自由への飛翔 作:ドドブランゴ亜種
戦闘シーンはムズイわ
□【騎神】ヴィーレ・ラルテ
『KA、KAKKAKAKAKKAKAKAKAAAAAA!!』
「《一騎当神》……《ザ・ライダー・デディケイテッド・ブロー》!!」
月光が照らし出す丘の上。
向かい合う二人……一人と一体が互いに咆哮を上げる。
それは『決意』――この一撃をもって眼前の敵を必ず打ち倒すという決意であり、何よりその強さに対する『敬意』を込められた咆哮だった。
不気味なほど静かな夜の森にその咆哮は驚くほど木霊する。
そして……
――『ドンッ!!』
ヴィーレの姿は掻き消えた。
その場に残ったのはアレウスが踏み込んだ跡であるクレーターのみ。
アレウスの黒色の体毛は夜の闇に溶け、ヴィーレの構えた強弓が宣言されたスキルによって光輝き、一条の流星を生み出した。
『電光石火』、『疾風怒濤』。
その光景を言い現すのならこれを除いて他にない。
まさに一瞬。
まさに一条。
ヴィーレは強弓へと収束する光を流星の尾のように残し、
ヴィーレにとっての『必殺技』、それは至極単純にして明解な攻撃である。
そう……
(この山ごとでもいいから……最大出力の一射で【アズラーイール】ごと消し飛ばす!!)
そうだ、コアが二つあり、同時に砕かなければ倒せないというのならば――
答えは誰にでも思いつくようなシンプルなものだった。
《ザ・ライダー・デディケイテッド・ブロー》と《一騎当神》による一撃、それはまさに『必殺技』と言っても良いほどの威力を秘めている。
――《一騎当神》、それは【騎神】が騎乗する騎獣の『全ステータスを十倍化』するパッシブスキル。
――《ザ・ライダー・デディケイテッド・ブロー》、それは『AGI×走った距離分だけ攻撃能力を
アレウスのAGIは約四万、【殺戮熾天 アズラーイール】までの距離はおよそ百メテル。
しかし、ヴィーレの攻撃の場合は【純穿蛇竜の強弓・ネイティブ】を用いたものだ。
【オリハルコンの鋭矢】の攻撃力を20程度であり、弓故に実質的に駆ける距離はその半分……五十メテルといったところだろう。
だが……十分だ。
それだけでも放たれた矢は超々音速に達し、【アズライール】を消し飛ばすだろう。
まさに『必殺技』。
ヴィーレにとってこれ以上の攻撃技は他に無い。
――『ボキリッ』
そして……それだけの威力を誇る技に
「……ッ~~!!」
音を立てた左腕に思わず目尻に涙を貯め、その痛みに苦痛の声を漏らした。
真っすぐに前を見据えながらもチラリと視界の端――自身のステータスを覗き見る。
――【左腕骨折】。
そして……ヴィーレは安堵した。
(……右腕じゃなくて良かった)
左腕に食い込むほど雁字搦めに巻き付けたアレウスの手綱。
ガクガクと震えながら、弓を握り構える右腕。
そして……ヴィーレは小さな口で矢を噛みしめ、引き絞りながら息を漏らす。
それは当たり前の結果だった。
そもそも《ザ・ライダー・デディケイテッド・ブロー》の元となった技は【騎神】である師匠の――
そんなものをただの人族であるヴィーレが使いこなせるわけが無い。
その事をヴィーレも分かっているから武器を槍ではなく、出来るだけ走る距離を減らすことが出来る弓を使っているのだから。
しかし……《一騎当神》によるデメリット――アレウスのステータス十倍化に比例する、反動の強さが大きすぎた。
現にこうして、ヴィーレのENDは一瞬で『0』になってしまっているのだから。
