自由への飛翔   作:ドドブランゴ亜種

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少し無理やり感があります。
……すいません。


第29話 冥府の棺桶

 □<【■■騎】地下墳墓> 【槍騎兵】ヴィーレ・ラルテ

 

 

 

 

 

 

 ――一部の『魔灯』が薄暗く照らす<地下墳墓>。

 

 

 

 

 

 ヴィーレを巻き込む様に大爆発を巻き起こした『死体爆弾』は、視界を一瞬で赤く、手で覆ってしまう程の閃光を放ち吹き飛んだ。

 洞窟内で耳を劈く爆発音が響き、反響する。

 それにコンマ差で続く、吹き荒れる爆風。

 大爆発がもたらした爆風は、<地下墳墓>で自然と崩れた瓦礫や縦穴から落下してきた岩を軽々と吹き飛ばし、その周囲に居たものを壁へと叩きつけた。

 

 ……凄まじい威力の『死体爆弾』だ。

 

 爆発地――【ミラーズ・ベイ】に貫かれた『死体生物』を中心として、その半径5メテル内の範囲には何一つ元も形を保っていたものは存在しない。

 先々期文明の『ロストテクノロジー』を用いて造られた、謎の素材である頑強な床と壁。

 砦の門や城壁などのオブジェクトを破壊することに長けたジョブ――【破壊屋(クラッシャー)】でようやく破壊できるような頑丈さを誇る<地下墳墓>。

 大爆発はそんな壁や床すらも跡形もなく吹き飛ばしていた。

 

 ――爆発地から立ち昇る黒煙と砂煙。

 ――<地下墳墓>にたちこめる火薬と肉の焼けた臭い。

 

 そして……不気味な程に静まり返った空間に、荒い息遣いが木霊した。

 

 

 

 

 

 「ハァ……ハァ……今のは、本当に。……危なかった」

 

 

 爆発地から距離を取った縦穴の底。

 そこには危機一髪で『死体爆弾』から抜け出し、デスペナルティを回避したヴィーレの姿があった。

 

 ……なんてことはない。

 『死体爆弾』が大爆発を巻き起こすその瞬間、フェイが全力で《紅炎の炎舞》と《火炎増畜》をフル稼働したのである。

 『死体生物』を一瞬で塵に返し、【ジェム―《クリムゾン・スフィア》】を完全吸収する。

 同時に《エクスプロージョン》の爆発を《紅炎の炎舞》で軽減し、最大限まで軽減したのだ。

 とっさに取った選択。

 その行動が正しかったかは分からない……が、結果的にヴィーレは軽傷。【ミラーズ・ベイ】も破壊されることなく手元に残すことが出来ていた。

 

 

 「なんだ? 死ななかったのか……」

 「敵同士だし、別に協力してるわけじゃ無いのは分かってますけど……残念そうに言わないでください」

 

 

 前方から何事も無かったように、鎖の球体に守られながらこちらを見る【義賊王】。

 あからさまに残念感を込められた声に私は文句を言う。

 

 (……だけど、やっぱり無傷とはいかなかったみたいだね)

 

 凄まじい速さで早鐘を打つ心臓。

 脳内ではいまだに『キーン』と、爆発音が木霊し続ける。チラリとステータスを確認すれば状態異常である【鼓膜欠損】が確認できた。

 大爆発に巻き込まれたヴィーレ。

 軽減してなお、『死体爆弾』は少なくないダメージをヴィーレに与えていたのだ。

 

 【スカーレット act.1】が破れ、白い素肌と赤い擦り傷が露出した二の腕。

 地面に転がる、破壊された(・・・・・)【身代わり竜鱗】。

 あまりの閃光に霞んだ視界と失われた平衡感覚。

 

 やはり建物も破壊することが出来る程の《エクスプロージョン》。

 【身代わり竜鱗】を破壊してなお、微かな傷と治せない影響を残している。

 しかし……問題ない。

 

 

 「フェイ、傷を治してくれる?」 

 『KWE、KWeee』

 

 

 かすり傷や軽い状態異常程度なら瞬時に完治させることが出来る《蒼炎の再生》――【炎怪廻鳥 フェニックス】がいるのだから。

 蒼炎が私とアレウスを包み込み、一瞬でHPも含めすべての傷が完治する。

 

