自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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【到達鬼姫 シュテンドウジ】
『Type:メイデンwithボディ』
      ↓
『Type:メイデンwithアームズ・テリトリー』
に変更しました~


第25話 最後の一人とレイド戦

 □<ブルターニュ> 【騎神】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 「――え? 何あれ?」

 

 

 誰かが呟いた。

 “霊都”<アムニール>へと移動する竜車の中から、<ブルターニュ>を覆いつくさんとする影を見上げて。

 

 

 「……おいおい!! 誰だっ! こんな時だっていうのにモンスターを引き寄せてきた馬鹿野郎(<マスター>)は!!」

 

 

 一人の男が声を荒げた。

 かつて“交易都市”として栄えた街……今は瓦礫の街となった場所で、他の<マスター>の救助を行っていた<マスター>。

 その<マスター>は突然発生したモンスターに顔を引きつらせながら怒声を上げる。

 

 

 「あれは……Type:ガードナーか? いや、おそらくType:レギオンのはずだが……あの数。有り得るのか?」

 

 

 レジェンダリアの山より見下ろす女性が考察した。

 その視線の先に映るのは『古代伝説級』<UBM>、【嵐竜王 ドラグハリケーン】の大きな巨体。

 そして、それを覆いつくさんと増え続ける<エンブリオ>の召喚獣だった。

 その数は既に300を超え……今のなお、数を増やし続ける。

 上級<エンブリオ>のType:レギオンですら有り得ないような光景に女性は、興味深そうにその光景へと視線を落とした。

 そして……

 

 

 

 

 

 「……嘘」

 

 『BURUUUUUUU!?』

 

 

 その光景を間近で見ていた私は――【騎神】ヴィーレ・ラルテはその光景に目を見開いた。

 今なお、嵐を巻き起こし暴れ続ける【嵐竜王】にではない。

 二人の<マスター>。

 彼らが宣言し、巻き起こした『必殺スキル』の影響に、である。

 

 

 『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

 苛立ったように。

 凄まじいまでの憎悪が籠った声で咆哮する【嵐竜王】。

 そんな巨体の周りをモンスターが取り囲み、噛みつき、振るわれた竜爪によって霧散する。

 

 

 ――まるでおとぎ話から飛び出たかのような【グリフォン】。

 

 ――どこかの絵本にでも出てきそうな、子供が憧れそうな姿をした【騎士】。

 

 ――怖い小説にでも描かれていそうな様々な武装を身に纏う【スケルトン】の軍団。

 

 

 『モンスターピード』、そう呼ばれる言葉がある。

 主に『自然型ダンジョン』などの内部でモンスターが増殖し、餌や経験値、また住む場所を追われ、モンスターの大群となって地上にあふれかえる現象だ。

 それはこの<Infinite Dendrogram>でも変わりはない。

 今でこそ<マスター>の増加によってその現象はほとんど起こりはしないものの、一時期は<マスター>によって一部のモンスターが全滅し、その他のモンスターが異常なほど増殖したなどと言う話もあるぐらいだ。 

 しかし、私の目の前で。

 それに近しい――まさしく『モンスターピード』と言ってもいいような光景が巻き起こっていた。

 そして、それを起こしたのは他でもない。

 

 

 「……はぁ、何で私がこんな事を。別に給料が出るわけでもあるまいし……」

 

 

 目の前で愚痴を零しながら手を動かし続ける少年。

 ――【高位書記】ニートによるものだった。

 カリカリカリッと目にも止まらぬ速さで動き続ける手に握ったペン。

 恐らく【書記】としてのスキルだろうと考察出来るスキルを行使したニートは、どこか疲れた様子でその腕を動かし続け……

 

 ……カリッ!

 

 その動きを止めた。

 出来上がったのは【高位書記】のスキルで『書き写した』と思われる一冊の本。

 ニートはその本を左手で掴みながら、前方へと突き出した。

 

 

 「《千夜一夜の物語(アラビアンナイト)》」

 

 

 同時に手に持っていた本が燃え、塵となって消えていく。

 そして……

 

 

 ……消えるほんと入れ替わるように二十体の【グリフ(・・・・・・・)ォン】が出現し(・・・・・・・)()

 

 

 これこそが他でもない、【高位書記】であるニートの<エンブリオ>。

 

 

 

 ――【幻想具現 アラビアンナイト】のスキルだった。

 

 

 

