自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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これからテスト期間が始まるので更新遅れます。
今日も一日、がんばるゾイ!


第6話 第一試練

 □<旧・ホムレット平原> 【騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 【クエスト【弟子入り――【騎神(ザ・ライダー)】の技を引き継ぐ者 難易度:七】が発生しました】

 【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】 

 

 

 「え? 【騎神】って何?」

 

 

 頭に鳴り響く『イベントクエスト』の発生を告げるアナウンス。

 私も<Infinite Dendrogram>を始めて何度かイベントクエストを受けた事もあるので聞いたことがある。それらは全てレジェンダリアに住むティアンの御使いクエストのようなもので、どれも難易度は一~二程度だった。

 しかし今のアナウンスに出てきた、聞いたこともない【騎神】というジョブ。

 そしてその困難さを示す、難易度:七という難しさ。

 高難易度のモンスター討伐クエストでもこの難易度はそうそう見ない。

 

 

 「【騎神】って、もしかしなくてもゴストさんの事ですよね?

  ……本当にゴストさんって何者なんですか?」

 

 「フフッ、ただの時代に取り残され死に遅れた亡霊(・・)ですよ。就いていたジョブが偶々【騎神】だっただけです」

 

 

 ゴストさんは軽く笑いながら、そう言い流す。

 彼の言う『亡霊』の意味はよく分からないが、ゴストさんはきっとかなり凄い人なのだろう。

 しかし【騎神】が何かよくわからない。

 騎兵ギルドの皆は大体【騎兵】の上級職である『大』や『疾風』といった名詞が付いたジョブに就いていた。しかし『神』が付くジョブなど聞いたことも見たこともない。

 

 

 「あの、ゴストさんの【騎神】って騎兵系統のジョブですよね? どんなジョブなんですか?」

 

 

 気になったので堪らずゴストさんに質問する。

 するとそんな私に驚いた顔をすると何かを思い出したかのように笑い出した。

 そんな反応をされると少し頭にくる。まるで私が無知の様じゃないか! ……事実ではあるが。

 

 

 「そう言えばヴィーレさんは<マスター>でしたね、それでは知らないのもしょうがありません。

  まずは私の知っているジョブについてお話しましょう」

 

 

 彼はそう言いながら焚火の前に座り込む。

 そんな彼に従うように私とアレウスは焚火の前に腰を落とした。

 それを機にゴストさんは私に質問を投げかける。

 

 「ヴィーレさんはこの世界においてジョブは大きなくくりに分けるとどうなるか分かりますか?」

 

 「50レベルまでしか上がらない下級職と100レベルまで上がる上級職ですよね? 誰でも下級職は6つ、上級職は2つまで就けると聞いてますが」

 

 「ええ、その認識で間違いありません。ですがその中にも例外が存在します。

  それは『超級職(スペリオル・ジョブ)』と呼ばれるジョブです」

 

 

 ……聞いたこともない。

 しかし、名前からして特別なジョブだとは分かる。

 

 

 「その名の通り超級職は上位職より上、最高位職とでも考えてください。そしてこの超級職の特別な点は、レベルの上限が存在しない事。そして下級職や上位職の枠を埋めることなく、それぞれに固有の『奥義』が存在することです」

 

 「……それってあまりに強すぎませんか?」

 

 

 他の<マスター>が聞いたら仰天してすぐに超級職に就こうとするだろう。

 それほどレベルの上限がないというのは凄まじすぎる利点だ、何と言ってもレベルが上がる限りステータスも上がるのだから。

 誰もがこぞって就こう超級職を目指すはずだ。

 

 

 「もちろん誰もが就けるわけではありません。

  それぞれの系統にいくつかの超級職がありますが就けるのはこの世界でたった一人です。それに人生を掛けてようやく達成できるような転職条件ばかりですから」

 

 

 超級職には一人しか就けない。

 それが超級職の凄まじさを物語っているように感じる。

 しかしその超級職である【騎神】についているゴストさんは本当にすごいのではないだろうか。

 

 

 「私のジョブである【騎神】はその中でも一際異色です。

  超級職には神シリーズのようなものが存在していて、その系統において最も技術が優れた者やその『神』に相応しい行動をとった者しか就くことはできません。

  例で言えば、天地で名高い【匠神(ザ・クラフト)】などですね」

 

 「最も技術が優れた者って……もしかして自慢?」

 

 「そうではありませんよ。それぞれの技術に特化した、つまりスキル特化職ということです」

 

 

 つまり【騎神】は騎乗スキル特化の超級職。

 そしてゴストさんは騎兵系統において最も優れた技術の持ち主だということなのだろう。段々とジョブについては分かってきた。

 しかしそれでも一つ分からないことがある。

 

 

 「でも何で私を弟子にしようなんてするんです?