――『ボキリッ』
左胸が激しく痛みを訴える。
――『ボキリッ』
アレウスにしがみ付いていた右足がダラリと垂れ下がった。
だが……止まることは出来ない。
彼女が求めるのはどこまでも駆けていくことが出来る力であり、大切な者を救うことが出来る力なのだから。
だが、逆にヴィーレの疾走を止めようとする者もいる。
『KA、KAKAKAKAAA!!』
カチカチと歯を打ち鳴らす音。
同時にその号令に共食いを繰り返していた『眷属』達が静まりかえり……一斉にヴィーレに向けて動き出した。
その様子はまさに『ゾンビの大波』。
躓き、転けたゾンビの上を違うゾンビが駆け走る。
【レイス】は真っ先に宙を滑り、【ビーストゾンビ】が疾走する。
これを波と言わずに何と言うのだろう。
大波となった眷属の群れはそのままアレウスに《騎乗》するヴィーレを呑み込み。
『BURURUR!!』
大きな嘶きと共に吹き飛んだ。
一歩踏み込むごとに近付いていた六体のゾンビが踏み砕かれ、吹き飛ばされ地面の血痕とかす。
宙を滑っていた【レイス】がフェイの《紅炎の炎舞》に溶けるように消えた。
分かっていたことだ。
『ゾンビの大波』ごときでは【騎神】であるヴィーレを止めることは叶わない。
……だが、その速度を抑えることは。ヴィーレにダメージを与える事は出来るだろう。
ゾンビが砕かれ、血飛沫が宙を舞う。
そしてそのバラバラとなった腐った体はフェイの炎に消し炭となった、が。
「痛っ!」
ヴィーレは突如発生した肩の痛みに眉を潜めた。
その痛みに釣られるように肩へと視線を移し……小さな孔が開いているのを見た。
視界の端では【出血】が発生し、血が止まることなく流れ出る。
それを引き起こしたのは他でもない。
――『血』
炎で燃え尽くす事が出来なかったほんの一滴のゾンビの血。
超音速でヴィーレに血液がまるで弾丸のごとくぶつかり、小さな孔を穿ったのだ。
フェイの炎の壁も完璧ではない。
アレウスはその馬鎧で弾くことが出来るがヴィーレを守るのはその衣服である防具だけだ。
肩に、脚に小さな孔が穿たれていく。
そして……
「ッ!! ――アレウス!」
激しく警鐘を打ち鳴らす《危険察知》。
すでに指示を出すことも出来ないヴィーレのただの叫び。
しかし……それにアレウスは答えた。
『HIHIIIIIIIN!!』
――跳躍。
そして……
するとワンテンポ遅れ、先ほどまで駆けていた地面を一線の青白い炎がゾンビごと焼き尽くした。
その光景にヴィーレは唇を噛みしめ、息を飲んだ。
――ゾンビの大波の壁。
――その向こう側から眷属の犠牲をいとわず放射される怨念の炎。
――そして『伝説級』のステータスをもつ死神に即死の領域。
これは……
(これは……届かない)
凄まじい威力を秘めた【オリハルコンの鋭矢】、だがこのままではおそらく黒い死神に塞がれる。
怨念の炎をもって、その高いステータスと鋭利なデスサイズで放つ一射を弾き躱すだろう。
……確証はない。
だが、勘が。
経験から培われた本能がそう叫んだ気がした。
だから、ヴィーレは覚悟を決める。
「……行こう、アレウス、フェイ!!」
頭の中で鳴りやまぬ警鐘。
それに従うように――
――ヴィーレはアレウスの背から体を宙に躍らせた。
「《送還》――アレウス」
同時にアレウスの姿が光の粒となりヴィーレの左手の【ジュエル】へと吸い込まれていく。
アレウスの飛んだ距離がかなり高かったのだろうか?
