自由への飛翔 作:ドドブランゴ亜種
色々省略したので読みにくいかもしれません
□<ブルターニュ> 【騎神】ヴィーレ・ラルテ
――空は不安を表すような曇天だった。
【嵐竜王 ドラグハリケーン】の巻き起こす嵐は止むことなく、定期的に揺れる地響きが<ブルターニュ>の街に響き渡る。
そんな瓦礫の街。
縦横無尽の竜巻が鎌鼬を引きおこし、身動きの取れない程の強風が吹き荒れる戦場。
そんな中に呆然と立ち尽くす私の前には一人の男――『鬼』が居た。
――身に纏うのは『血で出来た【大武者】の大鎧』。
――手に握るのは『血が凝血し出来上がった大太刀』。
――身体から立ち上らせるのは真っ赤な――『竜王気』にも似た赤い血煙。
男は――鬼は――ホオズキは私を守るように仁王立ちでソレの前に立ちふさがっていた。
今までのホオズキとは全く違う。
先ほどまでのような荒々しさは無くなり、何か研ぎ澄まされた強い意志を感じさせる。
声が少し高くなっていることもそれを感じさせる一つの要因になっているのだろう。
そんなホオズキの足元には大きな巨体。
半場地面に埋まるような形で【嵐竜王】が倒れていた。
「えっと……ホオズキ? その姿って――――」
私はそんな姿に戸惑いながら声を掛けようとして……
『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
「――ッラ■■■■■■ァァァァアアア!!」
突然、
余りの事に途切れた言葉。
【嵐竜王】が一歩叩くごとに強風が私の体を叩き、思わずアレウスから転げ落ちそうになる。
(―――――っ!!)
アレウスが後ろに下がるようにして私を支える。
そんな中、私はその光景を――有り得ない戦闘に言葉を失っていた。
――『強い』
それは【嵐竜王 ドラグハリケーン】に。
そしてホオズキへと向けられた言葉だ。
『戦鬼と嵐竜の激闘』
ホオズキと【嵐竜王】がそれぞれ
(……有り得ない)
喉元まで出かかり、声に出さずに飲み込んだ言葉。
それは【嵐竜王 ドラグハリケーン】に。
そしてホオズキへと向けられた言葉にである。
超広範囲で嵐を、竜巻を、そしてタウンバーストなどの自然災害を巻き起こしながら戦う【嵐竜王 ドラグハリケーン】。
その姿はホオズキやヴィーレ、これまでの戦闘によってボロボロな姿となっている。
――片目を潰され、その強固な竜鱗は所々が砕き割られ赤い血が滲んでいた。
――私達と戦う前にも戦闘を繰り返していたのだろう、その体は少しふらついていた。
――大きく発達している鋭い破爪は握り潰され、立って戦うことに支障を来していることが見てとれた。
だが……止まらない。
【嵐竜王 ドラグハリケーン】――『古代伝説級』最上位であり、モンスターの一つの頂点とも言うべき<UBM>であり、嵐竜の一族の長たる【竜王】。
体に纏う『竜王気』は消えていない。
その縦に伸びた瞳孔は、未だに強い意志を持ち、『憎悪』の光を帯びていた。
対して、【狂戦士】であるホオズキも限界を超え戦っている。
繰り返されるギリギリの戦い。
張りつめられた精神。
傷はすでに数えきれない程食らい、【嵐竜王】には下半身から真っ二つに吹き飛ばされているのだから。
『GAAAAAAAAAAAaaaaaAAAAA!!』
「――ッ!! ガァ■■■■■■ァァァァアアア!!」
【嵐竜王】の咆哮が空気を震わす。
ホオズキの踏み込みが地面を叩き割る。
例えるのなら『怪獣合戦』ともいえる戦闘が――【嵐竜王】とホオズキによる
そして……
「―――――ッ、ホオズキッ!!」
まさに一瞬。
【嵐竜王】のすべてを切り裂き、破壊する竜の破爪がホオズキの身体を捉えた。
風を操る特性を持つ鋭い一撃。
『竜王気』を纏い、超音速機動で振るわれた
私はその一撃をまともに受けて吹き飛んだホオズキへと視線を向け、悲鳴のような声を漏らした。
そして……
「油断……してんじゃねぇ!!」
――瞬間。
私の目の前には追撃するように振るわれた破爪とそれを止めるホオズキを映す。
「え? 何で――」
(何で無事なの!?)
