自由への飛翔 作:ドドブランゴ亜種
【山岳装甲 タロース・コア】→【山岳隻甲 タロース・コア】
2018/05/14、修正ー
・二つの特典武具の詳細について
□<ブルターニュ> 【騎神】ヴィーレ・ラルテ
――眼を覚ます。
「……知らない天井だ」
真っ先に目に飛び込んできたのは天井に張られた木材の木目、そして視界を半分程隠すように顔に覆い被さった炎の羽根だった。
炎の羽根の持ち主は私の顔の上で、気持ちに良さそうに寝息を立てている。
私は呑気に眠る生き物――フェイを引き剥がしながら胸の上へと移動させた。
(……ここは何処だろう? そもそも何で、確かアイラちゃんとの戦闘を終えて……)
そこからの記憶が無い。
きっと【殺戮熾天 アズラーイール】との戦闘で全力を使い果たし、あのまま寝てしまったのだ。
そして……誰かが私を此処まで運んでくれた。
「フェイ……なわけ無いよね?」
そんなことを呟きながら、私は規則正しく寝息を立てるフェイの頭を優しく撫でる。
昨晩の戦闘が余程堪えたのだろう。
泥のように眠るフェイは全く起きる気配が無い。
――寝心地の良いベットを手で触る。
恐らくレジェンダリア特有の【魔法ベッド】から身体を起こし、鈍い痛みを訴える身体に口元を歪ませた。
そして、小さな傷痕が残る白い肌が露になっている腕を大きく伸ばす。
「……やけにスッキリした顔してるじゃねえか。やりたいことはやりきったみてぇだな」
「……みてぇだな?」
そんな私の隣から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
私は、声に釣られるように隣に視線を移し……
「ホオズキも居たんだね」
「おう……つっても、俺も運び込まれた側だけどな。起きたのも今さっきだぜ?」
「……イビキが煩さかった、騒音公害」
「ガッハッハッハ!!」と笑いながら言葉を返すホオズキ。
そんなホオズキの隣ではシュリちゃんが恨みがましそうに彼を横目で睨み付けていた。
余程寝不足なのか半眼の下にはうっすらと隈が出来ている。
「……~」
シュリちゃんは小さく欠伸を漏らす。
そんな様子を見て、私は首を傾けた。
「シュリちゃん、大丈夫? なんだか眠そうだけど……」
「……だいじょばない。……寝る」
無愛想な言葉。
……かわいい。
シュリちゃんは瞼を擦りながら眠そうに……ホオズキが眠る【魔法ベッド】の中に潜っていったのだった。
(……何でホオズキのベッド)
そんな疑問が浮かび上がるが――すぐに頭を降り、疑問を振り払った。
確かシュリちゃんはホオズキの家族……? だったはずだ。私は一人っ子なので分からないが兄妹とはこういったものなのかもしれない。
それはさておき……
「何でホオズキはそんなボロボロになってるの?」
ベッドから上半身を起こし、『ウィンドウ』を開いて何か操作をしているだろうホオズキの姿を改めてみる。
私とパーティーを組んでいる間、怪我をしている姿を見たこともないホオズキ。
しかし、今はその真逆。
――傷が絶えない大きな体。
――左腕は肩から丸ごと失っている。
重体、そう言っても良いような怪我を負っていた。
ホオズキは私の声を聞くと『ウィンドウ』から視線を外し、ニヤリと笑った。
「そりゃぁ――強敵と戦って勝ったからに決まってんだろ?」
「……強敵?」
その言葉のや意味が分からず疑問系で返事を返す。
そして……
「……わぁっ!?」
突然、私に放られた一つのアイテム。
――それは、片腕だけの大きな手甲。
――巨人のような巨大な岩の隻腕の武具。
――無骨な岩の装甲に黒の溶岩が表面をコーティングし、手の甲には小さなオレンジ色の球体が輝いていた。
「……えっと、見ていいの?」
「おう!」
確認を取るようにホオズキを一瞥し、【鑑定士のモノクル】をアイテムボックスから装備する。
そして、その異様な武具を《鑑定眼》で鑑定し……
「……えっ?」