 「《千夜一夜の物語(アラビアンナイト)》」、その能力は簡単かつシンプルなものだ。

 それは本を代償とした登場人物の召喚。

 『本を代償として、そのページ数=秒数間に登場人物を召喚することが出来る』と言うモノ。

 出現する登場人物の強さはピンキリ。

 使用する本の登場人物が少なければより強く。

 使用する本の登場人物が活躍すればより強く。

 『下級モンスター』から『亜竜級モンスター』までランダムによって召喚することが出来る<エンブリオ>だった。

 これだけ見れば余りにも弱い……とても『必殺スキル』とは呼べないものである。

 しかし、

 

 

 『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

 怒りを表すように【嵐竜王】がドラゴンブレスを吹き放つ。

 強力無比な致命技。

 例え、タンクだとしても一撃食らえばタダでは済まないだろう。

 ……だが、召喚された登場人物たちは違う。

 

 

 ――『召喚された登場人物は、制限時間が切れるまで倒れない』

 

 

 そう……例えどんな強力無比な攻撃を食らおうと、彼らが倒れることはあり得ない。

 そして……

 

 

 「《千夜一夜の物語(アラビアンナイト)》」

 

 

 その召喚できる数に制限は無い。

 ニートのジョブは【高位書記】。

 それこそ本があれば、ジョブスキルで複製し、召喚し続けることが可能だった。

 

 

 「――オミャー、何やっているニャ!! オミャーもさっさと攻撃するニャ!!」

 

 

 突然の声。

 その光景を呆然と眺めていた私は猫の獣人――リンの声に我に返った。

 見れば、リンは《アラビアンナイト》で召喚されたモンスターなどを足場に空中を移動し、その拳で強固な竜鱗を叩き割っている。

 恐らく振動系統の<エンブリオ>なのだろう。

 【嵐竜王】が身に纏う『赤いオーラ』の上から、直接内部へとダメージを与えている。

 

 (……そうだ、ボーっと見ているわけにはいかないんだ。私も参戦しないと!!)

 

 【嵐竜王】は未だに健在だ。

 その動きは鈍ることなく、超音速起動で動き回り、周囲に嵐を発生させている。

 召喚されたモンスターたちだけでは足止めは出来てもダメージを与えることは出来ないだろう。

 

 

 「……行こう! アレウス、フェイ、アロン!!」

 

 『HIHIIIIIIIIIN!!』

 

 

 大きく嘶くアレウス。

 その目はやる気に満ち溢れ、体はどこか躍動しているかのように絶好調だ。

 私は弓をつがえながら、アレウスの甲冑を蹴り……

 

 

 「――――――――――――ッ!」

 

 

 その速度に思わず瞼をギュッと閉じた。

 

 (……さっきまでより速い!!)

 

 その速度は互いに釣り合っていた【嵐竜王】を置き去りにして、その竜鱗を叩き蹴る。

 ――一撃。

 その一撃は『赤いオーラ』――『竜王気』と呼ばれる【竜王】のみが使える攻防一体のオーラを突き抜け、その体に赤い血を滲ませた。

 それだけではない。

 

 

 『KWEEEEEEE!!』

 

 

 羽ばたきと同時に放たれた《紅炎の炎舞》の炎が【嵐竜王】の身体を焼き、苦しそうな声を洩れさせる。

 私はそんな様子に目を見開き……そして理解した。

 

 

 「明らかに強化されてるし――リリィーズの<エンブリオ>かなっ!?」

 

 

 言葉と同時に放たれた矢。

 その矢は翻弄され、身動きの取れない【嵐竜王】の竜鱗を貫通する。

 先ほどまで弾かれていた矢が通る、これが他でもない証拠だ。

 そして……その考えは正しかった。

 

 

 「フッハッハッハッハハハーーー!!」

 

 

 軍服に身を包み、高らかに笑う金髪の少女。

 【指揮官】であるリリィーズ・ボナパルトの<エンブリオ>。

 

 

 

 ――【革命軍略 ハンニバル】のスキルである。

 

 

 

 その効果は他でもない。

 『一定範囲内に居る仲間のバフによる強化』

 そして……『状態異常の反転(・・・・・・・)である』。

 その銘通り、反逆とバフに特化した<エンブリオ>。

 

 

 ――敵の『デバフ』とモンスターの強化に特化した【災厄母神 パンドーラ】。

 

 ――仲間の『バフ』と状態異常の反転に特化した【革命軍略 ハンニバル】。

 

 

 奇しくも真逆な能力であり、同じ到達形態である二つの<エンブリオ>はそれぞれ打ち消し合う結果となっていた。

 だが……

 