 

 「うん、ありがと。――アレウスもまだいけるよね」

 『HIHIIiiiiii~~Nッ!!』

 

 

 完全回復したアレウスもまた、大きく嘶きを上げて立ち上がる。

 私もそれに続くように。

 鐙へと足を、左手で手綱を握り、軽々とアレウスへと《騎乗》し【ミラーズ・ベイ】を片手に握った。

 

 

 「……自己回復も出来るのか。<マスター>ってのはどいつもこいつも化け物じみているな」

 「変な事言わないで。化け物って言うのはホオズキや……【解体王】みたいな<マスター>の事を言うんだから」

 「俺達ティアンから見れば、死なないだけで全員十分化け物だ」

 

 

 軽口を叩きながらゆっくりと前進し、【義賊王】の横に並ぶ。

 

 

 「それで、どうするんです?」

 「お前が俺に何を期待しているのかは知らないが、何度も言うが協力する気はない。俺は俺、お前はお前で【解体王】を殺す。

  ――それだけだ」

 

 

 ……頑固者だ。

 あれだけの罠があっても変わらず協力する気は無いらしい。

 一人前を歩き<地下墳墓>内へと足を踏み入れよとしている【義賊王】の背中をジト目で睨み――大きくため息を吐いた。

 

 

 「私達も行こう。アレウス、フェイ」

 

 

 既に<地下墳墓>内に足を踏む入れた【義賊王】を追うように手綱を引く。

 警戒はもうこれ以上ない程に、瞬時に反撃に移れる体勢で進む。

 そして、<地下墳墓>内の【義賊王】へと襲いかかる複数の『死体生物』――『死体爆弾』の姿を見た。

 

 (――複数の『死体爆弾』はまずい)

 

 瞬時に《瞬間装備》で手元に強弓を装備し、複数の矢を番える。

 限界まで引き絞り、『死体爆弾』の頭へと狙い定め――。

 

 

 「……?」

 

 

 私は、片手を横へと向け制してきた【義賊王】に、眉を顰めながら強弓を下ろした。

 左手には『拳銃』と自在に動く鎖を。

 右手は横へと広げながら何かを掴むような掌を。

 奇声を上げ、転がるように走り迫る『死体爆弾』を目の前に、【義賊王】は焦る様子も見せずに散歩するかのようにゆったりと歩いていた。

 ――『俺一人で十分だ』

 そう【義賊王】の背中が、動きの一つ一つが物語っていたのだ。

 

 

 『ギュアリャリャリャーーッ!』

 「――《ライト・オーバースナッチ》」

 

 

 真っ先に【義賊王】へと掴み掛った『死体爆弾』。

 自意識も無い『死体生物』は恐怖も躊躇いも無く、自爆を決行し――【義賊王】に殴り飛ばされた。

 しかし……自爆しない(・・・・・)

 何の変化も無く沈黙する。

 そんな【義賊王】の右手――殴り飛ばした手の中には二つの【ジェム】が納められていた。

 ……だが、まだだ。

 まだ3体の『死体爆弾』が【義賊王】へと襲い掛かる。

 

 

 「フッ!」

 

 

 次に動いたのは左手。

 『拳銃』の掛けられた引き金が引かれると同時に一発の弾丸が1体の『死体爆弾』の頭を撃ち抜き、その背後から襲い掛かった2体目の頭を鎖の先に繋がれた短剣が破壊した。

 

 

 『ギィ――』

 

 

 3体目は《投擲》された【ジェム】が直撃し、身体に埋め込まれた爆弾と共に誘爆した。

 まさに瞬殺。

 これこそが【義賊王】の本来の戦闘スタイル。

 敵の武具を奪い取り、その武具で敵を倒す。あらゆるものを使いこなす【剣闘士】にも似た『オールラウンダ(・・・・・・・)()』だった。

 そして、合計4体の『死体爆弾』を倒して見せた【義賊王】の戦闘を見て、私も気が付いた。

 

 (――『死体生物』全ての身体に【ジェム】の爆弾が埋め込まれているわけじゃ無いんだ)

 