その言葉はやはり最後まで出ることは叶わなかった。
私の声に被さる様に叫ばれた声。
ホオズキの宣言と決意にかき消されたからだ。
「――四分!!」
声は出ない。
「――四分間、オレが時間を稼ぐだから……
それは宣言であり、ホオズキ自身の限界を知らせる叫びだった。
◇
――【到達鬼姫 シュテンドウジ】
そんな【シュテンドウジ】が第四形態に進化する際、獲得したスキルが二つある。
一つは、《鬼神掌握》。
『《戦鬼到達》による『到達率』が
自身の<エンブリオ>と
時間経過後、《戦鬼到達》と《鬼神掌握》の強制解除。
「到達率×100」分間の間、《戦鬼到達》と《鬼神掌握》の使用不可。
アクティブスキル』
それこそが新たに【シュテンドウジ】が獲得したスキルの一つ。
――『
ホオズキを鬼へと
リスクは大きい。
それでも戦わなければならない時の為の――『ジャイアントキリング』を突き詰めたようなスキル。
その結果……
「くっ……そがぁぁぁああああ!!」
『GAAAAAAAAaaaaAAA!???』
ホオズキは【嵐竜王】に拮抗。
いや、それすら上回るステータスを手に入れることを可能としていた。
――振るわれた破爪を横から殴り反らす。
――超音速で振り抜かれた竜の尾を紙一重でかわす。
まさに『鬼神』
『古代伝説級』<UBM>をも上回るステータスを持つ、鬼の<マスター>がそこには居た。
だが……戦いにおいて大切なのはステータスだけではない。
それは<UBM>でも同じ。
<UBM>の前提条件となるのは『高いステータス』、そして『強力無比な固有のスキル』である。
『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
思わず耳を塞ぐほどの大咆哮。
同時に【嵐竜王 ドラグハリケーン】の固有スキル……風を操る能力が猛威を振るう。
発生したのは凄まじい追撃
……まるで嵐のような……怒涛の攻撃だ。
――巻き上げられた建物ほどの瓦礫が。
――飲み込まれたら逃れられない竜巻が。
――地面に跡を残すほどの鎌鼬が。
ただ一人――ホオズキへと向け放たれる。
全方位からの音速攻撃。
その猛攻を避けられる者は居らず、また耐えきれる者も存在しない。
暴威の塊の如き猛攻は避けることを許さず、大鎧を身に纏うホオズキを飲み込んだ。
そして……
「……無駄だなぁ」
そこには一切をダメージを負っていない……『血の大楯』を構えたホオズキが居た。
これこそが二つ目のスキル――《悪鬼羅刹》。
『自身の<エンブリオ>で防具と武器を形成する。
防御力、攻撃力は自身のステータスに依存する。
アクティブスキル』
たった三行。
しかしその長さに関係なく、強力かつ汎用性の高いスキルだった。
本来、《戦鬼到達》を発動していないホオズキのステータスはティアンにも劣る。
その状態で発動した《悪鬼羅刹》はまるで効果が無いに等しいものだ。
形成した『血の武器』は敵の防御を突破することも叶わず、『血の鎧』は紙装甲同然に等しいだろう。
……今、この瞬間以外は。
《悪鬼羅刹》を使用する『血の大鎧』は。
体を覆い隠すほどの『血の大楯』は、【嵐竜王】の猛威を完全に防ぎきっていた。
そして、
「……今度は、こっちの番だぁ!!」
――『変形』
瞬時に『血の大楯』が『血の大太刀』と変形し、超音速で振り抜かれる。
この様子を見ていた人は「何をやっているんだ?」と思うだろう。
何せ、ホオズキと【嵐竜王】の距離は二十メテル以上離れているのだから、だが……
――『伸びた』
血の武器。
故にその刀身の長さも大きさも自由。
そして……その『血の大太刀』は油断していた【嵐竜王】の竜鱗を容易く切り裂き、
「……《血の代償》―嵐竜王の俊脚」
結果、《血の代償》が発動する。
――血の<エンブリオ>!!
――故に自由!!
――高いステータス!!
――故に強力!!
――鬼の特性!!
――故に倒すことは叶わず!!
