自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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第22話 【嵐竜王 ドラグハリケーン】

 □■□ 『とある文献・モンスターについて』

 

 

 

 

 

 ――【ドラゴン】

 

 

 この世界には様々な種族のモンスターが生息するが、この種族はその中でも特別だ。

 それは『強さの象徴』。

 もしくは災厄の権化と言ってもよい。

 モンスターの中でも特別、強力なモンスターであり、その強さはティアンの中で強さの基準として用いられていることからも明らかである。

 しかし、【ドラゴン】と言ってもその種類は今まで確認されたモノだけでも百を優に超えている。

 

 ――【ドラゴン】の亜種ともいえる【亜竜(デミ・ドラゴン)】。

 

 ――純粋な【ドラゴン】であり、【亜竜】を大きく上回る力を持つ【純竜】。

 

 ――そして伝説上の存在であり、<黄河帝国>で神格化され、【純竜】をも圧倒する力を持つと言われている【古龍】。

 

 此処では【亜竜】と【古龍】については割愛し、【純竜】について書き記そうと思う。

 では、「【純竜】たる【ドラゴン】が最も強い種族として数えられている理由」は何だろうか?

 その答えは幾つか上げられるだろう。

 

 

 一つ目に、その万能性があげられる。

 

 ――あらゆる攻撃を弾き、その威力を減衰させる『竜の鱗』。

 ――様々な属性に対する高い耐性。

 ――生まれ持っている竜の顎、竜の爪……それらから繰り出される破格の攻撃力。

 

 そう、純粋にモンスターとしての地力が高いのだ。

 確かにそれらを部分的に上回る能力を持つモンスターも居るかもしれない。……だが、総合的に言えば【純竜】にかなうものは無いだろう。

 それこそ一部の<UBM>と呼ばれるモンスターを除いては。

 

 

 二つ目に、【純竜】がもつ様々な特性があげられる。

 

 ――数万度の超高温を操り、地殻をも融解させる熱量を持つドラゴン。

 ――対象生物に対し、自滅因子を誘発させる大魔竜ともいえるドラゴン。

 ――あらゆる植物を操り、森と共に移動するスキルを持つドラゴン。

 

 あらゆるモノを切り伏せる『刃』の特性を持つモノやあらゆるモノを破壊する『音』の特性を持つモノ。

 あるいは『牙』、『盾』、『光』などその数は数えきれない。

 更に、ここに【ドラゴン】の形態としての『天竜種』や『地竜種』、そして『海竜種』が加わるのだからその種類は数えきれないことも察することが出来るだろう。

 

 

 そして最後に、【竜王】と呼ばれる【ドラゴン】たちが存在する。

 

 <UBM>の分類の一つであり、純竜の中の一族の王である総称。

 その力は最低でも『伝説級』以上であり、強力な能力を持っている。

 【竜王】については特性が大きく関係するので説明は出来ない……が、一つだけ言えることがある。

 

 それは【純竜】と【竜王】を同じモンスターだと思ってはいけない事。

 そして……

 

 

 

 

 

 『そこらの<UBM>とは違う……命が惜しければ、絶対に戦いを挑まない事』

 

 

 である。

 

 

                            著者:【生物学者(バイオロジスト)】ルーブル

 

 

 

 

 

 ◆◆◆<ブルターニュ> 【嵐竜王 ドラグハリケーン】

 

 

 

 

 

 「――《フォレスト・パレス》!!」

 

 

 瓦礫の広場。

 もはや以前の<ブルターニュ>の姿かたちの見る影もない街に、大きな怒声が響き渡る。

 声を荒げたのは一人の<マスター>。

 頭まですっぽりと覆い隠すようなローブを身に纏う【古代森司祭(エンシェント・ドルイド)】が、その手に握り込んだ木の杖を勢いよく地面へと突き刺した。

 ――『地鳴り』。

 瓦礫の街から緑色の植物が急激に成長し、ソレへの動きを拘束する。 

 そして……

 

 

 「おい! 今だ!!」

 

 「分かってる、わよ!! ――《シルフィード・アクセル》!!」

 

 

 男の掛け声。

 その言葉に合わせるように一人の女性が飛び出した。

 軽装な装備を身に着けた女性の<マスター>――【高位妖精剣士(ハイフェアリー・ソードマン)】が風の力を帯びて疾走する。

 その速度は亜音速ながらもすさまじい。

 大きな大樹に縛り付けられ、身動きの取れないソレへと木々を跳躍し、瞬時に接近した。

 