 それもそうである。

 【ジェム―《クリムゾン・スフィア》】だけでもかなり高価なアイテム。《エクスプロージョン》も合わせれば数を用意することは困難を極めるだろう。

 例え、それがこの<地下墳墓>で見つけたアイテムだとしても……だ。

 

 

 「でもどうやって判断を――」

 

 

 自問自答のように疑問を口にし、気が付く。

 シアンディールは【大商人】にも就いている、それ故に持っていても可笑しくない汎用スキルを。

 

 

 「――《透視》。《透視》で『死体爆弾』を見極めて体の中に埋め込まれた【ジェム】の位置を正確に察知したんだ」

 

 

 <レジェンダリア>では何故か当たり前のように殆どの<マスター>が持っているスキル。

 ダンジョンでも罠の感知などに使われる《透視》。

 これを使えば、敵の体内を覗き見ることも出来るスキルである。

 私は汎用スキルである《透視》は習得はしていない……だけど。

 

 

 「《瞬間装着》」

 

 

 スキル名を呟くと共に【鑑定士のモノクル】を片目に装着した。

 同時に先ほどまで引いていた複数の矢を強弓に番え、力強く引き放った。

 一本一本が亜竜級モンスターすら撃ち抜く剛射。

 まとめて射られた矢は標的から外れることも無く、真っ直ぐに【ジェム】持ちの『死体生物』へと突き刺さり、周囲の身体ごと爆弾を吹き飛ばした。

 更に『矢筒』から引き抜き、射抜く。

 撃つごとに数え切れないほど多くの『死体生物』から【ジェム】を持ったものだけが倒れ伏していく。

 

 (……いける)

 

 全てが順調に進んでいる。このまま行けば直ぐに【解体王】まで追いつけるだろう。

 そう思った瞬間だった。

 

 

 ――爆発音と暴風が背後で巻き起こった。

 

 

 続くように何かが崩れるような重たい音と地響きがアレウスを通して伝わってくる。

 反射的に背後へと移す視線。

 そして私が見た光景、それは外へと繋がる<地下墳墓>の横穴が、爆発の瓦礫によって塞がれた状態だった。

 同時に僅かな物音に上空を見上げる。

 石材で建てられた高い天井、そこには張り付くようにゆっくりと移動する『蜘蛛型・死体生物』の姿。

 反応を示すよりも。

 声を漏らすよりも早く、私は反射的に矢を放ち排除する。

 そして……。

 

 

 

 

 

 『ィヒ、ィヒヒヒヒヒヒヒヒィ~~ッ! 怖いなァ~、本当に同じ人間なのか疑ってしまうヨォォォォォオオオ~~!!』

 

 

 塞がれた<地下墳墓>の横穴。

 その光景に唖然とする私の右方向――おそらく正規の通路であろう強固な鉄の扉に背中を預けた【解体王】が、此方をニヤニヤと嗤って見ていたのだった。 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 

 

 ――身体が動く。

 

 

 アレウスが戦意のボルテージを一気に引き上げた躍動が。

 今にの走り出しそうな興奮と苛烈さを増して頬を撫でる炎に、私の体は無意識に動いていた。

 <Infi()nite ()Dendro()gram>()で何度も死線を潜り抜け、そして生き延びてきたからだろう。

 身体に染み込んだ経験と危機感が反応したのだ。

 ……反射、と言うにはあまりに洗練されている。

 予備動作無しに。

 脳を介さず身体がものを考えて動かしたように矢を番え、炎が矢を纏い、引き放つという一連の攻撃が無拍子で終わっていた。

 

 そして放たれた炎矢に誰も反応できなかった。

 戦闘に専念している【義賊王】も、【解体王】とその傍に控える【ヒポトヴォルグ】も。もちろん意識を自我を持たない『死体生物』達も反応できるわけもない。

 空気を燃やし、鉄をも貫通。焼き溶かすことが出来る炎矢。

 複数の炎矢はまるで吸い込まれるように【解体王】の身体へと吸い込まれていき――。

 

 

 『――ィ!? グギャァァァァァアアアアアアアアッ!??』

 

 