自由落下する体が風を切り、バキバキと音を鳴らす。
下を見る。
真下に見えたのは自身を飲み込もうと、ピザの斜塔のように高く上ってくるゾンビの塔。
そして、落下するヴィーレを狙おうと放射された何本もの炎の槍。
(……随分と警戒してくれてるみたいだね)
ヴィーレはその光景に微かに笑い。
「計算通り……かな?」
口へと咥えた矢を打ち放った。
超々音速で風を切る【オリハルコンの鋭矢】。
放たれた矢はゾンビの身体を容易に貫き通し、
『KAKAKKKK!?』
大規模な爆発を巻き起こしたのだった。
◇
――『水蒸気爆発』
火山などでも起こる化学現象である。
水が非常に温度の高い物質と接触することで気化され発生する爆発現象の事だ。
現象としては、『熱したフライパンに水滴を落とすと激しくはじけ飛ぶ』といった現象と同じである。
水蒸気となった水の体積は、液体時の1700倍。
それが連鎖的におこる現象が火山などで起こる水蒸気爆発。
では
その答えを想像するのは容易である。
ここは天然温泉で有名な場所であり、地下からは暖められた水蒸気が吹き上がるほどの地域。
そう、放たれた矢が引き起こす現象――水蒸気爆発だ。
◆【殺戮熾天 アズラーイール】
「……なにが……起こったの?」
耳をもつんざくような轟音。
世界が音を立て、崩壊し始めたのではないかと勘違いするほどの地揺れ。
凄まじい衝撃がそのか弱い少女の身体を揺らす中、『イスラ』であった少女はその場に立ちすくんでいた。
その真っ白なワンピース姿には汚れ一つない。
雪のように白い素肌にもかすり傷一つ見当たらない。
それもそのはずだ。
――『肉の壁』
主人を護るようにその字のごとく、肉壁となったゾンビの群れに護られていたのだから。
マグマの熱量さえも黒い死神の怨念の炎壁によって防がれた。
大規模な水蒸気爆発、それさえも【殺戮熾天 アズラーイール】を殺すことは出来ない。
余熱によって消し炭となったゾンビの壁がボロボロと崩れ落ちていく。
そして……
「ヴィーレお姉ちゃん?」
一寸先も見えないほどモクモクと巻き上がる白煙。
その奥に一人の人影を見た。
――その人物は真紅のポニーテールを揺らし、大きな馬に騎乗していた。
――辺りの地面でグツグツと音を立てる真っ赤なマグマ、それよりも赤く輝く炎を纏う弓を構えていた。
――その人物の衣装――その腰には
――「――FormⅡ 【
その人物は――ヴィーレはハッキリとそう呟いた。
そんなヴィーレの腰には先ほどまでは無かった防具が装備されていた。
腰から下へと流れる、不死鳥の炎帯。
それはまるでマントのように、スカートのように後ろへと風になびく。
不死鳥の尾が如く、炎帯は先が五つに分かれ、炎のように揺らめいていた。
そして……その炎帯はまるで生き物のように辺りのマグマからその熱を吸収し、赤く輝く。
『KAKAKAAAA!!』
【アズラーイール】を護る黒い死神が勢いよくその大鎌を振るう。
勢いよく振るわれた大鎌は突風を巻き起こし、視界を塞ぐ白い煙を切り払った。
煙が晴れるその先に居るのはヴィーレ。
「――【我は不死鳥の騎士為り】」
スキルの宣言。
同時に炎帯から五つの炎が巻き起こり、ヴィーレの身体を包み込む。
――それ様子はまるで真紅の炎の騎士。
そして、
「【フルチャージ】、《ザ・ライダー・デディケイテッド・ブロー》!!」
二つ目の【オリハルコンの鋭矢】を構え、疾走する。
その疾走を妨げる者は――あふれかえるほどいた眷属はいない。
不死鳥の炎帯から構える強弓へと炎が収束し、オリハルコンの鋭矢が真紅に輝いた。
『KAKAKAKAAAAA!!』
それを妨ぐべく、黒い死神が怨念の炎がを走らせる。
夜になり、格段に強化された青白い炎。
今なら簡単にヴィーレを燃やし尽くすことが出来るだろう。
その炎はヴィーレに向かって怨念の炎は放射され……
『KAKA……KA……?』
放たれた青白い炎は
驚きに固まる黒い死神。
しかし……その瞬間にもヴィーレは超音速で【アズラーイール】までの距離を疾走する。
すでに黒い死神との距離は数メテル。
互いに攻撃は必中の間合い。
強い意志を帯びた真紅の目が、頭蓋骨の奥で揺らめく青い眼光が交差する。
真っ先に動いたのは黒い死神だった。
『KAKA!!』
その大鎌でヴィーレの首を斬り落とそうと振り払う。
ヴィーレ自身のステータスは亜音速。
鉄すらも紙のように切り裂く大鎌ならなんの抵抗もなく、その首を切り落とすことが出来る……はずだった。
先に動いた黒い死神――その後から
「私の勝ちだね……」
ニヤリと不敵に笑うヴィーレ。
その手には一つの結晶――【浄化のクリスタル】が握られていた。
