自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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かなり短いです。

……本戦Aブロックは飛ばして次、決勝戦です。
書けなかったw 申し訳~


第6話 【戦車競走】―(中)

 □<“決闘都市”・ギデオン> 

 

 

 

 

 

 ――――それは『圧倒的(・・・)』だった。

 

 

 

 誰にとっても予想外であろう【騎神】――ヴィーレの出場。

 予選を勝ち抜いてきた強者たち。

 観客は誰もが白熱した【戦車競走】を確信し、その試合に注目したのは言うまでもないだろう。

 『闘技場』に鳴り響くアナウンス。

 それぞれが一列に並び、走り出すスタートラインに並ぶヴィーレ達。

 そして……

 

 

 ……誰にも見えなか(・・・・・・・)った(・・)

 

 

 スタートから絶対時間にして約十秒。

 その闘技場に立っていたのはただ一人、ヴィーレを除いて誰一人として居なかったからだ。

 

 

 ――【騎神】の奥義でありパッシブスキルである《一騎当神》。

 

 ――【幻獣騎兵】による《幻獣強化》。

 

 ――【女戦士】による《魔獣咆哮》。

 

 

 AGIが8000を超えるアレウスは音速を超え――超音速機動に移行し、そして……超々音速(・・・・)へ至る寸前の速度で疾走していたからだ。

 それに対して他の出場者たちのAGIはせいぜいが5000。

 何らかの<エンブリオ>のスキルを使ったのか1万少しが最高である。

 結果的に言えば、最低でも十倍以上の絶対時間による差が出来てしまっていた。

 

 

 『……フム』

 

 

 そして闘技場に張られた結界――内部時間の設定もまた、それらの出場者の速度を元に設定されてしまっていた。

 故に見えない。

 闘技場に響くのは何かが地面を掛ける轟音のみ。

 微かに視界に映るのはヴィーレが纏う炎の鎧の残り火。

 目に見えて分かるのは、炎の残り火が一周するたびに――一人、また一人と消えていく出場者の光の粒の残滓のみ。

 

 もう一度言おう……圧倒的すぎたのだ。

 結果、第一ブロックのレースは盛り上がる暇もなく終わることとなってしまっていた。

 

 

 『……この結果は少し予想外だったな』

 

 

 そんなレースの詳細を認識できていた者がたった二人だけいる。

 

 一人は【戦車競走】が開かれる<ギデオン>へと護衛の任についていたもう一人の『超級職』、【天騎士】ラングレイ・グランドリア。

 

 そして、

 

 

 『まさか劣化化身がこれほど早く『超級職』を会得するとは……“冒涜の化身”め』

 

 

 二人目の『超級職』である人物。

 【大賢者】と呼ばれる老人は“王都”<アルテア>から遠距離投影魔法をを用いて、その【戦車競走】の様子を覗き見ていた。

 

 

 『……まさか作れらた体でも<アーキタイプ・システム>に反応するのか? ……いや、それはあり得ない。あの劣化化身のセンススキルによるものだろう』

 

 

 “王都”<アルテア>の地下深くに存在する工房。

 【大賢者】と数少ない者しか知らない秘密の部屋で【大賢者】は一人、ブツブツと呟きながら自身の考えをまとめ続ける。

 その様子は何処か機械のような。

 まるで人では無いかのような一面を覗かせていた。

 そんな【大賢者】の永遠に続くかと思われた思考は突然止まり、そのローブに隠れた顔を上げた。

 しかし……視線は【戦車競走】の映像を映していない。

 何か、遥か昔をを思い出すかのような懐かし気な(・・・・・)目を浮かべていた。

 

 

 『……それにしても懐かしいものだ。あの兵器がこの時になって日の目を浴びることになろうとは』

 

 

 思い浮かべたのは他でもない。

 

 

 

 ――【怒涛之迅雷(ラーズ・ライトニング)】。

 

 

 

 当時の名工、フラグマンが持ちうる最大の(・・・・・・・)技術(・・)を詰め込み、完成させた『失敗作(・・・)』である。

 

 ――性能としては、それこそ『煌玉馬』にすら劣らない。

 ――そして……決して誰にも使えない失敗作。

 

 『空を飛ぶモンスターとの戦闘における補助』を目的とした造られた兵器であり、誰にも使われることなく遺跡に取り残された彼の遺物。

 後の煌玉馬第一号である【黄金之雷霆(ゴルド・サンダー)】の前身となった印象深い兵器である。

 

 現実での歴史のように、その戦車としてのコストや耐久度、操縦の困難さから『特殊装備品』から『煌玉獣』へと移る切っ掛けとなった最後の兵器だ。

 

 

 『……当時は誰にも乗りこなせない駄作だったが、まさか乗りこなせる可能性があるのが劣化化身とは皮肉だな』

 

 

 【騎兵】専用――戦闘系超級職(・・・・・・)の戦車。

 それはフラグマンが想像した以上に癖のある、乗れない兵器であった。

 

 

 

 

 ――『AGIが1万程度の速度で、MP&SPを消費することなく魔法上級職の奥義に匹敵する《雷魔法》をまき散らす』蹂躙の戦車。

 

 ――『どんな地形であろと難なく走ることが出来る』、魔導車輪。

 

 ――『騎乗者の負担にならないように搭載された』、《慣性自在》と《重力軽減》スキル。

 

 

 

 

 これだけ見れば、確かに煌玉馬にも劣らない古代兵器。

 しかし……【怒涛之迅雷】には致命的な問題があった。

 

 

 『乗れるものが居ないとは……私にしては珍しい失敗だったな』

 

 

 【怒涛之迅雷】は戦闘系超級職用の戦車。

 

 

 ――では、誰が乗る(・・・・)

 

 

 まともな戦闘系超級職では【怒涛之迅雷】を《騎乗》し切れるほどのスキルを持ってはいなかった。

 【騎兵】系統の超級職――【超騎兵(オーヴァー・ライダー)】は十分な力を引き出せるほどの騎獣(・・)を保有しては居なかった。

 そして最も可能性のあった【騎神】。

 しかしそれは……扱うのすら難しい、ピーキーな【神】シリーズ超級職だった。

 

 

 数百年の時の間、遺跡の中で埃をかぶり続けた【怒涛之迅雷】。

 それを見つけ出したのが【騎神】としての天才と謳われた前任、【騎神】カロン・ライダーであり、戦車を装備できない人馬種族なのだから皮肉なものだ。

 名工、フラグマンの作品でありながら一度として乗られたことのない兵器。

 

 

 ――それが【怒涛之迅雷】と呼ばれるチャリオッツだった。

 

 

 『……喜ばしいが、それを扱えるのが劣化化身だというのは喜べんな』

 

 

 【大賢者】は能面のような無表情な顔で呟く。

 そして……

 

 

 『『『『『ワァァァァァアアアッッ!!』』』』』

 

 

 突然、工房に響き渡った大歓声に思考を中断する。

 ……男は再び【戦車競走】を移す映像へと、決勝戦(・・・)の始まった闘技場へと視線を移したのだった。

 

 

 

 




怒涛之迅雷(ラース・ライトニング)
戦闘系超級職用、『特殊装備品』―チャリオッツ。
名工、フラグマン作の魔導兵器。

アイテムとしては高性能だが色々な理由で使われなかった……使えなかった兵器。


――AGI、1万近くだせる『騎獣』。
――御しきれるほどの《騎乗》とジョブの持ち主。
――それらのジョブをとれるだけの高い才能。


その他もろもろの条件を満たした者しか扱えない、失敗作だった。
(師匠は人馬種族の為、装備不可)
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