自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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後半に行くにつれ、適当になっていくスタイル。


第10話 エピローグ

 □<アルター王国・南西部> 【騎神】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 

 そこは“決闘都市”・<ギデオン>の南東部に位置する山岳地帯。

 <カルディナ>との国境地帯の山脈続きの山々が連なる場所であり、<アルター王国>では珍しい『亜竜級』モンスターが跋扈する危険地帯だ。

 少し離れたところには<カルディナ>との交易路近くの廃棄砦を根城とする凶悪な盗賊団。

 そしてその他、運び込まれるアイテムを狙う山賊たちが多く狩場にし、通るならば必ずといってよい程護衛が必要不可欠な<クルエラ山岳地帯>が広がる場所。

 しかし……それよりも遥かに危険な。

 『決闘ランカー』などの強者である<マスター>もレベル上げに来る、高レベル帯の山。

 

 

 ――そんな危険な山に三人の人物が訪れていた。

 

 

 

 

 

 『HIHIIIIIーー~N!!』

 

 

 人の足で登るには一苦労しそうな険しい山。

 ゴツゴツとした岩肌をものともしないで駆け走るアレウスの嘶きが広大な山に木霊した。

 ――それは威嚇。

 『亜竜級』のモンスター達の縄張りに踏み込んだアレウス。

 そんなアレウス……侵略者から山に棲みつくモンスター達への挑戦的な嘲りの嘶きだった。

 

 もちろん高い知能を持つモンスターならばそれが罠だと気付いただろう。

 元よりアレウスは『純竜級』モンスターである【グランド・デミ・スレイプニル】、特殊なスキルや特性を持つモンスター出ない限り天地がひっくり返ってたとしても『亜竜級』モンスターが敵うはずも無い。

 故に――その嘶きに煽られるように現れたのは知能の低い。

 この山岳地帯でもヒエラルキーの最下層に居るようなモンスター達だった。

 

 

 『GAWOOOOOOOOOOーー~!!』

 

 

 木々の奥。

 緑一色の草むらから飛び出してきたのは一匹の狼。

 【アーマード・ベイウルフ】という、固い鎧のような甲殻なような毛並みを持つモンスターだった。

 狼系モンスターでありながら群れを作らない一匹狼。

 【アーマード・ベイウルフ】はその魔獣系モンスター特有の素早いAGIで山を下るように加速する。

 そして一息にその凶悪な鋭い牙をアレウスの首に食い込ませようとして

 

 

 ――絶命した(・・・・)

 

 

 知能の低さ故か。

 それともヒエラルキーの最下層という焦り故か。

 【アーマード・ベイウルフ】は気が付けなかった。

 

 

 ――澄み渡るような晴天の空、そんな中響き渡る落雷の音(・・・・)に。

 

 ――なにかが焼き払われた(・・・・・・)ような焦げくさい臭いに。

 

 ――森の中に木霊するアレウスの嘶き、それに被せるように木霊した車輪の轟音(・・・・・)に。 

 

 

 そんないともたやすく【アーマード・ベイウルフ】を焼き払ったモノに《騎乗》する私。

 アレウスが引くソレに乗りながら一部始終をみていた私は小さく笑みを漏らした。

 それは少しの困惑。

 そしてそれ以上のワクワクの笑みだ。

 

 

 「……ほんとに凄い威力。『亜竜級』モンスターが殆ど一撃……【女戦士】のレベルも25をすぐに越えちゃうし、何だか少しだけ申し訳ない気持ちになってくるね」

 

 

 上級魔法職なみの《雷魔法》で辺りを焼き払いながら突き進むソレ――【怒涛之迅雷】。

 【怒涛之迅雷】に《騎乗》しながら手綱を握る私は小さく呟く。

 呟いた声は一瞬のうちに後方に置き去りになる。

 超音速機動で駆ける【怒涛之迅雷】への《騎乗》による激しい風圧が頬を吹きつけ、マッハを越えた事により発生した重力が身体を後ろへと引っ張った。

 しかし、それらの既に慣れ親しんだ負担をお腹に『グッ』と力を込めることで持ち応える。

 

 

 「今更だけど《風圧耐性》や《持久力強化》なんかのスキルレベルを上げていて良かったね」

 

 