私はその武具のステータスを見て、大きく目を見開いた。
【山岳隻甲 タロース・コア】
<
山岳を纏い、全てを荒野に返す岩の巨象の概念を具現化した逸話の武具。
岩石と土を操り、自身の防具へと作り変える力と共に、装備者の筋力を強化する。
※譲渡・売却不可アイテム
※装備レベル制限なし
・装備補正
STR+150%
魔法耐性+20%
・装備スキル
《山岳装甲》:
片腕に装備した【山岳隻甲 タロース・コア】を中心として岩石と土の全身鎧を構成する。
強度と防御力は使用する岩石に依存。
岩石と土がある限り、何度でも再生可能。
《鮮血循環》:
《山岳装甲》によって構成した全身鎧内へ自身の鮮血を循環させ、HPを回復させる。
HPが1秒当たり2回復。
――『特典武具』
私もよく知るその表記に驚きながら、その武具名を眺める。
【山岳隻甲 タロース・コア】。
(……たしか、『メメーレンの遺跡』近くに出現した山のような<UBM>だったはず)
そのことを思い出し、改めてその武具を見る。
<UBM>銘の武具。
そしてその武具をホオズキが持っている。
そこから導き出される答えは一つだけだ。
「【炬心岳胎 タロース・コア】……倒したんだね!」
「はっ! 俺を誰だと思ってやがる。お前が倒せるんだ、俺が倒せないわけがねぇだろ」
ホオズキは嬉しそうに、誇らしそうに胸を張り笑う。
そして……
「……なんてな。途中で力を貸してくれたルノーがいなければ負けてただろうぜ。ギリギリでの相打ち、薄氷上の勝利ってやつだ」
彼は肩を竦めながら苦笑した。
ルノー……誰かは知らないが、きっと壮絶な戦いを繰り広げたのだろう。
そしてその上でのギリギリの勝利。
やはり<UBM>はモンスターの中でも特別――苦戦の上で運が良くなければ勝てないほどの強大な力を持っているようだ。
私もどこか嬉しそうなホオズキの様子に思わず、頬が上がるのを感じていた。
「それよりお前の方はどうなんだ? ――まぁ、聞かなくても分かる気もするが……あの少女と、【殺戮熾天 アズラーイール】と戦ったんだろ?」
和やかな雰囲気がこそばゆくなったのか、私へと話題をふるホオズキ。
それはどこか、照れ臭そうな小さな子供のようにも見える。
私はそんなホオズキの言葉に小さく頷く。
そして……
「うん、【アズラーイール】と戦ったよ? アイラちゃんと戦って……そして勝った」
自分に言い聞かせるように呟く。
自然と低くなる声、私は未だに消えない胸の痛みに目を伏せた。
空っぽになった細い手は自然とアイテムボックスからそれを求め、意図せず強く――大事に握りしめていた。
禍々しい黒の鞘に納められた純白のスティレット――【万死慈聖 アズラーイール】
私は改めてその『特典武具』へと、アイラちゃんの形見へと視線を落とす。
【万死慈聖 アズラーイール】
<
魂と怨念、再生と誓約を操る殺戮天使の概念を具現化した伝説の宝具。
生と死の境界を曖昧にする能力を装備者に与える。
※譲渡・売却不可アイテム
※装備レベル制限なし
・装備補正
STR+30%
攻撃力+15
・装備スキル
《怨念燃炎》:
周囲に漂う怨念を青白い怨念の炎へと変換し、操ることが出来る。
※使用条件:【万死慈聖 アズラーイール】が黒い鞘に納められている時のみ使用可能。
《
【万死慈聖 アズラーイール】に『込めたMP分のダメージ』を敵に与える。
どんな敵でも等しく殺すことが出来る。
※使用条件:【万死慈聖 アズラーイール】が黒い鞘から抜かれている時のみ使用可能。
月が完全に視認できる夜の時のみ使用可能。
敵が少女である場合は使用不可能。
《???》 ※未開放スキル
――?
【花冠咲結 アドーニア】とは全く違うスキルばかりだ。
ホオズキの【山岳隻甲 タロース・コア】のようなステータス補正はほとんど無く、全てのスキルに使用条件が課せられている。
(……一つ一つの能力が強すぎるから、こんな条件が課せられてる。……のかな?)