  騎兵ギルドには上位職の【大騎兵】や、【疾風騎兵】についている先輩もいます。私のような初心者よりも適した人がいると思うんですけど」

 

 

 その言葉に彼は苦い顔をした。

 何か変な事を言っただろうか?

 

 

 「私は騎兵ギルドには顔向けできないのです。それに私が顔を出しても悲しませるだけですから……」

 

 「……」

 

 

 何も言えない。

 何があったか聞いてみたくはあるが、これ以上は踏み込んでくるなと言う雰囲気が漂っていた。

 そんな彼の言葉に私は無言で俯いた。

 

 

 「私ももう年です、むしろ長く生き過ぎてしましました。今では色々な状態異常も出てきてしまい、最勢期の五分の一も出せません。

  あと数日、死を待つだけの日々でした。私の前にヴィーレさんが現れたのは」

 

 

 私は顔を上げて彼の顔を見た。

 

 

 「幸運な事に貴女は【騎兵】についていました。そして伝説に謡われる<マスター>だった。

  そして今、貴方の騎獣であるアレウスを見ても貴女が才能ある【騎兵】であることもわかります。

  だからこそ、これから時代を担う<マスター>であり【騎兵】であるヴィーレさんを弟子にしようと考えたのです」

 

 「私に……才能がある?」

 

 「ええ、今はまだまだ未熟です。ですがいつかは……【騎神】にもなれると考えています。勿論あなた次第ではありますが」

 

 

 そんな事言われてやる気にならないわけがない。

 それにあのモンスターにリベンジするためにも新しい力が欲しいと思っていたところだ。

 私は隣に伏せるアレウスを見る。

 するとアレウスは分かったとでも言うように頷いた。

 こうなれば例え、達成できないような難易度の弟子入りだろうとやってやろう! どれだけボロボロになろうと食らいついてやる。

 

 

 「……これからよろしくお願いします、ゴスト師匠!」

 

 「……ギルマスの次は師匠ですか。フフ、悪い気はしませんね」

 

 

 こうして【騎神】の……高難易度のクエストは始まりを告げたのだった。

 

 

 

 

 「でもよかったですね。<ハムレット平原>には今、亜竜級や純竜級モンスターが蔓延り、アクシデントサークルなど色々な罠があるので私抜きで探索でもしていたらヴィーレさんは死んでいましたよ」

 

 「……本当にお世話になります、師匠」

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 師匠に助けられ、弟子入りの高難易度のイベントクエストを受けてから一夜。

 私とアレウス、そして師匠は<アームンディムの円湖>から離れた<旧・ハムレット平原>の奥地へと来ていた。

 だがそこは『平原』とは全く違う。

 <グリム森林>よりも入り組み、地面が見えない程捻じ曲がった大魔林。

 森の中に漂う空気は、今にもアクシデントサークルが起きそうなほどの高密度の魔力と自然の霧が混ざり合い、数メテル先は全く見えない。

 そんな森の中を亜竜級の植物モンスターが、純竜級の怪鳥が襲い掛かって来る。

 本当に師匠が助けてくれなければ一瞬にして死んでいただろう。

 

 

 「はぁ、はぁ……師匠。 なんでアレウスに騎乗しなきゃならないんですか? 凄く進みずらいんですが」

 

 

 そんな入り組んだ迷路のような大魔林を私はアレウスに騎乗しながら移動する。

 常に警鐘を鳴らす《危険察知》。

 熱気の籠った森の中。

 アレウスへの繊細な指示。

 集中力を欠かせない上に悪状況に息が上がり、汗で胸と服が張り付いてくる。

 

 そんな私の前を師匠は汗一つかかずに進んでいた。

 アレウスと同じ四本脚にも関わらず進んでいけるのは、流石【騎神】としか言いようがない。

 

 

 「この<ハムレット平原>は何処も入り組んだ森になっています。その中で戦闘をするのですから慣れておかなければいけませんから」

 

 

 (この森の中で戦闘!? 弓さえまともに当たらないんだけど)

 

 心の中で疑問と愚痴が浮かび上がっては沈んでいく。

 そして戦闘。

 つまりモンスターとの戦闘だろうが最低でも亜竜級だろう。平原ならどうにか勝てそうだが、この森の中では絶対に勝てないだろう。

 必死に前方をスイスイ進む師匠を追いかけながら絶望する。

 

 

 「この先に居るのは【亜竜猛虎(デミドラグタイガー)】という亜竜級モンスターです。木々の間を跳躍しながら鋭い爪で攻撃してくる厄介なモンスターですね。

  ヴィーレさんにはその【亜竜猛虎】を倒して貰いたいと思います」

 