 もしも、それらのスキルが無かったらと思うとゾッとする。

 自身でのステータスによる高速機動では自然の法則のようなものは無視することが出来るらしい。

 しかし……【騎兵】系統。

 そして【操縦士】系統なんかのジョブは違う。

 自身で走るわけではない以上、どの行動にも負荷が掛かってしまうのだ。

 

 (アレウスに《騎乗》して走り出したら頭が吹き飛ぶ……なんて冗談笑えもしないよ)

 

 逆に言えば、【騎兵】系統は《騎乗》による負荷に対する汎用スキルが、他のジョブより多いとも言えるだろう。

 

 

 「積極的に『騎兵ギルド』のジョブクエストを受けたかいがあったかな?」

 

 

 【怒涛之迅雷】へと繋がった手綱を片手に。

 フリーの手を空中で走らせ目的の『ウィンドウ』を開いた。

 

 

 

 

 

 『  ・

    ・

    ・

  《獅子勇心》Lv.5

  《風圧抵抗》Lv.10

  《持久力強化》Lv.9

  《筋力強化》Lv.10

    ・

    ・      』

 

  

 

 

 まさに努力の成果だ。

 幾つものジョブクエスト。そして師匠との修行の中でそのほとんどが、レベル限界まで上げられている。

 これらのおかげで無事にアレウスやフェイにも《騎乗》出来ていると言っても問題ない程だ。

 開いたままのメニューをそのままに。

 未だに慣れず、気の抜けない【怒涛之迅雷】の操作とアレウスへの《騎乗》に意識を集中させた。 

 同時に新たなモンスターが飛び出し――ひき潰されてドロップアイテムになる。

 

 『【女戦士】Lv.34』

 

 開いていた私の『ウィンドウ』。

 半透明な画面に表示されていたジョブレベルがまた一つ、その数値を変化した。

 

 

 「何でお前がモンスターの心配してんだよ。モンスターはモンスターだぜ? レベルが上がりやすいんだ、単純に喜んでればいいんだよ」

 

 「……歩かなくていいから、らく」

 

 

 【怒涛之迅雷】を操作する私。

 その後ろに座りこむ様にチョコンと相乗りしていたホオズキとシュリちゃんが私の呟きに反応した。

 かなり狭いからだろう、ホオズキの膝上に座るシュリちゃん。

 そのシュリちゃんに抱えられるようにして雛鳥形態のフェイがうたた寝する。

 ――二人と一匹。

 何もしていない(・・・・・・・)その姿を、私はチラリと傍目で一瞥した。

 

 ――そう、何もしていない。

 

 アレウスはただ全力で【怒涛之迅雷】を引いて走っているだけであり、私はそのチャリオッツが木などにぶつからないようにアレウスに指示を飛ばしているだけ。

   

 (……確かにこれは『兵器』だ)

 

 モンスターを焼き払う紫電も。

 険しい道をものともしないその性能も。

 【騎神】の《一騎当神》や《幻獣強化》を使わずとも超音速機動に至(・・・・・・・)ることが出来る(・・・・・・・)補正(・・)も。

 それらの全てを【怒涛之迅雷】が補っている。

 

 

 「デメリットもあるけど、これはやっぱり強すぎだよね……」

 

 

 私はそう独り言をしながら、【怒涛之迅雷】の詳細が記されたウインドウを片手で開いた。

 

 

 

 

 

 【怒涛之迅雷(ラーズ・ライトニング)

 『特殊装備品』(騎乗用)

 先々期文明の名工フラグマンが制作した『戦闘系超級職』専用騎乗チャリオッツ。

 『完成された失敗作』

 詳細不明。

 

 装備スキル

 ・《駆ける迅雷》

 ・《慣性操作》

 ・《重力軽減》

 

 

 

 

 

 その姿を近くで見れば、無骨ながらも緻密に作られたのがよく分かる。

 私よりも遥かに大きいオレンジ色の魔導車輪。

 【怒涛之迅雷】の本体部分は耐久力に秀でた【アダマンタイト】で形どられているが、実際に乗ってみると金属特有の硬さや冷たさは全く感じない。

 張り巡らされたモンスター皮が衝撃を完全に吸収しているようだ。

 内部からは機械音のようなものも聞こえてくる。

 見えはしないけど機械と魔法のハイブリットらしい。

 

 

 「問題は……スキルの方かな?」

 

 

 そう、スキルだ。

 【怒涛之迅雷】の装備スキル、それらはどれも『特典武具』についていても可笑しくないような強力なスキルばかりだった。

 私はウインドウに載せられたそのスキルをタップし、詳細を表示する。

 

