自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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すいません、この回で戦闘に入りたかったけど予想以上に長くなった。
あと、今回は捏造設定多いです。
つぎ、戦闘回です。



第2話 騎兵ギルド

 □<アムニール> 【騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 噴水に座り込んでからどれだけの時間が経っただろう。

 活気があった霊都には外から戻ってきた<マスター>が集まり始め、騒がしくなってきた。

 そんな中、ヴィーレは何かに気が付いたように声をあげた。 

 

 

 「あっ、そう言えば……」

 

 

 思い出したのは食べ歩きの最中に聞いた情報。

 その中にはジョブに関する事だけではなく、ジョブに就いてからの情報もあったはずだ。

 確か『冒険者ギルド』と『専門ギルド』。

 どんなジョブでもクエストという名の依頼を斡旋してもらえるのが、冒険者ギルド。

 ジョブに対応したジョブクエストを斡旋してもらう事が出来るのが、専門ギルドだったはずだ。

 私のジョブは【騎兵】。つまり『騎兵ギルド』もしくはそれに似た名前のギルドが存在するはずだ。

 騎兵ギルドに行けば、ある程度は騎兵としての手解きを受ける事が出来るだろう。

 

 

 「うん、そうと決まれば早速情報収集しなきゃ!」

 

 

 噴水近くの草花をむしり食べていたアレウスを【ジュエル】に戻し、再び大通りへと歩き出す。

 やるべきことが分かれば事は早い。

 街を歩くティアンに手当たり次第に話を聞いていくだけだ。

 リアルでは日本人以外と話す機会も少なくは無かった。

 例え、エルフだろうと獣人だろうと巨人、小人に関係なく話を聞いていくのだが……

 

 

 「騎兵ギルド? そんなギルド聞いたこともないな」

 

 「傭兵ギルドなら知ってるわよ? ……貴方、美人だし【書士】に就けばきっと傭兵ギルドの受付嬢になれるわ!」

 

 「従魔師ギルドならしってるチュー。 レジェンダリアでも五本の指に入る大きなギルド……って、おーい! 僕の指は四本しかないっチュー!」

 

 

 二十人近いティアンに話を聞いたが、騎兵ギルドの情報は一つとして出てこない。

 ここまで来ると騎兵ギルドの存在自体が怪しくなってくる。

 

 

 「もしかしてレジェンダリアには騎兵ギルドはないのかな。この大樹海ではとても騎兵には乗れそうにも無いし……」

 

 

 もしくは傭兵ギルドに統合されているのかもしれない。

 いや、その可能性はかなり高い。

 このまま何も情報が見つからなければ傭兵ギルドにいって見よう。そう思い始めた時だった。

 

 

 「……騎兵ギルド? それならオレが知ってるぜ?」

 

 

 話しかけてきたのは私の傍に居た年老いた人間のティアン。

 大通りで聞き込みをしていたのが聞こえていたのだろう。

 

 

 「本当ですか!?」

 

 「あ、ああ。だが止めておいた方が良い。レジェンダリアでの騎兵ギルドは廃れちまってるからな。

  【騎兵】に就いただけなら傭兵ギルドに行くか、それこそアルター王国やカルディナの方に行った方がいいぜ?」

 

 

 男は吐き捨てるように一息に話す。

 それはまるで体験してきたかのように悲しみと怒りが混じったもの言いだった。

 

 

 「お嬢ちゃんも【騎兵】に就いたばかりなら、今すぐ転職するか傭兵ギルドに行った方がいい。……最も【騎兵】に仕事が回って来るかも怪しいがな」

 

 

 懸念は当たっていた。

 やはり森の中では【騎兵】としての力を十二分に発揮できないのかもしれない。森の中を駆け抜けることが出来るモンスターか、空を飛べるモンスターが居れば別なのかもしれないが。

 しかし私もおいそれと簡単に言葉通り受け止める事は出来ない。

 私は自由なのだ。

 

 『やるべきことは自身で決める』

 『自分の思った事を素直に受け止め楽しむ』

 

 これが二度目の私の人生で心に決めた事なのだから。

 

 

 「その、ありがとうございます。 でも私もそんな簡単に何でも諦める事はしたくないので……騎兵ギルドの場所を教えてもらえませんか?」

 

 

 その言葉に男は初めて私の目を見た。

 目に映る男の目は濁ったような黄色。その中には戸惑いと苦痛が渦巻いている。

 時間にして1秒未満。体感では5分にも感じる長い時が終わり、男はしかめっ面で私に向かって顎でしゃくると大通りを歩き出した。

 

 (案内してくれる……ってことでいいのかな?)