 その体を抉り焼いた。

 【解体王】すらも一瞬理解するのが遅れ、数秒後に絶叫を上げた。

 火が燃え移った身体を分離し、再び逃走しようと這いつくばって移動するが……それも叶わない。

 

 ――ジャラジャラッ、と。

 

 擦れ合うような幾つもの金属音。

 

 ――ゴンッ、と。

 

 金属が重たい何かに刺さったような低重音。

 地面を這う【解体王】は自身の耳元で聞(・・・・・・・)こえた(・・・)その音に顔を上げ、鉄扉に刺さった短剣付きの鎖を見上げた。

 そして発射源を探すように鎖の根元へと遡る。

 曲がりくねり、途中で『死体生物』を絞め殺しながら鉄扉に刺さっていた鎖。

 その根元には、1人の男。

 

 

 「――《ライト・オーバースナッチ》」

 『ォ、私を守れェェェェ~~ッ! 【ヒポトヴォルグ】ゥゥゥゥウウウウウ!!』

 

 

 ――右手を伸ばす【義賊王】。

 ――【解体王】を隠すように前へと躍り出る【ヒポトヴォルグ】。

 

 急激に加速した戦闘を収束させるように【義賊王】の右掌は勢いよく握り閉じられた。

 突如、世界が止まってしまったかのように静けさを取り戻す空間。

 <地下墳墓>内に沈黙が流れ、私も【義賊王】も。そして【解体王】も『死体生物』も動きを完全に静止させた。

 そして……。

 

 

 「――仕留めそこなった」

 

 

 【義賊王】の右手が開かれ、硬い甲殻のような【ヒポトヴォルグ】の皮膚が音を立てて落ちた。

 

 

 『ィヒ、ィヒヒヒヒヒヒヒヒィ! 本当に怖いナァ! もうお前たちを見るだけデェェェェェ、恐ろしくって震えてしまうヨォォォォォ~ッ!?』

 

 

 同時に【解体王】の奇声が反響する。

 【アイテムボックス】から別のティアンの骸を取り出し、自分に身体にくっ付けながら【解体王】は泣きべそを浮かべていた。

 

 

 『せっかく新調した体を躊躇いなく燃やしやがって……ィヒ、ィヒヒヒヒヒッ! 【騎神】ンンンン、お前は人じゃないなァァァァ~~ッ。

  化け物メェェ……。こんな事して心が痛まないのかァァァァア!!?』

 「……」

 

 

 何も言葉は返さない。

 ただ強弓を構え、出来る限りの殺気を込めて睨みつける。

 一秒でも早く奴の口を黙らせるようにひたすら次の隙を伺いながら。

 

 

 『ィヒ、ィヒヒヒヒヒッ!? それよりも受け取ってくれたかァァァ~、私のプレェェェゼントををサァァァァアア!!』

 「……」

 『何だダンマリカァァァ~ッ!? ィヒッ! ィヒヒヒヒヒヒヒヒィ~~ッ! ――『人間(・・)を殺した感触(・・・・・・)はどうだってキイテイルンダヨォォォォォオオオ!!』

 

 

 ……どういうことだ?

 私は無視していた【解体王】の声に眉を顰め、その意味を考える。

 『私が人間を殺した』、そんな事はした覚えがない。 

 だけど……【解体王】の嘲笑うような三日月の口端が。その暗い眼が嘘ではないと――今言った事は全て真実だと物語っていた。

 

 

 『ィヒヒヒヒヒヒヒヒィ~~ッ! こいつは滑稽だなァァ、まさか何も気づかないでコロシタノカァァァァ~~ハッハッハッハッハッハ!!

  なぁ、【義賊王】ゥゥ~。教えてやれよォォォォオオオ、お前が知っていることをォォォォ~~』

 「……」

 「シアンディール、もし何か知っていることがあるなら教えて」

 

 

 私は目を伏せていた【義賊王】へと視線を移す。

 そんな私の言葉に顔を上げるが――その青い瞳は何を迷うように宙を泳いでいた。

 その【義賊王】の仕草を見て確信する。

 【解体王】が言ったことは真実であり、【義賊王】は何かを知っていると。

 

 

