自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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第23話 譲れぬ意志

 □□□

 

 

 

 

 

 雨が止んだ曇天の夜の空。

 月明かりは<グランドル>を照らしては雲に隠れ、そしてまた照らしだすを繰り返していた。

 風もない、凍えるような真夜中は砂漠の街を極寒の氷の街へと変貌させる。

 ――砂漠へと染み込んだ雨が。

 ――濡れた建物が。

 冷やされた雨水は薄氷を張りながら白い霜を下ろし、民間や街門の扉を凍り付かせて、何人たりとも逃がさない氷の檻へと姿を変えさせたのだ。

 

 しかし、そんな氷の檻と化した<グランドル>で、唯一赤く染まっている建物があった。

 仕掛けられたら【ジェム-《エクスプロージョン》】の爆発によって薄氷ごと窓が吹き飛び、石材製の建物を爆炎が霜を一瞬で焼き溶かしながら燃やしていく。

 この街で一番大きな建物――半壊炎上した市(・・・・・・・)長の館(・・・)の姿がそこにはあった。

 

 

 「――雨ガ降ッタ割ニハ良ク燃エル」

 

 

 男は……【義賊王】はその火を見ながら呟いた。

 対面の民家へと腰を下ろし、頬杖を突きながらジッと燃えていく様子を眺めている。

 深く被ったローブの奥の瞳の『青』と炎の『赤』が混じりあい『紫』色に染まる。僅かに見えた口元は歪み、静かに嗤っていた。

 

 

 「アァ、楽シイナァ」

 

 

 燃える建物から聞こえてくる悲鳴も。

 泣きわめく助けの声も【義賊王】には【奏楽王(キング・オブ・オルケストゥ)】のオーケストラよりも、声を耳にするだけでも数十億リルはくだらないと言われる【歌姫(ディーヴァ)】よりも心地よい。

 それは【解体王】のような快楽殺人ではない。

 『妹』を……貧民街の家族同然の仲間たちを殺したことからの復讐によるものだ。

 もはや目の前で泣き喚く人間たちは人ではない……【義賊王】にとっては、家族を見殺しにした腐敗物であった。

 ……故に、嗤う。

 だからだろう、口元は歪みながらも目は一切笑っておらず、燃える建物を観察していたのだった。

 

 

 「……五月蠅イナ」

 

 

 ――鳴り響く『警鐘』へ煩わしそうに視線を向ける。

 そして、

 

 

 「「う、うわぁぁぁぁああああーーっ!!」」

 

 

 左手に巻き付いた鎖が伸び、危険を知らせる『危険警鐘(マジック・ワーニング)』を破壊した。

 瓦礫の砕ける音と悲鳴。

 『危険警鐘』が落ちる方向には目も向けない。

 

 仮に【義賊王】が本気で皆殺しにしようと思えば、既に<グランドル>は火の海と化していただろう。

 

 ――《ライト・オーバースナッチ》で火薬庫を破壊すれば良い。

 ――《義賊の流儀》で強化されたステータスで暴れ回れば良い。

 ――伸縮自在の鎖で、蹂躙すればいい。

 

 市長の館に仕込んだ【ジェム】一つにしてもそうだ。

 もっと大量に仕込めば、跡形もなく吹き飛ばすことも出来ただろう。火事を消化しようと目まぐるしく走る憲兵を殺せば、火事はもっと広がっただろう。

 しかし……【義賊王】はそれをしない。

 

 

 「奪ワレル痛ミッテ言ウノハ、死ヌヨリモ苦シイダロ? ダカラ俺モ奪イ取ッテヤルコトニシタンダ」

 

 

 それは全てを奪われた。

 裏切られた痛みを奴らにも分からせるため、そのため全てを破壊したうえで【義賊王】は市長を殺す。

 できうる限りの苦しみを。

 想像つく限りの絶望を与えて殺す。

 そう【義賊王】は心に決めていたのだから。

 

 

 「ローズマリー……モウ少シデ全部終ワルヨ。俺モモウスグ其方ニイク」

 

 