それらが示すのはただ一つ。
『これより約三分間続く、ホオズキによる
◇
「……お前らが倒せ、か。無茶言うなぁ……」
――ホオズキの宣言。
私はその言葉を呟き、困ったように苦笑した。
私に――私達に向けて発せられたその言葉、それは『カウントダウン』だ。
【嵐竜王 ドラグハリケーン】を討伐するラストチャンス。
このままホオズキが倒れれば、先ほどまでと同じ。
【嵐竜王】の暴風の結界に囚われ、全滅は必須である。
――残り、二分
こうしている間にも刻一刻と時間だけが過ぎ去っていく。
ホオズキと【嵐竜王】の激しい戦闘は終わることなく、より一層激化していく。
「……」
……身動きが取れない。
(アレウスだったら、あの戦闘に参加できるかもしれないけど……)
それは賭けだ。
先ほどまでのようにニートの【幻想具現 アラビアンナイト】の召喚も無い。
下手を打てば、鎌鼬が直撃しデスペナルティである。
――残り、一分三十秒。
沈黙が首を絞めていく。
戦闘で披露した体が熱を帯び、背筋に冷たい汗が伝う。
必要なもの――求めるモノはたった一つ、『確実に【嵐竜王】を討伐しうる一撃』である。
「――ッ!」
覚悟を決める。
【騎神】の――オリジナルスキルで特攻する。
アレウスと視線が交差し、ゆっくりと私は頷いた。
そして……
――残り、一分。
……状況は動いた。
『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
「――――っそが!!!」
目に映ったのは地面に押し込まれる形で拘束されたホオズキ。
そしてその上から鋭い破爪と風で抑え込む【嵐竜王】の姿だった。
(――ここが勝敗の分かれ目っ!!)
緊張で乾く口内。
とっさにアレウスの馬鎧を蹴り、走り出そうと動き出し……
「――《邪竜に審判を》!!」
その声が瓦礫の街に響き渡った。
――私ではない。
――リンでもない。
――ましてやリリィーズでも、ニートでもない。
それは変に低く、籠ったような中世的な声。
自身の<エンブリオ>を正面に、スキルの宣言を叫ぶ【竜騎士】ルノーの姿があった。
みんなの視線が一点に――ルノーへと集中する。
そして、
――『蒼銀の長槍』へと変化する彼女のロングソードを目にした。
同時。
私は……ホオズキとルノーを除く四人は一斉に走り出した。
それぞれが一つの確信、『ルノーが一撃を持ちうる事』を理解して。
――剣の……特殊な<エンブリオ>。
――『邪竜』というキーワードと『槍』。
――【嵐竜王】の攻撃を防ぎうる防御スキル。
その正体を、その真銘を私はおそらく知っている。
リリィーズはその知識故に。
ニートは<エンブリオ>の元にもなった本好き故に。
リンは知識は持たずとも、三人の心音が跳ね上がった故に。
私達は確信を持って走り出す。
そしてルノーの<エンブリオ>。
邪竜殺しの聖剣、魔剣は山ほどあれど槍が指すのは一つである。
――聖人ジョージ、そして彼が持つ邪竜殺しの武具。
『Type:エルダーウェポン、【竜滅聖槍 アスカロン】』
「……ここで決めるよ……《邪竜を討ち払う槍》!!」
――『必殺スキル』
スキルの宣言と同時に輝きを増す【アスカロン】。
私はその光景を見て確信し――ルノーへと向けて全速力で走り出した。
恐らく【ドラゴン】特化の<エンブリオ>、【アスカロン】。
では、何故初めからそのスキルを使わなかったかのか?