 ――『強い』

 

 それが二人の様子を見た<マスター>の思いだ。

 【古代森司祭】と【高位妖精剣士】。

 二人が上級職であろうことは疑うまでもないだろう。

 しかし、二人の戦う姿で目を見張るのはそこではない。注目するのは――その『コンビネーション』。

 これまで二人でパーティーを組んできたのか、二人の息はピッタリだった。

 この二人ならば例え『純竜級』モンスターが相手でも遅れはとらないだろう。

 

 

 「……もらった! 《妖精よ、我が手に集え(アールヴヘイム)》!!」

 

 

 ――『必殺スキル』。

 <エンブリオ>の名を冠するスキルの宣言と共に、装備する細剣が必殺の威力を秘めて光を帯びる。

 狙いはソレの首元。

 鱗の薄い場所へと細剣の刺突が放たれた。

 例え、ソレ――『古代伝説級』<UBM>【嵐竜王 ドラグハリケーン】だとしても致命傷は免れない。

 その刺突はソレの首元へと吸い込まれ……

 

 

 「……え?」

 

 

 次の瞬間、女性の<マスター>は光の粒となって消え失せた。

 

 

 「なっ! どうなってんだ!?」

 

 

 女性の<マスター>がデスペナルティになっただけではない。

 同時に【嵐竜王】を拘束していた樹木の檻――【古代森司祭】の《フォレスト・パレス》がバラバラに切り裂かれた。

 まさに一瞬。

 【嵐竜王】は一切身動きを取っていない。

 目の前の不可思議な現象に目を見開く男性の<マスター>。

 

 

 「……《フォレス――」

 

 

 とっさの判断で再び、樹木の檻で【ドラグハリケーン】を拘束しようと動き出すが……

 

 

 「……意味が分からん」

 

 

 その魔法が発動する直前。

 男性の<マスター>の身体は、胴体から二つに(・・・・・・・)ズレた(・・・)

 

 

 ――『鎌鼬(かまいたち)

 

 

 旋風を中心に出来る真空、または非常な低圧によって皮膚や肉が裂かれる現象のことを言う。

 そして……それが数秒で二人の<マスター>を葬ったモノの正体だった。

 

 【嵐竜王】を中心として発生した『超竜巻』。

 それが副次的な効果として、辺りのものを見境なく切り裂いて回ったのだ。

 そして――『鎌鼬』を起こすことなど【嵐竜王 ドラグハリケーン】にとっては容易いことだった。

 

 

 

 

 

 『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

 ――ソレは飛竜、巨大な竜翼と一体化した腕が一仰ぎするたびに竜巻が発生した。

 

 ――ソレは新緑色の【竜王】、地面を抉り取れるのではないかと思うほどに鋭い鉤爪の足に三つに分かれ、風になびく竜の尾を持っていた。

 

 ――ソレは嵐と言う名の『災害』、周囲に三本の竜巻を蔓延らせ、その身には風の防壁を纏っていた。

 

 

 そして、ソレは嵐の竜たる一族の王。

 【嵐竜王 ドラグハリケーン】の咆哮が風に乗り、<ブルターニュ>の街に響き渡った。

 天竜種であり、『風属性』を操る竜王。

 古代伝説級(・・・・・)最上位(・・・)の力を誇るドラゴン。

 【嵐竜王】はまるで何かを探す(・・・・・)かのように辺りを瓦礫に変えながら、<ブルターニュ>の街を飛翔する。

 

 

 『GAAAALUGAAA!』

 

 

 ひと仰ぎ。

 その先にあったはずの建物が扇状に消し飛んだ。

 【ドラグハリケーン】の目には理性の光は見えるものの、底の見えないほどの『怒り』が溢れんばかりににじみ出ていた。

 ――『暴竜』

 そう言っても過言ではないだろう。

 そして……【ドラグハリケーン】は次の瞬間、自身に向け、何かが飛行してくるのを察知した。

 『嵐』を操ることは『風』を操ることに他ならない。

 詰まるところ、【嵐竜王】にとっては風を用いた探知は得意なことだった。

 

 ――『風を切り、飛翔する物体』

 

 

 『GAAAA』

 

 

 それを【ドラグハリケーン】は見向きもしない。

 遠距離攻撃。

 ……それは『悪手』だ。

 

 嵐を巻き起こし、風の防壁を身に纏う【嵐竜王】。

 その身体はあらゆる遠距離攻撃の威力を減衰させ、弾き、そして無効化する。

 故に【嵐竜王】はそれに気さえ向けない。

 だからこそだろう……

 

