自由への飛翔 作:ドドブランゴ亜種
出来れば、そちらを先に読むことをお勧めします。
■<旧・ホムレット平原> 【■■■■■ ■■■■■■■】
――“魔樹の森”
そう呼ばれる漆黒の樹林から一羽の怪鳥が飛び去っていく。
全身を真紅と蒼の炎で構築された怪鳥。
【炎怪廻鳥 フェニックス】と呼ばれる<エンブリオ>と、その背に《騎乗》するヴィーレ達である。
時間軸にしてヴィーレとホオズキが集合し飛び立った頃。
ヴィーレが新たに【女戦士】専用の防具を作りに、<アムニール>目指して飛行し始めていた時だった。
『KWEEEEEE~~!!』
パッシブスキルである《一騎当神》。
恐らくその効果が空を飛行するフェイにも発動しているのだろう。
その速度は当たり前のように超音速へと達し、身体から放たれている炎は《幻獣強化》によって空気を焦がす。
まさにほんの数秒の出来事だ。
その姿は、十秒も経たずに森の向こうへと消えていく。
そして――
――その様子を“魔樹の森”から
……本当ならば誰も居るはずがない。
まず第一に、<旧・ホムレット平原>に行くには『亜竜級』の海獣がひしめく<アームンディムの円湖>を越えなければならない。
しかし……陸と海中とは全く危険度が違う。
水中ではまともに動く子も出来ず、敵は下から、上からと全方位から襲い掛かってくるのだから。
そうなると空を飛び、辿り着く方法しかないのだが……これまた危険な道だ。
空には『亜竜級』、または『純竜級』モンスターである怪鳥が飛び交う樹林。
仮に辿り着いたとしても入り組んだ森の中を歩くことすら困難のだ、森に生息するモンスターに襲われて死んでしまうのがオチだろう。
だからこそ……ソレはそこに居た。
『MONNGAaaaaa~』
ソレは空を飛ぶ手段を。
ソレは怪鳥をなぎ倒し、森に生息するモンスターを倒しうる力を持っていたからだ。
そんなソレは<アムニール>へと飛び立つヴィーレを
そして、
(――あいつだ!!)
怒りに身を焦がすように自身の
(――あの赤髪の女が、炎の鳥が我らが同胞を焼き払った宿敵!!)
心の叫びに呼応するかのように、小さく丸い尻尾がブンブンと空気を切る。
木の実しか砕けそうにない小さな爪は、深く木の枝に食い込んだ。
――ソレはクリクリとした丸い目を持つ小さな獣。
――ソレの背中の毛並みには“黒の丸と燃える炎”のマークが浮かんでいる。
――ソレは……軍帽を被った
ソレの正体は――不思議な格好をした小さなモモンガ型のモンスターだった。
そんなモモンガが思い出すのは過去の悲劇。
ほんの一か月前に起こった殺戮の記憶である。
◆
レジェンダリアの自然が豊富な大きな樹林。
多くの種族のモンスターが棲みつき、互いに毎日の生死を糧に生きる自然の世界。
飛び抜けた力で拾い縄張りを持つモンスター。
特殊なスキルで隠れ潜むモンスター。
大きな群れを作り、生息するモンスター。
その生き方、種族は様々だ。
そしてその中でソレは……ソレらはひっそりと暮らしていた。
『MONGAaaa?』
『MONGA、MON、MONGAaaa~~』
ソレの種族名を【マグトリー・モモンガ】と言う。
戦闘能力をほとんど持たない、風に乗って住処を点々とする渡り鳥のようなモンスターである。
そんな【マグトリー・モモンガ】達は幸せの中にあった。
理由は一つ。
<マスター>の増加によって減った敵対生物の減少である。
【マグトリー・モモンガ】は基本、無害なモンスターであり討伐対象となることはほとんど無い。
木の実などを集めてひっそりと群れで暮らしているモンスターだ。
空を飛ぶ【ウィング・ホーク】の羽を狙う者。
森を支配する【フォレスト・ベアー】の毛皮を狙う者は居ても、小さな【マグトリー・モモンガ】を狙いに来る<マスター>は殆どいなかった。
――群れは今までが嘘のように大きなものとなった。
――資源は減ったが、敵対していた生物も減った。
全体のプラスとマイナスから見ればおおきなプラス。
ソレら――【マグトリー・モモンガ】から見れば幸せと言っても間違いないだろう。