 「……絶対死にます。無理です」

 

 「心配いりません。私の《看破》したところではアレウスは亜竜級並みのAGIを持っています、《騎獣強化》も加われば【亜竜猛虎】よりも速いでしょう。

  それにヴィーレさんの弓があれば問題なく倒せますよ」

 

 

 ……もしかしてこの人は教えるのが物凄く下手なんじゃないか? そんな疑問が絶えない。

 こんな森の中で弓が満足に使えるわけがない、アレウスに騎乗するのさえ困難なのだ。

 

 

 「念の為に聞きますけど、やられそうになったら助けてくれるんですよね?」

 

 「何を言っているんです、それでは修行にならないじゃないですか。

  唯でさえ【騎兵】として未熟なんです。それではいつまでも私の技を教えられません」

 

 

 駄目だ、超スパルタだ。

 師匠は寿命を大きく超えて生きてるらしく、いつ寿命で死んでもおかしくない。

 きっとその事に対する焦りも修行を厳しくしているんだろう。

 私はリアルではたくさんの習い事をしてきた、一週間で10つの習い事をしていたこともあるほどだ。しかしこれほど厳しい修業は絶対に初めてだ。

 

 

 「言い忘れましたが制限時間は五分です。その間に倒してください」

 

 「え? どうして?」

 

 

 思わず素が出てしまうほどの厳しさ。

 その質問に師匠は当たり前のように答える。

 

 

 「【騎兵】の優れているところは、その速さで敵を翻弄させることが出来ることです。

  しかしいつまでも戦える訳ではありません。騎獣にも体力がありますから。

  つまり【騎兵】とは短期戦闘に優れたジョブと言うことです。そして貴女の騎獣であるアレウスが全力で戦えるのは五分と言ったところでしょう」

 

 

 確かにアレウスにも体力があるはずだ。

 今まで自身より弱い敵としか戦った事が無かったので、そこまで気にしたことは無かった。

 しかし理屈は通っている、むしろその通りだ。五分と言うのは制限時間とではなく戦える時間と言うことなのだろう。

 そんな事を考えていると、いつの間にか立ち止まっていた師匠に追いついた。横から師匠の前を除き見るとその先には一体のモンスター。

 二メテルにも及ぶ大きな体にギラついた眼、牙や爪は包丁より大きく鋭い。

 見ているだけで勝てる気がしなくなってくる。あんなのに本当に勝てるのだろうか……。

 

 

 「ではヴィーレさん、実力を拝見しますよ」

 

 「行くしかないんですね……」

 

 『Bruuuuu』

 

 

 私は唸るアレウスと共に、いつもより確実に遅いスピードで駆けだしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いは熾烈を極めていた。

 そもそもまともな<エンブリオ>の補助もない下級<マスター>が亜竜級の討伐など気狂い以外の何でもない。

 森の中を跳躍する【亜竜猛虎】を相手にアレウスが距離をとり、狙いすました弓で牽制する。

 【亜竜猛虎】の体には何本もの矢が突き刺さっている。

 師匠から事前に貰った矢である。元の手持ちと合わせれば矢の数は心配ない。

 しかしアレウスと私の体にもいくつもの切り傷が増えていく。

 あれほど多く感じていたHPももうすぐ半分を切りそうだ。

 

 

 「フッ!!」

 

 

 放たれた矢は高速で森の中を進む。

 しかし、

 

 

 『Gaaa!』

 

 

 【亜竜猛虎】のしなる尾が宙で矢を弾き折る。

 先ほどから今と同じ状況が続いている。

 私の矢を警戒しているのか、どんな状況でも動かすことが出来る長くしなやかな虎尾で防がれてしまうのだ。

 そんな硬直した状況とは反対に時間だけは淡々と過ぎていく。それに比例するようにアレウスの息遣いが荒く、早くなっていく。

 

 (このままでは勝てない!)

 

 おそらく【亜竜猛虎】はアレウスの体力が尽きるのを待っている、まさにモンスターの狩人。虎型のモンスターらしい戦い方だ。

 だからこそこのままでは本当に勝てる見込みがなくなってしまう。

 チラリと師匠を見るが……

 

 

 「……」

 

 

 行動を起こすつもりは無い様だ。あくまで私たちだけでどうにかしろと言うことらしい。

 矢を一度に二本つがえて射る。

 しかしそれは簡単に避けられてしまった。

 

 (どうすれば、どうすれば勝てるの?)