 

 「見える! 見えるぞ!! 我々の勝利が!!」

 

 

 【革命軍略 ハンニバル】。

 その必殺スキルである「《我は戦場の意(ハンニ)を変える者(バル)》!!」の効果は『一定範囲(・・・・)内に居る仲間のバフによる強化』。

 

 そのバフは例え、何十人であろうと。

 ……それこそ召喚された数百体のモンスターであろうと変わらない。

 

 

 ――『亜竜級』だったモンスターが『純竜級』に。

 

 ――『下級』だったモンスターが『上級』に強化され【嵐竜王】へと雪崩となって襲い掛かる。

 

 

 総合的な戦闘力ではいまだに【嵐竜王】が上。

 しかしその差を数が埋め、『個人戦闘型』であるヴィーレがルノーが、そしてリンがいる。

 

 

 「……押し、きれる!!」

 

 

 まさしく戦場。

 激しい戦いがそこにはあった。

 

 

 『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

 耳を劈くような――すでに聞きなれた【嵐竜王】の咆哮。

 同時に広範囲を吹き飛ばし、切り刻むドラゴンブレスが私へと迫る。

 

 (――アロン)

 

 先ほどまでならアロンに防いでもらう。

 もしくはフェイへと飛び移っていたほどの広範囲&必殺攻撃だが……

 

 

 「――ニート! 足を貸して!!」

 

 

 とっさに出た言葉。

 同時にアレウスの手綱を強く引き、上空へと高く跳躍する。

 

 

 『GAAAAA!!』

 

 

 ……まだだ。

 ヘイトが一番多いのだろうか?

 私を追尾するように向きを変え、放たれ続けるドラゴンブレス。

 だから……

 

 

 『GAAAAAAaaaa!?』

 

 「ニャッハッハッハッハ、無茶するニャァ~!?」

 

 

 だから……空中を疾走する(・・・・・・・)

 召喚され、ダメージを負おうとも消えないモンスターたち。

 それらを足場に、空中を跳躍したのだ。

 

 一歩でも距離を見誤れば、地面へと真っ逆さまとなり狙われるのは確実だろう。

 だが……私は――ヴィーレ・ラルテは《騎乗》術に関してミスをしない。

 

 

 「私は――【騎神】の弟子」

 

 

 ――そして、今代【騎神】。

 

 (そんな初歩的なミスは……修行の森で嫌と言うほど体験してるよ!)

 

 何度、空を飛ぶ怪鳥型モンスターと戦ったかは数えきれない。

 足の踏み場もない魔の森だ。

 既に身体が。

 経験が。

 そしてアレウスが。

 全てが技術となった身体に身についている。

 

 

 「フェイ、アロン!!」

 

 『KWEEEEEE~~』『GAWUUUUUUU!!』

 

 

 《魔物言語》と言った【従魔師】のスキルは持っていない。

 だが、その掛け声で私の心強い仲間たちは答えた。

 

 

 ――大きく引き絞った弓。その弓が紅炎を纏い、真紅に輝く。

 

 ――姿を見せなかったアロン。すでに地中を潜行し、【嵐竜王】の真下まで辿り着いていたアロンが《地盤超重》でその動きを鈍らせる。

 

 

 【嵐竜王】はブレスを止めようと必死になっているが……もう遅い。

 空中を駆け抜け、その傍まで辿り着いた私はその弓を構え、

 

 

 「《クリムズン・レンジゼロ》」

 

 

 【嵐竜王】の目へ向け、その矢を引き放った。

 

 

 『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

 とっさに両の竜翼で防ごうとするが……

 所詮は翼。

 その矢は翼を貫通し、竜王気で減衰しながらも真っすぐと進み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――【嵐竜王】の右目を貫き、焼き払った。

 

 

 同時に今までにない程の大咆哮が宙を揺るがす。

 それは悲鳴。

 そして怒り。

 そして……

 

 

 

 

 

 「……え?」

 

 

 ……ほんの僅かな感謝が込められていた。

 

 

 『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

 咆哮する【嵐竜王】。

 その左目は初めの時のよう(・・・・・・・)な理性を帯びた(・・・・・・・)()をしていた。

 

 (―――――――――――――――ッ!)