 【義賊王】は指に着けた銀色の指輪を炎にかざして呟く。

 それは『特典武具』でも……希少なレアアイテムでもない、【義賊王】の妹だったローズマリーの唯一残っていた遺品だった。

 炎を反射し、淡い赤に染まる。

 ローズマリーの名と同じピンク色の指輪を【義賊王】は懐かし気に眺める。

 混乱する街を背景に見た銀の指輪は【義賊王】を感傷に浸らせた。

 

 

 「……」

 

 

 

 

 

 長いような、短いような時間だけが過ぎていく。

 そして、

 

 

 『……【義賊王】』

 「――何ダ?」

 

 

 傍に置かれた無線――長距離用通信機である【サーチ・コンタクト】から聞こえる声。

 その物静かな機械声に我に返った。

 

 

 『……【騎神】を確認した』

 「アァ、多分来――――」

 

 

 【義賊王】が【サーチ・コンタクト】越しに返事を返そうとしたその時。

 言葉は最後まで続くことなく、声が途絶えた。

 それは、目の前で急速に収束し始めた炎を見たから。

 

 

 「……速イナ」

 

 

 既に複数の建物を飲み込み大火事と化していた炎は、一瞬の内にどこかへと吸収されたのだ。

 ……あの不死鳥の能力か。

 【義賊王】が【騎神】ヴィーレの騎獣で知っているのは三体。

 

 ――炎の不死鳥。

 ――地盤の地竜。

 ――半神の軍馬。

 

 直に見たのは不死鳥と地竜だけだが、おそらく間違いはないだろう。

 【義賊王】はそう予想を付け、鎖を鳴らしながら短剣を身がまえる。同時に右手を自由にし、《ライト・オーバースナッチ》を装填した。 

 意識を戦闘に切り替え、1万超えのAGIに相応しい超音速機動の世界に足を踏み入れた。

 ………張りつめた緊張の糸。

 全身の力を抜き、即座に動けるように準備をし、最大まで上げられた《気配察知》スキルを自身の周囲へと張り巡らせた。

 そして――

 

 

 

 

 

 「――ッ!!?」

 『KWEEeeeeeeーー!!』

 

 

 見えなかった。

 AGI型である【義賊王】。

 選ばれた者だけが到達することが出来る速度の次元、そこに足を踏み入れているはずの【義賊王】が反応も出来なかったのだ。

 全く反応できない3倍以上のAGI。

 ティアンの中では俊足の速さを誇る【義賊王】故に、自分よりも速い。予想以上の速さに反応が遅れてしまったのだ。

 

 

 「グッ!」

 

 

 超音速機動で駆ける不死鳥は、そのまま【義賊王】の腕を攫いながら空へと飛翔する。

 身体を襲う凄まじい冷気と風圧。

 爆風を食らったように不死鳥とは逆方向へ身体は引かれ、夜の寒さが手足の感覚を瞬時に奪っていく。遥か上空まで連れ出され、一瞬でピンチに陥った。

 しかし……【義賊王】は何度も死線を潜り抜け、生き抜いてきた者。

 瞬時に最善の行動を導き出し、実行する。

 

 

 「《ライト・オーバースナ――――」

 

 

 不死鳥に《騎乗》する【騎神】へと振るわれんとする右手。

 心臓を奪い取る《ライト・オーバースナッチ》の右手は、即死の技となりながら対象(【騎神】)へと伸ばされる。

 射程距離は十分。

 奪い取る右手は振り切られ………そして何もその手に掴めないまま空を切った。

 同時に【義賊王】の身体を襲い掛かる浮遊感。

 《ライト・オーバースナッチ》が放たれるより先に不死鳥が【義賊王】の腕を放し、その身体を遥か上空へと投げ出したのだ。

 

 ――『上空:800メテル』。

 

 放物線を描きながら自由落下する【義賊王】だが、その様子は慌てることも無く依然として冷静である。

 むしろこれこそが【義賊王】の真の狙い。

 乱回転する身体を、両手足を伸ばし安定させる。そして左腕に巻かれた鎖を伸ばし、まるでアンカーのように地面に突き刺した。

 伸縮自在、かつ自由に動かすことが出来る鎖。

 その特性を利用して、ゆっくりと減速。地面に叩きつけられることなく、無事に地上へと着地したのだ。

 