 「……教えて」

 「お前が気にする必要はない。……これは避けられなかったことだ」

 「子供扱いしないで。私はもう――アイラちゃんをこの手で殺した時から決意は出来てるから。

  ただ、知っておくべきことから目は背けたくないの……」

 

 

 宙を彷徨っていた青い瞳。

 その視線が不意に私の朱色の瞳と交錯し、少しの時間互いに見つめ合った。

 そして――【義賊王】はたった一言。

 ボソリと小さな声で呟いた。

 

 

 「――爆弾が仕掛け(・・・・・・・)られた奴は死体(・・・・・・・)じゃない(・・・・)

 

 

 そう、確かに呟いた。

 同時に私は《透視》しながら『死体生物』の大群へと視線を向ける。

 数え切れないほどいる『死体生物』だが、その中から身体の中に【ジェム】を埋め込まれた者は案外簡単に見つかり……そして。

 

 

 『――ッ』

 「~~ッ!」

 

 

 目が合った。

 絶望の淵に落とされたような光の無い、虚ろな瞳。

 そのティアンは既に『人間』だった頃の面影は一切残しておらず、【砂蟲】と合体したような歪で。異形な姿をしてる。

 しかし……そのティアンには確かに自我があった。

 視線が合うと同時に、震えながら目を反らす。

 喋ることが出来ないように切り奪われた咽喉のせいで、口を動かしても空気が震えるだけ。

 だけどその動いた口がハッキリと言ったのだ『――殺してくれ』と。

 私達を襲うように命令され、自爆攻撃を仕掛けてきた『死体爆弾』――その正体は他でも無い『人間』だった。

 

 

 「ウッ……」

 

 

 喉の奥から込み上げてくる何かを口を押え、堪える。

 

 

 「目を合わせるな。俺達が出来るのは、出来るだけ痛みを与えることなく殺してやることだけだ」

 『ィヒヒヒヒ、気が付かなかったのかァァァ!?? 傷を負ったら簡単に死んだだろォォォォ~~? それでッ、どうだッ、無垢な人間を殺した感触はァァァァァ~~~ッ!!?』

 

 

 嘲笑うような、最高に最悪な奇声。

 これこそが【解体王】にとっての奇策――純粋な戦闘では決して勝てないと分かっているからこそ取った策略だ。

 ……【騎神】はティアンを人だ(・・・・・・・)と捉えている(・・・・・・)

 所謂、“世界派”の<マスター>。

 それが前回の奇襲で分かったが故の、ヴィーレだけの為に作り出した惨劇である。

 【解体王】は顔を伏せ、何も喋ることも出来ないヴィーレの様子に、高らかに奇声を上げる。

 

 

 「……それでも」

 『――ィヒ?』

 「それでも、私の取るべき選択は変わらない。私の心に決めた信念を折るわけにはいかないんだ」

 

 

 聞こえてきた声。

 それと同時に引き絞られた強弓から矢が放たれ、『死体爆弾』となってしまったティアンを撃ち抜き、跡形もなく燃やし尽くした。

 ヴィーレの頬を伝った涙が炎の熱で蒸発する。

 ――心痛める行為だ。

 ――非人道的な行為だ。

 矢を射るたびにナイフで刺されたような痛みが走る。

 だけど、これ以外に道は無い。もはや人間に戻ることが叶わないティアン達にとって、人として殺してやる――それがヴィーレに出来る唯一の救いだった。

 そして同時に改めて決意する。

 この惨劇を作り出した【解体王】を絶対に逃がさないと。必ず地獄に送ってやると。

 

 

 「覚悟は良いか――【解体王】」

 

 

 【ミラーズ・ベイ】が真紅の炎を纏う。 

 軽く振るうと同時に灼熱の炎が吹き荒れ、周囲の『死体生物』を灰にした。

 

 

 『ィ、いいわけあるかァァァァァアア! 何なんだお前たちはァァァァァアア、お前ら敵同士なんじゃないのかよォォォォオオ~~ッ!! 

  さっきまで殺し合ってたんじゃないのかよォォォォオオ!