 

 何も言わないということはその通りなのだろう。

 違ったらまた情報収集からやり直せば済む話だ。

 私は人込みの中に消えていく男の背中を追いかけ始めたのだった。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 「着いたぞ。ここがレジェンダリアにおける騎兵系統ジョブが集まるギルド、騎兵ギルドだ」

 

 「……ここがですか?」

 

 

 それを見た私は唖然としていた。

 おそらく呆然と口を開け、眼を見開いていただろう。

 男が立ち止まった目の前にあったのは掘っ立て小屋のような建物。

 世界樹を囲む形で円状に存在する<アムニール>。その最も外周付近に騎兵ギルドは建っていた。

 木で出来た木造建築。騎兵ギルドとしての敷地は野球場近くあるものの所々が朽ち果て、錆びれ始めていた。

 おそらくは従魔の世話や治療をする場所もあったのだろうが、今はもう形しか存在していない。

 だが汚れた看板に見え隠れした『騎兵ギルド』の文字が紛れもなくそこが目的地であることを示していた。

 

 

 「どうだ、<マスター>のお嬢ちゃん。これが今の騎兵ギルドの現状さ。ひと昔前はレジェンダリアの中でもトップレベルと言われるほどだったギルドも今ではこのざまだ」

 

 「……もしかして、貴方は【騎兵】のジョブに就いていたんですか?」

 

 「ああ、もう引退しちまったがな」

 

 

 何処となく哀愁を漂わせる男。

 彼は私の言葉に頷くと懐かしそうに騎兵ギルドへと入っていく。

 私もその背中を追いかける。

 

 

 「貴方は……」

 

 「ファフザー。【大騎兵(グレイト・ライダー)】ファイザー(ファフザー)、それが俺の名前だ」

 

 「私は碓氷……【騎兵】のヴィーレ・ラルテです」

 

 

 【大騎兵】、私の【騎兵】とはまた別のジョブだろうか。

 どちらにしろ私の先達であることには変わりない。

 

 

 「ファフザーさんはどうして騎兵ギルドがこうなったの知っているんですか? 私は<マスター>で今日ここに来たばかりなのでよくわからなくって」

 

 

 私の疑問にファフザーはゆっくり頷いた。

 彼は比較的新しそうな椅子に座ると再び椅子へ顎でしゃくる。私が対面の椅子に座ると彼は思い出すように語り始めた。

 

 

 「ヴィーレはこのレジェンダリアで比較的多いジョブは何か分かるか?」

 

 

 分からない。

 ジョブクリスタルへ向かう途中で道に迷うレベルなのだ。私は首を横に振る。

 

 

 「そうだな……初めから話した方が良いな。このレジェンダリアで多いジョブは大きく分けて三つある。

 

  一つは、マジックアイテムの作成を専門とする【魔道具職人】系統ジョブ。

  レジェンダリアは宙に漂う魔力が膨大で材料も豊富にある。たまにアクシデントサークルなんてものも発生するが魔道具の作成に適した場所だ。事実、レジェンダリアから輸出されるマジックアイテムは質が高い。

 

  二つ目は、妖精魔法を使うことが出来るようになる【妖精術師】系統ジョブ。

  レジェンダリアで暮らす人はこの【妖精術師】に適性があることが多い。だがやっぱり最も影響が大きいのがレジェンダリアを纏める【妖精女王(ティターニア)】の存在だろうな。

 

  そして三つ目は、従魔を使役する【従魔師】系統ジョブだ」

 

 「え? 【従魔師】が人気なら【騎兵】も多いんじゃないんですか?」

 

 「……いいから話を最後まで聞け」

 

 

 しまった。つい思った事が口に出てしまった。

 口を塞ぐ私を一瞥するとファフザーは話を再開し始めた。

 

 

 「【従魔師】が多いのには訳がある。

  一つは適正に関係なくある程度強くなれる点。

  もう一つはレジェンダリアには特殊なモンスターが他国よりも多い点だ。

 

  そして【騎兵】が廃れた理由はまた別にある」

 

 

 やけに勿体つける。

 ファフザーはアイテムボックスから酒を取り出しながら、吐き出すように語り始めた。

 

 

 「ひと昔前、オレが生まれる前の話だから詳しくは知らん。

  だがその時代には【騎兵】はそれなりに人気のジョブだった。だがそれも一つの事件を機に唐突に収束していく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは最も騎兵ギルドが栄えた時代。

 500を超えた騎兵系統ジョブのティアンが騎兵ギルドを出入りし、日々レジェンダリアの治安を守っていた。

 そしてそれを纏めるのは騎兵として天才と言われた男。

 そのティアンのレベルは400越え。

 “修羅の国”と名高い、天地の武芸者と並ぶ一握りの強者。単独で何体もの<UBM>を打ち倒し、その名を轟かせる騎兵だった。

 『騎兵ギルドなしの平穏なし』

 当時のレジェンダリアでは騎兵ギルドは最も信頼と強者が集まったギルドだったのだ。

 

 

 だがその平穏も一つの通報によって終わりを迎える。

 それは一体の<UBM>の出現。後に『神話級<UBM>』と呼ばれるユニーク・ボス・モンスター。

 

 

 名を【樹霧浸食 アームンディム】

 

 

 自身の周囲を大樹海に造り替え、特殊な霧を操る巨鹿のモンスター。

 半径1キロメテルにも渡る樹林結界、その中に入り込んだものはモンスターだろうとティアンだろうと関係ない。脱出不可能な霧の中から出ることは叶わず、体から木を生やし死んでいく。

 