 

 「――カナリ運バレタカ」

 

 

 同時に【義賊王】はそこが既に<グランドル>の外であることを察した。

 夜の魔境と姿を変えた砂漠。

 街からはギリギリ1キロメテル以内ではあるが、《気配察知》は砂中で蠢くモンスターの気配を捉えていた。

 少なくとも直ぐには街へと戻れない。

 民家に閉じ込めていた糞共も、市長もどこかへ避難してしまうのは止められないだろう。

 そこまで考え、【義賊王】は自身の背後を睨みつけた。

 

 

 「……ヤッテクレタナ、【騎神】」

 「貴方に街を襲わせるわけにはいきませんから。【義賊王】――ううん、シアンさん」

 

 

 夜の砂漠。

 そこには太陽の如き炎を纏うフェイに《騎乗》したヴィーレが居たのだった。

 

 

 

 

 

 ◇◆◆【槍騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 「そうです………か、正体がバレているならこの声や姿を隠すのは止めましょう」

 「……簡単に偽装を解くんですね」

 

 

 向き合った私と【義賊王】。

 真っ暗な夜の砂漠でフェイの炎だけが光源であり、私達を炎の明かりがオレンジ色に照らしていた。

 そんな中、何でも無さそうに正体を明かした【義賊王】。

 ――カタコトの高めの声が、聴きなれた………しかし、間延びしていない声に戻る。

 ――顔を隠していたフードを脱げ、癖のある茶髪と青い瞳が晒される。

 紛れも無い【大商人】シアンさん。

 全ての隠蔽スキルが解かれ、正体を明かした【義賊王】シアンディールの素顔がそこにはあった。

 

 

 「多分、『地下迷宮』の隠れ家で日記を見たんですよね? それとも【墓守】のじいが漏らしたのか。

  どちらにせよ、ばれた事を隠す意味もありませんし………隠す必要も無くなりましたから」

 「……」

 

 

 変わってしまった口調で話す声。

 それは驚く程に穏やかで落ち着いたものだった。

 ――【凍結】しても可笑しくない寒さ。

 ――蠢くモンスター。

 どちらも【義賊王】であり<グランドル>出身のシアンさんは当たり前のように対策済みの事なのだろう。しかし、それは決して先ほどまで市長の館を襲い、眺めていた男が出せる声では無かった。

 

 (……なんでだろう)

 

 私はそんなシアンさんが少しだけ恐ろしかった。

 間延びした声で穏やかで、子供たちの為に働く優しい【大商人】のシアンさん。

 冷静で頭が回り、街の人々を殺すことに対し何の感情も持たない冷酷な【義賊王】のシアンさん。

 激しい落差。そして矛盾しない二つの性格。

 どちらも同じシアンで、そして目の前にいる人物こそが本当の姿なんだと私はようやく理解できたのだ。

 

 

 

 

 ………だからこそ分からない。

 

 

 「何で………何でいきなりこんな事をしたんです」

 

 

 シアンさんならいつでも市長の館を襲撃することが出来た。市長を亡き者にする事も難しくなかったはずだ。

 なんども裕福な商人を襲撃して逃げ切っている【義賊王】。

 戦闘職のティアンが少ないこの街では、誰も【義賊王】を止められる者はいないはずである。

 しかし……シアンさんは実行しなかった。

 それは彼にとって貧民街の人々を。家族を守ることが最も大切だったからに違いない。

 結果、こうして少しづつだが状態は好転している。

 今回の襲撃はそれら全てを――シアンさんの数十年の努力を水の泡にする行為だ。

 

 

 「少なくとも………私の見てきたシアンさんはそんな選択をする人じゃなかったっ!!」

 

 

 声を荒げる。

 ……分かっている。

 【義賊王】であるシアンさんが体験した悲劇も、怒りも。

 それでも到底納得することが私には出来なかったのだ。

 

 

 「そうですね………」

 

 