どのスキルも凄まじい。
怨念を炎に変換するのもフェイの《火炎増畜》と合わせてしまえば強すぎる。
《万神殺し》などMPを貯めこめてしまえる私から見れば使い勝手が良すぎてしまう。
使用条件が無ければ、【スライム】でも、【レイス】でも。
それこそ強大かつ、特殊なスキルを持つ<UBM>すら簡単に倒せてしまうだろう。
……そう考えると、ある意味納得の『使用条件』と言えた。
だが……
「《???》って……何これ?」
《鑑定眼》のレベル不足でもない。
スキル自体が見れないなど師匠からも、掲示板でも聞いたことが無い。
『未開放』っとあることから、いつかは使えるようにはなると思うが……
「あぁ? どうかしたのかよ?」
【万死慈聖 アズラーイール】を片手に固まる私。
そんな私の様子にホオズキが訝し気に声を掛けてくる。
「……ううん、何でもないよ。あ、私も見せてもらったしホオズキも見たいかな?」
私は大切に握り込むスティレットから視線を外し、ホオズキの方へと差し出そうとし
「いや、見せなくても良いぜ。……俺がそれに触れるのは何だか分不相応な気がするしな」
「そう、かな……ホオズキがいいなら別に良いけど」
私は首を横に振るホオズキに首を傾げながら、手に持つ【万死慈聖 アズラーイール】を再びアイテムボックスへと収納する。
そして……
「……あっ!!」
「何だ? いきなり大声上げて」
「私、アレウスをまだ《送還》してない! アレウスも傷だらけのはずだし、早く治療してあげなきゃ!!」
収納と同時にチラリッと視界に入った右手の【ジュエル】を見て、アレウスの事を思い出した。
【殺戮熾天 アズラーイール】との戦闘による負傷。
途中、【HP回復ポーション】などでアレウスの傷を回復したものの、それも所詮は応急処置。
完全な治療には程遠い。
仮に回復しきらず残っていた傷で、アレウスが治せない傷を負ってしまったら……
『KWEEEE~~?』
「ごめんね、ちょっと大人しくしててね」
動きだした私の胸から転げ落ちたフェイが目を覚まし、私は急いでアレウスを探しにベッドから立ち上がろうと足を地面へとつける。
何処に居るかは分からないが、そう遠くにはいないはず。
朝焼けの陽光が差し込み始めた窓を視界に、外へと続いているだろう扉へと足を進め始めた。
そして、
「キミの心配は無用だよ。あの黒馬は無事さ」
扉を開き現れた一人の騎士に動きを止めた。
「ルノー、お前も居たのか」
「当り前さ、大きなキミをあの少女がここまで運べるはずないだろ? キミをここまで運んだのは他でもないボクさ」
「おう、ほんとにお前には頭が上がらねぇよ」
軽い言葉を交わす二人。
この人物が先ほどまでホオズキが言っていた『ルノー』であることは間違いないだろう。
(……いや、今はそんな事より)
「……あの、ルノーさん?」
「ルノーでいいよ、お嬢さん」
「あ、はい。それよりさっきのアレウスが無事って……」
言い淀む私。
私の言いたいことを察したのかルノーは甲冑をガチャガチャ鳴らしながら、納得したように手を打った。
「ああ、アレウス……だったか。あの馬なら既に治療を終えてそこで寝ているよ」
ルノーはそう言いながら窓を指さす。
私はそれに釣られるように窓を覗き込み……包帯でぐるぐる巻きとなり、外で身体を休めるアレウスの姿を確認した。
治療は雑……なような気がしないこともないが、彼の言う通りアレウスはどうやら無事らしい。
思わず「ホッ」っと安堵する私。
そんな私の様子を見ながらルノーは私に話し始める。
「キミを運んできた二人組……男と女の<マスター>が馬の治療もしてくれたらしい。
キミを運び終えて直ぐに「少し他用がある」って言って出て行ったが、また会ったらキミからも礼を言っておくといい」
(……男女の<マスター>? そんな知り合い私に居たっけ?)