 騎兵ギルドに所属する騎兵は何もできずに死んでいく。

 対抗できるだろう【妖精女王】はレジェンダリアから離れることはできない。迫りくる【樹霧浸食 アームンディム】の脅威を前にただ死を待つだけかのように思われた。

 

 だが【樹霧浸食 アームンディム】はレジェンダリアに辿り着くことなく打ち倒される事となる。

 決死の特攻を決めた、一人の天才騎兵の男によって。

 かくして脅威は消え去ったが騎兵ギルドに残された傷跡は甚大なものだった。

 

 ――熟練の騎兵の死。

 ―—残された低レベルの【騎兵】。

 ―—そして天才と謡われた一人の騎兵の喪失。

 

 名声のみを残し、騎兵ギルドは衰退の一歩を歩んでいったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファフザーの話が終わると同時に静寂が降りる。

 私は言葉を返せないでいた。

 ただ一つ言えるのは、騎兵ギルドのおかげで被害は抑えられ、その天才騎兵は紛れもない英雄だったであろうということのみ。

 聞いているだけでも悲しみとやるせなさがこみ上げてくる。

 

 

 「これが騎兵ギルドが廃れた理由だ。……悪い事は言わない、騎兵ギルドはやめて傭兵ギルドを探せ」

 

 

 騎兵ギルドに居てもいいことなど一つもない。

 傭兵ギルドに行けば少なくともクエストは受けられるだろう。

 加えて<マスター>が増えても現状は好転しないかもしれない、だが……

 

 

 「……私は騎兵ギルドで働こうと思います」

 

 「なんでそう頑ななんだ。お前たち<マスター>にとって何のうまみもないだろう」

 

 

 その通りだ。

 きっと【騎兵】に就く<マスター>も沢山いる。そのほとんどは傭兵ギルドでクエストを受けるのだろう。

 だけど私にも損得で割り切れないものもある。

 

 

 「だって悔しいじゃないですか、人々を救うために死んでいったのにその存在が忘れられていくっていうは。

  それに私……」

 

 

 訝し気な顔をするファフザーに向け、挑戦的な笑みを浮かべる。

 

 

 「私、結構負けず嫌いなので」

 

 「フッ、ガッハッハッハッハ!!」

 

 

 その言葉にファフザーは大声をあげて笑いだす。

 ……少し不服だ。こんなに騎兵ギルドの為に頑張ろうと言っているのに。

 頬を膨らませファフザーを睨みつける。

 

 

 「ヒッヒッヒィ……すまねぇ。久しぶりに笑わせてもらったぜ」

 

 「……別にいいですけど。それでどうすれば騎兵ギルドに所属できるんですか? ギルドがあるってことは少なくとも人はいるんですよね?」

 

 「いや、別に所属云々は関係ない。どこでクエストを受けるかどうかだ。

  いま騎兵ギルドで働く奴は<マスター>であるお前ひとりと他に三人いる」

 

 

 やけに詳しい。

 いや、元は騎兵ギルドに所属していたらしいのでこの程度は知っていて当然なのだろうか?

 しかし私の他には三人しかいないとは……。

 その三人を探し出して手ほどきを受けながら、『ジョブクエスト』を受ける。道のりはかなり険しそうだ。

 

 

 「知っているなら紹介してくださいよ。実は私、【騎兵】に就いただけでまだ何にも分かって無いので手ほどきを受けたくてギルドを探してたんですから」

 

 「お前……さっきまでの威勢は何処から出てきたんだ」

 

 

 ファフザーが呆れた目つきで私を見る。

 だって、しょうがないじゃないか。リアルでは勉強と茶道、楽器ばかりやってきて喧嘩すらしたことないのだから。

 むしろいきなり戦える<マスター>はそれこそ天才ぐらいだろう。

 

 

 「そんな目でこっちを見るな。

  だが運がいいな、お前は目的の一つをすでにクリアしているぜ?」

 

 「ふぇっ?」

 

 

 驚きの声をあげる私にニヤニヤと笑う目の前の厳つい初老の男。

 ファフザーは今日一番の声を出しながら、改めて自分の名を名乗る。

 

 

 「オレは【大騎兵】のファフザー、騎兵ギルドに所属する一人で一応ギルド長ってやつだ」

 

 「で、でもさっきまで引退したって」

 

 「ああ、あれは嘘だ。何分うちを馬鹿にした野郎も寄って来るもんでな」

 

 

 ファフザーは誤魔化すように苦笑いで目を逸らす。

 なんと言うか……どこか納得できない気持ちがある。

 だけどこれで、とりあえずの目途はたちそうだ。

 そんな椅子に座る私の目の前に傷だらけの厳つい右手が伸びてくる。

 

 

 「改めてようこそ、騎兵ギルドへ。そして期待してるぜ? <マスター>のお嬢ちゃん」

 

 「……お嬢ちゃんって呼ばないでください。私はこれでも15歳です」

 

 「……ガキだな」

 

 「すぐにその口閉じさせて、感謝の言葉だけを言うようにさせてやるから」

 

 

 私はその右手をしっかりと握り返したのだった。

 

 

 

 

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