……答えは一つ。
(――『
ならば必要なのはその一撃を当てるAGIだ。
「ルノー!!」
「――ッ! 頼む!」
そして、私が取るべき行動はルノーを【嵐竜王】の元まで無事に届けることだ。
疾走するアレウス。
出来る限り伸ばした手がルノーの手を捉え、その重さが私の腕にのしかかる。
だけど……この程度の重さではアレウスの速度は遅くはならないだろう。
「……ルノー、しっかり掴まっててね」
「――え?」
「時間が無いから……全力で飛ばすよ!!」
握っていた強弓を《瞬間装備》でアイテムボックスへとしまい込む。
そして……一つのアイテムを腰のポーチから取り出した。
「フェイ! 全力でサポートしてっ!」
取り出したアイテム――【怨念のクリスタル】を【万死慈聖 アズラーイール】を斬り砕いた。
瞬間、辺りを濃霧のような怨念が拡散する。
同時に発動するのは『特典武具』である【アズラーイール】のスキル。
――《怨念燃焼》
まるで怨念に発火するかのように青白い炎が辺りを包み込み、
『KWEEEEEEEE!!』
その炎を吸収したフェイの《紅炎の炎舞》によって、<ブルターニュ>の街は炎の渦に包まれた。
◇【高位書記】ニート
視界が炎の渦に遮られる。
数メテル先も見えないほどの真紅の炎壁だ。
真紅から綺麗な蒼へ、蒼からオレンジへと変化する炎、見ているだけでもその熱量が伝わってくるほどだ。
だけど……その炎は全く熱を感じない。
そして、彼は――【高位書記】であるニートは理解した。
「これは……ヴィーレの炎か」
「フッ、そのようだな!!」
隣に立つ幼馴染の少女――【司令官】であるリリィーズ。
彼女は鼻で笑うように口端を吊り上げ……炎の先に居るだろう【嵐竜王】を睨みつけるように、視線を真っすぐと前へと向けた。
(本当に……いつも振り回してくれるなぁ)
……本当ならこんなゲームしたくもない。
無駄に人に関わって、無駄に精神をすり減らす。
おまけに給料も出ないときた。
こんなゲームしているくらいなら、家で本を読んでいる時間の方が幸せだろう。
こうして巻き込んでくる幼馴染さえいなかったら、絶対にやっていないと断言できる。
「……めんどくさいなぁ」
だが……やらねばならないのだろう。
こうして集った五人は本気で【嵐竜王】を討伐しようと……<ブルターニュ>を守ろうとしているのだから。
そして何より、リリィーズの目の前。
かっこ悪いところは見せられない。
(リンの奴は……もう行ったのか)
時間ももうないのだろう。
俺もすぐに動かなければならない。
そんなことを考えながらアイテムボックスから一冊の本――古びた絵本を取り出した。
「――《我は綴る》」
それは【幻想具現 アラビアンナイト】のスキルの一つ。
『召喚する登場人物を一人に絞り、その登場人物の持つスキルを一つ、完全ランダムで再現する』
《千夜一夜の物語》が『広範囲制圧型』だとすれば、これは『個人戦闘型』にあたるスキル。
そして……このスキルを使う本はこの一つしか存在しない。
「――《千夜一夜の物語》―『【聖剣王】の冒険記(中)』」
この世界で有名な【聖剣王】、その中でも【超闘士】との決闘にあたる物語。
暴風の鎧を身に纏う【嵐竜王】に近づけるのは……ルノーの援護を出来るのはこれしかない。
――燃え尽きる絵本。
――代わりに現れる一人の【聖剣王】。
そして、
「――行け、彼女たちを援護してくれ」
その言葉に頷くように【聖剣王】は鎧ズレによる金属音を鳴らし……
――超音速機動で掻き消えた。
その後ろ姿を見て俺も笑う。
「これは……当たりを引いたみたいだ……」
◇【騎神】ヴィーレ・ラルテ
――《一騎当神》、《幻獣強化》。
炎の壁が視界を封じる中、ルノーを後ろに乗せアレウスが疾走する。
超音速機動で駆け抜けるアレウス。
私はその手綱を握りしめ、【嵐竜王】の攻撃を避けることのみに集中する。
「……【嵐竜王】も私達が見えないはず」
願うようにこぼれた呟き。
――残り約三十秒。
【嵐竜王】との距離を無くすのには十分すぎる距離だ。
あと数秒程度あれば【嵐竜王】に肉薄することも可能だろう。
もちろん、何もなければの話だが……
『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
(……まぁ、そうだよね)
宙を揺るがす大咆哮。
同時に……視界を塞いでいた炎の壁、
――『真空空間』
先ほどまで私に使ったのと同じだ。
真空により、【嵐竜王】を中心とする半径十メテルの炎が掻き消えたのだ。
そして……目が合った。
こちらをじっと――いや、正確には私の後ろに《騎乗》しているルノーの姿をその蛇のような瞳孔が捉えている。
ではここから始まるのは……
『GAAALUGAAAA!!』
――私の《騎乗》技術と【嵐竜王】の遠距離戦。
ホオズキを捉えていた鋭い破爪が地面を叩き、辺り一帯の地面が割れる。
同時に爆風によって瓦礫が散弾のように周囲に飛び散った。
風を使った竜巻や鎌鼬を使用しなかったのは足元に押さえ込んでいるホオズキを警戒しているからだろうか?