 

 『――GAALUUUUU!?』

 

 

 自身の竜鱗に弾かれたその感触に目を見開いた。

 それが【ドラグハリケーン】へダメージを与えたわけではない。

 だが、『風の防壁』を突破したことに目を見開いたのだ。

 瞬時に戦闘態勢へと切り替え、それが放たれたであろう方向へと振り返る。

 そして、

 

 

 「……どうなんだよ、ヴィーレ」

 

 「微妙、だね。突き抜けはするけどほとんどダメージは入らないや。多分、近接か……それかもっと近づければ行けると思うんだけど」

 

 「それならボクがどうにかしよう。モンスターを打ち倒し、人々を守るのも騎士としての役目だしね」

 

 

 自身へと視線を向ける、三人の人物を見つけた。

 

 

 ――漆黒の軍馬に《騎乗》し、炎に燃える矢を構える【騎兵】。

 

 ――その全身を『黒い溶岩の鎧』で覆い隠し、額から二本の角とギラギラとした目を見せる『鬼』。

 

 ――銀の甲冑に青のマントをたなびかせ、腰に一握りの長剣を挿した【竜騎士】。

 

 

 【ドラグハリケーン】は理解する。

 「この敵は今までに自分を倒そうとした敵と同種である」と。

 そして……「その中でおそらく一番強い敵である」と。

 

 

 『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

 ――竜王の咆哮。

 そして……

 

 

 『――《サイクロン・ヴォーテックス》!!』

 

 

 人には聞こえぬ【嵐竜王】の嵐のブレスが、地面を抉り取り、破壊の嵐を巻き起こしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◇【騎神】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 

 「……これが【竜王】。『古代伝説級』、か……」

 

 

 《危険察知》によって、とっさにドラゴンブレスを回避したヴィーレ。

 彼女はその爪痕――地面ごと大きく抉られた瓦礫の街を目に、小さく呟いた。

 

 

 「後ろが瓦礫だったのが幸いだね」

 

 

 三人が居たのは、既に瓦礫となった場所。

 【嵐竜王】によって破壊された街跡だった。

 仮にまだ無事な街が背後に広がっていたならば、既に<ブルターニュ>は崩壊してしまっていただろう。

 偶然とは言え、最悪を避けられたことに安堵のため息を漏らす。

 

 (ホオズキとルノーは……無事)

 

 パーティーメンバーとして表示された二人のHPバーを確認する。

 

 <ブルターニュ>で目が覚めてから数刻。

 ヴィーレ達はそれぞれアイテムの補給を終え、【嵐竜王】の討伐の為に再び集まっていた。

 

 

 「だけど……どうしようか?」

 

 

 ホオズキとは数度、パーティーを組んだことはあるがルノーさんとは初めての共闘である。

 そもそもホオズキともまともに連携を取ったことは無い。

 いわゆる、互いの事を全然知らない即席のパーティー。

 だから、

 

 (とりあえず、攻撃すればいいのかな……)

 

 新たに補充した五百本の矢。

 そして【殺戮熾天 アズラーイール】との戦闘で補充したフェイのMPとSP。

 ――すべてを使い切(・・・・・・・)()つもりで矢を放つ。

 

 

 「《獅子勇心》、《クリムズン・レンジゼロ》」

 

 『BURUUUUUU!!』

 

 

 《一騎当神》と《幻獣強化》によって超音速起動へと至ったアレウスが疾走する。

 そしてオリジナルスキルによって『距離と反比例』に上がる矢の威力とフェイの炎が、【嵐竜王】の風の防壁を捻じ曲げ、その新緑の竜鱗へと着弾する。

 しかし……それすらも【嵐竜王】にとっては些細なかすり傷にもなり得ない。

 

 

 『GAAAAAaa!!』

 

 

 まるで蚊でも払うように放たれた三本の竜巻。 

 それぞれが鎌鼬を発生させながら、放たれた矢を空中で切り刻んでいく。

 そして、

 

 

 「っらぁ!!」

 

 

 大きな掛け声。

 【山岳隻甲 タロース・コア】の《山岳装甲》によって鎧を身に纏ったホオズキがダメージを負いながら、【嵐竜王】の胴体へ拳を振り抜かれた。

 【狂戦士】によって放たれた一撃だ。

 その一撃に【嵐竜王】は苦痛の声を漏らしながら、その三本の尾を振りまわし――

 

 