黒い死神――【燃怨喰霊 ズー・ルー】の動力は怨念。
怨念を燃やし炎で攻撃し、怨念を消費し眷属を生成する。
だが、その怨念が無ければどうにもならない。
一瞬でその身にため込んだ怨念は払いのけられ……残りの怨念も【浄化のクリスタル】に吸収されていく。
そして……
「貴方は強かったよ……あと、アイラちゃんを護っていてくれてありがとう」
出てきた言葉はなぜか感謝の言葉だった。
「【クリムズン・レンジゼロ】」
そして頭蓋へと――青く光るコアへとむけてその矢を引き放ったのだった。
◇
「……ありがとう、ヴィーレお姉ちゃん」
自身を護っていた死神が消えた様子を見ていた少女は、私に向かってそう微笑んだ。
その声は少し震えていた。
頬には涙を流した跡が残っていた。
「……」
言葉は出てこなかった。
私はそんな彼女へ【花冠咲結 アドーニア】のスキルを使おうとし……首をふる彼女に動きを止めた。
「大丈夫だよ? お別れはもういっぱいしたもんね?」
彼女はそう言い、泣きそうな笑顔で笑った。
そして……彼女は自分の心臓に向け、十字架を模したナイフを突き立てる。
即死領域である《アズラーイール》は発動しない。
それはコアが二つあることで成立するスキル、もう一つのコアを持っていた死神が消えた以上、『自身の死を代償』に発動する《アズラーイール》は【殺戮熾天 アズラーイール】の死でもあるからだ。
――真っ赤な血が零れ落ちた。
「……」
言葉は出なかった。
ただ、私には痛みが和らぐように……彼女が天国へ行けるように強く、強く抱きしめることしかできなかった。
抱きしめる小さな身体。
その温もりがだんだんと消えていく。
「……アイラね、ヴィーレお姉ちゃんと会った日。探してたの、私を殺してくれる人を」
無言で頷く。
「アイラ、ヴィーレお姉ちゃんを見たとき思ったんだ。なんだかキレイで、キラキラしてて、それでいて太陽みたいな人」
抱きしめる身体。
その体が光の粒となって消えていく。
――止まれ、止まれ、止まれ!!
そう願いながら必死に彼女を抱きしめた。
「……アイラ、出会ったのがヴィーレお姉ちゃんで良かったよ? 辛かった時もあったけど……今は幸せ、そう思えるの。 だから、ね?」
アイラちゃんは震える声で私に言った。
「笑って、ヴィーレお姉ちゃん?」
その声を聞いたとき、すでに抱きしめていたアイラちゃんの身体は消え失せていた。
そして……私の胸には、消えたアイラちゃんの代わりに一本の短剣が抱きしめられていた。
【<UBM>【殺戮熾天 アズラーイール】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【ヴィーレ・ラルテ】がMVPに選出されました】
【【ヴィーレ・ラルテ】にMVP特典【万死慈聖 アズラーイール】を贈与します】
頭の中に鳴り響く無機質なアナウンス。
それはアイラちゃんがもう居ないことを突きつけようとするようで、その形見を強調している様だった。
――【万死慈聖 アズラーイール】
真っ黒な鞘に納められた、十字架を模した純白の短剣。
スティレットと呼ばれる刃のない短剣だった。
それは人を傷つけるための短剣ではない。
瀕死の敵にとどめを刺すため……苦しませないようにと作られた短剣。
『慈悲の一撃を与える』と言う意味を持ったものだった。
私はその短剣を胸に……笑った。
彼女は笑って消えていったから。
彼女の最後のお願いだから。
「……私も……アイラちゃんに出会えてよかったよ?」
私はもう居ない彼女へと涙を流しながら笑顔で笑った。
月明かりのせいだろうか? 胸に抱いた短剣が少し輝いた気がした。
――あの夜と同じ、月が綺麗な夜だった。
【炎怪廻鳥 フェニックス】
第Ⅲ形態:【The Flame Belt of the Phoenix】(不死鳥の炎帯)
形態:腰から後ろへとたなびくマントのような帯。
先は五つに分かれ、炎のように揺らめいている。
スキル:【火炎増畜】Lv.1→2
特殊な炎も吸収可能に!!
MP&SPを×5して蓄積する。
【我は不死鳥の騎士為り】/アクティブスキル
MP&SP、100に付き好きなステータスを+1(込めたステータス÷10秒間)する。
【フルチャージ】:全ステータスに均等に割り振る。
【The Flame Belt of the Phoenix】形態しか使用不可。
《紅炎の炎舞》と《蒼炎の再生》も使えなくなる。
・《クリムズン・レンジゼロ》:【騎神】で作り出したスキル。
【弓騎兵】を元にヴィーレが作り出したスキル。
《騎乗》状態であり、敵に近づくほどその威力が上がる。(弓を装備時のみ)