私が知っているのは『騎兵ギルド』の<マスター>、そして【裁縫職人】であるレズさんとホオズキ。あとは猫の獣人である名前も知らぬ<マスター>だけだ。
男女の<マスター>なんて思い当たる節が無い。
「あぁ、それとキミに伝言を預かっているよ」
「伝言……ですか?」
思い出したかのように話し出すルノー。
私は黙ってその伝言に耳を傾ける。
「『キミの雄姿はまるで本の……英雄のようだった。馬の治療はその礼だ。また、どこかで共に戦う機会を楽しみに待っている』……だそうだ」
「……」
「……何ていうか、少しストーカーみたいな伝言だな」
……なんで
そんな事言われると、伝言の主がストーカーにしか思えなくなってくるではないか。
少しホオズキを睨む私。
その視線に気が付いたホオズキは吹けていない口笛を吹く。
そんな私達の様子に苦笑するルノー。
ルノーは笑い終えると咳払いして私達へと視線を向けた。
「それはさておき……これからキミ達はどうするつもりだい?」
「あ? どうするって何がだよ?」
……相変わらず口が悪いホオズキ。
しかし考えとしては私も同じだ。
使い切った矢を補充し、オークションが終わるまで適当にブラブラする。
それぐらいしか考えていないのだが……
「ん? ああ、そうか。キミ達は一晩ぐっすり眠っていたんだったね」
少し考えるそぶりを見せたルノー。
しかしすぐに納得したかのように顔を上げて私達を見た。
甲冑の奥から揺らめくアメジスト色の瞳が私達を突き刺した。
「色々と<マスター>も抵抗したんだが……どうやら他の<UBM>とは格が違うらしくってね、ついさっき到着したんだよ」
そう言いながらルノーはゆっくりと歩き出す。
向かう先はアレウスが身体を休めている方向の窓――とは真反対側の窓のカーテン。
「今は何とか抑え込んでるようだけど、もう全滅寸前でね。残っている<マスター>も諦める始末さ」
ルノーは丁寧にカーテンを捲る。
そして、その窓の外の景色が私の目に飛び込んできた。
「鑑定に特化した<マスター>が測定したらしいが、その強さは『伝説級』以上らしい」
視界に映る景色。
それは街ではない。
“交易都市”と謳われた<ブルターニュ>の街並みではない。
――『瓦礫の街』
そう表現するのが当てはまるような光景がそこには広がっていた。
まだ中央にそびえたつオークション会場には到達していない。
しかしそれより向こう側は三本の竜巻が辺りを切り刻み、<マスター>らしき人影を光の粒へと変えていく。
「――推定、『
ルノーは再び私達へと振り返り、困ったように肩を竦めた。
「アレ、まだまだぴんぴんしてるんだよね」
瓦礫となった<ブルターニュ>の街に『竜王』の咆哮が鳴り響いたのだった。
【山岳隻甲 タロース・コア】
<
山岳を纏い、全てを荒野に返す岩の巨象の概念を具現化した逸話の武具。
岩石と土を操り、自身の防具へと作り変える力と共に、装備者の筋力を強化する。
形状;片腕の手甲
・装備補正 STR+150%、魔法耐性+20%
・装備スキル
《山岳装甲》:
片腕に装備した【山岳隻甲 タロース・コア】を中心として岩石と土の全身鎧を構成する。
強度と防御力は使用する岩石に依存。
岩石と土がある限り、何度でも再生可能。
《鮮血循環》:
《山岳装甲》によって構成した全身鎧内へ自身の鮮血を循環させ、HPを回復させる。
HPが1秒当たり2回復。
所有者:ホオズキ
備考:巨人の腕のような大型な隻腕の手甲。
溶岩が冷え固まったかのような黒い色をしており、その甲にはオレンジ色の球体が輝いている。
ステータス補正も高めなバランスの良い『特典武具』。
【万死慈聖 アズラーイール】
<
魂と怨念、再生と誓約を操る殺戮天使の概念を具現化した伝説の宝具。
聖と死の境界を曖昧にする能力を装備者に与える。
形状;短剣(スティレット)
・装備補正 STR+30%、攻撃力+15
・装備スキル
《怨念燃炎》:
周囲に漂う怨念を青白い怨念の炎へと変換し、操ることが出来る。
※使用条件:【万死慈聖 アズラーイール】が黒い鞘に納められている時のみ使用可能。
《万神殺し》:
【万死慈聖 アズラーイール】に『込めたMP分のダメージ』を敵に与える。
どんな敵でも等しく殺すことが出来る。
※使用条件:【万死慈聖 アズラーイール】が黒い鞘から抜かれている時のみ使用可能。
月が完全に視認できる夜の時のみ使用可能。
敵が少女である場合は使用不可能。
《???》 ※未開放スキル
所有者:ヴィーレ・ラルテ
備考:完全にスキル特化となった『特典武具』
スキル自体は強力だが、使用条件も厳しく扱いどころが難しい。……活躍する日は来るのだろうか?
《???》は【殺戮熾天 アズラーイール】と特性、そして『師匠』を失ったヴィーレにアジャストしている? ……かもしれない。