 

 師匠のあの性格だ。無茶苦茶な修行だが、勝てる手段があるからこそこうしているはずだ。

 そしてそれを見つけなければきっと勝てない。

 

 

 「ッツ!」

 

 

 迫りくる鋭い爪が傷をつくる。同時にHPも半分を下回った。

 見つけなくては、【亜竜猛虎】に勝つために必要な事、師匠がこの戦闘において伝えようとしている事を!

 私は弓を引きながら、アレウスに指示を出しながら考える。

 思考にふける分、敵の攻撃の被弾が増えていく。

 そして……

 

 

 「もしかして……同時に二つ(・・・・・・)以上の事をしようとしている事が問題なの?」

 

 

 呟いた瞬間、視界に映り込んだ師匠が微かに微笑んだ気がした。

 ただ微笑んだだけ、もちろん違う可能性の方が高い。

 

 (だけど、試すだけの価値は十分にある!)

 

 私は一つの可能性に欠けるために、いつも以上に手綱を強く握りしめる。そして次の瞬間、手綱による操作(・・・・・・・)を捨てた(・・・・)

 

 

 『Bruru!?』

 

 「大丈夫、安心してアレウス。諦めた訳じゃないよ」

 

 

 突然に私からの指示をなくし動揺するアレウスを安心させるため語り掛ける。

 

 

 「だけど、今からアレウスが自分で考えて動いてほしい」

 

 

 そう、私の考え抜いた結果。

 それは単純にして一つの選択の放棄。

 

 

 「私は攻撃に集中するから。私の体は任せたよ(・・・・・・)、アレウス」

 

 『……BuRuuruuuu!』

 

 

 しっかりしがみ付くため、跨る轡の足に力を入れて改めて【亜竜猛虎】に向き直った。

 その考えに行きついたのは自問中に湧き出た疑問から。

 その疑問はとても簡単なこと、『私の操縦はアレウスにとって本当に動きやすいのか?』という疑問だ。

 私の《騎乗》スキルのレベルは5、十分に騎獣の力を引き出せるレベル。それ故に考えた事もない事だった。

 誰かの為ととられた行動でも、その人からすれば迷惑だと感じることがある。

 事実、私もリアルではそんなことが多かった。実体験済みの出来事だ。

 それと同じことが今この状況でも起こっているんじゃないか?

 

 なんと言ったって、私とアレウスのAGIは違う(・・・・・・)のだから。

 

 その答えを示すように、アレウスの動きがより機敏に、縦横無尽に躍動し始める。

 その動きをアレウスの息遣いから、伝わってくる振動から感じ取り、握りしめた手綱をその方向へと向ける。

 

 

 「ッハァッ!」

 

 

 同時に意識は対敵する【亜竜猛虎】へ。

 今まで以上に意識を割くことが出来るようになった頭を使いながら弓で矢を引く。

 集中しなければできなかった三本同時射出。

 

 

 『GAaaaaa!』

 

 

 それを【亜竜猛虎】が動くだろう先へ撃った。

 放たれた矢は一本は尾に弾かれたが、残りは深々とその頑強な毛並みに突き刺さる。

 次は今敵がいる位置に向かって矢を四本。

 撃つ場所を変えながら、放てる矢の数を増やしていく。

 

 

 

 「流れが変わりましたね。そしてヴィーレさん、貴方はそれでいい。きっとそれが正解です」

 

 

 

 荒ぶり躍るような動きをとるアレウス、そんな騎獣を乗りこなし矢を穿っていくヴィーレ。

 そこには意識した騎乗による繋がりではなく、無意識の一人と一体によって出来始めた一つの『人馬一体』の形があった。

 放つ矢は撃つごとにその威力と数を増していく。

 躍り駆ける馬は自身の知能で考えたより速く被弾が少ないだろう走り方を身に着ける。

 

 あれほど当らなかった矢は、今では【亜竜猛虎】の体から針鼠のように生えている。

 あれほど多かった損傷は、いつの間にか一撃も当たらなくなっていた。

 そして、

 

 

 

 「合格、及第点を差し上げますよ。ヴィーレさん」

 

 

 

 一人と一体、未熟な人馬一体を成した【騎兵】の前に【亜竜猛虎】は崩れ去ったのだった。

 

 

 

 




【騎神】
騎兵系統の騎乗技術を極めた者が就くことが出来る。
騎乗スキル特化型&AGI型超級職。
現在は■■■・■■■■、“自称しがない老人、兼ゴスト”のメインジョブ。

AGI型ではあるものの、騎獣への《騎乗》前提のジョブの為、ステータスはほとんど伸びない、【抜刀神】と並ぶピーキーなジョブ。
しかし、その奥義であり数多いスキルは、過去に……を葬ったほどの力を持つ。


(二次オリジョブ)
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