきたが、おみゃーのようなのは初めてニャ」

 

 

 可笑しそうに肩を竦めながら嗤う“ジャガーノート”。

 そんな彼女をホオズキは、人を殺せそうな目で睨みつける。

 

 

 「……世間話に付き合ってる暇はねぇんだよ。お喋りしたいなら、さっさと死んでリアルで好きなだけ話して来い」

 

 「ニャ―、せっかちな奴はモテないニャ? それに戦闘をこのまま続けてもいいのかニャ?」

 

 「……何が言いたい」

 

 

 “ジャガーノート”へと向け、踏み出したホオズキ。

 踏み出した足を止めながら、視線を目の前の猫女へと向ける。

 そんな視線に彼女はお道化た調子で口を開く。

 

 

 「おみゃーも分かってるニャ? このままだとおみゃーがみゃーに勝てない事は」

 

 「……」

 

 

 黙りこむホオズキ。

 そんな様子を見て“ジャガーノート”は言葉を続ける。

 

 

 「おみゃーとみゃーには決定的な差があるニャー、それはAGIの差。おみゃーの<エンブリオ>とジョブはおそらくSTRとAGIに特化したものニャ?。だけどみゃーの<エンブリオ>とジョブはAGI特化型だニャ。

  少なくともAGIは二倍の差……それにみゃーにはおみゃーの音が聞こえてるニャ」

 

 

 “ジャガーノート”が言っていることは正しい、全てが正しい。

 

 ホオズキの【到達鬼姫 シュテンドウジ】はAGIとHP、そしてSTRに伸びたものであり、【狂戦士】もそれに合った補正が掛かっている。

 

 それに対して“ジャガーノート”の【狂震猫装 バステト】はAGI特化型。

 ジョブも【軽戦士(フェンサー)】系統で埋められた、典型的なAGI型。

 攻撃手段を振動波のみに絞り込んでいる上、彼女のセンススキルである相手の心音を聞き取る能力から、敵の攻撃のタイミングを読んでいる。

 

 ホオズキの攻撃が当たれば、一撃でデスペナルティに陥る。

 しかしその攻撃も当たらなければ意味がない。

 

 

 「実際におみゃーの攻撃はみゃーに一撃も届いてないニャ。それに対して……」

 

 

 “ジャガーノート”は自身の四肢を纏う【狂震猫装 バステト】を眺めて笑う。

 黄金の武具である【狂震猫装 バステト】。

 しかし、輝いているはずの<エンブリオ>は何かに濡れて、その色を失っている。赤褐色へと変化した<エンブリオ>。

 

 ――そう、『血』だ。

 

 彼女の身体は返り血に濡れ、ホオズキの身体は傷を受けては再生を繰り返しているのだ。

 それが指し示す意味は一つ。

 この戦いが一方的なものであることを示していた。

 

 

 「みゃーの心は寛大ニャ。もしおみゃーが敗けを認めるなら、みゃーが一撃でぶっ殺してやるニャ?

  おみゃーはデスペナルティが早く終わる。

  みゃーはおみゃーをぶっ殺して、気分もスッキリ。

 

  どうニャ? これでみんなハッピーニャー?」

 

 

 提案にも成らない、馬鹿げた戯れ言。

 仮に誰であろうとその提案を受け入れるものは居ないだろう。

 だが……

 

 

 「フハッ、ガッハッハッハッハ!!」

 

 

 その言葉を聞き、ホオズキは大声で笑い声を上げる。

 そして、不可解そうに首を捻る“ジャガーノート”に向け、ニヤリと笑った。

 

 

 「乗ったぞ、その提案」

 

 「ニャ?」

 

 

 彼女自信も乗ってくるとは思っていなかったのか、小さく驚きの声が漏れる。

 そんな彼女にホオズキは宣言する。

 

 

 「次の一撃でてめぇのどってっ腹に大穴をあける。

  てめぇは死んで、リアルでたくさんお喋りが出来る。

  俺はてめぇをぶっ殺して、気分もスッキリ。

 

  ……ってことだろ?」

 

 

 その言葉の意味を理解しきれず、ポカンと呆ける“ジャガーノート”。

 そして次の瞬間、その顔を猛獣のものへと変化された。

 

 

 「……黙って死ね、《共振四重奏》」

 

 「ハッ、おいおい! 語尾忘れてるぜ、糞猫!!

  《血の代償》――《巨人の隻腕》。《フィジカルバーサーク》、《凝血》!」

 

 

 狼煙は血煙。

 攻撃は互いに一撃必殺。

 今、二人の<マスター>が敵を殺さんともぬけの街を駆け出したのだった。

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