いや、事実幸せで平和な暮らしが続いていたのだ。
――彼女が現れるまでは。
『地獄』だった。
ソレの大きな瞳に映るのは爛々と燃える大火。
一瞬の……一瞬の出来事だった。
森を飲み込まんと包み込んだ真紅の炎。
それは簡単に森を赤く染め上げ、森に住まうモンスター達を消し炭に変えていったのだ。
『森は燃えてはいない。モンスターでもない、小さな虫や生き物は燃えていない。
……ただ、モンスターだけがごうごうと燃えていた』
――《紅炎の炎舞》。
その炎はモンスターのみを敵対設定に放たれた炎だったのだ。
そして……【マグトリー・モモンガ】はモンスターである。
《紅炎の炎舞》に人のような意志があるわけでもない。
『
燃える森に響くのは群れの長たる……いや、群れの長だった【マグトリー・モモンガ】の悲痛な叫び。
その鳴き声は忌々しい炎の音にかき消され、誰の耳にも届かない。
そして……炎が消えた後に残っていたのは仲間たちの遺品――ドロップアイテムだけだった。
生き残ったのはほんの少数。
群れの中でも飛行に優れ、鋭敏な感覚を持っていた【マグトリー・モモンガ】の長。
そして群れの若い仲間たちだけだった。
群れの住処には何の襲撃後も無い。
それが彼らをより一層、何処か不思議な悲しさを募らさせていた。
『
仲間を失った悲しさ。
これからへの焦燥。
余りにも唐突な……夢のような不安。
それらの感情はソレのなかで渦巻き、膨れ、そして一つの感情に収束していった。
――『
ソレは自然と口から漏らしていた。
同時にソレではない……周りに居た生き残りの仲間の一人が気が付いた。
ソレの足元。
仲間たちのドロップアイテムの中に一つ不思議な――不可思議な、理解も出来ない“何か”が転がっていることに。
その仲間はそのことに首を傾げ、そして……
【デザイン適合】
【存在干渉】
【エネルギー供与】
【設計変更】
【固有スキル《爆撃灯火》付与】
【スキル《無敵飛行軍令》付与】
【スキル《MP自動回復》付与】
【死後特典化機能付与】
【魂魄維持】
【<逸話級UBM>認定】
【命名【爆撃軍曹獣 ボム・モンガー】】
直後、長だったソレの姿は一変したのだった。
◆
『
魔樹の森の枝に止まり、宿敵を見送ったソレ。
ソレ――【ボム・モンガー】はポツリとそんな言葉を漏らした。
……後ろを振り返る。
そこに並んでいるのは三十体の同胞。
【ボム・モンガー】と同じく、背中に“黒の丸と炎”のマークを背負っている同胞であり部下。
(――今ならあの赤髪の女に勝てるだろうか?)
つい先日、【ボム・モンガー】らは『純竜級』の怪鳥を打ち倒した。
今でもレジェンダリアの魔境でも生きていく程度の力はあるだろう。
そんなことを【ボム・モンガー】は思考し……
『
自身の考えを否定した。
自分たちは強くなった。
もう、無気力な……ただやられるだけの存在ではない。
だがそれは赤髪の女も同じ、自分たちと同じく成長を遂げているだろう。
先ほどの超音速機動がそれを確信へと塗り替えた。
だからこそ【ボム・モンガー】は新たな決意を胸に刻み込む。
『
『『『『『
『
【ボム・モンガー】の号令。
その掛け声と同時に一斉に木の枝から飛び跳ね、地面へと向け滑空する。
『GOWAAAAAAAAAAAAA!!』
そんな【ボム・モンガー】達の滑空先に居たのは一体の『亜竜級』モンスター。
先ほどのホオズキの焚火跡へと餌を探しに来た、“魔樹の森”で強さの最下層にいるモンスターだ。
そんなモンスターは見つけた【ボム・モンガー】へと牙を剥き――
――『BOMM!!』
【ボム・モンガー】たちの投下した爆弾によって消し飛んだ。
そして、その爆風に乗るように【ボム・モンガー】たちは高く……高く舞い上がる。
目指すは北。
樹林がきれた先にある白亜の城の未だ見ぬ地。
強さを求め、風に乗る。
ソレの――彼の――【ボム・モンガー】の旅はまだ始まったばかりである。
ネタ……だったはずなんだけど……なんかシリアス??
そしてヴィーレの悪者感ですww