  何でそう、私の――俺の邪魔ばかりするんだァぁぁぁぁ~~~ッ!!』

 「――お前が人を殺したからだろ」

 

 

 【義賊王】が小さく呟きながら左手の『拳銃』の銃口を【解体王】へと向ける。

 

 

 『――――ヒ。ィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッヒッヒッヒッヒッヒ~~~ッ! あぁ、もう、何でもイィィィィィィなァァァ!!』

 

 

 気が狂ったようにひたすら笑い声を上げる【解体王】。

 それは他人から見れば全てを諦めた自暴自棄な笑い。

 しかし、その目には決して諦めの色は無く、狂気に満ちたドス黒い悪意が籠っていた。

 

 

 

 

 

 『街のNPCも、こいつらも――全部吹き飛ばせェェェェッ、【ヒポトヴォルグ】ゥゥゥゥウウウウウ!!』

 

 

 叫び声を上げる【解体王】。

 その声と同時に、傍らに仕えていた【ヒポトヴォルグ】の体が赤く膨れ上がりながら膨張し始めた。

 【解体王】も【義賊王】も。そしてヴィーレも。

 【ヒポトヴォルグ】の中に埋め込まれたソレが【ジェム】ではない事を察していた。

 【ジェム】とは比較にならない巨大な砲弾を。

 

 ――先々期文明のロストテクノロジーである【超重砲弾】と呼ばれるとある兵器の砲弾を。

 

 <地下墳墓>で【解体王】が見つけたのは大量の【ジェム】だけではない。

 唯一、厳重に保管されていた【超重砲弾】を【解体王】は見つけ出し、最後の切り札として保管していたのだ。

 それが爆発すれば辺り一帯を消し去る。

 爆発の範囲は誰も分からないが……それでも街の地盤は消し飛び、大量のティアンが死に絶えることは誰の目から見ても明白だった。

 

 

 全てを消し去ろうと高笑いを響かせ【解体王】。

 

 全力の《紅炎の炎舞》で【ヒポトヴォルグ】ごと消滅させようとする【騎神】。

 

 右手を伸ばし、《ライト・オーバースナッチ》で奪い出そうとする【義賊王】。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……誰も気が付けなかった。 

 <地下墳墓>の最奥に納められた『黄金の棺』に。

 

 ――【冥償蘇生 コローネ】。

 

 <地下墳墓>に組み込まれた高い隠蔽に察知スキルが働かず、誰も気が付けなかったのである。

 度重なる爆発によって、棺の蓋が僅かに開いてしまったことにも。

 

 『逸話級』<UBM>である【冥償蘇生 コローネ】の能力はたった一つ。

 

 その名の通り、何かを代償に死者を配下として蘇生するというものだった。

 蓋が開けられ目を覚ました【冥償蘇生 コローネ】の感覚に入ったのは、幾つもの『リソース』の塊。

 故に、【コローネ】は起動する。

 自身を中心としてすべての『リソース』を巻き込む様に、魔法陣内の全ての『リソース』を代償に死者を蘇生させるスキルを展開した。

 

 

 『「「――ッ!?」」』

 

 

 とっさにその魔法陣の外へと退避できたのはたった三人。

 逆にそれ以外のモノは――爆発寸前だった【ヒポトヴォルグ】や『死体生物』はその姿を光の塵へと変え、【コローネ】の中へと吸い込まれていく。

 黒い光を発する魔法陣。

 収束していく光。

 眩しい光を漏らす【コローネ】の棺桶。

 そして……

 

 

 

 

 

 【(<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>認定条件をクリアしたモンスターが発生)】

 【(履歴に類似個体なしと確認。<UBM>担当管理AIに通知)】

 【(<UBM>担当管理AIより承諾通知)】

 【(対象を<UBM>に認定)】

 【(対象に能力増強・死後特典化機能を付与)】

 

 

 【(対象を逸話級――

 

 

 

 

 棺桶から姿を現した人型のソレ

 ソレは何も発することなく、次の瞬間――【冥償蘇生 コローネ】を叩き壊した。

 

 

 

 

 ――修正。

 対象を古代伝説級――【冥魂騎 ペイルライダー】と命名します)】

 

 

 

 

 

 地獄に冥界の天災が蘇った。

 

 

 

 

 

 




――そして狂い始めた更新者の大まかなプロット。


ノリで書くのは止めようと思ったけど……無理だ。
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