 

 

 《駆ける迅雷》

 ・パッシブスキル

 装備者が《騎乗》することで発動するスキル。

 装備者の《騎乗》レベル×5%、騎獣のAGIを引き上げ、走行スピードに応じて《雷魔法》を纏う。もしくは放つことが出来る。

 

 

 《慣性操作》

 ・アクティブスキル

 急停止や急発進、直角に曲がるなど本来では有り得ない行動を可能とする。

 

 

 《重力軽減》

 ・パッシブスキル

 重さを軽減する。

 

 

 

 ……特に一つ目のスキル、《駆ける迅雷》が強力だ。

 

 (私の《騎乗》スキルのレベルは10)

 

 つまり、今この状態でもアレウスのAGIは50%引き上げられていることとなる。

 アレウスのAGIは素で8000程度なので……何のスキルを使わずとも超音速に達している計算だ。

 加えて、《雷魔法》は対物にも大きな効果を発揮する魔法属性。

 そんな雷が無差別に周囲に放たれるとなると……

 

 

 『KIIIEEEEEEEEEッ!!』

 

 『GA、GUGAWOOOOOOOOOO……』

 

 『---~~ッ!!』

 

 

 【怒涛之迅雷】から放射状に放たれた紫電が迸り、隠れていただろうモンスター達を焼き払っていく。

 例え、木の中だろうと岩陰だろうと関係ない。

 紫電はそれらを破壊し、融解し、簡単に『亜竜級』モンスターを倒していった。

 

 

 「……」

 

 

 チラリと駆けてきた道のりを覗き見る。

 そして――私は目を反らした。

 

 

 ――木々が生い茂る山に出来た一本の道。

 ――何故か地面がはっきりと見えるその道には地面が砕かれ、そして焼き溶けて就いただろう二つの車輪跡と一頭の馬の蹄がくっきりと残っているのを見て。

 

  

 ……きっと誰がやったかなんて分からないよね?

 モンスター同士の争いで付いた可能性もあるわけだし。

 

 

 「なぁ、そろそろ今回のターゲットは見つかったか?」

 

 「……【キング・バジリスク】」

 

 「うーん、それらしい痕跡(・・)はまだ見つからないかなぁ」

 

 

 そう、今回私達はただこの山を荒らしに……レベル上げに来たわけではない。

 私達が受けたクエスト、それは

 

 『<クルエラ山岳地帯付近の山で起こった異変の調査、そしてその原因の排除』

 

 である。

 クエスト発生の切っ掛けは<カルディナ>とを繋ぐ交易路の付近で見つかった腐り落ちた植物(・・・・・・・)の発見だった。毒を使うモンスター事態は<アルター王国>でも珍しくは無い。

 しかし……問題はその原因となる毒のレベルと範囲、そして辺りに残された戦闘恨だった。

 

 ――余りに広範囲、かつ地面から腐臭が上がるほどの猛毒。

 ――大型の『純竜』のモノであろう爪痕。

 

 それらから導き出されるモンスターはそう多くは無い。

 

 

 ――特級の危険生物に指定され、常に賞金がかけられているモンスター――すなわち【キング・バジリスク】。

 

 

 迅速かつ、確実に仕留めなければ山一つ腐り落ちるだろう被害が出る『緊急クエスト』。

 そしてそこに居合わせてのが私だ。

 【戦車競走】で見せた戦闘力に加え、状態異常の効かない<エンブリオ>。

 白羽の矢が立つのも頷ける。

 

 

 「ホオズキの方は見つけられないの?」

 

 「あー、俺達は『血』の感知に長けてるつってもあくまで流血してる血だけだ。怪我も何もしてない奴の血を感知できるほど万能でもねぇんだよ」

 

 「……半径20メテル、反応なし」

 

 

 【キング・バジリスク】がちょうど運よく怪我をしているとも思えない。

 そもそも敵は猛毒を操り、強固な竜鱗を持つモンスターだ。

 ホオズキ達が見つけられる可能性はあまり期待できないと考える方がいいだろう。

 

 (……と、なれば)

 

 と恵右行動はたった一つ。

 私は新たなスキル――五つ目のジョブ(・・・・・・・)のスキルを行使した。

 

 

 「――《ハンティング・フィールド》」

 