 「――《ドラゴニック・クロウ》」

 

 

 上空より落ちるように振るわれた長剣が強固な竜の鱗を叩き割った。

 

 互いの事をよく知らない三人。

 その戦闘には『コンビネーション』のコの字もない、だが……

 

 

 「ッフ!!」

 

 

 ルノーとホオズキを倒そうと迫った竜巻の間を縫うように、ヴィーレの矢が強襲する。

 それぞれが『個人戦闘型』によるパーティー。

 故に、敵の隙を狙い自分本位に攻撃する。

 フレンドリーファイアが起こるかもしれない、不安定な戦闘だ。

 だが……一人一人の自力が違う。

 

 

 ――<エンブリオ>は第三形態ながらも、【騎神】に就き、二体の<UBM>を討伐したヴィーレ。

 

 ――どんな攻撃を受けても瞬時に再生し、比例して強くなり続けるホオズキ。

 

 ――その実力は不明ながらも、【タロース・コア】の山のような残骸を防ぎ切ったルノー。

 

 

 三人が三人とも<UBM>の戦いを切り抜けた――歴戦ともいえる<マスター>だった。

 結果、その戦いに連携は無くとも【嵐竜王】と戦うことが出来ていた。

 その様子はこのまま、呆気なく【嵐竜王】を倒してしまうのでは? と思えてくるほどである。

 

 

 

 

 

 ……もちろん、現在が【嵐竜王 ドラグハリケーン】の本気であったならばの話だが。

 

 

 

 

 

 『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

 怒りの咆哮。

 同時に優勢に見えた、その戦場は一変した(・・・・)

 

 『古代伝説級』の<UBM>には様々なタイプが存在する。

 

 ――ステータスが可笑しい程に振り切った“純粋戦闘型”

 

 ――様々なスキルを併せ持った“多重技巧型”

 

 ――ある一つのシチュエーションでのみ無敵のスキルを持った“条件特化型”

 

 では、その中で【嵐竜王 ドラグハリケーン】が当てはまるものはどれだろうか?

 

 

 「……アレウス!!」

 

 

 突如、【嵐竜王】の咆哮と共に発生した旋風。

 それは一部、一部から発生するような小さなものではない――まるで地面を捲り上げるように、隙無く地面から上空へと嵐のような強風が吹き上げる。

 ――『上昇気流』。

 踏ん張ることすら困難なその突風は、アレウスをも空(・・・・・・・)中へと巻き上げ(・・・・・・・)()

 

 

 「ッ! ――《送還》アレウス」

 

 

 とっさにアレウスを【ジュエル】へと送還し、空中を飛ぶことが出来るフェイへと飛び移る。

 

 (……二人は……)

 

 空を飛べないホオズキとルノー。

 その姿を瞬時に確認する。

 

 ホオズキは真っ赤な血をスリンガーのように地面に突き刺してとどまっている。

 ルノーは【竜騎士】のスキルだろうか?

 ヴィーレよりも遥かに高く跳躍し、その突風を回避していた。

 そして……

 

 

 「――!?」

 

 

 警鐘。

 パッシブスキルである《危険察知》が頭の中で大音量で鳴り響く。

 反射的にフェイに上空へと飛ぶように指示し――

 瞬間、先ほど居た場所を一つの影が超音速で駆け抜けた。

 

 誰か? と疑うまでもない。

 駆け抜けたのは【嵐竜王】。

 だが、その身には今までにない『赤いオーラ』を纏っていた。

 まるでジェット噴射のように三本の尾から放たれる竜巻を巧みに操り、超音速で飛翔し続ける。

 

 

 様々な“戦闘型”が存在する<UBM>。

 そして【嵐竜王 ドラグハリケーン】をそれに当てはめようとするならば……そのすべてに当てはまる。

 

 

 ――【竜王】としての<UBM>の中でも飛び抜けて高いステータス。

 

 ――汎用性の塊とも言えるような、風を操るスキルの数々。

 

 ――そして、そこに空気があるならば。空が開けているならば本領を十二分に発揮できる――風を操る飛竜の<UBM>。

 

 

 地上に立つモノを許さず。

 空を駆けるモノは存在せず。

 その身にダメージを負わせることは叶わず。

 

 

 改めて言おう、“空中戦特化”であり、“純粋戦闘型”と“多重技巧型”に匹敵する力を持つ<UBM>。

 それが『古代伝説級』最上位(・・・)

 

 

 ――【嵐竜王 ドラグハリケーン】であると。

 

 

 




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