 そんな私に、シアンさんは困ったように笑った。

 

 

 「別にそこまで難しいことでも無いんですよ。

  ………()は、元から街の住民全員皆殺しにするつもりだったんだから」

 

 

 事も無げにそう言い切った。

 

 

 「――昔話をしよう」

 

 

 少しづつ変わっていく口調。

 それはまるで笑みを浮かべるシアンさんが崩れていくような。【義賊王】であるシアンディールに戻っていくようでもあった。

 

 

 「昔々、ある貧民街に男が居た。男は無知で馬鹿で、どうしようも無い愚か者だった。

  だが、そんな男の人生は一転することになる。街の有力者………その当時、最も権力のあった【豪商(ウェルシー・マーチャント)】に拾われ弟子となったのだ。男は無我夢中に、がむしゃらに働き、いつの間にか街一番の【豪商】の右腕と言われるまでに成長していたのだ」

 

 

 また一筋、笑みの仮面に罅が走った。

 

 

 「しかし……そんな男に悲劇が起こる。男の唯一の妹が、家族が奴隷として売られて殺されたのだッ! 

  数日間、<カルディナ>中を駆け回りようやくわかった妹を殺した犯人。――<グランドル>の市長を殺すため、男は貧民街を飛び出そうとして………そして見てしまったんだ。

 

 

  ――恩人で、師匠と慕っていた【豪商】が貧民街の生き残りを捉え、奴隷として売ろうとしている所を」

 

 

 ■■

 

 ――『シアン………? お前、今までどこに行っていたんだっ? いや、それよりも早く手を貸しなさい。質が悪い奴隷だが、コレを売り払えばまた大量の金が手に入るぞ。

   全く、楽なもんだ。街のゴミがこんな言い値で売れるとはな。全部捕まえて売り払って、この辺りに新しい店を建てよう。――そうだ、娼館にしよう!! 捕まえた奴を死ぬまで働かせれば無限に金が手に入るぞ!』

   

 ■■

 

 

 仮面は完全に砕け散り、笑顔を憤怒の形相へと変えた。

 そのままシアンディールは語り続ける。

 

 

 「今まで慕っていた【豪商】は他でも無い………貧民街を襲った【奴隷商】だった。だけど男は愚かだ。

  その光景が信じられず、助けを求める家族(貧民街の仲間)の声にも耳を貸さずに聞いたんだ」

 

 

 ■■

 

 『――何? 足の石化した商品()? 

  あぁ、あの欠陥品か……売れないと思ってたんだがな、顔が良かったから市長が言い値で買い取ってくれたよ。何でも普通じゃないプレイが好きなんだそうだ。理解は出来んが大金を払ってくれた』

 

 ■■

 

 

 「頭が真っ白になって――気が付いたら俺はそいつ(【豪商】)を殺していたッ!!」

 

 

 吼えるシアンディール。

 その姿に私の知るシアンさんの姿は、もう少しも見つけることが出来なかった。

 私は、何も口にする事が出来なかった。

 ただ黙り、シアンディールの怒りを見る。

 

 ――『ドンッ!!』

 

 怒りのやり場のないシアンディールの脚が踏み下ろされ、砂が舞った。

 舞い散った砂は風に乗せられることも無い。凍り付いた砂はそのまま砂漠へと落ちる。

 そして……顔を伏せ、見えることの無かった【義賊王】の青い瞳が私を貫いた。

 

 

 「『奴隷狩り』が今まで無かったわけじゃ無い。だが、俺が貧民街を複雑に作ることで。地下道を拡張して張り巡らせることで避難所を作って防いでいた」

 

 

 それがあの『地下迷宮』。

 冷凍庫として使われていたころから大きく姿を変え、迷路のように入り組んだ地下道。

 

 

 「だが……それが仇となった。俺の設計図を奴らが盗み映したからだ」

 

 

 血走った眼でシアンディールは言う。

 血反吐を吐くように。

 噛み切った唇から血を流しながら言った。

 

 

 「――俺が、皆を。ローズマリーを殺したんだ」

 

 

 『奴隷狩り』から逃げ出し、避難した先。

 そこで【奴隷商】の待ち伏せにあい、一網打尽にされてしまったのだ。

 【義賊王】はそれを自分のせいだと言う。

 きっとそれは違う、しかし私が何を言っても耳を貸さないような気がした。

 

 

 「優しいシアン? 違うっ!! 俺はそうしなければ狂って死んでしまいそうだった!