 

 私が【女戦士】と同時進行で取ったジョブ。

 それは【狩人】系統派生下級職――【弓狩人(ボウ・ハンター)】だった。

 対モンスター系統のスキルを多く覚えることができ、覚えられる汎用スキルの数も多い。

 

 ――弓での攻撃スキル。

 ――汎用的な《殺気感知》や《看破》などの汎用スキル。

 

 それらは現状の私にとって足りないものを全て補ってくれるジョブだったのだ。

 そして今回使用したのは《ハンティング・フィールド》。

 一定範囲内のモンスターの位置などを知ることが出来る感知系スキルである。

 私の【弓狩人】のレベルは1。

 もちろん【弓狩人】で覚えることのできるスキルのレベルも1であり、《ハンティング・フィールド》の効果範囲もごく狭い範囲でしかないのだが……

 

 

 「……見つけた」

 

 

 範囲のギリギリ内側。

 《ハンティング・フィールド》に引っ掛かった一際大きな反応を感知した。

 そして……私は冷たい汗を流す。

 

 

 「……ホオズキ」

 

 「あぁ?」

 

 「【キング・バジリスク】だと思ってたけど……もしかしたら違うかも。どちらかと言うとこれは――」

 

 

 (――<UBM>)

 

 これまで戦ってきた<UBM>との雰囲気に似ていた。

 何も可笑しいことなどではない、元々【キング・バジリスク】とは確定しては居なかったのだから。

 慣れない【怒涛之迅雷】での戦闘。

 微量な不安感が手に汗を滲ませた。

 

 

 「ヴィーレ、近づくと同時に降りる、援護たのんだぜ」

 

 「……戦闘しないで済むと、思ってたのに」

 

 

 背後でホオズキが立ち上がるような気配を感じ取る。

 狙いは一瞬。

 出会いがしらの首だ。

 【怒涛之迅雷】の紫電で怯ませ、ホオズキがその首を切り落とす。

 上手くいけばそれでお終いだ。

 

 

 「フェイ、アレウス、準備は良い?」

 

 『KUWEEEEEEEEEEE!!』

 

 『BURURURURURUUUッ』

 

 

 フェイが猛毒を打ち消す《蒼炎の再生》の準備を。

 アレウスが《幻獣強化》と《一騎当神》、《魔獣咆哮》と《限界突破》の発動準備をする。

 そして――

 

 

 「……行くよッ!!」

 

 

 ――私は手に握り込んだ手綱を引き、【怒涛之迅雷】が紫電を発しながらその場所へと駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――――えッ?」

 

 

 そしてそれを見た。

 ……見てしまった。

 

 

 ――視界を奪った噴火かと思うほどの大爆発。

 

 ――チラリと見えた『緊急クエスト』の原因だろう<UBM>の名。

 

 ――爆発音に被さり掻き消された、その<UBM>の断末魔を。

 

 

 (ッ! とにかく一旦この場を離れなきゃっ!)

 

 急遽、アレウスに指示を出し、その場から離れるように離脱する。

 モクモクと視界を隠す土煙。

 少し離れた場所でそれを見ていた私達は土煙がおさまりだすとその光景を目にした。

 

 

 「こいつは……ただの戦闘じゃこうはならねぇな」

 

 「……血の反応、無かった。……たぶん一撃、かな?」

 

 

 砂煙がおさまりだした山面。

 そして大小無数のクレーターによって荒れ果てたその姿を。

 もちろんそこに<UBM>の姿など残っているわけもない。

 ただ分かったことは、<UBM>すら一撃で仕留めうる“何か”がその場にいたということだけ。

 

 

 「……《ハンティング・フィールド》」

 

 

 先ほどの爆発からそれほど時間も経ってはいない。

 まだ近くに潜んでいるのではないか?

 そんな考えから発動させた《ハンティング・フィールド》。

 そのスキルに反応は――

 

 

 

 

 

 ――あった。

 しかし、先ほどまでとは違う。

 一体の<UBM>とそれに付き従うような大量のモンスターの反応。

 《ハンティング・フィールド》の範囲ギリギリに捉えた、その反応を確認すべくそれらの方向へと振り返った。

 

 

 「……【爆撃大尉獣 ボム・モンガー】?」

 

 

 そして大空を滑空するように飛ぶ、それらの姿を。

 それを率いる<UBM>の名を呟いたのだった。

 

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