 

 突如頭の中で鳴り響きだした《危険察知》。

 アレウスも野生の勘として感じ取ったのだろう。

 全力でその場を離れ、【嵐竜王】から距離を取る……が。

 

 

 「何が……?」

 

 

 鳴りやまない。

 今までの過酷すぎる修行や<UBM>との戦闘で高いレベルまで育った《危険察知》は、休まることなく、その大警鐘を鳴らし続けていた。

 

 

 『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

 吼える【嵐竜王】。

 同時にそれは起こった。

 

 

 ――下から隙間なく吹き上げる大規模な嵐。

 

 ――自然現象を無視し、横から薙ぎ払う用の吹き荒れる竜巻の束。

 

 ――そして上から押さえつけるような冷たい強風が――『タウンバースト』と呼ばれる現象が無理やり引き起こされ、空に大きな雲を作り出す。

 

 

 ――『ミキサー』。

 身動きは取れず、召喚されたモンスターたちはその嵐に巻き上げられていく。

 私はそんな中、辺りを見渡す。

 瓦礫は宙を舞う。

 地面はあまりにも大きな鎌鼬に大きな傷跡を残していた。

 そして……

 

 

 「……あれ? まさか……【嵐竜王】がいない?」

 

 

 先ほどまで見えていた、そのドラゴンの姿が見えないことに気が付いた。

 

 (まさか……逃げた?)

 

 そう考え、首を横に振る。

 いや、そんなことをあのドラゴンはしない。

 【竜王】としての誇りが、息子である卵を壊された怒りが【嵐竜王】を動かしているのだ。

 逃げるなんて選択肢はあり得ないだろう。

 なら……

 

 

 「―――――――――」

 

 

 言葉が出なかった。

 感情的な、驚き的な意味ではない。

 物理的に、自然現象的にその言葉は出てこなかった。

 

 

 ――『真空』

 

 

 とっさに浮かんだ考えはそれだった。

 そして……【嵐竜王 ドラグハリケーン】は容易くそれを成して見せるだろう。

 では、次に【嵐竜王】が取る手は?

 

 

 「――――――――――」

 

 

 上空を見上げる。

 するとそこには空を駆け、私へと急降下してくる【嵐竜王】の姿があった。

 

 

 ――真空による空気抵抗の減少。

 

 ――ジェット噴射のような加速。

 

 ――竜王気を帯びた体で放たれる、すべてを切り裂く竜の破爪。

 

 

 一瞬だが、《一騎当神》を使用したアレウスをも超える超音速機動で、私へと向け爪を振るう。

 

 (――避けっ!)

 

 避けられない。

 辺りは既に竜巻、嵐、強風吹きつけるミキサーである。

 そして……なにより気が付くのが遅すぎた。 

 いや、気が付いても間に合わなかったかもしれない。

 一撃でデスペナルティへと追い込むことが出来るその爪は、一瞬で私へと肉薄し……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 「おいおい、随分ピンチになってるじゃねぇーか」

 

 『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

 突然突き出された一本の腕によって握り潰された(・・・・・・)

 聞き覚えのある声。

 

 

 ――全身を纏う岩の鎧、その上から纏われた『血の武士の大鎧』と手に握られた『血の大太刀』

 

 ――額から伸びた二本の蒼い鬼の角

 

 ――少しスレンダーになった……まるで少女と大男が混じ(・・・・・・・)りあい(・・・)二で割ったよう(・・・・・・・)な中性的な身体(・・・・・・・)の<マスター>は獰猛に笑う

 

 

 何処か……声までも少し違って聞こえてきた。

 

 

 「……っ、ホオズキ……いや、シュリちゃん?」

 

 

 その姿を見て。

 少し高めの声を聞いて言葉を漏らす。

 そして……そんな呟きを聞いて、目の前の『鬼』は大きく笑った。

 

 

 「半分外れで半分辺りだ。オレはホオズキで、同時にシュリだ」

 

 

 掴んだ【嵐竜王】。

 『鬼』はそのまま、地面へと叩きつける。

 そして、

 

 

 「……到達率―400%。Type:メイデンwithアームズ・テリトリー」

 

 

 進化した自身の<エンブリオ>を名乗る。

 

 

 

 「《鬼神掌握》、《悪鬼羅刹》――シュテンドウジ。オレを殺したければ……」

 

 

 血の大太刀を肩に担いで彼は笑う。

 

 

 「伝説のように――首を撥ねて殺すことだ」

 

 

 

 

 




……なんか同じような展開ばっかで申し訳。



【到達鬼姫 シュテンドウジ】
Type:メイデンwithアームズ・テリトリー

新たな姿はホオズキとシュリちゃんを足して二で割ったような中性的な姿。
声も少し高く、一人称が『オレ』になっている。

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