  <グランドル>の街を回していた市長と【豪商】。その両方を殺してしまえば街は回らなくなる……そうすれば真っ先に死ぬのは生き延びた貧民街の仲間たちだ。

  だから俺は市長を殺せなかった……殺せない怒りで、気が狂ってしまいそうだったッ!!」

 

 

 【義賊王】の右拳から血が流れた。

 余りに強く握り込んだせいで爪が食い込み、肉が裂けたのだ。

 

 

 「思い知らせてやるのさ、奴らが奪った『命の価値』を。俺が教えてやるのさ、その命を対価にしてな。

  当たり前のように死んで蘇る――お前たち<マスター>には分からないかもしれないがな」

 

 

 そして……【義賊王】は左手に握ったナイフを私へと突きつけて言う。

 

 

 「――【騎神】、お前の視線の先には何がある?」

 

 

 何かを見極めるような。視線だけで人を殺せそうな目が私を見通した。

 

 

 

 

 

 「――あの街に、何に守る価値がある」

 

 

 押し黙る私に【義賊王】は言う。

 

 

  「……邪魔をするな【騎神】、お前たちはただ見ていればいい。【解体王】は糞共を皆殺しにしてから俺が殺す。それでも邪魔をすると言うなら……此処で殺す」

 

 

 吹き荒れる殺意の嵐。

 私の中で《危険察知》が頭の中で大警鐘を打ち鳴らす。

 手足は凍りついたように動かず、心臓は鷲掴みにされたように激しく心音をならした。

 それでも私は動かない口を開き、声を振り絞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――確かに、市長に生きる価値は無いかもしれない」

 

 

 凍りついた指先を力強く握り込んだ。

 

 

 

 「――シアンさんの言うことは正しくて、間違っているのは私かもしれないけど……」

 

 

 ……だけどッ!!

 

 

 「――私は、貴方を此処で止めるッ!!」

 

 

 私は知っている……シアンさんは全てを終わらせ死ぬつもりだ。

 市長を含めた住民を皆殺しにした後始末のために、自分自身を生贄にして調査団を<グランドル>へと派遣させたのだから。

 ……それが、何故だか気に入らなかった。無性に腹が立った。

 <グランドル>に初めて訪れた日、私は痩せこけた貧民街の子供たちを見て怒りを覚えた。

 それは今にしてみれば、そのようにしか生きられない子供たちの境遇に怒りを覚えたのだ。全てを諦めたような、子供たちの目に怒りを覚えたのだ。 

 

 ……現実の私の目に似ていたから。

 

 そして今、私の目の前には頑固に縛られて生きている人がいる。

 長年の恨みに、子供たちを救わなければならない使命のようなものに縛られた。そして死のうとしている【義賊王】。

 私はそれが見過ごせない。

 

 (……私は<Infi()nite ()Dendr()ogram()>で我が儘に生きるって決めたんだっ!)

 

 私は、私の正しいと思ったことを貫き通す。

 【解体王】を倒し、シアンさんを救い、ホオズキの『冤罪』も解く。

 そんなハッピーエンドの未来を選んでみせる!

 例え、それが私のエゴだとしても。間違った正義だとしても関係ない。

 

 ――これが私の貫き通す信念。

 

 何度折れても諦めない、私の意志()

 決して消えない、私の決意()

 

 だから、私も譲れない。

 勇気を振り絞り、吼えるように言い放つ。

 

 

 

 

 

 「私は……私を全うするッ!!」

 「――なら、此処で死ね。【騎神】!」

 

 

 

 

 

 『【騎神】ヴィーレ・ラルテ vs 【義賊王】シアンディール』

 

 互いの譲れない意志を懸けた、長い夜が火蓋を切った。

 

 

 

 

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