どちらにせよ私はその光景に頬をつり上げ、口許を歪めた。
「……岩の攻撃か……【騎神】を舐めてるのかな?」
見えない鎌鼬や、疾走するアレウスを妨げる竜巻は厄介極まりない。
しかし、逆に言うのなら物体である瓦礫。
加えて亜音速程度の速度しかない攻撃など……
何より私は今、両手で手綱を握っているのだ。
この程度の障害は百回やってもミスなどしない。
「アレウス!!」
『BURURURUUUUUUU!!』
――跳躍。
そして散弾のごとき瓦礫へと着陸、跳躍を繰り返す。
小さな瓦礫は全て無視。
アレウスの馬鎧で弾いていく。
――残り、二十秒。
残り数メテル。
全方位へと向けた瓦礫の散弾を切り抜けた私達。
そして、開けた視界と同時に目に映り込んできたのは、
――『三本の竜の尾』
上から。
右から。
左から。
瓦礫を避け、着地するように疾走するアレウスに向けて巻き込むように振るわれた。
(――ッ!! 避けられない? いや、避けてみせる!)
リスクはあるがやるしかない。
まるで時間が圧縮されたかのようなスローモーションに見える光景を見て覚悟を決める。
握り混む手綱が汗で滑る。
ギリギリで手綱を引こうと手を緩め……
――『ガチャン』
ほんの一メテルというアレウスと【嵐竜王】の尾の間。
そこに一人の騎士が立っていた。
(……え?)
あまりに速すぎて――瞬間移動したかのようにも見える騎士、その甲冑の奥に隠れる目が一瞬合ったように感じた。
そして、
――三本、振り抜かれていた【嵐竜王】の尾が宙を飛んだ。
『GAAALUGAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
叫び声を上げる【嵐竜王 ドラグハリケーン】。
目の前にいたはずの騎士はまるで幻影だったように消え去っており、何が起こったのか分からない。
だけど……
「……行くしか、ない!!」
――残り、十秒。
距離は既に五メテル。
後はルノーがその一撃を【嵐竜王】に叩き込むだけ。
私は視線を前へと向ける。
そして……未だ強い光を灯す【嵐竜王】の目を見た。
同時に勘が。
《危険察知》が警鐘を鳴らす。
思わず手綱を引こうと反応する体、だが……
「構わない……行ってくれ!!」
後ろに騎乗するルノーが叫ぶ。
そして――それは解き放たれる。
『――《サイクロン・ヴォーテックス》!!』
――ゼロ距離のドラゴンブレス。
凄まじい暴風が。
耳をつんざむような轟音が。
思わず動きを止めてしまいそうなプレッシャーが。
真っ正面から私達を襲う。
だが……
【竜滅聖槍 アスカロン】は『【ドラゴン】特化の迎撃<エンブリオ>』なのだから。
故に――
「――《煌めく聖槍》!!」
目と鼻の先まで迫っていたドラゴンブレス。
それは一つの宣言と共に
いや、それだけではない。
【嵐竜王】が身に纏っていた赤いオーラ、『竜王気』までもが同時に消え失せていた。
『GAAALUGAAAAAAAAAAA!!??』
戸惑いの声を上げる【嵐竜王】。
同時に【アスカロン】を構えるルノーから距離を取ろうと、上空へと飛翔しようとして……
「ニャッハッハッハッハ!! もう少しここでゆっくりしていくニャ!!」
「ガッハッハッハッハ! 珍しく気が合うな、糞猫!!」
自慢の大きな竜翼が砕け散った。
自慢の鋭い破爪がビクリとも動かなかった。
――背には猫が。
――足には鬼が取り付いていたのだ。
身動きを封じられた【嵐竜王】。
その頭――【嵐竜王 ドラグハリケーン】のコアへと【アスカロン】の長槍が向けられる。
【反逆軍略 ハンニバル】と【司令官】のパッシブスキルで強化された槍。
【ドラゴン】特化の<エンブリオ>。
その一撃を防ぐすべはどこにもない。
輝く長槍は真っすぐに【嵐竜王】に迫り……
「――《竜牙一槍》」
その頭を一本の槍が貫いたのだった。
【<UBM>【嵐竜王 ドラグハリケーン】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【■■■■■■……
光の塵へと還る【嵐竜王】を見送るように空を見る。
嵐の止むことの無かった<ブルターニュ>の街並み。
しかし……
「……晴れたね」
空は嵐の過ぎ去ったかのような晴天を浮かべていた。
【嵐竜王 ドラグハリケーン】
種族:ドラゴン系
能力:竜王気・空気操作
最終到達レベル:72
討伐MVP:【??】??????
MVP特典:【■■■■ ドラグハリケーン】
発生:認定型
作成者:――
備考:天竜種であり、能力、ステータスが最高レベルな<UBM>。
息子(卵)が盗まれ、<ブルターニュ>に襲来するも<マスター>の迎撃に会い討伐される